いつからだっただろうか……、こなたの顔を直に見れなくなったのは……。 いつからだっただろうか……、こなたの事を思うと胸が熱くなったのは……。 これは恋なのだろうか? いや、まさか、女の子同士でそれはない。顔が見れないのはきっと、こなたの顔が面白いからで……胸が熱くなるのはきっと……。
「……はぁ~」
変な言い訳はよそう、私はこなたが好きだ。超が付くほど大好きだ。思えばあれは一週間前……。
「はい、かがみん」「これは?」「やだなぁ、今日はバレンタインだよ? 女の子が好きな子にチョコをあげる日」「なっ……好きな子!?」「あはは☆ なに真に受けてんのさ。この間良いカカオが手に入ってね、ちょうど良い時期だし、試しに作ってみたんだよ。つかさにもあるよ~」「わ~い、ありがとうこなちゃん」
あれ以来、何故かこなたの事を意識し始める様になってしまった……。こなたが冗談で言ったって分かっているのに関わらずだ。
「はぁ~……」「お? どうしたんだ柊~、溜め息なんか付いちゃって。お前はオッサンか~」
日下部が横でうるさい。人の気も知らないで……。
「あんたには一生わからない悩みよ」「な、なんだよそれー! あやのー、柊が虐めるよー」「あなたはだあれ?」「ガーン」
少し落ち着こう。トイレにでも行ってすっきりしたい。
「おーい、柊ぃー! あやのの記憶が……って柊ぃー!?」
後ろで何か聞こえたが、無視する事にした。今は私の事で精一杯よ……。
*
この想い、伝えるべきか……でもそんなことしたら、こなたはどう思うだろうか? やっぱり冗談として見られちゃうのかな? そんな事を考えているときだった。
「痛っ!」
頭に何かが当たった。上から落ちて来た?
「ったく、なんなのよ……って」
その物体を見て、私は言葉を失った。それは私が小学生だった頃に見た覚えのある物、どうやっても絶対に手に入れる事は出来ない物だったからだ。
「これって……マスターボール?」
それは私が小学生の頃、夢中でやってたゲームに出てくるアイテムだ。 捕獲率100%で一回キリの幻のアイテム。その珍しさから、子供の頃は現実には無いということを知らなくて、よくお父さんに欲しい欲しいってお願いしてたっけ……。 それが今、私の目の前に落ちている。
「…………」
私はそれを拾う。捕獲率100%……。人間にも有効? いや、なに考えてるんだ私! そんな事したら犯罪だって!
「でも……」
もし、これでこなたを捕まえたら……こなたは一生私の物。変な悩みも無くなる……。こなたを一生愛せる。こなたと一生を過ごせる。誰にもこなたを盗られない。こなたこなたこなたこなたこなたこなたこなたこなた……。
気がついたら、私は走っていた。そしてたどり着いたのは3―B、こなたの居る教室。 私の勢いは止まらず、ガラッ、とドアを開ける。
「ん? おいもう授業始まるで、自分の教室に戻っとき」
私はずんずんと、こなたの前に立ちはだかる。
「コラ、柊! もうチャイム鳴った……」「黙りなさい」「す……すまん……」
相手が先生だろうと関係なかった。見なさい、私の一言で萎縮してるわ。今の私なら何だって出来る、そんな気がした。
「かがみ……? 息が荒いよ、どうしたの?」
愛おしいこなた……。もうすぐあんたは私の物よ。
「こなた」「はい!」
そんなに固くならなくても良いのに……。緊張してるのね♪
「放課後、体育館の裏に来なさい」「え、う……うん。わかったよ」「じゃ」
それだけ伝えると、私は教室を出た。それにしても、なんであんなに怯えてたのかしら?
放課後、こなたを待つこと1分32秒……遅いわね。33、34、35……。
「か、かがみ……待った?」「別に、今来たとこ」
こなたが物影からひょっこり顔を出し、訪ねてくる。あぁ、もうなんて可愛いのかしら!!
「あのさ、かがみ……私かがみに何かしたかな?」「何を勘違いしてるのか知らないけど、そういうのじゃないわよ」「え? じゃあ……」
だめ……もう我慢できない……! 私はポケットからマスターボールを取り出す。
「へ? なにそれ?」「こなた……ゲットよ」
こなたに向かって投げ付ける。ゴメンこなた、痛いのは最初だけだからぁ!!
「痛っ!」「よしっ!」
後はボールに入って……。
「なにすんだよ~、かがみ」「あれ?」
おかしいな、捕獲率100%の筈なのに……。
「って、これってもしかしてマスターボール? なんでこんな”おもちゃ”を」「へ? おもちゃ?」
おもちゃ……、おもちゃ!?
「ちょっと待ってかがみ、その反応……まさかこれをゲームと同じ物だと思ってない?」「な……なにを……」「だって、『こなたゲットよ』とか言って私に投げたよね」「そ…それは……」「かがみ?」「あ、あっはは! 私そろそろバイトに行かなきゃ! また明日!」「バイト!?」
私は全速力でその場から逃げる。さようなら私の初恋……。 あぁ~、明日からどんな顔して会えば良いのよ~!!
「……ここは」「あ、目を覚ましたよ」「大丈夫ですか? かがみさん」
保健室? 何で……。
「お姉ちゃん、廊下で倒れてたんだよ? 覚えてないの?」「廊下で……? はっ」
あの時……、頭に何か落ちて来て……。ということは、あのマスターボールを見つけた辺りから全部夢!? うあぁ、我ながらなんて変な夢を見てしまったんだ……。
「も~、心配かけないでよかがみ~ん」「こ、こなた!?」「え? そうだけど……」
私は咄嗟に顔を下に向ける。やばい、心臓の鼓動が早くなる……。
「え? どったのかがみ?」「ひゃ!」
いきなり覗き込まないでよ! 顔が近い……、あぁ~夢で積極的だった私はどこ行ったのよ!? 恥ずかしくて顔がまともに見れないなんて!
「なんか、かがみが凄い萌えキャラになってるんだけど」
ええい! 迷うな私! いつまでもうじうじしてるのは性に合わん! この雰囲気を逃したら次はないと思いなさい!!
「こなた!!」「うを!? なに?」「あの……ね……?」
後は想像にお任せします^^
「私たち完全に空気だね、ゆきちゃん」「良いんですよ、慣れてますから」
完!!
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