「…ここみたいだね」 「こなちゃん…やっぱりやめようよ」 「お姉ちゃん…やっぱり私も…やめたいよ」 「つかさ、ノリノリの奴がそこにいるから覚悟したほうがいいみたいよ」 「ゆたか…大丈夫?無理しなくていいよ」 「ひより、目がクサッてマス」 「…おっと」 「みさちゃん、さっきから何もしゃべってないけど…怖いの?」 「そ、そんなわけねーじゃん」 「それにしても……まさにお化け屋敷という感じの建物ですね」
学園祭でチアをやったメンバーが遊園地の中にあるお化け屋敷の前に集まっている。 数日前にゆたかの両親がゆたかに遊園地のチケットをくれたのだ。しかも遊園地の中にある有料のお化け屋敷のチケット付きで。 当初ゆたかはお化け屋敷のチケットは使わないでおこうと思っていたのだが、運悪くこなたの目にチケットがとまり、 こうしてお化け屋敷の前に皆で集まっているのである。 ちなみにこのお化け屋敷は最近できたばかりで、その上かなり怖いと評判があるお化け屋敷である。
「にしてもよくこんなにチケットもらったものね」 「え、ええ。お化け屋敷は苦手なんですけどね」
皆より少し離れた場所でかがみとゆたかが話している。ゆたかの横にはみなみが心配そうにゆたかを見つめている。
「…ひより、メがコワいデス」 「……」 「…マッタクキこえてないようデスネ」
パティとひよりは相変わらずである。
「峰岸さんは最近どのようなお菓子をお作りになるのですか?」 「う~ん、最近はクッキーが多いかな」 「あやののクッキーは超うめーぜ」
パティとひよりの後ろであやのとみさお、そしてみゆきが談笑している。 こなたがふと横を見るとつかさが腕に抱きついている。少し震えているようだ。 これらの様子を見て、こなたはひらめいた。
「みんなー、集まって!」
「…くじ?」 「そうだよ、くじ引いてペアになった人同士がお化け屋敷に入るんだよ」
かがみが怪訝そうにこなたに尋ねた。
「どうしてっスか?」 「なんか面白そうじゃん」
こなたは能天気にひよりの質問に答えた。
「いいじゃん、いいじゃん、面白そうだし。私はちびっこに賛成だぜ」 「私はお化け屋敷が嫌なんだけど…」
つかさがおどおどしながら言った。
「つかさ、いい加減覚悟を決めなさい」
かがみの一言でつかさはうつむいたまま何も言わなくなった。どうやらあきらめたようだ。 その横ではゆたかがつかさと同じく震えている。
「…ゆたか…大丈夫?無理しないで」 「だ、大丈夫だよ…、それにチケットを貰って皆を巻き込んだのは私なんだし…がんばらなくちゃ」
みなみは心配そうにゆたかの顔を覗き込んだ。
「じゃ、くじ引くよ~」
こなたは皆の前にくじを差し出した。
「それじゃ引いて…!」 「あの、少し待ってくれませんか?」
みなみはこなたの号令と共に声をあげた。
「どうしたのみなみちゃん?」
こなたがみなみに尋ねた。
「私…ゆたかが心配なので一緒に行ってもいいですか?」
こなたは少し悩んだが
「いいよ」
ゆたかのためを思ってかあっさり認めた。
「おいおいちびっこ、それはずるいだ…ろ…」
後ろでみさおがとやかく言ったが、みなみのまさに突き刺さるような視線の前に言葉を失った。
「ひより、よだれがデでマスヨ」 「…あ、危ない危ない」
今日もひよりは本能に忠実なようです。
この後みなみとゆたか以外がくじを引き、ペアと入る順番が決定した。
つかさ&パティ
こなた&あやの
みゆき&みさお
ひより&かがみ
ちなみにみなみとゆたかは皆がくじを引いている間に先にお化け屋敷に突入した。 二人が入る直前にひよりがゆたかに何か話していた。
sideみなみ&ゆたか
お化け屋敷内に入ったみなみはゆたかと手をつないで歩いている。これはゆたかを安心させる為か、もしくは自分が怖い為か…
「ゆたか、大丈夫?」 「みなみちゃんが一緒だから怖くないよ」
暗闇の中でゆたかの笑顔がまぶしく光った。ちなみにみなみはこの質問を五回は繰り返している。 二人はまず廊下を歩いている。周りは障子で囲まれていて明らかに何か出てきそうな雰囲気である。 不気味ななBGMが小さな音量で流れ、お化け屋敷さをかもし出している。 ふいにゆたかが「きゃっ」という声と共につまずいた。
「ひゃあ!」
可愛らしい声と共にみなみは驚いた、と同時に恥ずかしさのあまり顔が赤くなった。
「ゆ、ゆたか、大丈夫?」
恥ずかしさをごまかす為にみなみはゆたかに聞いた。
「少しつまずいただけだよ」
みなみはさっきの情けない声がゆたかに聞かれていなくて少しホッとした。
「それにしてもみなみちゃん、さっきの声可愛らしかったよ」
…前言撤回。 と二人が話していたそのとき障子から目玉のような物が飛びだしてきた。 まさに壁に耳あり障子に目ありである。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
二人の大きな悲鳴が屋敷の中をほとばしった。
sideお化け屋敷入場口前
「…すごい悲鳴っすね…ってかがみさん、顔色少し悪いっすよ」 「そ、そんなことないわよ」
かがみの声が少し上ずっていたのをこなたは聞き逃さなかった。
「かがみ~怖いなら怖いってはっきり言えば~」 「だから怖くないって言ってるでしょ」
いつも通りにこなたがかがみをおちょくっている。
「お~、柊~、びびってんのか~?」
こなたとかがみの会話を聞いたみさおが会話に割り込んできた。
「びびってない!」 「ほんとか~、柊~?」
みさおが嫌みったらしく聞いてくる。かがみは完全にみさおにおちょくられている。
「かがみ、怖くないなら足の震えなんとかしたら~?」 「おいおい、思いっきりびびってんじゃねえか。足が震えるってびびりすぎだろ。」
こなたとみさおのダブルパンチにかがみの怒りが爆発した。 こなたとみさおはお化け屋敷で悲鳴をあげる前にかがみによって悲鳴をあげさせられた。 その向こうの方でひよりが二人に手を合わせていた。
「次の方どうぞ~」
ふいにこなた達は受付の人に声がかけられた。かがみ肩をピクッと上げた。横ではつかさが不安そうに屋敷の中を覗いている。
sideつかさ&パティ
「ダイジョウブですカ?キをしっかりモつデス!」 「う~」
入ったそうそうつかさはパティの後ろに顔を押し付け耳を塞ぎ、もはや何も聞かざる、見ざるの体制をとっていたが、 最初の障子のエリアで驚いたパティに驚いて、もはや半泣き状態である。 今もつかさはパティの後ろに顔をぴったりとつけている。まるで自分が幽霊のようである。
二人はようやく障子の廊下のエリアを抜け、二人はエレベーターの前に来た。 薄暗いせいか、かなり不気味な様子で二人の前にそびえたっている。
「…これに乗るの?」 「…そのようデスネ」
パティはおもむろにエレベーターのボタンを押した。 すると目の前の扉が不気味な音と共にゆっくりと開いていく、まるで二人を待っていたかのように。
「パティちゃんは勇気があるんだね」 「それほでもないでス」
パティは笑顔で答えた。 そして二人はエレベーターに乗り込んだ。エレベーターには一階と二階のボタンしかなかった。パティは二階のボタンを押した。 エレベーターの中で何かが出てくることはないだろうと思い、つかさは安心したのかパティの背中から顔を離した。
「ツカサもスコしナれてきたようですネ」 「えへへ…」
つかさが少し照れ笑いを浮かべた。 その時だった
ガタン!!
音共にエレベーターが大きく揺れた。 油断していたつかさは叫び声を上げ頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。涙腺も崩壊してしまったようだ。 一方パティは全く動揺していない。そればかりか少し楽しんでいるようにも見える。
「うええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
もはやつかさは続投不可能のようだ。恐らく立ち上がることさえも出来ないだろう。 これにはパティも珍しく少しおどおどしている。
「ツカサ!ツカサ!ダイジョウブデスカ?」 「ううううううううううううううううう」 「タてますカ?」 「ううううううううううううううううう」 「……」
泣き止む様子は微塵も感じられない。 もはやこうなってはどうしようもない。パティは係員を呼ぼうとエレベーターの非常停止ボタンを押してみた。 するとスピーカーから声が聞こえた。
「…出て行け…出て行け…今すぐここから…でていけええええええええええええええええええ!」 「オオッ!」
これにはパティも少しばかり驚いた。どうやらボタンを押すとこの声が再生されるようになっているようだ。 つかさは耳を塞がず頭を抱えていたので、さっきの声がダイジェストに耳に入った。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
さっきのみさお並みに空気の読めないナレーションだとパティは思った。 すると、つかさの上げた叫び声と同時にエレベーターのドアの反対側の壁に貞子の様な女性の映像が映し出された。 パティは一瞬小さな悲鳴を口から漏らし、たじろいだ。 しかし目を閉じていても光は感じるので、つかさの叫び声と泣き声がこれでもかと言うほど大きくなった。 もはや何でも怖がる様な状態である。 エレベーターの密室状態もあってか、もはやこの泣き声はパティにとっては拷問状態だった。
「つかささん、大丈夫でしょうか…」 「確かに心配ね」
みゆきとかがみが心配そうに話している。 ちなみに先程かがみから怒りの鉄拳を貰ったこなたはあやのと共にお化け屋敷に先程入って行った。 みさおはかがみが怖いのか、かがみから少し距離をとったところでひよりと何やら話している。 かがみはこの二人の会話が少し気なった。 (もし日下部に変なこと吹き込んだら…容赦しないわよ田村さん…。ただでさえオタクはこなた一人で十分手を焼いてるんだから)
「…で、そのツンデレってのが柊なのか~」 「そっス、さっきは柊先輩怒ってましたけど、その時はツン状態なだけで後でしっかりとデレるはずッス」
かがみの第六感は半分的中していた。
sideこなた&あやの
「峰岸さんってこういうの結構平気なんだね」「泉ちゃんもあまり驚いてなかった様に見えたけど」「まあね~」
お化け屋敷内の二人は廊下を進み、突き当たりの側にあったエレベーターに乗り込んだ。 普段からあまり話したことのない二人なのであまり会話はない。そもそも共通する話題がない。 するといきなりエレベーターが大きく揺れ止まった。二人は少し驚いた。
「泉ちゃん、大丈夫?」 「一応運動神経はまだマシな方だからなんてことないよ」 「へ~、そうなんだ。確か50メートル走のタイム、みさちゃんといい勝負だったよね」 「まあみさきちに負けてるのは少し悔しいけど」 「それでもほとんど同じくらい早いじゃない。何か運動とかしてるの?」 「別にこれといってやってな…!」
こなたが言い終わるより前に、いきなりエレベーターのドアと反対の壁に貞子の様な女性の映像が映った。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
これには二人仲良く絶叫した。
するとエレベーターのドアが開いた。 二人はさっきの恐怖もあってか恐る恐るエレベーターから足を踏み出した。 どうやら再び廊下の様だ。しかも結構長いく幅もかなりあり、走っても大丈夫なぐらいだった。 さらに暗いせいもあってか突き当りが全く見えない。
「…結構雰囲気出てきたね」 「泉ちゃん…少し震えてるけど…大丈夫?」 「…峰岸さんこそ震えてるよ」
二人とも体をくっつけて一歩一歩慎重に進んでいる。 この状態をひよりが見れば「こな×あやか~、そんな組み合わせも悪くはないっスね」とでも言いそうだ。 とそこにいきなり前から物音が聞こえた。何か鈍い音…例えるなら鈍器で人を殴打した様な、不気味な音が聞こえた。 緊張状態にあったせいかその音が聞こえたのと同時に「ひっ!」という短い悲鳴を洩らし、お互いの手を強く握った。 こなたとあやのは今までよりもさらに慎重に前進した。 と、前ばかり気にしていたので、二人は後ろから追ってくる恐ろしい形相の人のようなものに気づかなかった。 何かが近づくような物音に気づいた二人が後ろを見るといきなり何かがこちらに歩いてくるのに気づいた。 二人がこちらに気づいたと思ったゾンビ役の人は音のような声を上げだした。 二人は即座に回れ右、そして悲鳴と共にダッシュした。二人の叫び声はつかさの泣き声並みの音量で屋敷内に響き渡った。
sideゆたか&みなみ
「大丈夫?ゆたか…」 「もう平気だよ、ごめんね迷惑かけちゃって」
みなみとゆたかは園内の保健センターにいた。 なんとかお化け屋敷を抜けたがゆたかが体調を崩してしまったのでみなみが連れて行ったのだった。 しかし、ゆたかを心配するみなみもお化け屋敷から出て来た直後は足が震えてまともに立っているのがやっとの状態だった。
「…そういえば皆に連絡したの?」 「…あ…」 「早くしなくちゃ、皆私達を探してるかも」 「ご、ごめん、すぐにするから横になって」 「あ、うん、ごめんね」
みなみは携帯をポケットから取り出し開いた。
「そういえばチケットって誰から貰ったの?」
みなみはメールをうちながらゆたかに尋ねた。 「私のお母さんがたくさん貰っちゃったからみんなで行ってきなさいってくれたの。そうだ、まだチケット余ってるからみなみちゃんいる?」 「…何枚?」 「え~と…たぶん9か10枚かな」
明らかに貰いすぎだろうとみなみは思った。 とりあえずチケットの譲渡の件は断った。 みなみ自身もうあのお化け屋敷に入りたいなどという気持ちは体のどこを探しても到底見つかることがないと思った。 それにそのチケットを何かの拍子にみゆきの母であるゆかりに見つかり、また行くようなことになるかもしれないとも思ったからだ。
「じゃあ、そろそろもどろっか」 「もう少しゆっくりした方が…」 「もう大丈夫だよ。ありがとう、みなみちゃん」
二人は保健センターをあとにした。
「…とうとう私達の番だな!がんばろうぜ!」 「……」
みさおの言葉にみゆきは無言である、そもそも耳に届いていないようだ。
「おい眼鏡ちゃん、無視することねーだろ、お前もツン状態なのか?」 「……」
またしても無言。みさおはみゆきの肩をポンと叩いた。
「ヒィ!」
みゆきが小さな悲鳴を上げた。どうやら相当怖がっているようだ。
「な、なな、なんですか?」 「…いや、大分怖いみてーだな。とにかく頑張ろうぜ!」 「…はい…宜しくお願いします」
(日下部に心を読まれるとはね……まあ今のみゆきは誰が見ても怖がってるようにしか見えなわね) かがみは二人の会話を聞いてそう思った。
「まあ、とにかく二人ともがんばれっ!?」
かがみが言い終わるのと同時に後ろから誰かに抱きつかれた。
「ちょ、なによいきなり!ていうか誰…ってつかさ!?何してるのよ!?」 「おね~ちゃ~ん、う、うええええええええええええええええええええええええええええ」 つかさがいきなりかがみ後ろから抱きついた、その上今度は大声で泣き出した。
「つかさ、どうしたの?落ち着いて」 「つかささん、落ち着いて下さい」
かがみとみゆきが二人がかりでなだめるもいっこうに効果は無い。
「おいおい、なに泣いてんだよ、妹ちゃ…ん…」
笑いながら言った日下部に対してかがみとみゆきの二人の視線が射抜いた。どこまでもKYである。
「そういえばパティは…?」
ひよりはパティのことを思い出して辺りをきょろきょろ見回した。すると人ごみの中から金髪の女の子がこっちに来るのを見つけた。 かなり慌てている様子である。
「パティ、どうしたの…そんなに慌てて」
パティは息も絶え絶えに答えた。
「あ、あのツカサをシりませんカ?」 「つかさ先輩ならあっちで泣いてるよ」 「……よかったデス、てっきりマイゴになったかとオモいましタ」 「すみませんが、何があったのか詳しく聞かせてもらえないでしょうか?」
みゆきがつかさをかがみに頼み、パティに聞いた。
「ジツは、トチュウでツカサがナきダしてしまって、ススめなくなったのでカカりのヒトにトチュウでソトにダしてもらったんでス。 そしたらいきなりツカサがすごいハヤさでハシりだしてどこかにイってしまってしまってミウシナってしまったのでス」 「…大変でしたね」
みゆきは今の話を聞いて、鳥の帰巣本能を思い出した。
「…YES。ユウレイよりもツカサのホウがコワかったでス」
みゆきがパティに同情している。後ろではみさおが必死になって笑いを我慢していた。
「…あの…早く入っていただけませんか?」
受付の人が困った風に声をかけた。
・ ・ ・
「…残りは私達だけになったわね」 「…そっすね」
みゆきとみさおが屋敷に入った今、残るペアはかがみとひよりだけである。
「…怖いの?」 「…その通りっス」
お化け屋敷の前で最後のペアであるかがみとひよりが話している。 ちなみにつかさは落ち着きを取り戻し、パティに何度も謝っている。
「ごめんね、パティちゃん、私のせいで途中で止めることになっちゃって」 「ダイジョウブ、ダイジョウブ!キにするヒツヨウありませんヨ」 「本当にごめんね」
つかさは今度、お詫びにパティにクッキーを焼いてあげようと思った。
「…あ、そうそう忘れるところだった」
かがみがふいに言った。
「さっきあんたと日下部が話した後、日下部がツン状態とか言ってたけど……一体…何を話してたのかな?」
さっき日下部に睨んだ時と同じぐらい凄みのある視線でかがみはひよりを見つめている。ひよりは蛇に睨まれたカエル同様に固まった。
「…え~…と…」
ひよりはその迫力に完全に降伏寸前の様子である。
「素直に言えば許してあげなくもないわよ」
ひより降伏。
「あの……日下部さんが柊は凶暴って言ってたから……それは柊先輩がツンデレだからって…」 「…なるほど。後で日下部には弁解が必要のようね」 「…はは…そうっすね」 「あんたにはお仕置きが必要のようだけどね…」 「えっ!」
かがみの右手がグーになった。ひよりは恐怖で体が震えだした。
「お姉ちゃん、駄目だよ!落ち着いて!」 「カガミ!おちつくでス!まずはムチをサガさないと!」
さすがのかがみも二人?から必死に止められ鉄拳制裁を諦めた。
「田村さーん!パトリシアさーん!」
ふと後ろからかわいらしい声が聞こえた。みんなが一斉に声の方へ振り向いた。
「ゆたかちゃん」 「ユタカ!」 「小早川さん」 「みなみちゃん」
走ってきたのはゆたかとみなみだった。少し無理をしたのかゆたかは息が切れてしまっている。
「あんまり無理しないほうがいい」 「平気だよ、みなみちゃん」
みなみがゆたかを心配している。
「あれ?出口で待ってるんじゃないの?」
かがみが尋ねた。 くじを引く前にこなたがお化け屋敷を抜けた後の集合場所をお化け屋敷の出口にしようと言っていたのだった。 「…実はゆたかが体調を崩してしまって、さっきまで園内の保健センターにいたんです。 それでゆたかの具合がよくなったのでとりあえず戻ってきました」 「じゃあ何で出口じゃなくて入り口に来たのよ?」
かがみが何か理由でもあるの?という感じで二人に聞いた。
「あ、確かにそうしたほうが…」 「…よかったかもしれませんね」
かがみは小さく「やれやれ」とつぶやいた。
「ユタカ、ダイジョウブですカ?」 「うん、もう平気。心配してくれてありがとう」
ふとかがみが疑問に思った。
「じゃあ、今出口にいるのってこなたと峰岸だけなんじゃ…」 「あ……」
みなみとゆたかの声が重なった。
「……誰もいないね……」 「……そうみたいね……」
無事お化け屋敷を切り抜けたこなたとあやのは集合場所であるお化け屋敷の出口にいた。 絶叫のしすぎで声が少し枯れてしまっている。二人の手はお化け屋敷から出た後でもかなり汗ばんでいた。 二人の目の前をむなしく一陣の風が吹き抜けていった。 本来なら先にお化け屋敷に入ったみなみ、ゆたか、つかさ、パティがいるはずだが、見渡す限り四人の内の一人も見つからない。
「…どうしよう峰岸さん」 「そうね…、皆どこかに行ってるだけかもしれないし……とりあえずここで皆を待ちましょう」 「入り口戻ったほうがいいんじゃない?」 「…でも入り口に戻るにはこっちからずっと回らないと行けないし…」
あやのは園内の地図を取り出しこなたに説明した。みゆきみたいに用意がいいなとこなたは思った。
「確かに結構遠いね…、じゃあここで待つしかないね」 「そうね」
二人は側にあったベンチに座って話し始めた。
「…峰岸さん、ツンデレって知ってる?」
sideみゆき&みさお
「な、なんでもいいからしゃべってくれよう…」 「す、すいません…えっと、え~と…いったい何を話せば…」 「なななんか元気の出る感じのを一つ」 「…そ、そういわれましても…」
みさおとみゆきがエレベーターから出てきた。二人とも今まで味わった恐怖のせいか足取りも遅く、体が恐怖で震えている。 最初の障子の廊下のエリアまでは比較的みさおはまだ元気であったが、障子から不気味な目が出てきた時点でみさおの元気は五割になり、 エレベーターの中で残りの五割をほぼ失った。 元気だけがとりえのみさおだが今は全く元気が無い。元気というとりえを失った今のみさおには文字通り何のとりえも無い状態である。 するといきなり前方から何か鈍い音が聞こえた。必然的に二人の体がピクッと反応する。 二人は特に前を意識してゆっくりと進みだした。 これがさっきの音の狙いであった。つまり前方を意識させ、後ろからいきなり驚かすということだ。 今みゆきとみさおの後ろからいきなりゾンビが出現、声を上げてみゆきとみさおに向かって歩き出した。 二人は絶叫し、ものすごい速さで廊下を走り出した。すると壁から手がうじゃうじゃ出てきて、二人の恐怖心をさらに煽った。
「そろそろ私達の番ね」 「あー、とうとうきてしまっったっス!」
かがみとひよりが緊張交じりで言った。
「よかったですネ、フタリともがんばってクダさい!わたしはもうイチドハイりたいでス」 「よかったら私の代わりに入る?」
かがみが即座にチケットを譲ろうとした。
「かがみ先輩やっぱり怖いんじゃ…ひっ!」
今日何度発動したかもわからないかがみの即死目線攻撃を浴びて、ひよりは再び震えだした。 かがみは小さい声でひよりの耳に囁いた。
「…後で…覚えときなさい…さっきのことも…」 「ヒィ!」
ひよりの体がまた震えだした。 つかさも姉の恐怖を感じ取ったのか、少し震えている。
「あのー、パトリシアさん」 「どうかしましたか、ユタカ?」 「実は今日ね、余分にチケット貰ったから二枚だけ予備として持ってきてるんだけどいるかな?」 「OH!NICEデス、ユタカ!」
パティは思わずゆたかを抱きしめた。つかさはみなみが少しパティ睨んだ気がしたが気にしないことにした。 ひよりはいつもの様に妄想に浸らず、先程のかがみを思い出し恐怖していた。今の彼女に妄想する余裕は全く無い。
「ではサンニンでレッツゴーでス!」
パティがあきれるほど元気にお化け屋敷の中に進もうとしたその時、
「ちょ、ちょっと待って」
声の主はつかさだった。
「はあはあ…大丈夫ですか、日下部さん?」 「…さすがにちょっときついかも…」
みゆきとみさおは廊下全力疾走し突き当たりで止まった。二人とも目じりに涙がたまっている様である。 後ろを見る限り、さっきのゾンビは来ていない様である。二人とも少し安心した。
「てかどんだけ広いんだよこのお化け屋敷」 「確かに規模としてはものすごく大きいですね」
二人は再び進みだした。まずは突き当たりを左に進んだ、するとまたすぐに曲がり角にぶつかった。今度は右に向かった。
「「!!」」
曲がった瞬間二人は凍りついた。角を曲がった二人の五メートル先に後ろ向きに人が首をつっていた。 しかし動く様子はない。
「なんだよおどかしやがって!」
みさおが先に進もうとしたその時、目の前にいた人は首だけこちらをむいてそして、その首がぶらんと落ちた。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
二人は一目散に回れ右、その場から逃げた。 さっき通った二つの曲がり角を曲がってさっきの廊下に出た瞬間
目の前に先程追いかけてきたゾンビがいた。もう二人はパニック状態になった。 二人は再び回れ右、そしてさっきの二つの曲がり角を曲がって首をつっている人の横をダッシュで通り抜けた。 すると再び突き当たりに出た。右には再びエレベーターがあった。 みさおより早く冷静を取り戻したみゆきはボタンを押しエレベーターのドアを開けた。
「あー、怖かったー…」 「さすがはお化け屋敷です…」
二人とも声が少し嗄れていた。 エレベーターは一階に到着した。
「日下部さん、油断は禁物ですよ」 「お、おう、まかしとけ」
エレベーターの扉が開いた。その瞬間エレベーターの天井が開いて上から人間の手首が降り注いできた。 ちなみに作り物に糸をつけたものを落としただけである。しかし今のみゆきとみさおには効果はバツグンだ! 開いたエレベーターの扉の奥を警戒していた二人にとっては予想だにしていない方向からの奇襲だった。 二人はまたまた大きな悲鳴を上げてエレベーターから飛び出した。
「へ~柊ちゃんはそのツンデレっていうタイプなのね」 「そうだよ。最近はツンツンしてるけどそのうちデレデレしだすと思うよ」
こなたはベンチに座ってあやのと話している。主にツンデレに関してだが。 これを、さっきかがみがひよりを怒った理由を知る人が聞けば、確実に死亡フラグがたったと思うことだろう。
「あ、いたいた、おねーちゃーん!」 「!」
遠くで自分を呼び声にこなたは反応した。
「あ、ゆーちゃん」 「あれは小早川ちゃんと岩崎ちゃんね」
みなみとゆたかがようやく出口に到着した。
「他の皆はどうしたの?」
あやのが聞いた。
「…今はかがみさんとひよりさんの番まできました」 「最後の組だね」
こなたはかがみが絶叫しているのを想像してニヤニヤしている。
「妹ちゃんは?」 「つかさ先輩はかがみ先輩達がお化け屋敷に入る直前に三人を呼び止めて……こう言ったんです、
sideお化け屋敷入場口前(回想)
「私も一緒に入る!」 「え、つかさも行くの!?」 「ヤめておいたほうがいいですヨ」 「私はどちらかというと人数が多いほうがいいっス」
なんとつかさがもう一度お化け屋敷に入ると言い出した。
「なんでまた行きたいの?」
かがみが不思議そうにつかさに尋ねた。
「えっと、あの、その……と、とにかく行きたいの」 「……」
妹の本気のお願いにかがみは少し悩んだ後、ゆたかにお願いし予備のチケットを譲ってもらったのだった。
sideお化け屋敷出口前
……ということがありまして」 「まさか妹ちゃんが…」 「まさかつかさが…」
あやのもこなたも驚きを隠せない。
「つかさ先輩、どうしたんだろう…?」
ゆたかが不思議そうにつぶやいた。
sideかがみ&つかさ&ひより&パティ
「うわっ、さすがお化け屋敷ね。不気味だわ…」 「まさにお化け屋敷って感じっス」 「ニカイメなのでワタシはゼンゼンヘイキでス」 「……」
かがみ、ひより、パティ、つかさの四人はあの最初の関門である障子のエリアに来た。 ちなみにつかさは前回と同じく顔を背中に押し付けて何も見えないようにしている。 異なるのは今回はパティじゃなくかがみの背中だということだ。
「つかさ、あんたそんなに怖いんなら何で来たのよ?」 「だって~」 「にしてもパティは本当に平気そうだね~、うらやましいよ」 「それほどでもないデスヨ」
パティはピクニックに来たかのような軽い足取りで進んでいる。そんなパティに三人が着いて行っているような状態である。 するといきなり左右の障子から目玉のようなものが続々と出てきた。 かがみとひよりはまあまあの悲鳴を上げて驚いたが、パティはほとんど動じなかった。 ちなみに何も見ていないつかさは今回は驚いたかがみに驚いた。つかさ、すでに半泣き。
四人は最初の突き当たりにたどり着いた。パティは横にあるエレベータのスイッチを押した。 するとエレベーターの扉が開いた。四人は中に入りかがみが二階のボタンを押した。 エレベーターに入ってつかさのトラウマのスイッチが入ったのか体が少し震えだした。
「一体何しにきたのやら…」
かがみはつかさを見てそう言い放った。
ガタン!
エレベーターが突然大きく揺れて止まった。
「ちょっ、何なのよ急に」 「びっくりしたっスね」 「やっぱりオバケヤシキたのしいでス」 「うううううううううう」
さっきの揺れでつかさの顔がかがみから離れた。つかさ、涙腺崩壊寸前。 そしてエレベーターの扉と反対側の壁に貞子の様な女性の映像が浮かび上がった。 つかさはそれをモロに見てしまった。
「おね~ちゃ~ん!!!」
つかさに抱きつかれてかがみは悲鳴を上げることができなかった。 横ではひよりが悲鳴をあげている。それを見て面白がったパティが緊急停止ボタンを押した。
「ポチットナ!」 「…出て行け…出て行け…今すぐここから…でていけええええええええええええええええええ!」
あのナレーションが流れた。
つかさの悲鳴がエレベーターの中を駆けずり回った。つかさ、涙腺崩壊。 さすがのパティも悪いことしたなぁという気分になった。 ひよりは横で柊姉妹が抱き付き合ってるのにも関わらず、恐怖で震えていた。 (さすがのヒヨリもイマはモウソウするヨユウはないようですネ) パティはそう思った。
エレベーターの扉が開き、四人は重い足取りで(約一名はまあまあ軽い足取り)で中から出てきた。
「…また廊下みたいね」 「突き当たり見えないっスね」 「ワタシはここでヌけましたからここからどうなるかはマッタくシりませんよ、ここからがホンバンですネ!」 「うううううううううううう」
かがみはパティの言葉を聞いてつかさを理由にここから出ようかなと考えたが妹に失礼だし、二人の後輩に対しての先輩としての威厳もあるので諦めた。 とりあえず四人は進むことにした。 ちいなみにつかさはまたかがみの背中に顔をこすりつけている。さっきより力が入っていた。 ふいに前方から鈍い音が聞こえた。 かがみとひよりは肩がピクッとした。そして足取りがさらに押遅くなった。 つかさには聞こえていないようである。 パティは特に変わらず、そもそも気づいているかすら怪しい。 その数秒後、いきなり後ろから妙な音がした。四人は一斉に振り向いた。
「な、なんスか、あれは!?」 「あ…ああああ…」
ひよりとかがみは目をそらせずにいた。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
つかさまでも一緒に後ろを見てしまい絶叫した。つかさ、涙腺爆発。
「あれは…ゾンビのようですネ…」
するとゾンビがこちらへ向かってスピードを上げて近づいてきた。 四人は回れ右、そしてダッシュした。すると壁の両側から手がうじゃうじゃと出てきた。 これにはパティもかなり驚いた様子だった。
二回目のエレベーターから飛び出したみゆきとみさおは二人でくっつき合って少しずつ進んでいた。 二人とも顔に涙の跡がうっすら残っていた。
「…恐らくもうすぐ出口です、頑張りましょう」 「お…おう、わかった…ぜ…」
エレベーターを出た後も壁からいきなり人?が出てきたり、うめき声がきこえたりしていた。 二人はそれらを怖がりながらも何とか先に進んでいた。 ここまで怖がってくれたらお化け屋敷側も満足だろう。 ちなみに今の二人には元気の欠片もない。 すると、とうとう廊下の突き当たりにたどりついた。突き当りには襖があった。
「これ中に入んないといけないよな」 「そのようですね」 「覚悟を決めるか」 「はい、行きましょう」
気合十分、二人は襖を開けた。 中は七畳間の和室になっていって奥のほうに扉があった。
「中に入りましょう」 「お、おう」
二人はゆっくりと、恐る恐る中へと一歩踏み出した。 和室の真ん中辺りまで来たとき、和室の床の間にある掛け軸の裏からものすごくリアルなゾンビがいきなり飛び出した。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
みゆきとみさおは絶叫した。 二人は急いで奥に扉に手をかけたがドアノブがなかなか回らない。 後ろからゾンビがせまってくる。
「眼鏡ちゃん!早く開けて!早く!」 「わかってますよ!」
あせっていてもみゆきは敬語口調を止めることはなかった。 すると横にあった棚の上から生首がごろりと落ちてきた。 二人はさらに悲鳴を上げた。さらに後ろにはゾンビが迫っていた。
ガチャ
するとドアノブが回った。しかし扉はなぜか重くなかなか開かない。みゆきとみさおが力いっぱい扉を押して何とか脱出した。 脱出する瞬間『行かないで』という不気味な声まで聞こえた。 扉の外に出た二人はいきなり 「おつかれさまでした」 と係りの制服を着た係りの女性に声をかけられた。 二人はきょとんとした。 まさに全身の力が抜ける感触を味わったと共に一気に涙腺が崩壊、二人は抱き合って涙を流した。 外に出た二人を太陽がこれでもかというほどに明るく照らした。
「みゆきさん!大丈夫!?」 「みさちゃん!大丈夫!?」 「い、泉さん…うっ、うううううう」 「あやの~……ヒック、ヒック…怖かったよ~」
出てきた二人を出迎えたのはこなたとあやのだった。みゆきとみさおは二人を見るやいなや電光石火の早業で二人に抱きついた。 みゆきに抱きつかれているこなたは少し苦しそうである。主に胸につぶされている。 あやのに抱きついたみさおはただひたすらに涙を流している。
「…はあ…はあ…はあ…はあ……さ、さすがに驚いたわね」
かがみはかなり息が上がっていた。
「ヒック、ヒック…うううううう」 「ミ、ミナさん…ダイジョウブですカ?」
パティはまだ余り疲れてはいないようだが、他の三人はもはやバテバテである。パティはみんなを見て、少し心配になってきた。 つかさはさっきから泣き続けている。
「…つかさ、大丈夫?」 「う、うん、なんとか」 「…そうだ、今のうちに聞いとくけど何でつかさまで一緒に来たの?こんなに怖がってるのに」 「…え、えーと、その、お姉ちゃん怒らない?」 「こんなとこで怒れないわよ、安心しなさい」 「わ、わかったよ。……ここに入る前、お姉ちゃん田村さんに怒ってたよね」 「ま、まあね」
これを聞いたひよりはあのかがみの恐怖がフラッシュバックした。
「すいませんでしたああああ!」 「ヒヨリ、イロんなイミでダイジョウブですか?」
パティが違う意味で心配そうにひよりを見つめた。
「実は私聞こえてたんだ……その……お姉ちゃんが……田村さんに言った言葉」 「へ?」 「後で覚えときなさいよって言ってたのを聞いて、それでお姉ちゃんと田村さんを一緒にしちゃまずいかなって思って…それで…」 「一緒に来たってわけね」
かがみが呆れた様子で言った。
「だって何か今日のお姉ちゃんいつもよりすごく怖くて……傍にいたほうがいいかなって思って…。 パトリシアさんだけじゃちょっと心細くてね」 「あー、あのね、つかさ……その私お化け屋敷とか苦手で……その、 緊張してたからちょっといつもよりきつくあたってたこもしれない…かも」 「お姉ちゃんも苦手だったんだ」 「…まあね」 「ごめんね、変な勘違いしちゃって」 「ううん、いいよ。私こそ誤解を招いちゃってごめん、つかさ」
柊姉妹は二人で見つめ合っている。
「…ヒヨリ、またまたメがクサってますヨ」
あいかわらず本能に忠実である。
「さ、そろそろ行きましょ」
かがみを先頭に四人は前に進みだした。
ゆたかとみなみは自販機を探していた。
「え~と、自販機、自販機…あった!見つけたよみなみちゃん!」 「…ほんとだ、ありがとう、ゆたか」
ゆたかに呼ばれてみなみが駆け寄ってきた。 皆がお化け屋敷から戻ってきたらのどが乾いているだろう思い、自ら買いに向かったのだった。 もちろん買いに行くときにこなたとあやのが代わりに行こうとしたが断った。 今回、チケットを貰ったのは私だからと言ってゆたかは遠慮した。みなみは一人では皆の分のジュースを運びきれないと思いついて来たのだ。
「へ~、いっぱい種類があるんだね」 「ラーメン缶からおでん缶まで…確かにすごい…」
この自販機はかなり大きいタイプだった。
「どれにしたらいいかな?」 「スポーツ飲料水がいいと思う」 「そうだね、でもかがみ先輩はカロリーを気にしてるから…」 「…だったら普通のお茶でいいと思う」
この決定は吉と出るか凶と出るか
「じゃあ、まずはお茶から買うことにするよ」 「…高いけど大丈夫?」 「お金なら大丈夫だよ」 「……そう」 (金額じゃなくて身長のことなんだけど…)
みなみはあえて訂正するのを止めた。 ゆたかは手持ちに小銭がなかったので千円札をいれてお茶のボタンに手を伸ばした…が…
「「あ…」」
みなみとゆたかの声が重なった。 ゆたかの指はボタンに届いていないにもかかわらず取り出し口に缶の落ちる音がした。 ゆたかはとりあえず出てきた缶を取り出した。
「「……ラーメン缶……」」
再び二人の声が重なった。 風が虚しく二人の間を抜けていった。
「ゆたか、かがみ先輩には渡せないよ…これは…」
とりあえず結果は凶と出たようだ。
お化け屋敷ではかがみ、つかさ、ひより、パティが前進中である。 突き当りまでたどり着いた四人は角を左に曲がった。
「曲がり角多いっスね」 「こういうとこって曲がった瞬間にいきなり何か来たりするから気をつけたほうがいいわね」 「ええええええええええ」 「ダイジョウブでス、ツカサ。みんながツいてまス」 「うん…ありがとうパティちゃん」
四人は警戒しながら次の曲がり角を右の曲がった。
「うわっ」 「気持ち悪いっスね」 「クビツりですネ」 「…なんかかわいそうだね」
曲がり角を曲がった四人が見たのは首を吊っている死体だった。 四人は意外と冷静を保ち続けられている。つかさにいたってはもう顔をかがみの背中に隠さず、勇気を出して頑張っている。
「…かわいそうって…さすがに作り物ですよ」 ひよりが念のためかつかさに言っておいた。 「さすがにそれくらいはわかるよ~」
つかさは少し頬を膨らませた。
「この前、テレビの特集で最近の不景気についてやってて、それを見たから…つい…」 「…当たらずとも遠からずっスね」 「…微妙なところね……ていうかつかさ、ニュース見てたんだ」 「…なんかバカにされてるような……」
皆で話していると突然首吊り死体のほうから何か音がした。四人が一斉に死体に注目した瞬間、死体の首だけがこちらを向き、ずり落ちた。
「ひっ!」
「うっ!」 「うああ……ああああ」 「WOW!」
これにはパティも英語の発音になるほど驚いたようだ。
その後奥に行くと、またエレベーターがあった。パティは例によってボタンを押してドアを開いた。 四人はエレベーターに乗り込み、それを確認したパティは扉を閉めるボタンを押した。 つかさが前のエレベーターでの出来事を思い出し少し震えていた。 それを見たかがみはつかさの手を握ってあげた。
「…落ち着いた、みゆきさん?」 「…はい、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」 「いいよ、もともとは私のせいなんだから。まさかこのお化け屋敷がこんなに怖いとわね…知らなかったよ」 「いえ、泉さんのせいではありません。気に病まないで下さい」 「…ありがとう、みゆきさん」
こなたとみゆきはベンチに座ってゆたかとみなみがジュースを買ってくるのを待っている。 みさおは比較的早く立ち直ってあやのと共に近くをぶらつきに行った。 今日の日差しはいつもよりきつく、耳を澄ませば周りの音がよく聞こえてくる。 子供の笑い声からその親たちの笑い声、そして泣き声など多種多様な音が鼓膜を刺激する。 その音の中にはお化け屋敷から漏れ出す悲鳴が少々混じっていた。
「おねーちゃーん!」 「あ、ゆーちゃん、どうしたの?ずいぶん遅かったね」 「自動販売機探すのに手間取っちゃって。はいこれ」
ゆたかはこなたにスポーツドリンクを渡した。 こなたは受け取るやいなや蓋をあけ一気飲みの勢いで飲んだ。ゆうに四分の三は飲んだだろう。
「咽渇いてたんだね、ごめんね遅くなっちゃって」 「いやいや、せっかく買ってきてくれたのに文句なんて言わないよ」
こなたは笑顔でゆたかに言った。
「すみません、みなみさん」 「いえ、どうぞ」
みゆきがみなみの持ってきた飲み物を笑顔で受け取った。
「ていうかそのラーメン缶どうしたの?」
こなたに質問されたゆたかは少し困った顔をした。
sideみさお&あやの
「結構広いんだな、ここって」 「そうみたいね。今日は暑いけどたくさん人がいてにぎやかね」
二人は遊園地の中を散歩している。上からは照りつける日差し、下からは地面から発せられる熱気によって板ばさみのような状態である。
「おおー、でけー観覧車だなー」
みさおが少々興奮気味に言った。 どうやらみさおはお化け屋敷のことは早くも頭から消えてしまっているらしい。 あやのはそう思い安心した。
「そうだね、ステキだね」
あやのが遠くを見ているような感じで言った。
「…今うちの兄貴のこと考えてるだろ?」 「えっ!いや、その…」 「バレバレだな」
あやのは耳まで真っ赤に染めて恥かしそうにしている。それを見てみさおは笑っている。
「咽かわいたしそろそろ戻るか!」 「そうだね、みさちゃん。たぶんもう小早川さん達が飲み物を持って来てくれてるかもしれないし」
二人はお化け屋敷の出口の方に向かって進みだした。
二台目のエレベーターに乗り、かがみ達はお化け屋敷の出口へと向かっている。
「…何も起こらないわね」
かがみが震えるつかさの手を握りながら言った。
「できればその方がいいんスけど…」
かがみの言葉にひよりが返した。するとエレベーターが止まり、扉が開き始めた……その瞬間!
「きゃああああああああああああああああああああ!」 「いやああああああああああああああああああああ!」 「ぎゃああああああああああああああああああああ!」 「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
四人はきれいに揃って絶叫した。 エレベーターが止まり、扉が開き始めたと同時にエレベーターの天井部分が開き、上から人間の手首が降り注いできた。 よくあるような感じであるが今の四人には効果は抜群である。 四人は人間以上ともいえる速さでエレベーターからすばやく降りた。残像が見えてもおかしくないレベルである。
「はあ…はあ…何よここ…怖すぎよ…」
かがみが息も絶え絶えに言葉を発した。その横では地面に座ってつかさがまたしても泣いている。
「ツカサ、Are you all right?」 「うううううううううううううううううううううう」
パティが心配してつかさに話しかけたがつかさはもはや返答できる状態ではなかった。 このままではまたしても係員を呼ぶはめになりそうなので、つかさ以外の三人がつかさをなだめた。 そして薄暗い廊下へと足を踏み入れた。 するとまもなく不気味なうめき声がどこからともなく流れ始めた。その数秒後壁からゾンビが出てきた。 つかさは一目散に涙をその場に残して走り出した。 他の三人もそれに続いて悲鳴混じりに走ったが、その廊下は前回の廊下のように幅は広くなく、 廊下自体も長いものではなかったので二秒ほどですぐに走り終えることとなった。
そして四人は廊下のつきあたりについた。 今四人の目の前には襖が、早く開けろ!とでもせかすようにそびえたっている。
「入るわよ、みんな!」
かがみが襖に手をかけて言った。
「う、うん」
つかさが不安そうに答えた。
「もう嫌な感じしかしないっス…」 「いきなりナニかデてくるかもしれませんネ」
パティの言葉につかさがピクッと肩を震わせた。それを見たかがみがつかさの手をやさしく包み込むように握った。 一体今日何度目なのだろうか。 そしてかがみが意を決して襖を開いた。 中は七畳間の和室になっていって奥のほうに扉があった。 「あそこに入ればいいみたいね」 扉を見つけたかがみ言った。 四人はそろって扉の前に行こうとし部屋の真ん中辺りを通ったその時、床の間の障子の裏から突然ゾンビが飛び出してきた。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
四人は一斉に悲鳴をあげ扉の前まで走って、最初に着いたかがみがドアノブをひねるが回らない。 ガチャガチャと何度も回そうとするが全然回らない。
「おね~~~~~~~~~~~ちゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん」
つかさがかがみの足にしがみついている。しかしかがみは必死なのでそのことに全く気づいていない。 「かがみ先輩、早く開けて!」 「カガミ!カガミ!」 パティとひよりもかなりパニックになっている。 かがみがさらにドアノブを回そうとしたその時、横の棚から生首のような物が落ちてきた。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
四人の悲鳴はさらに増した、その時ドアノブが回った。 かがみは扉を開けた。思ったよりも扉は軽く開いた。しかしかがみは出ようとしたが足につかさがからみつき動けない。 その間にパティとひよりが外へと飛び出した。 かがみはつかさをどうにかしようと後ろを向いた時、真後ろまで迫っていたゾンビと目が合った。
扉が開いていたせいで本日最大級のかがみの悲鳴がお化け屋敷だけではなく外にまで駆け巡った。
「かがみ達遅いね」 「そうですね。…かがみさんが心配ですか?」 「まあね~、このお化け屋敷すごく怖かったし、それにかがみも結構怖がりだったし」
こなたとみゆきが二人でお化け屋敷の出口の前にあるベンチに座りおしゃべりしている。 その横ではみなみとゆたか、さらにみさおとあやのが座っている。 みさおは散歩から帰ってきたら、速攻でゆたかからジュースを受け取り一気に飲み干した。
「しかしこのお化け屋敷は怖すぎます」 「まあ、お化け屋敷なんだからこれが当たり前なのかもしれないな」
みなみの言葉にみさおが答える。
「でもこんなに怖かったらもう行きたくなくなっちゃうね」 「確かにそうですね。でもそうなったらお化け屋敷の人達が困るんじゃ…」
あやのがゆたかに言った。
「確かにそうかもしれないね、ゆーちゃん」 「そうですね」
こなたとみゆきが二人して言った。その時
お化け屋敷の中から悲鳴が、それもかなりの大音量で聞こえてきた。 こなた達は全員で驚き、お化け屋敷の方へ目を向けた。 周りにいた人たちも驚いて立ち止まってお化け屋敷の方を見ている。
「…ねえ、今の声って…」
ショックから一番早く回復したこなたが言った。
「…柊…だよな…」
するとその数分後ひよりとパティ、それに続いてかがみとつかさが出てきた。 ひよりとパティはバテタ様子でこちらへ歩いてきた。その後ろにはさらにぐったりした様子のかがみとつかさがこちらへ向かってきた。 つかさ目に涙を溜めながらかがみに手を引っ張られている。 こなた達は全員ベンチを開けて四人を座らせた。
「…かがみ大丈夫?」 「…柊、お前生きてるか?」 「妹ちゃん…大丈夫?」 「つかささん、これで涙を拭いてください」
かがみはこなたとみさおの声に「まあ、なんとかね」と心細い声で返した。 つかさの方はみゆきに借りたハンカチで目を拭って、「ありがとう」と言ってハンカチをみゆきに返した。 「田村さん、大丈夫?」 「パトリシアさんは…まあ大丈夫みたいだね」
ゆたかがひよりに、みなみがパティに話しかけた。 かがみ達の横ではひよりがベンチに座って頭を上に向けて息を整えている。 パティは比較的早く回復し、つかさの横で頭をなでている。
その十分後、ようやく全員回復し、遊園地の中を歩いて見て回ることにした。
side全員
「それにしてもすごい悲鳴だったわよ、柊ちゃん」 「…まあそうでしょうね、それもこれも誰かさんが私の足にへばりつくからだけどね」 「う~、ごめんね、お姉ちゃん」 「ま、ツンデレも怖がるってことはよくわかったな」 「そうね」
歩きながらかがみとつかさ、それにみさおとあやのがおしゃべりしている。 しかしかがみはみさおのツンデレと言う言葉を聴いた瞬間肩をピクッと動かした。
「あのね、私はツンデレじゃないっつの!田村さんの言葉を真に受けてどうすんの!?」
かがみが声を張り上げて言った。どうやらさっきまでの恐怖を拭いきれたらしい。
「…その言い方もちょっとひどくないっスか?」
ひよりが気弱そうな声でかがみ言った。
「あんたが余計なこと言うからでしょ。自業自得よ」 「ははは、反論しようがないっス…」
ひよりは自虐するように笑った。
「ていうかなんで峰岸まで『そうね』なんて言うのよ。…まさか誰か余計なこと言ったんじゃ…」
かがみは後ろであやのに見えるように動作で何かを伝えようとしているこなたに気づいた。 こなたに気づかれないようによくその動作を見てみると「言わないで」と伝えてると気づいた。
「…やっぱりあんたか」 「い、いや…なんのことだか…ねえ峰岸さん」 「え…ええっと…」 「どうなの?峰岸?」
かがみはあやのに顔を近づけ、笑顔で尋ねた。あやのはお化け屋敷の恐怖をも上回る恐怖とプレッシャーに押し負けた。
「い、泉ちゃんが…」 「ちょっ!峰岸さん!」 「やっぱりね…、こなた、覚悟はいい?」
かがみの笑顔はこなたの方へ向けられた。あやのはホッと胸をなでおろした。 その横でこなたの頭に拳骨が降り落ちた。
こなたが頭をかかえてうなっている後ろではみなみとゆたか、ひよりとパティにみゆきとつかさを加えたメンバーがお話している。
「怖かったね、ゆきちゃん。やっぱり二回も入るんじゃなかったよ。泣いちゃったし…」 「実は私も…そのお化け屋敷から出て泉さん達を見て安心して泣いてしまいました。だから別に恥かしがることありませんよ」 「そうなんだ~、ゆきちゃんも泣いちゃったんだ」 「それは驚きっスね」 「そうですネ。こーいうのにはケッコウダイジョウブなカンじがするのですけど」
ひよりとパティが驚いた様子を見せている。 「みなみさんはどうでしたか?」 「えっ!」
急に話を振られてみなみは驚いた。 「そういえば岩崎さんは大丈夫だったの?」 「ナいてしまいましたカ?」 「え、ええっと…」
みなみはかなり戸惑っている。それを見たゆたかがみなみに助け舟を出した。
「み、みなみちゃんは私をサポートしてくれたり励ましてくれたりしてとっても頼りになったよ、ありがとう、みなみちゃん」 「え、あ、うん、別にいいよ、ゆたか」 「そういえば…」
みなみは戸惑いながらもゆたかにお礼を言った。 その後つかさが新しい話を切り出したのを見計らってひよりはゆたかの横に行ってなにやら小声で話し始めた。
「…どうしたの、田村さん?」 「え、ああまあね。約束してたことを聞こうと思ってさ」 「えっと…何だったっけ?」 「…忘れてましたか」
ひよりは若干落胆気味に言った。
「ご、ごめんね…その…もう一度言ってくれないかな?」 「ほら、岩崎さんとお化け屋敷に入る直前に言ったじゃない。中で何があったか細かく教えてねってさ」 「…あ…そういえば…」 「頼むよ、小早川さん」 「え、ええっとね、まず二人で入ってから…」
ゆたかはひよりに話し始めた。
「…て感じだったんだ」 「へ~、そうなんだ。ありがとう小早川さん」 「う、うん」 「でも嘘はだめだよ」 「え!どうしてわかったの!?」
ゆたかは心底驚いたような顔をしている。
「だって小早川さん、話し方が変だったし、何だか一字一句考えながら話してるみたいだったからね」 「…すごいね、田村さんは…」 「それはどうも、じゃ、今度は本当のこと教えてよ、特に岩崎さんがどれだけ驚いていたとかさ。 さっきの岩崎さんについて言ったことも嘘なんでしょ?」 「…す、すごいね…」 この後ひよりは岩崎さんがすごく怖がっていた様子などを聞き出し、同人誌のネタが増えた。 ちなみにみなみはお化け屋敷の中ではかなり涙目になっていた。それをゆたかに隠そうしていたがゆたかはその事を知っていた。 みなみはお化け屋敷を出た直後泣きそうになったが、ゆたかが急に具合を悪くしたため泣くヒマも無く、 ゆたかを園内の保健センターに運んでいた。
「あれだけ怖いと逆にお客さんが減りそうですね」
ひよりがゆたかに話を聞いている横でみなみはみゆき達に言った。 「そうですね、私はともかく日下部さんまで泣いてしまうぐらいですからね」
その言葉にいち早く反応したのはかがみとみさおだった。
「ちょっ!眼鏡ちゃん、それ言うなー!」 「うるさい!日下部!みゆき、それちょっと私に詳しく話して!」 「やめろってヴぁ!」
かがみとみさおがみゆきに詰め寄った。 二人からの真逆のお願いにみゆきはかなり迷っていたが、 かがみの威嚇によってみさおがあやのの後ろに隠れたのでかがみはみゆきからその事を聞きだすことができた。 「…なるほどねぇ…あんたでも泣いたんだ」 「う、うるさいってヴぁ!」
みさおはかがみに一週間の間このことをネタにされた。
「それにしても本当に怖かったわねー」 「これほどとは私も驚きました」
かがみがみゆきの隣に来て話しかけた。
「でも一番怖かったのは最後の和室よね。あんなところでいきなりゾンビは出てくるしドアノブは回らないし本当に焦ったわ」 「そうですね。それにその後扉がすごく重くて開けるのが大変でした。 それに扉に入るときの『行かないで』という声もリアルで怖かったですね」 「…え?扉なら簡単に開いたけど?ていうかそんな声聞こえなかったし…」
二人の間を冷たい風がひらりと割って流れていった。
「…このこと余り話さない方がいいかもね」 「…そうですね…」
二人の顔は少し青くなっていた。 その後、他のアトラクションに乗りまくって、日が落ちるくらいには遊園地を出た。 電車に乗り皆と別れ、そして最後にこなたと眠そうにしているゆたかと別れて、かがみとつかさは家に着いた。 その夜、つかさがかがみの部屋に枕を持って入ってきたのは言うまでもない。
この後日、ゆたかの持っている残りのチケットはひよりとみゆきに渡され、ひよりはこうやアニ研の人達に、 みゆきはゆかりにそれぞれ渡した。 その結果みなみとみゆきはご近所同士で母達に連れられ、もう一度行くことになり、 二度目になるお化け屋敷で泣いてしまったみなみはゆかりに写真を撮られてしまった。 ちなみにチケットもらったこうは嫌がるひよりにやまとやひかる先生それにアニ研部員達と一緒にお化け屋敷に行き、 全員二度とお化け屋敷という名詞を今後一切言わなくなった。 ただひよりだけは『同人誌のネタが増えてラッキーっス』と喜んでいたが、後日、そのネタを使った漫画はこうに一瞬にして没にされた。
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