「starry heavens」ID:MrhsWEDO氏

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「ついに、明日ですね」 “そうね。でも、口調とかでばれたりしないかしら?” 「大丈夫ですよ。あいつ、結構にぶちんですし」 “に、にぶちんって……” 「……でも、私としては……ちゃんと会って欲しいんですよ、あいつとも」 “……それは……ダメ。だって私は、もうこの世にいない人間ですから……” 「そっか……そう、ですよね……」 “とにかく、明日は一日よろしくね?” 「ええ、こちらこそ」 ―――1――― 今の時間は午後1時、私とお姉ちゃんはこなちゃんの家の前にいます。 インターホンを押すと、しばらくしてこなちゃんがドアを開けてくれました。 「いらっしゃい! つかさ&かがかっこあ~るわい」 「略すな! しかも口で言うな、口で!!」 「あはは……」 見慣れたやりとり、これが私達の日常です。 いつもならもっと怒っていたでしょうが、今日のかがかっこあ~るわい……じゃなくて、かがみお姉ちゃんは少し違います。 「ったく、こなたはもう18歳になるんだから、自覚を持ちなさいよ、自覚を」 「むぅ……まあ、あがってよ」 「おじゃましま~す」 今日は5月28日、こなちゃんの誕生日なんです。 誕生日パーティーを開くということで、私達もおじゃまさせていただきました(といっても他にはゆきちゃんだけだけど……)。 本当は午前中に行きたかったんだけど、仕事が入って忙しかったのでお昼から来ました。 ちなみに仕事とは神社の掃除などです。 「かがみさん、つかささん。こんにちは」 「こんにちは、ゆきちゃん」 「こんにちは、みゆき!」 こなちゃんの部屋に入ると、もうすでにゆきちゃんがいました。今まで読んでいた本を閉じて私達の方を見上げています。 ゆきちゃんの目の前にこなちゃんが座って、その両隣に私とお姉ちゃんが座りました。 そういえばゆきちゃん、何を読んでたんだろ。えっと……涼宮ハルヒの……読めない…… 「じゃ、催促するようで悪いけどプレゼントを」 「するようでじゃなくて、してるわね」 「私は既に渡しましたので」 「じゃあ、まずは私からね」 そう言って、持ってきた紙袋から綺麗にラッピングした箱をこなちゃんに手渡しました。 「私特製のクッキーだよ。何がいいかわからなかったから……」 「いやあ、下手なもの貰うよりはこういうのがいいかもね」 ほっ……喜んでくれたみたいだね。よかった。 「で、かがみは? 何も持ってきてないけど、まさか忘れてた?」 「そんなわけないでしょ!? ちゃんと覚えてたわよ。でも……」 そこで顔を赤くして、こなちゃんから視線を逸らすお姉ちゃん。 「こなたってさ、『オタク系』なものじゃないと喜びそうもなかったから、何も用意できなくて……」 「それでお姉ちゃんね、ずっと料理の練習をしてきたんだよ」 「つ、つかさ!!」 あれれ? 助け船を出したつもりだったんだけど……もしかして逆効果? こなちゃんは、赤くなったお姉ちゃんの顔を見ながらニマニマしてた。やっぱり逆効果だったみたい…… 「こなたがさっき言ったようにさ、下手なものより食べ物の方が喜ぶと思ったから……料理、頑張って練習したのよ……」 「へえぇ~~~、かがみも可愛いとこあんじゃん」 お姉ちゃん、全身真っ赤……ごめんね…… でも、こんな演技もできるなんてさすがだなぁ…… 「じゃ、じゃあ早速作ってくるわね。美味しくなくても、文句言わないでよね!!」 そう言って、お姉ちゃんは部屋から出ていきました。 「かがみさんの手料理ですか。楽しみですね~」 「ふふふ、今まで必死で頑張ってきたからね、お姉ちゃん」 「さて、終わるまでなんかやろうか。何やる?」 「それじゃね……」 うん、うまく口裏合わせもできたみたい。 久しぶりの料理だろうから、頑張ってくださいね…… ・・・ 「三人ともー、出来たわよー!!」 お姉ちゃんの声がして時計を見てみると、すでに6時を回っていました。 「二人とも、行こっ」 「はい」 「かがみがどれだけ上手くなったのか、楽しみだよ」 今までやっていたゲームの電源を切り、一階に移動します。 リビングのテーブルの上には何かの揚げ物とお味噌汁、そして肉じゃがが乗っていました。 「ん~、良い匂い!」 「ちょっと待ってね、三人とも。今ご飯盛るから」 台所で、エプロン姿のお姉ちゃんが炊飯器の蓋を開けました。 その時、なんとも香ばしい香りが辺りに漂いました。 「炊き込みご飯ですね?」 「そうよ。あ、こなた、おじさんとゆたかちゃんは?」 「今来るって。それにしても……」 お姉ちゃんのエプロン姿をニマニマ笑いながら見てるこなちゃん。 何を言うのか、だいたい予想はつくけど…… 「エプロン姿のお姉ちゃん萌え~」 「ぅお!? つかさに先を越された!」 「はあ……バカやってないで、さっさと座りなさい」 呆れたような口調でご飯を盛るお姉ちゃん。実際、呆れてるんだろうけど…… 私達三人がテーブルについたところで、こなちゃんのお父さんとゆたかちゃんがリビングにやってきました。 それなりに会話をしたところで全員にご飯が行き渡り、食事の始まりとなりました。 「いただきま~す」 こなちゃんは早速、お味噌汁を飲みました。私も同じくお味噌汁からです。 「おお、かがみのくせに美味いじゃん!」 「かがみのくせに、が余計だ」 「でも、本当に美味しいよ!!」 私達につられたのか、他のみんなもお味噌汁に手を伸ばしました。 「わぁ……すごく美味しいです……」 「うふふ、そう言ってもらえると頑張って作った甲斐があったわ」 「これはもずくのお味噌汁ですね。とても美味しいです」 「え゛」 ……突然、こなちゃんが変な声を出しました。そういえばこなちゃん…… 「……かがみ、これは私がもずく嫌いであることを知っての狼藉(ろうぜき)か?」 「ええ、もちろんよ」 ……周りの空気が、冷えきってます…… 「好き嫌いってのは早くに無くさなくちゃだめだからね。というより、おいしいって言ったじゃない」 「や、確かにそうだけどさ……」 「あ、そうだ。忘れないうちにこれ」 そう言ってお姉ちゃんが取り出したのは一冊のノートでした。 「なに、これ……」 「レシピよ。いろいろな人に聞いてメモしてたの。他にも作りたいのがあったんだけど……気が向いたら作ってみて」 「……? う、うん……」 ふふ、こなちゃん、不思議そうな顔してる。 当たり前だよね。だって、今のお姉ちゃんはお姉ちゃんらしくないから。 今のお姉ちゃんの秘密を知ってるのは、私だけ。なんか優越感を感じるな。 「さ、冷めないうちに食べちゃいましょ」 「うん」 「…………」 「? どしたの? お父さん」 「ん? あ、いや、何でもないんだ……」 ―――2――― 夜になって、みんなが寝静まった頃、私は外で星空を見上げていました。 食後にみんなで遊んでいるうちに夜遅くになってしまったので、今日は泊まらせていただくことになりました。 ……かつては私も住んでた家なのに、まさか『泊まらせていただく』ことになるなんてね…… 「……かなたさん……」 『私』ではない名前を呼ばれた。 今、『私』が『柊かがみ』ではないことを知ってるのはかがみちゃん、そして今、後ろから声をかけてきた…… 「つかさちゃん」 私は振り向いて、つかさちゃんの方を見ました。 なんだか、とても悲しそうな顔をしています。 「本当に、いいんですか? こなちゃん達に、本当の話を言わないで……」 目を閉じて、胸に手を当て、そしてまた天を仰いだ。 「……私は今、かがみちゃんの身体を借りて現世にいる。つまり、ここにいるべきは『泉かなた』ではないの」 それに、こなたのもずく嫌いも克服させられたと思うし、私の料理のレシピも渡すことができた。 それだけで……私は満足だから。 「でもそれじゃあ……」 『俺が納得するわけないじゃないか』 ……え……? とても聞き慣れた声に視線を降ろすと…… 私が最も愛した男性が、つかさちゃんのすぐ後ろに立っていました…… 「そう……君……?」 「わからないわけ、ないだろ? もずくのあのテクニックも、肉じゃがの味も、何一つ変わってないんだからな」 ……ふふっ、やっぱり、かなわないな…… 「それ、実はわざとなのよ。そう君の愛が、今でも続いているかどうか、確かめるために。……でも……それも必要なかったみたいね……」 私はゆっくりと近づいて、そう君の身体を抱き締めた。 「会いたかった……また、こうやって二人でお喋りしたかった……う、うう……」 「……なんだ、やっぱり会いたかったんじゃないか。無理する必要なんかなかったのに」 そう君の胸の中で、私は声をあげて泣きました。 帰るべき場所に……帰ってこれた。それが嬉しくて、涙が止まらなかった。 「……なあ、かなた……」 少しして、涙も収まってきたところで、そう君が私に尋ねてきた。 ちょっとだけ身体を離して、そう君の顔を見上げる。 「こなたにも、会ってやれないか? あいつは……母親であるお前を知らない。それは、あいつの中で大きな傷になってるはずなんだ。だから……」 そう聞かれても、答えはすでに決まっていた。 こなたに会うことで……あの子の人生がまったく違うものになるかもしれない。あの子には、あの子の人生を歩んでもらいたいから。 だから私は、目を伏せて、首を横に振りました。 「今、私がここにいるという事実そのものが奇跡なの。これ以上、ワガママは言えないわ」 「……そうか……お前が言うなら、仕方ないな」 悲しげな表情を浮かべて、そっと目を瞑るそう君。 「……いつまでだ?」 「今日中よ。だからあと五分くらいかな」 そう言って、私達は空を見上げた。 星がいっぱいにちりばめられた空――『starry heaven【星達の天国】』を。 「またこうして同じ空を見上げることができるなんてな」 「身体は、違うけどね」 それから私達はずっと空を見上げていた。そう君との思い出を振り返りながら。そう君も、同じなのかな。 「そろそろ……時間ね」 時計を見ると、もうすでに五十八分を回っていた。あと二分もないわね。 「かなた……本当にちょっとの間だったけど、会えて嬉しかったよ」 「私もよ、そう君」 そういえば、いつの間にかつかさちゃんがいなくなってた。 家の中に入ったのなら、好都合。さっきから、そう君にやりたかったことがあったから。 「そう君」 「なんだ?」 「……キス、しよ」 そう言った瞬間、そう君の顔が強ばった。 「あ、いや、俺もしたいことはしたいんだが……その身体じゃ……」 まあ、普通はそうなるわよね。 今、私がいるのは『かがみちゃんの身体』。そう君からしてみれば娘の友達とキスするんだから。 こういうツンデレっていう女の子は確かに好きそうだけど、さすがに手を出すわけにはいかないからね。 「大丈夫よ。ちゃんとかがみちゃんから許可をもらってるから」 それでもまだ、そう君は迷っているようだった。だから…… 「ん……」 「!」 そう君の頬に、軽くキスをした。あまり時間もなかったから。 「……そろそろね」 時計が十二時を差した時、かがみちゃんの身体から、私の魂が抜けていった。 まだ、私の身体はそう君にも見える。私の声も、そう君に届く。 そう君は倒れるかがみちゃんの身体を支えて、私を見上げて言ってきた。 「次に会う時は、お爺さんになってるかもな」 『ふふ、できればそうであって欲しいわね』 私の周りに、まるでスポットライトのように光が降り注ぐ。もう……時間みたい。 『そう君、忘れないで。私は今でも見守ってることを、今でも最高に愛していることを』 「ああ、俺もお前を最高に愛してる。俺の一番は……お前だけだよ」 『ありがとう……。それじゃね……そう君……』 ―――3――― あの日から数日が経った。 かなたさんが身体に入ってる間の記憶は、うっすらとであるがある。 「ねえ、こなた。お母さんがいなくて寂しい?」 「ん? んー、お父さんで二人分にぎやかだから一応は大丈夫だよ。みんなもいるしね。でもなんで急に?」 「……実は……」 つかさと一緒に、あの時のことを話した。 こなたの誕生日の数日前に、かなたさんが私達の前に姿を表したこと。 こなたの誕生日のお祝いをしたいから身体を貸してほしいと言ったこと。 そして……そうじろうさんとかなたさんのことも。 「……そう……だったんだ……」 「だからあの日のかがみさんは……いつもと雰囲気が違ったのですね……」 何気なくこなたの顔を見てみると、目に一杯の涙を溜めていた。 「お母さんの……バカぁ……せっかく来たのに……なんで……? なんで……行っちゃったのさぁ……ひっく……」 それは、こなたが私達に初めて見せた涙だった。 私は優しく、だけど力強く、こなたの身体を抱き締めた。 「か、かがみ……」 「あんた、やっぱり淋しかったんじゃない。そういう時は、頼ってくれていいのよ?」 「そうだよ。私達は友達でしょ?」 「辛いことがあれば、お互いに励まし合う。これが、真の友ではないでしょうか」 「こなた、今日は思い切り泣いていいよ。今まで我慢してた、こなたへのご褒美だ」 「……みん、な……あ、あり、が……!!」 後半はもう声になっていなかった。 私の胸の中で、子供のように泣きじゃくるこなた。 普段のこなたはどこに行ったのかってくらい、感情をむき出しにして…… もしかしたらこなたは、親友と呼べる――自分の弱さを見せられるほど信頼できる人がいなかったのかもしれない。 だけど――自分で言うのもなんだけど――今はみゆきがいる。つかさがいる。私がいる。 だから、こいつはこれからもきっと強くなるだろう。何かがあっても、私達がいる。私達が受けとめてあげる。 かなたさん、安心してください。あなたの娘はきっとこれから、大きく成長していくでしょう――                   ――ムニ ……ムニ? 「ぷふふ、かがみ、また太ったんじゃない?」 ……前・言・撤・回!! こいつはまったく成長しねぇぇ!! 「ちょ、かがみ!? うが!!」 「お、お姉ちゃん!」 「かがみさん!」 「ちょ、か、かかか、かが……」 「いっぺんかなたさんトコ逝ってこい!!」 ――コキッ 「はが!!?」 まったく、コイツは!! もう知らない!! 「ちょ、ちょっとお姉ちゃん! こなちゃん、泡吹いてるよ!?」 「あの、か、かがみさん!? い、行かないでくださーい!!」

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