「ID:6TGWAsDO氏:君が欲しくて、君がいなくて」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>――きょうのうちに<br />
とおくへいってしまうわたくしのいもうとよ<br />
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ――<br />
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宮沢賢治・著、永訣の朝。死に別れの妹に向けた詩。<br />
国語の授業でそれを読んでいるのは、私の友達。<br />
私の境遇を知ってるその友達は、クラスのみんなは、先生は、さっきから私の方をチラチラ見てくる。<br />
私はというと……肩をふるわせながら、必死に涙を堪えていた。<br />
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――死ぬといういまごろになって<br />
わたくしをいっしょうあかるくするために<br />
こんなさっぱりした雪のひとわんを<br />
おまえはわたくしにたのんだのだ<br />
ありがとうわたくしのけなげないもうとよ<br />
わたくしもまっすぐにすすんでいくから――<br />
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ああ、もう無理だ。<br />
私は声をあげながら、大粒の涙を流していた。<br />
クラスのみんなが、先生がなぐさめてくれたけど、授業が終わるまで涙が止まることはなかった。<br />
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<br /></p>
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『ごめんね、お姉ちゃん……迷惑かけちゃって……』
<p>たった1ヶ月前の出来事だった。</p>
<p>『……私……まだ死にたくない……。お姉ちゃんと一緒にいたい……!』</p>
<p>そりゃあもちろん体調崩す時はあったけど……まさか不治の病だったなんて……</p>
<p>『私は、もう……ダメみたい……だから、お姉ちゃん……私の……ぶんま……で……』</p>
<p>それが、あの子の最期の言葉だった。<br />
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<br /></p>
<hr /><br />
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家に帰ってきてから、私は久しぶりにあの子の部屋に入った。<br />
私にとって聖域となっていた、もう主のいない部屋に。<br />
当たり前だけど、あの時から何も変わってない。本棚の中身も、ベッドのうえのぬいぐるみも。<br />
ただ一つ……もうこの世に、この部屋の主がいないことを除けば。<br />
ここにいると、あの子の顔が次々と浮かんでくる。<br />
笑ってる顔、ふくれてる顔、泣いてる顔、喜んでる顔……<br />
あの子と過ごした日々が、走馬灯のように流れてくる。<br />
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<br /><hr />
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一緒にご飯食べたり、一緒に学校行ったり、一緒にお風呂に入ったり……<br />
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『お姉ちゃん、おはよ――』<br />
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何気ないあの日常が、幸せで溢れていたことに気が付いた。<br />
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『お姉ちゃーん、教えてほしいトコロが――』<br />
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だけど、もう遅い。私がお姉ちゃんと呼ばれる日は、もう……<br />
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『お姉ちゃーん――』<br />
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<hr /><br />
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気が付いたら、私は床に膝をついて涙を流してた。<br />
床のカーペットには、私の涙で大きなシミができてた。どのくらい長い時間泣いてたのかな……。<br />
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ねえ、お願い。
<p>お願いだから帰ってきて。</p>
<p>じゃないと私……淋しさで壊れちゃうよ。<br />
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「お願いだから……帰ってきてよ……ゆーちゃん……」<br />
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何度そう呟いただろうか。</p>
<p>その願いが叶うことは、永遠にないのに……</p>
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<p> </p>