「Farewell~自分の想いを~」ID:G0OH0GQo氏

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「こなた、ちょっといいか」 「? 何、お父さん」 「とても、大事な話があるんだ」  そう言ったお父さんは、今までにない、真剣な顔だった。  ――私は……。 「はぁ……ったく、心配した私が馬鹿だったわ」 「ツンデレかがみん、萌え~」 「ツンデレ言うな!」 「いいじゃぁん」  全くあんたは。ちょっとぐらい話してくれてもいいんじゃない? まぁ、 「そういうことにしといてあげるわ」  ――出来るだけ早く、話してよね……。 「私にだって調子の悪いときはあるさ! それとも何、私が調子悪いと槍でも降ると!?」 「そ、そうじゃないけど……」 「実を言うとさ、今やってるゲームが難しくてね~手詰まりで困ってるのさー」 「そうなの?」 「なんなら今度つかさにも貸してあげるよ? 内容は……んふふふふ」 「え、遠慮しとくよー」  ちょっとだけ、いつものこなちゃんに戻ったかな?  ――元気出して、こなちゃん……。 「私には何もできないかもしれません……けれど、話すだけでも」 「うん……」 「やはり話せませんか?」 「ごめん」  でき得ることならば、話を聞いて、共に悩みたい。これは友としてのエゴなのでしょうか。  あなたの目に映る私は、頼りないですか……?  ――待っていますよ、泉さん……。 act1/宣告 「嘘……? 引越し?」 「そうだ、仕事の都合でな。パリに行くことになった」 「パリって、そんないきなり……期間はどれくらいなの?」 「二、三年か、場合によってはもっと延びるかも知れん」 「結構……長いね」 「ああ、それで、だ。お前はここに残れ」 「え!?」 「お前はもう一年もしないうちに卒業だ。今、友達と別れるのは辛いだろう」 「でも……」 「ゆーちゃんのこともある。あの子はまだ一年生で越してきたばかりだ。体のことを考えたら、一人暮らしさせるわけにはいかないしな」 「それは……そうかもしれないけど……」 「なぁに、俺は大丈夫だ! 一生会えなくなるわけでもないんだから」 「ん……」  正直、驚いた。引越しもだけど、それ以上に、お父さんが一人で行くと言ったことに。  お父さんの性格を考えれば不思議なことじゃない……いつもはっちゃけてるけど、優しくて、愛されてる自信はある。  確かに、今引っ越すのは辛い。せっかく出来た仲のいい友達と、別れるのは、すごく……辛い。  私がいなくなったら、ゆーちゃんはどうするんだろう? 実家に戻って……いや、元々陵桜まで遠いってことで、うちに来たんだから、それは難しいかもしれない。  一人暮らし――は無理だ。お父さんが言ってたように、ゆーちゃんは体が弱い、一人のときに体調が悪くなったら大変だ。  寮に入ったとしても、ゆーちゃんのことだ、我慢しすぎて、ってこともありうる。  総合的に考えれば、お父さんの出した答えが最良なのかもしれない……。  けれど……私がここに残ったら、お父さんは一人だ。そんなことをしたら、お母さんに顔向けできない。  私は……どうすればいいんだろう……。  ――その夜、結局私は殆ど寝ることができなかった。誰にも迷惑をかけない、悲しませない。そんなありもしない方法を、ずっと考えていた。 「学校……どうしようかな……」  休もうか、とも考えたけど、どうせ明日は休みだ。今日は無理にでも行っておこう。  かがみとつかさ。もし、私がいなくなったら……二人とも、悲しむかな。 「おぉ~い」 「あ、おはよ~こなちゃん」 「おはよーかがみ、つかさ」 「おはよ、って何だまたネトゲで夜更かしかぁ?」  違うって! まぁ、そう思われる方が都合はいいけどさ、ひどくない? 「んん、まぁ、そんなとこ~」 「全く……いい加減、自制できる様になりなさいよね」 「分かってはいるんだけどねぇ、なかなかやめ辛いものなのだよ」  実際そうなんだよねぇ、あとちょっと! がなかなか……ってこれじゃそう思われても文句言えないね。日頃の行いって奴? 「はぁ、あんたの将来が心配だわ」 「なんだとぉー! かがみには言われたくないよ」 「なっ!? どういう意味よそれ!」 「あんまりツンツンしてるから、私以外に嫁の貰い手がっ」 「殴るわよ」 「お、お姉ちゃん。もう殴ってるよ……」 「ふぉぉぉぉ。この暴力女め!」 「なんですってぇ……!?」  拳にオーラを纏い、口からブレスを漏らすかがみを見て、私は全速力で逃げ出す。 「あ、こら待ちなさい!」 「待てといわれて待つ奴はいない!」 「二人とも待ってよー」  将来……か、ホントどうなるんだろうね……。  因みに、私のこれから数分先は『教室で二発目を食らう』なのだけど。  よし、やっと振り切ったみたいだ。 「おはようございます。泉さん」 「あ、おはよう。みゆきさん」 「目が赤いですが、どうかなされたんですか?」 「寝不足でね~気がついたら朝だったよ」 「それは何故?」 「何故って……」 「どうして寝不足なんですか?」  なんだろう、今日のみゆきさんは嫌に突っ込んでくる。 「ネトゲに夢中になっちゃてね。それだけだよ」 「そうですか?」 「ん……みゆきさん、怒ってる?」 「いえ、何も。泉さん、あまり無理をしないでくださいね。困ったことがあったら、すぐに言ってください」 「……うん。ありがと」  まさか? いや、特別変な行動した覚えはないし、昨日の今日で知ってるわけも――。 「こなたぁ!?」 「ひぃ!」 act2/心配 「ねぇ、こなちゃん。この頃変だよ? 大丈夫?」 「そぉ? 別になんともないよ」 「私たちともあんまり遊ばないし、その……そういう話もしないし」  『さっき』同じこと言われたよ。さすが双子。 「つかさは、気にしすぎだよ~」 「だって、気になるよ……」 「むぅ、私にだって調子の悪いときはあるさ! それとも何、私が調子悪いと槍でも降ると!?」  もう大丈夫、私はいつも通りだから。 「そ、そうじゃないけど……」 「実を言うとさ、今やってるゲームが難しくてね~手詰まりで困ってるのさー」 「そうなの?」 「なんなら今度つかさにも貸してあげるよ? 内容は……んふふふふ」 「え、遠慮しとくよー」  そう。いつも通り、今まで通りに……。  放課後、黒井先生に居残るように言われた。理由は『秘密や』だそうだ。  成績の話とかは勘弁して欲しいなぁ……。 「んじゃ高良、後は頼んだで」 「はい、ありがとうございました」  そう言うと、先生はスタスタと出て行ってしまった。残るように言ったのは先生なのに? 「どゆこと?」 「泉さんを残ってもらうように先生に頼んだのは私、と言うことです」 「? なんでまた?」 「……泉さん、何か悩みがあるのではありませんか?」 「ないよ」 「言い方を変えましょう。泉さんの悩みはなんですか?」 「変わんなくない?」 「いいえ? あるかないかではなく、泉さんが確かに抱えている悩みの内容を聞いています」 「……いやー、はは。今度パソコンを新しくしようと思っててさ。安い買い物じゃないから、色々――」 「嘘ですね」 「まぁ……ね」 「私には何もできないかもしれません……けれど、話すだけでも」 「うん……」 「やはり話せませんか?」 「ごめん」 「……そうですか、わかりました。でも、時が来たら、必ず話してください。待ってますから」 「ありがとう、みゆきさん……」 「こなた」 「ん?」 「あんたさ、なんかあった?」  今度は、かがみか……。『こないだ』みゆきさんにも聞かれたっけな。 「何で?」 「何で? じゃないわよ。最近変よ、あんた」 「そうかな?」 「遊びに誘っても断るし、オタクネタも振ってこないしね」 「ひどっ! ていうか私が変なのは元からジャン」 「茶化さないの」 「……実は、ね」 「うん」 「どっちのルート行こうか迷っててさ~!」 「はぁ?」 「今やってるギャルゲでね。ツンデレっ娘とメガネっ娘がいるんだけど」  だから、心配しないで。私はなんともないから。 「どっちも可愛くてさ~」 「はぁ……ったく、心配した私が馬鹿だったわ」 「ツンデレかがみん、萌え~」 「ツンデレ言うな!」 「いいじゃぁん」 「――るわ」 「え? 何?」 「別に。ほら、いくわよ」 「ちょ、気になるって~」  決めたから。私は残って、みんなと過ごすから。それならかがみ達も悲しまない、ゆーちゃんだって、ここにいられるんだ。 「お姉ちゃん……入ってもいい?」  「ゆーちゃん? いいよ、入って~」 「お邪魔します」  入ってきたゆーちゃんは、いつもとは雰囲気が違っていた。妙にまごまごしている。 「何か、あったの?」 「あのね……引越しのこと……」 「……お父さんから、聞いた?」 「ううん、その……お姉ちゃんたちが話してるところ聞いちゃって」 「そっか……」  あれから、もう一週間以上は経つ。引越しまであと二週間ちょっと。そろそろ話さないと、だったしね。 「でも、何? 聞いてたなら私が残ることになってるのも知ってるよね?」 「知ってるよ……知ってるけど……本当に、いいの?」  やめて。 「……何が」 「あの……おじさんについて行かなくていいの?」  やめてよ。 「……何で?」 「なんでって……」  せっかく決めたのに。 「おじさんは、お姉ちゃんの大事な」 「だからなんで!!」  ――ドン! と大きな音が一つ。 「!?」 「そんなの……ゆーちゃんに言われることじゃないよ。残るって言ってるんだから、それでいいでしょ……心配しなくてもゆーちゃんが卒業するまでここにいるよ」 「ち、ちが……」 「何が違うのさ! そりゃお父さんは大事だよ、でも仕方ないでしょ! 私だけの問題じゃないんだから……これ以上困らせないで!」 「っ…」  ゆーちゃんは部屋を飛び出していった。涙を流しながら。  ――やって、しまった。机を叩いた手が、痛い。そして、ゆーちゃんの心は、もっと……。  私、最低だ……八つ当たりして、傷つけて……。 「何、やってるんだろ……」 act3/怒り 「――なた、聞いてんの?」 「あ、何?」 「いい加減にしなさい!」 「っ!?」 「お、お姉ちゃん!」 「落ち着いてください、かがみさん!」 「ご、ごめん。そんな怒らないで」 「はあ!? この前からずっと考え事して、話しかけても上の空。それで怒るなですって!?」 「それは……」 「悩みがあんなら話しなさいよ!」 「でも……かがみには」 「関係ないとでも言いたいわけ!? ふざけんじゃないわよ!」 「かがみさん、皆さん見てますから……」 「どうでもいいわよ、そんなこと!」  止めに入るみゆきさんと、オロオロするつかさをよそに。たぶん、半泣きの私にかがみは続けた。 「あ、あの……」 「私たち友達じゃなかったの!? 何とか言いなさいよ! こなた!」 「うっ……」 「待ちなさい、こなた!」「泉さん!」「こなちゃん!」  堪えられなくなった私は、逃げるように教室を出た。  ゆーちゃんにひどいことした罰かな。かがみに嫌われちゃった……。はは、自業自得だね……。 「かがみさん、お気持ちは分かります。しかし、あまり怒らないであげてください。泉さんにも話せない理由が……」 「そうじゃ、ないわよ」 「どういうこと? お姉ちゃん」 「私が許せないのは……友達が悩んでるのに何も出来ない自分よ……」 「お姉ちゃん……」  かがみさんは俯いて、言葉を搾り出していました。 「それに、こなたと出会ってから今まで、それなりに関係築いてきたつもりだったけど、全然だったみたいね」 「そんなことは、ないと」 「みゆきも本当は分かってるんでしょ? あいつ、『話せない』んじゃなくて『話さない』のよ」  そう、感じてはいた。泉さんは『話さない』。つまり、話せる内容ではあるけれど、私たちには話したくないという事。  信頼を置いていれば……でも、 「でも、だからこそ、ではないでしょうか」 「え?」 「泉さんは、とても優しい方です。だからこそ話したくない。話せないのだと思います」 「それは……まぁ」 「私もそう思う! こなちゃんって意外と責任感強いから、私たちに迷惑かけたくないんじゃないかな?」 「意外に、って……こなたが聞いたら泣くわよ」 「お姉ちゃんがさっき泣かしたよ?」 「ぐ……そ、その迷惑をってのも水臭いのよ。友達なんだから、迷惑ぐらいかけてくれても……」 「ええ、同感です。でも、ここにいる私たちも、自分がそんな立場になったら、泉さんと同じようなことになったと思います」 「そう、ね……」  こうなってしまっては、泉さんが話してくれるのを待つわけにもいきません。だから、 「お二人とも、私に任せていただけませんか? 放課後、泉さんへお宅へ行こうかと」 「私も行きたいけど……あの後じゃ顔を合わせ辛いわね」 「うん! 私がいくと邪魔になっちゃうだろうから」 「みゆきに任せるわ」「ゆきちゃんに任せるよ!」  返事を受けて、私は頷く。 「では、そのように」 「邪魔に、って言うのは否定しないんだね」 「え!? 決してそのようなことは! ただ、話の腰を折られてしまう可能性とかですね」 「フーン……」 「で、ですからっ――」 「あ、おかえり、お姉ちゃん」 「ただいま、ゆーちゃん」  あの日から、私たちは殆ど会話をしていない。今みたいに、ただいまとおかえり、おはようとおやすみ、挨拶だけ……。  当然、一緒に暮らしていて、お父さんが気付かないはずもない、理由についても。  そのことで、謝られてしまった。悪いのは、私なのに。  これが罰だって言うなら、私は……。  そんな風に考えていたときコンコン、と部屋の扉が叩かれた。 「あの、ゆたかです」 「ゆ、ゆーちゃん?」 「今、高良先輩が……」 「みゆきさん?」  電話かな。そうつぶやきながら扉を開けたその先にいたのは――。 act4/本心 「本題から言いますね」 「はい」 「泉さん、あなたの悩みを聞かせてください」 「……」 「もう、分かっていますよね。このままでいいんですか?」 「……うん、全部、話すよ」  私は話した。引越しのこと。こっちに残るよう言われたこと。残るかどうか、悩んでいたこと。  そして、ゆーちゃんを傷つけたことも。全部。 「パリ、ですか……」 「うん」 「泉さんはどうしたいんですか?」 「私は……残るよ。それならゆーちゃんもここにいられるし、みゆきさん達とも」 「そうではありません。泉さんがどうしたいかを聞いています」 「それって」 「あの時と同じ、似ていても意味は違います。『どうすべきか』、ではなく『どうしたいか』。周りに関係なく、あなたの気持ちを」  問いかけるみゆきさんの目は、とても澄んでいて、私は、目を合わせていられなかった。 「私……私は……」 「……はっきり言って、今の泉さんは格好悪いです」 「かっこ、悪い?」 「私には、あなたが逃げいるようにしか見えません」 「そ、そんなこと!」 「違うんですか? 口を開けば、小早川さんのため。私やかがみさん、つかささんが悲しむ。そうやって責任を押し付けているだけじゃありませんか」  違う! そう反論することが、私にはできなかった。  もちろん、そんなつもりはなかった。なかった、けど……。  言われて気付く。私は怖かっただけだ。どちらかを選ぶことで、どちらかに嫌われるのが。 「誰かのためだと言うことで、これは仕方ないんだと。自分にもそう言い聞かせていたんじゃありませんか?」 「そう、だね……」 「と、そういう見方もあります」 「え?」 「泉さんの友人である、高良みゆきとしては、嬉しいことです」  そう言うと、みゆきさんは目を瞑り、静かに、言葉を続けた。 「自分が大変な立場になって、それでも私たちのことを想ってくれる泉さんの優しさが……すごく、嬉しいです」 「優しさなんて……私は……」 「でも私は、泉さんが、自分の想いを隠したまま、悲しみを背負ってしまう事のほうがもっと辛いです。それはきっと、かがみさんたちも同じだと思います」 「みゆきさん……」 「ですから、もう一度、よく考えてみてください。泉さんはどうしたいのか、本当の気持ちを――」  みゆきさんが帰った後、私はゆーちゃんに謝った。謝りすぎだよ、と少し笑われてしまったけど。 「本当にごめんね、ゆーちゃん」 「もういいよ。お姉ちゃんが悩んでるのも知ってたし、私のことを気にしてくれてるのも知ってたから……」 「……それでね、もう一つ謝ることがあるんだ」 「……おじさんと、行くって決めたんだよね?」 「わかっちゃった?」 「なんとなくだけど、行きたいんじゃないかな、って思ってた。おじさんはお姉ちゃんの大切な家族だもん」 「ゆーちゃんだって、大切な家族だよ!」 「あ、うん。自分で言うのもなんだけど分かってるよ? 私もそうだし……」 「ごめんね、ゆーちゃん」 「謝らないで! お別れするのは寂しいけどお姉ちゃんが決めた事だから、それが一番だよ」 「ありがとう。でも、学校のこととか……」 「大丈夫だよ、そのことも私頑張ってみるから」 「そっか……出来ることあったら、なんでも言って? 絶対力になるから!」 「うん!」  私が自分の意志で決めたことを、みゆきさんたちにも伝えなければ……!  かがみは許してくれるだろうか? ……いや、そうじゃない。許されるために謝るんじゃない。  悪いと思った、その気持ちを伝えるんだ。  全ては――明日! act5/告白  そう決めて、登校したはいいものの、やっぱり落ち着かないもので。  授業に集中できず、黒井先生の鉄拳を二回ほど食らった。  みんなには『話があるから』と、放課後残ってくれるように言ってある。  私は今日、一人でお昼を食べている。いつ以来だろう……、こんなに寂しいものだったっけ?  色々な事を考えているうちに時間は過ぎ、その時は来た。 「――これが、私が悩んでた理由だよ」 「なんでそんな大事なこと黙ってたのよ馬鹿!」 「そうだよ、こなちゃん!」 「ごめんなさい、馬鹿です……」 「まぁまぁ、お二人とも。それで……決められたんですよね?」 「うん。私……お父さんと一緒に、パリへ行くよ」  それを聞いたかがみとつかさは、すごく驚いていた。当然と言えば当然だけど。みゆきさんだけは、予想していたのか、落ち着いている。  つかさなんかはもう、泣き出しちゃって。 「いつ行くのよ?」 「あと十日ぐらい、かな」 「早いわね……」 「あまり、時間がありませんね」 「こなちゃん、ホントにいなくなっちゃうの?」 「うん……ごめん、つかさ」 「うう……ぐす……」 「ほら、あんまり泣かないの」  そういうかかがみの目にも、涙がたまっていて。私は心が痛んだ。  でも、それでも、私はお父さんを一人にしたくないから。そう、『私が』 「あのさ、私、欲しいものがあるんだけど、いいかな」 「もちろんよ!」 「ええ、お任せください」 「何でも言って!」 「約束を――」  十日間で、色々なことがあった。と言っても、今までどおりなんだけど。カラオケに行ったり、映画を見たり、たくさん。  ただ、一つだけ変わったことがあった。  それはゆーちゃんが『自分から』、ゆい姉さんに、この家で一緒に暮らして欲しい、と頼んだことだ。  勿論、私たちは承諾済みで、ゆい姉さんには一緒に頭を下げた。  曰く『ゆたかのお願いだもん、全然オッケーだよ! どうせ今は一人だしね……』と。後半部分には触れないようにしておこう。  そして、私たちは旅立った。  空港で、みんなに見送られながら。泣かないようにって思ってたんだけど、やっぱり泣いちゃった……。 「みんな……またね!」 act6/こなた  辛い別れ、でも、それは永遠じゃない。  貰った再会の約束を。  何年かかってもいい、また四人で。 「さて、と」 「あれ、姉さん? おはよ~」 「おはよう、起こしちゃった?」 「ううん、こんな朝早くどうしたの? 昨日帰ったばかりだし、パーティで疲れてるんじゃ」 「そうなんだけどね。ちょっと、三年越しの約束を果たしに」 「あ……そっか……」 「そゆこと♪」 「行ってらっしゃい、こなた姉さん!」 「うん、いってきます!」 ~fin~

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