~愛憎の陵桜学園~エピローグ

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~愛憎の陵桜学園~エピローグ」(2008/06/06 (金) 16:42:00) の最新版変更点

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<p>みさおが撃たれてから一週間が経過した<br /> 学校は休校になったが、明日から始まる手筈となっている<br /> かがみは自室で、翌日の授業の準備をしていた<br /> その顔に、憂いはない<br /><br /> 「……ふう、完了。休校ばっかりだったけど、ちゃんと授業についていけるかな……」<br /><br /> かがみの今の悩みは、今までまったく勉強ができなかったこと。志望校に受かるかどうかが問題なのだ<br /><br /> ふと、机の上の写真に目が行った<br /> 写真の中にいるかがみとみさおが、こちらに笑顔を向けている<br /> 一ヶ月前にみさおと遊びに行った時に撮った、最初で最後の、二人だけの写真である<br /><br /> 「……日下部……」<br /><br /> みさおは今、病院の集中治療室で眠り続けている<br /> 生命維持装置によって、かろうじて命を繋ぎ止めているのだ<br /> かがみはみさおが病院に担ぎ込まれた日以来、お見舞いに行っていない<br /> それが、自分の――みさおのためだと信じているから<br /><br /> (……日下部……私、もう大丈夫。一人は確かに寂しいけど……新しい友達も作る。だから、心配しないで……安らかに眠ってね)<br /><br /> かがみは胸に手を当て、未だ眠り続ける友へ祈った<br /> 目覚まし時計をセットして、ベッドに潜り込む<br /><br /> 「……おやすみ……」<br /><br /> 誰にともなく、かがみは呟いた <br /><br /> ・・・<br /><br /><br /> 「はぁ……黒井先生、前の授業内容忘れるとか信じらんない……」<br /><br /> あれから更に二週間。今日の授業を終えたかがみは一人きりの下校をしていた<br /> たった一人での下校……それは、かがみにとっては拷問に等しいことである<br /><br /> 「……ん、電話だ」<br /><br /> かつてこなたから勧められた着メロが鳴り響く<br /> 手に取り、開いてみると、電話の主は姉の柊まつりだった<br /><br /> 「もしもし、姉さん?」<br /> 『かがみ!? い、今なにしてるの!?』<br /><br /> なぜか焦りまくっているまつり<br /> 戸惑いながら、ありのままを伝える<br /><br /> 「か、帰ってる途中だけど……」<br /> 『ならすぐ病院に行って! 日下部ちゃんが……日下部ちゃんが!!』<br /> 「!!」<br /><br /> その宣告に、危うくケータイを落としそうになった<br /> かがみは一方的に電話を切り、病院へと駆け出した!<br /><br /> (……日下部……もう『その時』なの……!?) <br /><br /></p> <dl><dd>一ヶ月が経過した今も、みさおは眠り続けている<br /> まつりのあの慌てよう、おそらくみさおの容態が急変したのだろう<br /> 最期くらいは看取ってやろうと、そう思っていたのに!<br /> せめて……せめて自分が病院に着くまで!!<br /><br /> (間に合ってよ……日下部……!!)<br /><br /><br /> ・・・<br /><br /><br /> 病院に到着し、受付のナースにみさおの居場所を確認した<br /> みさおは集中治療室から出て個室に移動したということを聞き、全速力でみさおの病室を目指した<br /> お見舞いに来た人間や患者にぶつかりそうになりながら、際どいところでそれをパスする<br /> 以前のみさおとまったく一緒だが……かがみはそれを知らない<br /> そして、受付で言われた病室の前に到着すると、乱暴にドアを開け放った<br /><br /> 「日下部!!」<br /><br /> そこにいたのは……生命維持装置を外された、みさおの姿だった<br /><br /> 「そ……そんな……」<br /><br /> みさおは仰向けに横たわったまま、ぴくりとも動かない<br /> その光景を見たかがみは、持っていた通学カバンを床に落とした <br /><br /><br /> ――間に合わなかった<br /><br /> 涙を流しながら、フラフラになりながら、かがみはみさおが眠るベッドへ歩いていき、みさおの手を握る<br /> 反応は……ない<br /><br /> 「日下部……もうちょっと……待っててくれてもいいじゃないのよぉ……!!」<br /><br /> 絶望にも似た感情が、かがみの心を支配していく<br /> かがみの流した涙が頬を伝い、みさおの顔に落ちた<br />  <br />  <br />  <br />  <br />  <br /> 「ふぁあっ!!」<br /> 「え!?」<br /><br /> その瞬間、みさおが飛び跳ねた<br /> かがみの涙が落ちたところを何度も拭っている<br /><br /> 「あーびっくりした……おかげで計画が台無しじゃねぇか……」<br /> 「く……くさか……べ……?」<br /><br /> 明らかにピンピンしている。一ヶ月前、死の淵にいた人間とは思えない<br /> いや、それよりもなによりも……<br /><br /> 「日下部……どういう……ことよ……」<br /> 「悪いな柊、ちょっとからかってみたんだ。お前の姉ちゃんに協力してもらってな。本当は昨日、意識を取り戻してたんだ」<br /><br /> みさおは手のひらをかがみに向けて身体を引かせると、何事もなかったかのように上半身を起こした <br /><br /> 「傷はもう大丈夫だ、あと一週間くらいで退院できるってよ。医者は『傷の治りが早すぎる』って驚いてたけどな」<br /><br /> なんと、みさおはすでに健康そのものになっていた<br /> 自分はもう大丈夫だとでも言わんばかりに立ち上がり、スクワットを何回かする<br /><br /> 「……の……か……」<br /> 「へ?」<br /><br /> かがみが呟いた声にスクワットの動きを止め、キョトンとした顔でかがみを見つめた<br /><br /> 「この……バカーーーーーーーーーーーー!!」<br /> 「のわっ!」<br /><br /> 突然のかがみの怒鳴り声にみさおはひっくり返った<br /><br /> 「あんた、私がどれだけ悲しんだかわかってるの!? 姉さんから電話を受けた時、本っっっ当に怖かったんだから!!」<br /><br /> あまりの迫力に、みさおは反論できないでいた<br /> いや、それだけでない。今になって、相当の罪悪感を感じていた<br /> みさおにとっては軽い冗談のつもりだった。だがそれが、かがみをここまで怒らせることになるなんて……<br /><br /> 「……でも……」<br /> 「へ?」<br /> 「えぐ……生き返ってくれて……くっ……本当に……良かった……うあぁぁあぁあああ……!!」<br /><br /> かがみの瞳から、滝のように……とまではいかないが、大量の涙が溢れだしてくる<br /> 何度拭っても、涙が止まることはない<br /><br /> 「……柊……」 <br /><br /> みさおはゆっくりかがみに歩み寄ると、震える身体を力強く抱き締めた<br /> みさおもまた……かがみと同じく、泣いていた<br /><br /> 「私もだ……! 私も……柊のとこに帰ってこられて……本当に良かった……!」<br /> 「日下部……!!」<br /> 「柊……!!」<br /><br /> 二人は、お互いの身体を抱き締めながら、日が暮れる泣き続けた<br /> そして涙が止まった時、身体を少しだけ離して相手の目を見つめた<br /><br /> 「……っはは……柊の目ぇ真っ赤じゃねぇか……」<br /> 「ふふ……日下部だって……おんなじよ……」<br /><br /> 涙でくしゃくしゃになりながら、みさおは満面の笑みで言った<br /><br /> 「柊」<br /> 「なに?」<br /> 「……ただいま」<br /> 「……おかえり、日下部……」<br />  <br />  <br />  <br /> そして、二人の人生は、再び動きだした<br /><br /> ~Fin~<br /></dd> </dl>

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