「まざー・こんぷれっくす」ID:oSSXuIDO氏

「「まざー・こんぷれっくす」ID:oSSXuIDO氏」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

「まざー・こんぷれっくす」ID:oSSXuIDO氏」(2008/05/07 (水) 22:40:39) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

〈こなたside〉 私は『母の日』が大っ嫌いだ。 なぜなら、私にお母さんがいないからだ。 周りの人は、「お母さん、嬉しがっていた」とか、 「お礼にケーキ買ってもらっちゃった」とか、はしゃいでいたり。 その光景、私には耐えられなかった。 お母さんのいない私を蔑むような気がして。 ……否、実際に私を蔑んでいたのだ。 私を哀れむような視線が、耐えられなかった。 「こなた、そろそろ行くぞ」 「……うん……」 中学を卒業し、私は遠く離れた埼玉県にある陵桜を受験、見事に受かった。 今の学校には未練なんか何一つなかった。 あるのは――不安。今の中学から、陵桜に行くのは私だけ。 ただでさえ私はオタクなのだ。友達ができるか、あまり希望はない。 そして、陵桜に初登校する時がきた。 ☆ 陵桜に入学してから1ヶ月が経った。 まさかこんなに早く友達が出来るなんて思わなかったな。 担任の先生も、ネトゲで同じパーティにいたし。なんたる偶然。 「どっちかってゆーと、かがみは……オーク!」 「な! 私だけ怪物か!」 「オーク……ですか?」 「ゆきちゃん、オークってのは……」 「だー! つかさ、しゃべるな!」 うーん、賑やかだなあ。辛かった出来事が嘘のようだよ。 「そういえば、もうすぐ母の日だね!」 ……そう、嘘だったらどんなによかったのかな…… 「私達は今年もカーネーションをプレゼントするんだ!」 「家族みんなで一本ずつプレゼント。これ、恒例になってるのよ。みゆきは?」 「そうですね……私は、しばらく母の日をお祝いしていませんでしたね……」 ……いや、わかってる。みんなに悪気はない。みんな、私にお母さんがいないって知らないんだから……。 わかってる。わかってはいるんだけど…… すべてが私を見下しているかのように錯覚しちゃう。重症だな、これは。 「ねえ、こなちゃんは、毎年お母さんに何かあげてたの?」 もちろん。直接渡せたことはないけど、毎年、母の日とお母さんの誕生日には、 必ずお母さんの大好きだったというパンジーを仏壇・お墓に供えている。 そう、『供えて』いる。だから悔しい。お母さんに、何もプレゼントしてあげられなかったことが。 それに、お母さんのコト、ほとんど憶えていないから……余計に悔しい。 「どうしたのよ? こなたが考え込んでるなんて珍しいわね」 「何か悩み事があるのなら、ご相談に乗りますよ?」 あっ、しまった。答えるのを忘れちゃった。 「ううん、大丈夫。大したことじゃないから」 「そう? それならいいけど」 本当は、大したことなんだけどね…… ああ、このまま時が止まっちゃえば良いのに。 もしくは、母の日なんて無くなっちゃえばいいのに。   私の嫌いな日は、すぐ近くにせまっている。 ☆ 母の日。この日が日曜でよかったと思う。 今、私はお母さんのお墓の前にいる。もちろん、お父さんも一緒。 お母さんが大好きだったというパンジーの花を、花瓶にたてる。 花瓶に寄りかかり、力なくうなだれる花。まるで、今の私みたい。       私は、この場所が好きでもあり嫌いでもある。 好きな理由としては、お母さんの近くにいると感じられること。 案外、近くで私たちを見てたりして。   嫌いな理由は、お母さんがいないという事実を突き付けられるから。 時々、思うんだ。『お母さんは、ホントはどこかで生きているんじゃないか』って。 でも……ここにくると、淡い希望はあっさりと打ち砕かれる。 やっぱりお母さんはいないんだと、思い知らされる。 「あれ………?」 おかしいな、涙が出てきちゃった。 今まで、ここにきても一度も泣かなかったのに、なんで今日は……? 「……こなた……やっぱり、淋しいのか……?」 ……認めたくないけど……私は淋しいんだ。お母さんがいなくて。 この間の一件で、それが表にでてきちゃったんだ。 お母さんの分まで、お父さんが頑張ってきてくれた事はわかる。 だから私も、できるだけ弱さを見せないようにした。お父さんを心配させたくなかったから。 「こなた、オレの胸なら、貸してやるぞ?」 「…ひっく……ありが……っ……お父さ…」 全部言い切る前に、私の涙腺が限界を迎えた。 「ぅあ……っ……うわあああぁぁぁ……!!」 周りに人はいない。幽霊さんとかには迷惑だったかもしれないけど、私は涙が枯れるまで泣き続けた。 それしか……できなかったから。 ☆ 気が付いたら、私は自分の部屋にいた。目の前には、お父さんがいる。 どうやらあの後、私は眠っちゃったみたい。 「こなた、今日は疲れたろ。ゆっくり休みなさい」 「……うん」 結局、お父さんに迷惑をかけちゃったな。 もう少し、お母さんといたかったんだろうけど…… 今度、お父さんの誕生日の時、今まで以上にお祝いしてあげよう。 今まで私を、男手一人で育ててくれたお礼に。 でも……はぁ、明日が憂鬱だ。私が壊れなきゃ良いけど。       私は実は、母の日自体はそんなに嫌いなほうじゃない。 私が嫌いなのはその次の日。つまり、明日なんだ…… 〈かがみside〉 私は母の日が大好きだ。 いつもは恥ずかしくって言えないけど、 母の日があるからお母さんに「ありがとう」が言える。 こなたが聞いたら「やっぱりツンデレだー」って言うんだろうけど。 「はい、お母さん。いつもありがとー」 「……えっと……ありがと……//」 毎年、一人一本のカーネーションを渡してるけど、 ありがとうがなかなか言えないのよね。 「うふふ……どういたしまして」 確かに恥ずかしいけど、この笑顔が見たときに、『言ってよかった』って思える。   でも……この世のなかには、お母さんがいない家庭もあるのよね…… そんな人が身近にいたら……私、慰めてあげられるのかな…… 「よーし。今日は奮発して、お母さんのために何か作ってあげる!」 つかさがエプロンをかける。 私も、手伝おうっと。お母さんがいるという当たり前のことが、幸せなんだから。 『親孝行したい時に親はなし』って言うし、今のうちに親孝行しないとね! ☆ 次の日の登校時、こなたとは会わなかった。ま、あいつのことだからまた遅刻か何かでしょ。 授業の準備をしてから、つかさ達のクラスに顔を出した。 「おっす!」 「あ、お姉ちゃん」 「かがみさん、おはようございます」 あら? こなた、まだ来てないのね。でも、そのうちくるか。 「昨日、お母さんにカーネーションの花束を渡したら、とても喜んでくれまして……」 「私達もー。お姉ちゃんと一緒に料理も作ってあげたんだよ。  ……そういえば、なんで母の日にはカーネーションをあげるの?」 「それはですね……」 みゆきによる母の日に関する豆知識など、いろいろ他愛のない話をしているうちに、ホームルームが始まりそうな時間になった。 「じゃ、また後でね」 そう言って、私は教室を出た。 「あ、かがみん……」 「あれ? こなた、今来たの?」 教室に戻る途中、廊下でこなたと会った。 荷物を持っているから、今来たばかりなのだろう。 「う、うん……ちょっとね…。ケホッ」 ははぁん、そういうことか…… 「風邪を引いてるのにちゃんと来るなんて偉いわね。来るかどうかギリギリまで悩んだんでしょ?」 「あ、うん。そんなに大事じゃないから行けってお父さんが。コホッ。  本当は授業が面倒だから休みたかったんだけどね……」 頭を掻いてはにかむこなた。 私は「こなたらしい考えね」と笑い、こなたと別れた。 でも反応を見る限り、それだけじゃないような気がするんだけど…… ☆ 「あれ? こなたは?」 「休み時間が始まった瞬間に出てっちゃったけど……」 風邪引いてるのに? どうかしたのかしら? 「………」 「みゆき、どうしたの?」 「あ、いえ……なんでもないです」 そうは見えないんだけどなぁ。こなたもみゆきも何かおかしいわね……     結局その日、学校の中でこなたに会うことはなかった。 帰る前につかさがこなたを捕まえていたから、帰りは一緒だったけど。 「なんで私達から逃げてたのよ?」 「いや、つかさやみゆきさんに風邪移したら悪いし。ゲホッ」 「ちょっとこなちゃん、お姉ちゃんは!?」 「かがみんはツンデレだから大丈夫でしょ」 「何よその定義!? ていうか、私はツンデレじゃないっつーの!」 あーもう! 何度言ったらわかるのよ!? 「まったく、も~!」 「あはは……ゲホっ! ゲホっ! はぁ……はぁ……」 「こ、こなちゃん!?」 「これは……今朝よりも大分悪化してますね……!」 「ちょっと、大丈夫!?」 「見れば……わかるよね……?」 こなたの具合が相当悪い。私達はとりあえずこなたを家まで送っていくことにした。 「ちょ、ここまでしてくれなくても大丈夫だよ……」 「病人は無理するなっつーの。黙っておんぶされてな」 腰を下げ、こなたに背を向ける。 さっきのこなた、かなり辛そうだったし、運んであげることにした。 「…はは、やっぱりかがみはツンデレだー」 「次言ったら乗せてやらないぞ」 「冗談だって……。じゃ、お言葉に甘えさせてもらうとしますか……」 こなたが私の肩に腕を掛け、それと同時に私は立ち上がる。…って、軽!! 「はぁ…はぁ……、病気になると、なんかネガティブになるね……」 私もよく風邪ひくけど、確かにそうね。 「じゃあ、暗い気分を吹き飛ばす話題ってことで、 昨日こなちゃんはお母さんにカーネーションとかプレゼントした?」 「!!」 「あんたお父さん子だから、さぞ喜んだでしょうね?」 からかうようにニシシと笑う。しかし、こなたからの返事はない。 「……こなた、どうした?」 「……うぁ……あああ!」 「ちょ、こなた!?」 私の背中で激しく泣きじゃくる。 今の質問のどこに泣く作用があった!? 「二人とも……バカァ! うあああああああああ!!」 え、何!? 私達のせいなの!? 「…うぁ……っ……」 「……?」 大声で泣いていたかと思いきや、今度は一気に静かになった。 スースーと寝息が聞こえることから、泣き疲れて眠ったみたい。 「こなちゃん、どうしちゃったのかな……」 「ホント、なんでいきなり泣きだしたのかしら……」 私、何か悪いこと言ったかしら…… 「みゆき、あんた何か知ってるんじゃないの?」 さっきからみゆきの様子が変だった。 多分、何かに気付いたんだと思う。 「あ、あの……」 コホンと咳払いをし、「これは推論なんですが」と前置きして話し始めた。 「泉さんには……お母さんがいないのではないでしょうか…」 『……え……?』 こなたに……お母さんがいない……? 「泉さんは、以前から『お母さん』という単語に反応していましたし、  先ほどお二人が言ったセリフの内容からしますと、そう考えるのが妥当かと。  私達を避けていたのも、その話題を振られたくなかったと考えれば、つじつまが合います」 た、確かに…… じゃあ、私達は知らず知らずのうちにこなたを傷つけてたって言うの!? 「みゆき、なんで黙ってたの!? 言ってくれれば、こなたを泣かせなくて済んだかもしれなかったのに!!」 「……私の推論が間違っている可能性もあります。 もし、間違っていたら、別の意味で泉さんを傷つけることに……」 あ…… 私、馬鹿だ…… こなたのことをわかってやれなかっただけじゃなくて、みゆきにまで八つ当たりするなんて……友達失格だな…… 「まずは事実確認しなければなりませんね」 「……でも……」 もしみゆきの推論が当たっていたら、こなたに何をしてあげたらいいの? どうすればいいのか、わからないよ…… 「こなちゃんが起きたら……まずは謝らないと。話はそれからだよ……」 そう……ね。許してくれるかはわからないけど…それしかないものね…… ☆ こなたの家についた。こなたは相変わらず、私の背中で眠ったままだ。 インターホンを押すと、中から藍色の髪をした男性が出てきた。 こなたと同じ位置にほくろがある。確実にこなたのお父さんだろう。 「あれ、どちらさまかな?」 「あの、私達はコイツの友達で……」 振り返り、背負っているこなたを見せる。その瞬間、こなたのお父さんが驚愕する。 「こな……!? ととと、とにかくあがって!!」 う~ん、動揺してるね……       こなたの部屋に入り、ベッドに寝かせる。 「くそ、やっぱり病院に行かせておけば良かったか……」 罪悪感からか、こなたのお父さん――そうじろうさんが顔をおさえる。 「……しばらく、様子を見ましょう。それに、そうじろうさんに聞きたいこともありますし」 「俺に……?」 私達は、さっきみゆきがした推論、加えてさっきのこなた号泣事件も話した。 「……ああ、みゆきちゃんの言うとおりだよ。アイツは……かなたは、こなたが生まれてすぐに……」 ……やっぱり。こなたは、お母さんがいないことにコンプレックスを抱いていたんだ…… 「こなたはな、中学の頃からそれをネタにいじめられていたんだ。」 『…え……?』 コンプレックスじゃなくて……いじめが原因……? 「こなたがここに決めたのは、同級生が誰もいなかったからなんだ。  誰も自分のことを知らない地でなら、母親がいないことを気付かれる心配はない、って」 「でも……その読みは見事に外れちゃったよ……」 こなたのベッドを見ると、横になったまま顔をこちら側に向けているこなたがいた。 「こなた! さっきは本当に……」 「いや……いいよ…」 え……? 「かがみのセリフが……いじめられてた頃に言われてたセリフそのものだったんだ……  だから……なんだか、二人まで私をいじめてるような気がしちゃって……  だから、二人は悪くないよ……勝手に錯覚した私が悪いから……」 「ううん、そんなことないよ! 私達が余計なことを言わなければ良かったんだよ!  そうすれば、こなちゃんを嫌な気持ちにさせなくて済んだんだから!」 そう、そうよ……悪いのは、私達なのよ…… 「……本当にごめんなさい……。だから、罪滅ぼしをさせてほしいの。  あんた、お母さんがいないことを随分根に持ってたみたいだし、  こなたが望むなら……私達がお母さんの代わりをしてあげるわよ?」 「!」 「そうだよ。こなちゃんのお母さんは一人だけど、私達でお母さんの代わりをやるよ!」 「できる範囲でではありますが、やれることはなんでもしますよ」 言ってから、私はビミョーに後悔した。いくらなんでも、クサイわよね…… 「……ありがとう、みんな……」 ……良かった。こなた、吹っ切れたみたい… 「でも……」 「ん?」 なんか、ロクなこと言わなそうな気がする…… 「かがみじゃあ無理なんじゃないかな……? だって料理ヘタだし……」 ……まったく、コイツは…… 「それでこそいつものこなたよ」 「あれ? 怒らないの? いつになく素直なかがみん……萌え♪」 「……病人は黙って寝てろ!」 はぁ、また明日くらいからいつもの騒がしい生活が始まるわね…… 〈エピローグ:こなたside〉 あれから7年が経った。私は結婚もし、子供だっている。 『……そんなこともあったわねぇ。  こなた、あの後すぐに彼氏が出来ちゃったんだもん、ビックリしたわよ』 「つかさもみゆきさんも結婚したし、まだなのかがみんだけだよ?」 『残念でした、こないだ籍を入れたわよ』 「うそ!?」 『ホント。近々、結婚式も開くつもり』 「会場教えてよ! お祝いしたいし!」 『嫌よ! 他の参列者とかに“かがみはツンデレだった”とか言いそうだし!』 「ん~……でも、私が説明するまでも無いんじゃない?」 『……ほほ~……二度と電話かけてくるな!!!』 っ! いきなり受話器切らなくてもいいじゃん……ブツブツ…… まあでも、つかさから聞けばいいか。絶対教えてくれるだろうしね。 「ねー、近々かがみの結婚式があるらしいんだけど、行きたい?」 「んー? そうか、かがみさんもついに結婚したんだ。よし、行くか!」 「はーい、決まりね。じゃあ、つかさに電話を……」 「あ、その前に……ほら。」 「ねぇねぇ、おかーしゃん」 「ん? なぁに?」 「はい、かーねーしょん! きょうは『ははのひ』だよ! おかーしゃん、だいしゅき!!」 「!! ……フフッ、ありがと……」               あれから7年が経ち、私は母の日が待ち遠しくなった。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。