―――こなた・・・こなたっ
声が・・・聞こえる。聞き覚えのある声。それもそのはず。これはかがみの声だ。
「ん・・・何」
目をうっすら開けるとかがみの顔がまん前に見える。
「ここ、どこだか分かる?」「―――ぇ?」
突然の問いに疑問を浮かべる私。体を起こして周りを見渡す。
私はどこかの公園のベンチに寝ていたようだ。隣にはつかさとみゆきさんも寝ている。
でも、おかしい。私はこんなところで寝てなかったはず・・・。あれ?私は一体今まで何してたっけ?起きる前の記憶が少しとんでいるようだ。
「気づいたらここにいて・・それまで何してたか思い出せないの」
かがみが心配そうに私を見つめてくる。
「うん、私も思い出せない。私たち、公園なんかで寝てたっけ?・・・あ」
もう1度周りを見渡していたら気づく。この公園に見覚えがある。
「ここって・・・アキバの・・・?」
ザッと立ち上がってもう1度見渡す。
うん、この喧騒、この空気、この雰囲気・・・私たちは秋葉原にいる。
「秋葉原?な、何で私たちそんなとこにいんのよ」「そ、そんなの知らないよっ」
だってそれまでの記憶の部分が切り取られているというか・・・
「とりあえず、アニメイトでも行こっか」「はぁ?あんた、何でここにいるのかも分からないのに」「だって分からないもんは分からないし、ここはいっそ楽しまないとね」「はぁ・・・あんたは相変わらずだなぁ」
後ろでかがみがつかさとみゆきさんを起こす声がする。
私はふと思う。
・・・うーん、でも何か違うんだよなぁ。いつものアキバと・・何かが・・・気のせいかな。そのとき
「あ・・・あああ・・ああああ・・・・」
1人の男が私を指指して震えている。驚いているけど、嬉しさをも伴っているように見える。
「ふぇ?」
疑問符を頭上に浮かべる私。
「確か・・・らきすたの・・・・」「らきすた?」
聞き覚えのない言葉だ。
何だかよく知らないうちに人がどんどん集まってきた。いつの間にか私たちの周りに人だかりができていた。
「おい、あれって・・・」「・・・うほ、俺の嫁・・・」「どういうことだ?」「これってお持ち帰りしていいのか?」「本当にそっくりだな」
ざわざわと聞こえてくるそんな言葉。
「ちょ、ちょっと、何よこの人たち・・・」
かがみが集まった人たちを見渡して後ずさりする。
「何かこの人たち怖いよぉ・・・」
起きたばかりのつかさが涙目でかがみを見つめている。見たところ、いかにもオタクな人たちばかりだ。でも、何で私たちの周りに集まってくるんだろう。
人だかりの中から1人男が私たちに近寄って来た。
「あの、写真撮っていいですか?」「は?」
1人が出るとみんなが後から続々と携帯を取り出して寄ってきた。
「こなたんは俺の嫁ーっ」「かがみん!かがみん!」「つかさちゃんとちゅっちゅしたいよー」
唖然とする私たち。何かここに居たら危険な気がするよ。
「み、みんな逃げろーっ」「ぁっ、ちょ、こなた待ちなさいよっ」
私が駆け出すとかがみたちも後を追うように走り出した。しかし、オタクたちもなんか叫びながら追いかけてきた。しかもアキバの町行く人々がこちらを注視する。
何でー!?ワケが分からない。起きたら何故かアキバにいるし、しかも何か追いかけられるし。
でも・・・「こなたんは俺の嫁」って・・・何で私たちの名前を・・・それに嫁って2次元のキャラに・・・
はっ!?まさか・・・・
私はアニメイトに向かって走り出した。かがみたちもちゃんと着いて来る。
アニメイトに到着し、中に入る。それと同時に客の目が私たちに向けられ、見つめられた。でもそんなのお構いなし。店内を歩く。
・・・やっぱり!!
私たちが描かれている本・・・らき☆すた。つまり、ここは・・・3次元!
私たちの世界の中の3次元じゃなく、私たちの世界が2次元のときの3次元!!そんな世界あるのか知らない。ていうかあったの!?でも、事実。何故だか知らないけど私たちは3次元に来てしまったんだ。何故?何で?何か理由があるはず。でも分からない。
とりあえず、今はアキバを離れた方がいい。突然2次元のキャラが3次元に現れたら・・・考えなくても分かる。私だってそっち系のことは分かる。
「あれ、こなたじゃん・・・」「何でいるんだ?」「本物・・・?」
ざわざわと聞こえる声。その声から逃げるように私はアニメイトから飛び出た。慌ててかがみたちも私の後を追う。
家に帰ろう。あるかどうかは分からないけど・・・。
―――鷹宮神社。かがみの家であり、つかさの家でもある。けど、何故か名前が鷲宮になってる。やっぱり2次と3次は違うんだろうなぁ。
遠目から見てても分かるけど、ここにもいた。オタクっぽい人たちが。
まさか・・・あれですか?聖地化してるんですか?まずいな。ここからも離れた方がよさそうだ。私がそう思って引き返そうとしたときかがみが言った。「ちょっと、こなた。さっきから一体何が起こってんのよ」「えっ」「なんか私たちの名前知ってたり、・・・嫁とか言ったり」「んー・・・どうやら私の考えだと3次元に来てしまったようだね」「3次元ってなぁに?」つかさが口を挟んできた。「夢も希望もない現実世界のこと」「( ゚ω゚)バル?」「つかさに変なこと教えるなっ」「そもそも次元というのは空間の広がりをあらわす一つの指標です。座標が導入された空間では(ry」みゆきがいつものようにペラペラと話し始めるが、つかさは更に分からなくなったようだった。「で、何で私たちは3次元に来ちゃったわけ?」「それは分からないよ・・・」「と、とりあえず私たちの世界と違うところに来ちゃったってこと?」つかさが思案顔で呟く。「そーなるね・・・」「えぇっ、じゃあ元の世界に戻るにはどうしたらいいの?」「それも分からないよ・・・でも、きっと私たちがこの世界に来たのには理由があるハズ」「理由、ねえ・・・なんか心当たりある?」「ないよ。それに記憶がちょっとないしさ」「私もないですね。お恥ずかしながら」「はやく帰りたいよぉ・・・」「あー、ほらつかさ泣かないの。きっと帰れるから・・・」
そんな中、聖地からこちらに向かって歩いてくるオタク2人を発見した。
「あ、みんな隠れるよ!みつかったらまた騒がれる」「う、うん」ささっと狭い道に逃げ込んだ。そぉ~っとオタクの人たちを覗く。
「最近のらきすたおかしいらしーな」「そーなのか?」「ネットで話題になってんぜ」
「!!」らきすた・・・私たちが描かれている作品。それがおかしいってどうゆうこと?オタクの人たちはさっさと通り過ぎた。
「らきすたって何かしらね」かがみが私に聞いてきた。「私たちが出てる漫画だよ」「えっ、そんなのあるんだ・・・。って何でそんなの知ってんのよ」「さっきアニメイトで見たもん」「ああ、さっきのアニメイトか」「私たちが出てる漫画かぁ、なんか見てみたいね」「え・・・私は嫌だな」つかさがえへへと笑う横でかがみがじと目になる。「んー、でもちょっと興味はあるよね」「そうですね。私も1回見てみたいです」「よおーし、じゃあ買いに行こう!」こなたが人差し指を空につきつけた。(>ω<.)「やったぁ~!」「ええええ、おいおい。だって私ら人目についたらマズいんじゃ・・・」「そうだけど・・・それはしょうがないじゃん」「何がしょうがないんだよ・・・」「よーしじゃあアキバにれっつご~」「れっつご~」こなたがてくてくと歩くのにつかさもわーいと着いて行く。「でも、秋葉原はマズいんじゃないでしょうか」「そ、そうよ。何でアキバなのよ。一番危険じゃない。普通の書店とかに・・・」みゆきとかがみが反論した。「私もそれは思ったけど、でも、私たちが気づいたらいたのがアキバだったじゃん?だから、私たちが3次元に来ちゃった理由が何か分かるかもしれないと思って」「ん・・・それはそうかもしれないけど」「ね、だからアキバ行こうよっ」「(こいつ、絶対自分が行きたいからよね・・・)」かがみは1人じと目ではあと嘆息しながらもこなたに着いて行くことにした。
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