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次の選挙では~、○○~、○○にぜひ清き一票を――
5月27日。目覚ましの音ではなく、選挙カーの上のウグイス嬢が放つ甲高い声で泉こなたは目を覚ました。
「……んもぉ……久しぶりの休みなんだから、ゆっくり寝かしてよ……」
この言葉からわかる通り、この日は休日。仕事や学業で疲れた体や頭を休める日である。
「うげ……まだ10時じゃん……お昼まで寝てようと思ってたのに……」
そして彼女は典型的なインドア派・オタクであった。
昨日の就寝時間は午前3時。『昨日の』という言葉を使ったが、最早そんなものは通用しない時間帯だ。
「仕方ない……起きるか……」
こなたはまだ18歳。選挙権こそないものの、○○に投票する気はまったくもって起きなかった。
どこにも行く予定はないので、今日『も』パジャマのまま一日中過ごしてもいいかな、と思ったが……
「あ」
ふとカレンダーに目が行く。その瞬間、彼女は思い出した。
「今日『ハ○ヒ』の発売日じゃん。ア○メイト行かなきゃ」
クローゼットを開け、ちょっとしたお出掛け用の服に着替える。
脱いだ服はそこら辺にぶん投げておく。洗濯は帰ってから、まずはアニメ○トだ!
「さーて、行ってくるかな」
財布よし、中身よし、定期よし、ポイントカードよし。準備は万端、意気揚々と扉を開ける。
――ガン☆
「あう!?」
鈍い音と、小さく叫ぶ声がこなたの耳に届いた。
嫌な予感がしておそるおそる扉から出ると……
「ううぅ……」
「ゆーちゃん!!」
こなたの従妹であるゆーちゃん――小早川ゆたかが赤くなった額を抑え、涙目で扉の前に蹲っていた。
こなたが開けた扉が、たまたま通り掛かったゆたかの額に直撃したのだ。
「ごめん、ゆーちゃん! 大丈夫!?」
「う、うん……大丈夫だよ、こなたお姉ちゃん……」
相当痛いはずなのに、心配をかけまいと健気に笑うゆたか。
ゆたかのそんな思いを知っているだけに、無理をしているんじゃないかと不安になる。
これが他の女の子だったら『ごめんね』だけで済ますのだが……
ゆたかは生まれつき身体が弱く、またこなたにとって大切な妹でもあるため、ちょっとした出来事でもこれほどまでに狼狽するのだ。
「ほ、本当に大丈夫……?」
「大丈夫。もう痛みも引いてきたから。お姉ちゃん、どこか行くの?」
「う、うん。アニ○イトに行くつもりだったんだ」
「そっか。じゃあ、行ってらっしゃい」
廊下をゆっくり歩いていくゆたか。やはりまだ痛いのだろう、少しよろけている。
――帰りに何かお詫びの品を買って来ないとね――
そう心に誓って、こなたは自宅を後にした。
「……さて、これをどうしようか……」
夜。○ニメイトに行った帰りにゲームセンターに寄ったこなたは、UFOキャッチャーで取ってきたにゃもーぬいぐるみを見つめていた。
直接渡すのも気恥ずかしい。ゆたかの笑顔を見ると、こっちが照れてしまう。
「……仕方ない。今日は諦めるか……」
時計の短針はすでに10時を差している。時間帯的に、ゆたかはもう眠っているだろう。
また明日にしようかと自分のベッドにぬいぐるみを置き、パソコンの電源を入れてネトゲに興じた。
「あー、もうこんな時間か」
ふと時計を見ると、12時をまわろうとしていた。
普段ならまだまだネトゲを続けるのだが、ここ最近は平日であるにも関わらず深夜までネトゲをしていた。
さすがに少し自重しようとパソコンの電源を切る。
とその時、時計の針がちょうど12時を差した。
『がちゃがちゃきゅーっとふぃぎゅあっと♪ この町に降りた天使(エンジェル)♪』
「お、メールだ」
最近になってようやく持つようになったケータイを開き、メールの内容を確認。
「……!」
その内容を見たこなたは数秒間硬直し、そして思わず笑みがこぼれた。
「ふふふ……」
ベッドに置いたぬいぐるみを持って自室から出る。
彼女が向かったのは、隣のゆたかの部屋。ゆっくりと扉を開き、中に入る。
途中で力尽きたのだろう、『メールを送信しました』の文字が表示されている携帯を握り締めたまま、ゆたかはベッドの上で寝息をたてていた。
「眠いの我慢して、こんな時間まで……」
こなたはゆたかの頭を撫でる。「ん……」と小さく声を発したが、起きることはない。
電池の消費量がもったいないのでゆたかの手から携帯を抜き取り、電源を切って机の上に置く。
そして持ってきたぬいぐるみを、他のぬいぐるみが置いてあるところに並べて置いた。
「じゃあ、おやすみ、ゆーちゃん。今日はありがとうね」
ベッドで眠る少女に手を振りながら呟くと、こなたは扉をゆっくりと閉めた。
受信日:5月28日
受信時刻:0:00
本文:こなたお姉ちゃん、Happy Birthday!!