ソレを見てるはずなのに、ソレが何か認識できない。そんな漫画みたいなことを自分が体験するなんて、かがみは今の今まで思いもしなかった。 割れた窓から吹き込んでくる風と雪。その猛威にさらされた部屋の中は、ひどい有様だった。 その惨状の中、ベッドの上にソレはうつ伏せに寝かされていた。「つかさ!行っちゃダメだ!戻って!廊下に出て!ゆーちゃんも!」 こなたが騒いでいる。かがみには、どうしてここにいるはずのみゆきを放って廊下に出なければいけないのか、理解できなかった。「でも…でも、こなちゃん!ゆきちゃんが!ゆきちゃん、そこにいるのに!」 そう、アレはみゆきだ。着ている服がそうだから。夕食の時にこなたが大人っぽい服が似合うのが羨ましいと言っていた服だから。「いいから出て!アレじゃみゆきさんはもう…!」 あれ?と、かがみは自分の考えに自分で疑問符をつけた。どうしてわたしは服でみゆきを認識しているのだろう。 気付いてみれば、答えは簡単だった。
みゆきの首から上が無いからだ。
「み、みゆき…みゆき…よね?…なんの冗談…?」 かがみはみゆきに近づこうと、一歩踏み出した。しかし、そこで誰かにお腹の辺りを押さえられ、それ以上前へ進めなかった。「かがみも出て!それ以上行っちゃダメ!」 かがみが見下ろしてみると、こなたが必死に自分を押し返そうとしていた。「こなた…みゆきが…」「いいから出ろーっ!!」 かがみはこなたに思い切り突き飛ばされ、後ろ歩きで廊下まで行き、そこで尻餅をついた。周りには、同じように座り込んでいるつかさとゆたか。 最後に部屋から出てきたこなたがドアを閉め、刺さったままのマスターキーを回して鍵をかけた。 その様子を、かがみは惚けたように見ていた。
- 白雪は染まらない~推理編~ -
ドアに手をかけたまま、こなたがズルズルとその場に座り込む。「こ、こなちゃん…ゆきちゃんが…中に…早く出してあげないと、風邪引いちゃうよ…」 つかさが這うようにドアの前まで行き、こなたにすがり付いてそう言った。「ダメだよ、つかさ…ダメなんだ」 こなたが首を振って、それを拒絶する。「中で、何があったんだ…?」 様子のおかしい四人に、オーナーが恐る恐る聞いて来た。「…なかったんです」 かがみがポツリと呟く。「なかった?」「みゆきの…首が…なかった…」 一言一言区切って、自分の見てきたものを確認するようにかがみがそう言った。 トサッと何かが倒れるような音がした。かがみがそちらを見ると、ゆたかが床に倒れ付していた。
一階のリビングに戻ってきたかがみは、ソファーに座り天井を見上げていた。隣ではつかさがソファーの上で膝を抱えている。「なによこれ…なんなのよこれ…」 かがみが天井に向かい、ブツブツと同じ台詞を何度も繰りかえす。つかさも同じように何事かをブツブツと呟いていた。 ふと、かがみは階段から誰か降りてくるのに気がついた。「…こなた…ゆたかちゃんも」 こなたはゆっくりと階段を降りてきた。その横には青ざめた顔のゆたかもいた。そして、二人もソファーに座る。「ゆーちゃん、大丈夫?もうちょっと寝てたほうがいいんじゃない?」 こなたがゆたかを気遣ってそう言うと、ゆたかは首を振った。「…もう、大丈夫だと思う…それに、二階にいたくなくて…」「…そう」 顔色はとてもいいとは思えず、声は消え入りそうだ。それでも、あんなのと同じ二階にいるよりは、多少無理してでもここにいたいのだろう。 あんなの…かがみは友人だったものを、そう表現した自分に嫌気が指した。「…首狩鬼だ」 膝を抱えていたつかさが、急にハッキリした声でそう言った。「な、なに?急に…」 驚いたかがみがそう聞くと、つかさはかがみの体にすがり付いてきた。「首狩鬼だよ。ゆきちゃんが言ってたんだ。この辺りに、人の首を狩る鬼がいるって。昔からいるんだって…だから、ゆきちゃんも…ゆきちゃんも!」 声を荒げながら自分の身体を揺すってくるつかさに、かがみは何も言う事が出来なかった。「つかさ、落ち着いて…そんなのいないから」 つかさの後ろから、こなたが肩に手を置き諭すようにそう言った。「でも…こなちゃん…だったら、誰が…何がゆきちゃんを…」「それを見つけるのは警察の仕事だよ。オーナーさんが警察に連絡してくれてるはずだから、後は待ってればいいよ」 こなたの言葉を聞いたつかさは、かがみの胸に顔を埋めて泣き始めた。そのつかさの頭を撫でながら、かがみはこなたの方を向いた。「さすがと言うか、あんたは冷静ね…」 あの部屋に入った時、パニックになりそうだった全員を、こなたは一人で部屋の外に押し出した。あのまま部屋にいれば、本当に頭がどうかなっていたかもしれない。迅速に対応したこなたに、かがみは感謝したいくらいだった。 「いやー、そうでもないよ」 こなたはかがみに、自分の右手を差し出した。よく見てみると、それは細かく震えていた。「やせ我慢だよ…怖くて震えが止まらないんだ」「それでも…なんにも出来ないわたしよりましよ。我慢できるってのも、強さだと思うし」 かがみがそう言うと、こなたは照れくさそうに鼻の頭をかいた。「…かがみが普通にわたし褒めるのって、珍しいね」「そう?…そうかもね」 かがみはそっと溜息をついた。つかさも落ち着いてきたのか、泣き声は聞こえなくなっていた。
なぜか防寒具を着こんだオーナーが部屋から出てきたのは、それから少しした時だった。「オーナーさん、警察に連絡はつきました?…っていうかその服は?」 かがみがそう聞くと、オーナーは心底困ったような顔をした。「いや、それが…電話が通じないんだ」「…え?」「どうもこの吹雪で電話線が切れたみたいでね…今からそれを確認に行くんだよ」「そんな…」 かがみは絶句した。警察に連絡がつかない。だとすると、この吹雪がやむまで自分たちは、みゆきを殺した人間の近くで過ごさなければならないのだ。 そうだ、自分は何を考えていたんだ。あの状況が自殺や事故なんかな訳がない。みゆきは誰かに殺されてて、その犯人は近くにいる。この吹雪で、どこかに逃げられるとは思えないからだ。 かがみは玄関から出て行くオーナーを見送りながら、絶望にも似た感覚を味わっていた。「いやだ…いやだよ…こんなのやだ…帰りたいよ…お家に帰してよー…」 つかさが再び泣き出した。かがみは慌てて、その身体を強く抱きしめた。 わたしの妹を泣かせているのは誰だ? かがみは、心の中から熱い何かが込み上げてくるのを感じた。「…み、みなみちゃん…そうだ!みなみちゃんは!?みなみちゃんは戻ってないの!?」 突然、ゆたかが取り乱し始めた。そういえば、ボイラー施設を見に行ったはずのみなみが戻っていない。かがみも今の今までその事を忘れていた。「こなたお姉ちゃん!みなみちゃんを探しに行かないと…みなみちゃんも高良先輩みたいに!」「ゆーちゃん落ち着いて!今は外に出られないよ!」 玄関から出ていこうとするゆたかを、こなたが必死で止めている。 わたしの友人を困らせているのは誰だ? 心の熱さが増していく。 こんな状況を作り上げたのは誰だ?みゆきを殺したのは誰だ?
わたしの大切な人たちを、こんな目に合わせているのは誰だ?
心の熱さとは裏腹に、頭の中が恐ろしいくらい冷えていく。 かがみは、自分の腕の中にいるつかさをもう一度しっかり抱きしめ、その耳元に囁いた。「大丈夫よ、つかさ。わたしがなんとかするから」「…え」 そして、今度はなんとかゆたかをなだめたこなたに顔を向ける。「こなた、手を貸して。わたし達で犯人を見つけるわよ」「かがみ、それ本気…?」「もちろんよ」 かがみはこなたに向かい、力強く頷いた。
かがみとこなたは、ソファーに座っているつかさとゆたかから離れた位置…オーナーの部屋の前に立っていた。「で、わたしはどうすればいいの?」 こなたが不安そうにかがみにそう聞いた。「こなたにはわたしに見えないものが見えるはずよ。それを見逃さないで欲しいの」「そ、そんなことできるかな…」「できるわよ。あんたスキーで上手い人のを真似てたらしいじゃない。いくらあんたの運動神経がいいからって、あんなこと本当によく見えてないとできないわよ。それに、あんたは勘もいいしね」 こなたは少し考え込んだ後、かがみに向かい頷いて見せた。「わかったよ。つまり、身体は子供、心は大人な名探偵になれと」「…いや、あんたは心も子供でしょうが。ってかそこは頭脳だろ。あと、あんたはどっちかってーと助手だ」 思わず突っ込んでしまってから、かがみは気負っていた心が少し軽くなるのを感じていた。こなたの方を見ると、少しぎこちないながらも、いつもの人を食った笑顔を見せようとしていた。 かがみは、心の中でこなたに向かいありがとうと呟き、こんな友人を持てたことを神に感謝した。「それじゃ早速だけど、こなたはどう思う?」「どうって、何が?」「みゆきが殺されてて、みなみちゃんがまだ戻ってないって事。そして、あの二人が不仲だったって事」「…かがみ…まさか、みなみちゃんがって?」「可能性の一つよ。とりあえずオーナーさんが戻ったら、少し話を聞いてみましょう」
二人がしばらく待っていると、玄関が開きオーナーが戻ってきた。防寒具についた雪を払っている最中に、部屋の前にいるかがみ達に気がつき、防寒具をおいてやってきた。 「どうしたんだい?」「少し、お話を伺いたくて…みなみちゃんがまだ戻っていないのは知ってますか?」「え…いや…そ、そういえば…」 オーナーはかがみの言葉に動揺を見せた。「しかし…この吹雪だと探すのは難しいな…施設を見に行ってくれてるのだから、中にいてくれればいいんだけど…」「みなみちゃんは『こう言う事は初めてじゃない』って言ってましたけど、今までに何度か?」「ああ、みなみちゃんは雪に強いみたいだからね。みゆきちゃんの知り合いだし、頼みやすかったんだ…いや、でも…みなみちゃんから見に行くって言い出したのは初めてだな…」 「なるほど…」 かがみは顎に手を当てて、少し考え込んだ。「とにかく、明日の朝には吹雪も収まるだろうから、みなみちゃんを探すのも、警察に連絡を入れるのもそれからになると思うよ」「え、何時収まるかってわかるの?」 オーナーの言葉に、こなたが驚いてそう聞いた。「ああ、この山にも長く住んでるからね。二日くらい先の天気なら、大体分かるよ」「へー凄いですね…」 感心するこなたの横で、考え込んでいたかがみが不意に顔を上げた。「オーナーさん。首狩鬼って知ってますか?この辺りの伝承かなんかだと思うんですけど」「え?…いや、聞いたことないな」「では、首を落とせるような得物に心当たりは?」「…そういえば、ボイラー施設に薪を使ってた頃の斧があったかな…」「そうですか…ありがとうございました。こなた、いくわよ」 そう言ってかがみは、こなたの手を引いてつかさ達の方へと歩き出した。
「次はどうするの?」 ソファーに戻ったこなたは、隣のかがみにそう聞いた。「うん…二階の、現場を見に行こうと思うの」 顎に手を当てて何かを考えながら、かがみがそう答える。「…え…や、やだ…」 かがみの言葉につかさが動揺を見せた。「お姉ちゃん、ダメだよ…殺されちゃうよ…」 すがり付いて止めようとするつかさの頭に、かがみは苦笑しながら手を置く。「大丈夫よ。心配しないで。いざって時は、こなたもいるんだし」「…かがみさんや。それはわたしを人身御供に差し出す腹ですか…」「ちがうちがう、あんたなら守ってくれるって思ってるのよ」 かがみはジト目で見つめてくるこなたに、あわてて手を振って否定した。「こなちゃん…お姉ちゃんをお願い…」「なんか頼られてるなー…うん、まあできる限りのことはするけど」 こなたはつかさに照れくさそうに答えた。「それじゃ、行きましょうか」 かがみは立ち上がり、階段に向かった。その途中でゆたかの方を見ると、ゆたかは動く気力もなくしているのか、ソファーに寝転んだままだった。「つかさ。ゆたかちゃんを見ててあげてね」 階段に足をかけながら、かがみはつかさに向かいそう声をかけ、階段を登り始めた。
「さて…ここね」 かがみは、みゆきの部屋のドアノブに手をかけながら呟いた。中にあるのがなんなのか、分かってはいても躊躇してしまう。 かがみとこなたの二人は一旦自分の部屋に戻り、私服の上からスキーウェアを着こんでいた。部屋の中には恐らく吹雪いているだろうから、防寒具代わりだ。「開けるわよ…ってあれ?」 かがみはドアを開けようとして、鍵がかかっていることに気がついた。「あー、そういえばこなたが閉めてたっけ…しょうがない、オーナーさんに鍵借りてくるか」 かがみがドアを離れようとすると、こなたが横から鍵穴に鍵を差し込んで、ロックを外した。「…あんた何時の間に」「いやー、鍵閉めた後ずっと自分で持ってたみたいで…」 頭をかきながらそう言うこなたに苦笑して見せた後、かがみはドアを開け中に入った…が、一歩踏み込んだところで慌てて廊下に戻りドアを閉めた。「ど、どしたの、かがみ?」「床がビショビショよ。スリッパじゃ入れないわ」 しょうがなく二人は、一旦下に戻りブーツを取ってくることにした。
「吹雪、少しましになってるわね。これならオーナーさんの言ってる通り、朝には止むかも…」「で、でも寒いよ…」 死体の乗っているベッドを避けて、部屋を見渡すかがみ。こなたは身体を震わせながらかがみにへばりついていた。「で、かがみ。何を探せばいいの?」「犯人がこの部屋に入った手段よ。わたし達がいたから階段からは上がれないし、この部屋には鍵がかかっていた。とすると…」 かがみは部屋の反対側。割れた窓の方を見た。「ベランダから…しかないわね」
かがみは、できるだけベッドの方を見ないように窓へと向かった。まるで水溜りのような床がビチャビチャと音を立てる。「雪って言うより、雨が入ってきたみたいだね…」 相変わらず寒そうにかがみにへばりついているこなたが、床を見ながらそう呟いた。そして何かに気がつき、かがみから離れて床から何かを拾った。「どうしたの、こなた?」「かがみ、これ」 こなたが差し出したのはガラスだった。「割れた窓のかしら」「うん。ガラス、全部部屋の中に落ちてる」「そう…ってことは、窓は外から割られた…やっぱりベランダからか…あれ?でも…」 何かが引っかかる。あの時、一階で自分たちが聞いたのは、このガラスが割れる音…しかし…。「かがみ、どうしたの?」「え、あ、いや、ちょっとね…」 我に返ったかがみは、割れた窓をくぐりベランダへと出た。
ベランダの手すりから下を覗き込む。高さはそれほどでもないが、ベランダに飛びついて登るには少々高い。少し離れた位置にボイラー施設が見えた。「ちょっとした密室ね…」 かがみはそう呟くと、他に何かないかベランダを見渡した。そして、こなたが端の方でしゃがみ込んでるのに気がついた。「こなた、またなにか見つけたの?」「うん、これ」 かがみがこなたが指差した箇所を見ると、一本のロープがベランダの端の方に括り付けられ、下へと垂らされていた。「…いやまあ」 かがみが呆れたようにそう呟いた。「密室がこんな単純に覆されると、なんかがっくりするわね…」「いや、推理小説じゃないんだから、こんなもんかと…」 なぜか肩を落とすかがみを、こなたがなだめる。「この位置、中からは見えないわね…何時からあったにしても、部屋を使ってたみゆきやつかさは気がついてない可能性が高いわね」 気を取り直したかがみが、ロープの位置から部屋の方を見ながらそう言った。 かがみがロープの強度などを確かめていると、同じようにロープを見ていたこなたが立ち上がり、突然ベランダの柵を乗り越え、外に身を躍らせた。「ちょっ!こなた!」 かがみは、慌てて柵にもたれかかり下を見た。飛び降りたこなたが、ロープを伝って登ってくるのが見えた。「よいしょっと」 呑気な声を上げながら、こなたがベランダの柵を乗り越えてくる。「ちょっと!なにやってんのよ!びっくりするじゃない!」 かがみが声を荒げて非難すると、こなたは申し訳なさそうに頭をかいた。「いやーこのロープ、ホントに登れるのかなって試してみようって…」「飛び降りることないじゃない!危ないわよ!怪我でもしたらどうするの!?」「あーソレは大丈夫。下が雪だし、思ったより高くなかったよ。これならつかさやゆーちゃんでも、飛び降りるくらいならできるんじゃないかな」「それなら言ってからにしてよ…」 かがみは安堵の溜息をついて、身体を震わせた。「ちょっと冷えてきたわね。一旦中に入りましょう」 こなたが頷くのを見て、かがみはまた部屋を横切りドアへと向かった。
ドアを後ろ手に閉めて、温かい空気にホッとする。「ねえ、こなた。何か他に…」 かがみはこなたに話しかけようとして、誰もいないことに気がついた。「え…ちょっと…こなた?………こなたっ!」 ここまで戻ってくるまでに、何かあったのか。かがみは慌ててもう一度ドアを開けた。「うわーっ!さっぶーっ!!」 それと同時にこなたが部屋の中から飛び出してきて、かがみの胸に飛び込んできた。「うおー…あったかやわらけー…」 かがみはゆっくりとドアを閉めた。「…なにやってたの?」「え?いや…ちょっと出る前に見ときたいものがあって…」「だからそういうのは言ってからにしなさいって…本気で心配したのよ?」「ごめんごめん…それにしても」「なに?」「…もうちょい薄着のときにこうしたかった」 かがみの胸に顔を埋めたままのこながそう言うと、かがみは思い切り呆れたように溜息をついた。「エロ親父みたいなこと言ってないで、離れろ」 そして、こなたの額を鷲づかみにして引き剥がした。
「で、何見てきたの?」 かがみがそう聞くと、こなたは少し困った顔をして頬をかいた。「えーっと…実は死体をちょっと…」「…え」 こなたの答えに、かがみが絶句する。「あーでも、さすがに怖くてちゃんと見れなかったよ。これでちょっと手の辺りをつついてみたくらいで…」 そう言ってこなたがポケットから取り出したのは、DSで使うタッチペンだった。「いや、それでもよくやるわねとしか…で、どうだったの?」「なんか…硬かったよ」「硬い?」「うん。コチコチだった。凍ってたんだと思う。吹雪の中に置き去りだったし」「…こなた。ベッドの上はどうだった?」「ベッド?床と同じでビチャビチャだったかな…」「そう…」 かがみは顎に手を当てて考え込み始めた。「あ、それとかがみ。ちょっと自信ないんだけど…」「なに?」「アレはホントにみゆきさんなのかなって…」「え…」 かがみは驚いて、こなたの顔を見た。「みゆきじゃないって、どういうこと?」「う、うん…よく見てないけど、服が余ってる気がしたんだ。体格がみゆきさんより少し小さいんだじゃないかな…ほら、推理物でさ、死体を違う人に見せかけるために首を落としたりするじゃない。なんか、そんな気がして…」 こなたの言葉に、かがみがまた考え込み始める。「…でも…いや…もしかして…」 そして、かがみは顔を上げた。「こなた。ゆたかちゃんのスキーウェア持ってきて。わたしは予備のをつかさに貸すから」「え?外出るの?」「ええ、大筋は分かったわ。この事件にケリつけるわよ」「えーっと…何かヒントは?」「そうね…この事件のキーワードは『不自然』と『反則』ってところかしら」「う、うーん…」 こなたは首を捻って考えたが、答えは出てこなかった。「まあ、後でちゃんと説明するわ…場所は…」 かがみは、今出てきたみゆきの部屋を見た。「ボイラー施設よ」
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