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「ID:ZxiMmk.0氏人間の証明」(2008/05/05 (月) 14:08:10) の最新版変更点
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<p>「それじゃぁゆたか、行ってくるねー」<br />
いつものように仕事に出て行くゆいお姉ちゃん。<br />
といっても最近は高速機動隊の仕事が忙しくて、帰ってくるのは大体3日に一度くらいなんですが。<br />
「いってらっしゃーい!」<br />
元気に手を振り返す私。ゆいお姉ちゃん、頑張ってね。</p>
<p>さて、私はというと。<br />
まずはお腹のハッチを開けてコンディションチェック。<br />
この前はハサミが刺さって体を壊しちゃったから、周りにものがないか確かめて。<br />
…うん、今日も問題ないみたい。ハッチを閉じて、着替え着替えっと。</p>
<p>今日は晴れ。絶好のお出かけ日和です。<br />
お気に入りのバッグをさげて、元気よく飛び出す私。<br />
この体になってから、遠出するのも平気になりました。<br />
そんなある日のこと、道端で倒れている子供を見つけました。</p>
<p>「…!大丈夫!?しっかりして!」<br />
「うぅ…」<br />
すぐに身体を起こしてあげました。どうやら転んですりむいてしまったようです。<br />
私はバッグの中から消毒薬とばんそう膏を取り出して、その子の膝を手当てしてあげました。</p>
<p>「…お、お姉ちゃん?」<br />
「もう大丈夫だよ。…ところでどうして転んじゃったの?」<br />
「…私の犬が…タロが逃げちゃって…追いかけてたんだけど…えぐっ…」<br />
それは大変です。私はその子にタロちゃんの特徴を聞いて、探してあげることにしました。</p>
<p><br />
「タロー!…タロー!」<br />
「タロちゃーん!」<br />
「くぅ…ん」<br />
「いた、あそこの木の上だよ!」<br />
「タロ!」<br />
「くぅん…」<br />
「どうしよう、降りられないみたい…」<br />
「私に任せて!」</p>
<p>私は木の上に登って、タロちゃんを助けてあげることにしました。<br />
もう少し…もう少し前に出なきゃ…やった!届いた…!</p>
<p>そう思っていたその時でした。<br />
突然木の枝が折れて私とタロちゃんはまっ逆さま。<br />
私は咄嗟に身体を捻ってタロちゃんが傷付かないようにしました。</p>
<p>「わん!わん!!」<br />
「タロ!よかったぁ…タロ…!」<br />
「きゅーん、きゅーん…」<br />
「いたたた…」<br />
「お姉ちゃん、ありが…」<br />
お礼を言おうとしたその子の顔が、一瞬凍りついたような気がしました。<br />
「あっ…」<br />
「お、お姉ちゃん…首が…」<br />
「あわわわわ…ちょ、ちょっと待って」</p>
<p>慌てふためいて頭を元に戻す私でしたが、次にその子が発した言葉は衝撃的なものでした。<br />
「お姉ちゃんって、ロボットなの?」<br />
「え………?」<br />
「だって人間ならあんな風に首が曲がったりしないもん」<br />
「た、確かにそうだけど……」<br />
「でもタロが助かってよかった。ありがと、ロボットのお姉ちゃん」<br />
……違うんだけど……orz<br />
でもまぁ、そう見えても仕方ないですよね……</p>
<p>「あの、私一応人間だから…」<br />
「えー!?どこから見てもロボットだよー」<br />
「ううん、違うの。サイボーグって言って、頭の中身は人間なんだよ」<br />
「ふぅん…へんなの」</p>
<p>………変ってあのねぇ………<br />
なんだか一気に力が抜けてしまいました。私って本当に人間なんでしょうか…。</p>
<p>困り果てた私は、こなたお姉ちゃんに相談することにしました。<br />
「ん?…ゆーちゃん、どうしたの?」<br />
「こなたお姉ちゃん…私ね…」</p>
<p>私はこなたお姉ちゃんに胸のうちを全て話しました。<br />
「私…子供に『ロボット』って言われたの…」<br />
「まさか!…子供にそれを言われるなんてきついよねぇ、ゆーちゃんだって人間なのに…」<br />
「それでね…ちょっと思ったんだ…」<br />
「?」</p>
<p>「なんで私はサイボーグなんだろうって」<br />
「!!」<br />
さっきまでニコニコしていたこなたお姉ちゃんの顔が一瞬、険しくなりました。<br />
「だって考えてみて?今の私は腕も顔も胸も全部機械仕掛け。しかも脳まで手が入れられて…こんな身体で…私が一体何なのか…時々わからなくなる…」<br />
「ゆーちゃん!落ち着いて…」<br />
「なんでこんな中途半端な身体になったのか…いっそ、いっそのことロボットにしてくれればよかったのに!」<br />
私は思わず言ってしまいました。自分の本音を…。<br />
「…ゆーちゃん!!」<br />
「いっそ全部ロボットになってれば、こんな風に悩むことなんて…」</p>
<p>――パンッ<br />
え………?<br />
乾いた音が私の頬から響きました。<br />
いつもは優しいこなたお姉ちゃん。そんなこなたお姉ちゃんが私を叩いた…。<br />
それは普段見ない、ちょっと怖い顔。だけどその目はどこか、悲しくて…。<br />
「……ちゃだめだよ」<br />
「?」<br />
「そんな簡単にそんなこと言っちゃ駄目だよ!ゆーちゃんはゆーちゃんなんだよ!例え血が通ってない身体でもね、ゆーちゃんは人間なの!生きてるんだよ!」<br />
こなたお姉ちゃんは泣いていました。<br />
「人間だから悩むこともあるし、そりゃ苦しむことだってあるよ!…嬉しいこともある、悲しいことも辛いこともみんな…!機械の身体だからって何さ…ゆーちゃんだって立派な人間なんだよ?」<br />
「…お姉ちゃん……」<br />
「簡単に諦めちゃ…うぇぐ…駄目だよ……ゆーちゃんがロボットになっちゃったら……私たちのことを…忘れちゃったら……ひっく……私……私……!」<br />
「うぅ…お…ねぇ……ちゃ……ごめんね…ごめんね……!」<br />
そして私たちは泣きました。互いに抱き合い、涙を流して、ひたすらに…。</p>
<p>「うわぁぁぁぁぁあ!ゆぅちゃぁぁぁぁぁん!!」<br />
「お姉ちゃん……お姉ちゃん!うわぁぁぁぁん!」</p>
<p>――ガチャ<br />
「ただいまー、こなた、ゆーちゃん、今日は仙台のお土産をだなー」<br />
「「……ぇ?」」<br />
「ぬおっ!?」<br />
おじさんが驚いたのも無理はないでしょう。<br />
私たち二人が涙の後を浮かべて抱きあっていたんですから。<br />
「そうか…こなたもゆーちゃんもそんな趣味が…」<br />
「ちょ、お父さん、なんて所に…」<br />
「ち、違うんです叔父さん、これは…」<br />
「俺は猛烈に感動しているゥゥゥゥゥゥ!!!」</p>
<p>相変わらずなおじさんの姿を見てると、急に笑いがこみ上げてきました。<br />
さっきの悩みなんて、意外とちっぽけだったのかもしれません。<br />
「ちょ、お父さん何勝手に男泣きしてるの!」<br />
「あはは…なんかどうでもよくなってきちゃった」<br />
「でしょ?ゆーちゃん、生きてるからこうして笑うことも出来るんだよ」</p>
<p>数日後。<br />
私はコンビニのアルバイトの帰り、いつだかの女の子に出会いました。<br />
「あ、あなたは!」<br />
「あ、この間のロボットのおねーちゃん!」<br />
……だから、ロボットじゃないのに……orz</p>
<p> <オワリ></p>
<p> </p>