ID:w6yrVqDEO氏:タイトル不明

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こなた「なんかないの?ポテチとかポッキーとかさ~。」 かがみ「あんたやけに、他人ん家に泊まりに来て図々しいじゃない!」 こなた「何を~!せっかくのお泊まりなんだし、より君達を理解するために今日だけ私は柊家の一員の気分で過ごさせてもらうのだよ!」 かがみ「どういう脈絡でそうなるのやら…。はぁ、ちょっと待ってて取ってく…」 つかさ「あ、お姉ちゃん、いいよ。私がとってくるね。」 かがみ「え、あ、いいの?じゃあお願いね。」 こなた「あ~!つかさを踏み台にしたぁ~~~!!」 かがみ「…な、何よ。いきなり。」 こなた「……ふっ。この台詞も分かんない様なら、かがみもオタクとしてまだまだだね。」 かがみ「何が『まだまだ』なのよ。第一あんたみたいにはなりたくないっつ~の!」 こなた「またまたぁ、意地張ってないでさっさとこっちの世界に飛び込んじゃなさぁ~い。」 かがみ「はぁ…越えてはいけない線が見えるわ……。」 こなた「それにしてもさっきの金曜ロードショーの映画どう思った?」 かがみ「あぁ、序盤は何か、わかるわかる!って感じで切ない感じだったけど一気にぶっ飛び過ぎててちょっと冷めたわ~。」 こなた「ねぇ~、私も、私もだよ。初恋の相手がいきなりあんなになるなんてゲームでもありえないよね。まぁ、そういうつかさはぼろ泣きだったけど。」 かがみ「アハハ。つかさはあ~いうのに弱いからね~。」 こなた「初恋かぁ~…。初恋…、それは誰もが見る叶わぬからこそ美しき夢…。」 かがみ「何、一人悦に浸ってんのよ!!気持ち悪い!!」 こなた「うりうり、かがみんの初恋っていつ?」 かがみ「はぁ?何よ!いきなり!!……ん~、保育園の先生とかだったかな…。よく覚えてな…。」 こなた「ふふっ、年上好きか……。こりゃメモメモ…」 かがみ「そ、そういうあんたはどうなのよ!!」 こなた「ん~、え~何のキャラだったかなぁ…。アハハ。」 かがみ「キャラかよ!!」 つかさ「お煎餅があったから取って来たよ~。」 こなた「お~お~ご苦労じゃった。で、今話してたんだけどつかさの初恋は何のキャラ?」 かがみ「そこっ!聞き方おかしいって!!!」 つかさ「初恋ぃ……?ん~中1の時かなぁ」 こなた「で、で、何のキャラ?」 かがみ「だから、キャラクターからは離れなさいって!!」 こなた「ナハハハハ!」 かがみ「それにしてもつかさの恋愛話なんてめずらしいじゃない?」 こなた「…かがみんは口に出さなくても分かるから…………お~怖い。そのようなお顔をされては素敵な殿方と出会えませんことよ。オホホ。」 かがみ「…!…!!…!!!……。そ、それにしてもつかさは~、中1って……あの人?その、なんて言ったっけ…。バスケ部の…?」 つかさ「あ、あの人?ううん。違うよ。」 かがみ「…ん~…羽球部の?」 つかさ「ううん。違うよ。」 かがみ「えっ…じゃあ誰?」 つかさ「う~んとさ、中1の夏に私入院したでしょ?」 かがみ「え~っとカキにあたってだっけ?」 こなた「へぇ、そんなことあったんだ。」 つかさ「うん。お父さんとお姉ちゃんと私の3人で食べてカキにあたったんだけど、私だけ特に酷くて入院しちゃったの。」 かがみ「…………私だけ、あたってないんだけどね……。」 こなた「プッ…ククク…。」 かがみ「何よ!笑うなら堂々と笑いなさいよ!!」 こなた「アハハハハハ!!!」 かがみ「堂々過ぎるっつ~の!!……んで、その時に出会った人?何々?初耳!!ちょっと、ちょっと聞かせなさいよ!!」 つかさ「うっ、お姉ちゃん怖い…。」 こなた「お姉ちゃん怖~い。」 かがみ「あんたはいい加減にしなさい!!」 こなた「こりゃまたしつれ~い」 かがみ「で?で?」 つかさ「うーんとね~、えっとね~何から話せばいいのかな…………」 あれはね…… 暑くて、蒸し暑くて、 それにお腹は痛いし、 夏休み始まったばかりなのに入院しなければならないっていう 不快、苦痛、不満の3拍子が見事に揃ってて、それまでの人生最悪の日をいとも簡単に更新された日だったの。 つかさ「も~やだ~~!!」 みき「もう…。つかさったら…。しょうがないでしょ…ね。」 まつり「まぁ…この入院の期間でも使って夏休みの課題でも終わらしちゃいなさいよ」 つかさ「え~夏休みもったいないよ~。もぅ~い~や~だ~。どうしてぇ…。あっ、ててて」 まつり「ほらほら言わんこっちゃない。きっとこの夏は大人しくしときなさいって神様が言ってるんだよ」 みき「それじゃあ、家でお父さんが寝込んでるから、家帰るわね。」 つかさ「え~、ずっといてよ~。」 みき「わがまま言わないの。それじゃあね、行くわよ。」 まつり「んじゃあね、せいぜい入院生活楽しみなさいよ~」 つかさ「…………ぶぅ。」 一週間程の入院予定だったんだけど、中学生にとって夏休みの一週間は、一か月に相当するくらい大切な時間だよね。 不満たらたらでとりあえず宿題をやろうとページを開く、閉じる。そうだよ、夏の暑さのせいだよ。仕方ない、なんて思いながら周りを見渡せば… 優しそうなお婆さんがバナナを食べている。 何かちょっと暗そうな…同い年?ぐらいの少年が本を読んでいる。 もう一つのベットは空きみたいだった。 なんでお姉ちゃんだけ無事なの!!不公平だよ。なんて考えてたら、ふと向かい側のベットの少年と目が合ってね。 「…あっ、ど~も…」って その人は微かに笑って会釈をするだけですぐ目をそらされたの。 どうかんがえても「話しかけないでください」オーラ丸出しだったから、その日はずっとテレビを観て過ごしてたんだ。 なんで、夕方ってゴルフばっか映ってるんだろうね? 次の日、友達が見舞いに来てくれたけど午前中には帰っちゃって、午後にはまた暇を持て余してたら… お婆さん「お嬢ちゃん、お友達たくさんいるね~。小学生かい?」 つかさ「あ、いや中学生です。」 お婆さん「あら、見えないねぇ。あれ、そこの僕も中学生だったよね?」 その少年は口を開かずにスケッチブックをとりだし、何かを書いて私達にみせた 『はい、中学生2年生になります』 つかさ「……えっと、喋れないんですか?」 しまった!思わず口をついてしまった! もし本人が気にしていて、そんで私の言葉で傷ついて、それで、それで…。 『今は喉の手術を終えたばかりなので、あと2日くらい喋れないんですよ。』 ……良かった。 つかさ「そうなんですか?大変ですねぇ…。」 やばいよ!会話が続かない!!どうしよう…。どうしよう…。 お婆さん「そういや、お嬢ちゃんはどうして入院したんだい。」 お、お婆さん!話題を、話題をありがとうだよ! つかさ「えっとですね、カキにあたってしまいまして…。」 お婆さん「そりゃまぁ。カキにかい。カキといえばねぇ…」 お婆さんのお家は海の側である事、今はもう亡くなられている漁師だったお爺さんの事…いろんな話を聞かせてもらった。 お婆さんはなかなかのストーリーテラーで、私も少年も引き込まれる様にお婆さんの話を消灯時間まで聞き入っていた。 次の日は雨だった。 正確に言うと朝からずっと曇り空で夕方から、豪雨って感じ。 曇り後雨ってやつかな。 「関節が痛むよ…」 お婆さんが口癖の様に呟いていて、ずっと横になっていた。 今日は空がくらいから宿題なんてヤル気がしないや。なんてだらけてたら 『暇なの?』って。 つかさ「うん。ちょっとね。」 『本でも読むかい?』 つかさ「…ん~、でもあんまり難しい本は読めないかも…。」 『そう?あんまり難しい本なんて俺も読まないけどね』 つかさ「じゃあ、借りよっかな。」 いつの間にか、タメ口になっていた自分に驚いた。 風と共に去りぬ。 それが、借りた本の名前。 文字ばっかの本なんて飽きちゃうかも…。 あれ…っ。で?で? うん。うん。それで。 うわぁ…。なんで…。 面白い。なんて面白い。 5時間程たったのかな。一気に読破した。 つかさ「面白かったよ!次の本ある?あったら貸してよ!」 『うーんと。やめといた方がいいよ。一つ物語を読んだら感動を楽しむ。夜寝る時に物語をまぶたの裏に浮かべてゆっくり眠る。それが本を楽しむコツだよ!』 つかさ「そういうものなのかな…?」 その日の夜は、言われた様に寝る前に物語を浮かべてみた。 まるで私が物語の主人公になったように情景が浮かんでくる。 自然と眠りに墜ちてゆく。なんて心地良い…。 途切れた。 騒がしい。 やめてよ。この余韻を邪魔するのは誰? 看護婦「……さん。大丈夫ですか?聞こえますか?」 カーテンに仕切られたお婆さんのベットの方が声が聞こえる。 体を起こすと向かい側の少年も心配そうに事の成り行きを見ている。 一人の看護婦さんが駆け出た事で、カーテンに隙間が出来た。 画面だ。 線だ。 一本の線だ。 ただの一本の線だ。 その上に訳の分からない表示と「0」の数字。 死んだの。 死んじゃったの。 死んだ。 死んだ。 そんな、まさか。 死ぬわけない。 死んだの。 そしてベットごと慌ててお婆さんは運ばれていった。 数分して看護婦さんが来て、「お婆さんは大丈夫だから、もう寝なさいよ」と優しく話して電気を切って行った。 一睡も出来ず次の朝、体温を計りに来た看護婦にお婆さんの事を訊いてみた。 看護婦「え…っとね。一命は取り留めたけど、まだ危ない状況なの。だから、ちゃんと治る様に応援しててね。」 生きてた。 良かった。 良かった。 まだ生きてる。 風と共に去りぬの余韻など、何処か飛んでっちゃってた。 それを聞いて安心した。 ゆっくり眠れる…。 ……。 目が覚めるとお昼過ぎ、向かい側の少年が話しかけてきた。 少年「お、起きた?お婆さん峠を越えたって。良かった~。もう大丈夫らしいぞ。」 つかさ「本当?よかった~。」 少年「昨日はびっくりしたなぁ…。」 つかさ「ねぇ。もう驚き桃の木だよ。」 少年「はぁ?……。」 それからは他愛の無い話をしたんだ。 わざと暗い話を避けてたのかもしれない。 そして、 『ちょっと歩かない?』 つかさ「う~ん。そうだね。ちょっと動きたい気分かな。」 少年「よし!じゃあ行こう。」 つかさ「……あれ?喋れるの?」 少年「おせぇよ!!!」 そういえば入院してから病棟を歩く事はなかったな…なんて思ってベットから降りたら 彼の右足の膝から下が無かった。 彼は「あぁ事故でね。無くなっちゃった。」なんて笑ってたけど、ショックだった。 喋れない事だけなのかと思ってた。 喋れないだけでも…。 見えない所に。いや、見てなかった所に。 病棟のロビーに向かう途中彼に訊いてみた。 もしかしたら傷つけるかもしれなかったけど、訊きたかった。 つかさ「辛くないの?」 少年「………悟らせない人。」 少年「いつも穏やかで、陰にある忍耐を誰にも悟らせない人。 悲しい、苦しい、辛い、痛い、泣きたい、死にたい、助けて、なんで自分だけ。 全部自分の胸に収めて、泣言を言わずに、頑張ってる人がいる。 顔を合わせるといつも、太陽の様に微笑んで、花の様な笑顔で会釈してくれる人がいる。 あのお婆さんね、身体の自由ももう殆どきかなかったんだ。でも、毎日、毎日、ほんのゆっくり、ゆっくりだけどもう何年もリハビリを続けているんだよ。続けていかないと、やがてまったく動けなくなるらしい。 あの病室に入りたての頃の俺は激しく苛立っててね…。家族にも当たり散らしていたんだよ。人の事気にかける余裕はなかった。 『日々少しづつの努力~』なんてとても馬鹿らしく思えて、毎日毎日リハビリの為に頑張るあのお婆さんに腹が立ってきて…。 ある日訊いたんだ『どうしてそんなに頑張るんですか?』って。あざ笑いを含めて。 『生きたいんです。生きるんです。今日を。』 よくある話なんて思うなよ。あのお婆さん、治るどころか、回復して行く見込みも数%しかないんだぞ。 それを聞いて、その返答を聞いて、泣かずにいられなかった。泣くしかなかったんだ。 ……悟らせない人がいる。 きっと、何処にも。 クラスにも、会社にも何処にでもいる。 頭を下げて生きている様でも、言葉にしないからじゃなく、誰かのせいじゃなく、何かのせいじゃなく、ましてや自分のせいじゃなくても…… 自分で、まぎれもない自分の意思で、悟らせない行き方をしている人がいる。 強いんだよ。そういう人こそ強いんだよ。 見た目は弱くても、劣ってても そして内面が弱くても、 それでも強いんだよ。そういう人は。 あのお婆さんは強いんだよ。 死を覚悟しても、生きるだよ。 そういう風に生きるならもう無敵だよ。 泣いている俺にお婆さんは 『何ごともね、口に出さんで耐えてみる。泣言を言わない。笑顔を絶やさない。でも、それは道化じゃない。それでも悟ってくれる人がいるから、そしたらその人の奥に秘めるものを悟ってやる。ただそれだけ。』 生きたいんだよ、俺。 あぁ、なりたい。 俺には、まだあぁなる事を許されてるだろうか?」 そういう彼の顔は涙くしゃくしゃだったけど、決して格好悪くはなかった。 だけど何かを話すには私は…。私という人間は…。 その後、病室に帰った私は一冊の本を借りた 雨に唄えば。 『その物語はミュージカル映画だからね。退院したら絶対みること』 スケッチブックでこう釘を刺されてから読んだ。 消灯時間が過ぎてもこっそりと読んだ。 深夜に読み終わって、目が覚めたのはおやつ時、3時。 身体を起こすと、彼はいなかった。 3人や2人では狭過ぎて けれど1人じゃ広過ぎる。 一時間ぐらいして新たな患者さんが入ってきた。 看護婦さんに彼の事を訊くと退院したという。 言ってくれれば良かったのに。 返してない、雨に唄えば。 …胸がなんだか切なかった。 熱くなる様な。冷めてく様な。 つかさ「…ん~そんな感じかな。エヘヘ恥ずかしいね。」 こなた「つかさのくせになかなかいいエピソード持ってるわね」 かがみ「…も~なんで今まで黙ってたのよ~。少しぐらい話してくれても良いじゃない。」 つかさ「エヘヘ。」 こなた「………あれ、このCD?」 つかさ「うん。雨に唄えばのサウンドトラック。」 かがみ「へ~聴かせてよ。」 …………。 …………。 ……退院間際にね、彼のお母さんが会いに来た。 看護婦さんには個別の部屋に移る事を退院した事にしてくれって彼が頼んだって事。 彼の足をなくした事故は本当は自殺しようとしてた事。 自殺の原因はもう助からない病気だった事。 彼はもう死ぬまでこの病院で生きてく事。 それでも生きてく事。 退院する時、看護婦さんから彼のスケッチブックを貰った。 彼が私が退院する時に渡す様に頼んだらしい。 一枚、めくる。『もういやだ』 一枚、めくる。『死にたい』 何枚か、めくる。 『どうしてそんなに頑張るんですか?』 一枚、めくる。 『死ぬとしても、生きるんですか?』 何枚か、めくる『おはようございます。』 何枚か、めくる。『はい、中学2年生です。』 何枚か、めくる。 ―白紙だ。ずっと白紙。 最後の一枚だ。そこには 『精一杯生きた証の様な恋でした。』 雨が降る時も 晴れ渡る時も 風の日も 雪の日も 悟らせない人になりたい。私も。だから笑顔を絶やさない。 笑顔からはぐれそうな時は、 私は『雨に唄えば』のあのテーマを口ずさむ。 ―終― inspired by & quoted from 『雨に唄えば』『夏音』

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