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ー年越しそばー
TVからは新鋭アーティストの流行歌が流れていた。
今は女性、いわゆる赤だ。彼女の次は男性、こちらは白。
これを繰り返し、そして番組の最後に採点が行われ、
文字通り雌雄が決するのである。
「そう君、お餅入れる?」
歌に割り込むように、台所からかなたが聞いてきた。
「ん~、じゃ、2個」
振り向いてそうじろうはVサインを送る。
「食べ過ぎだよ」
と言いつつも、しっかりかなたは2個お餅を入れていた。
醤油をベースにした良い香りが漂ってくる。
くんくんと鼻を鳴らすと、口の中に何かが湧いてくるのを感じ
そうじろうはその中で涎を垂らすのだった。
「おまたせ」
かなたがお椀を持って来る頃には、歌はもう切り替わっていた。
男性アイドル達が歌と踊りを披露し、会場を黄色い声で染めていた。
そうじろうはお椀を口にあて、まずは汁を一口すする。
「ん…美味い」
口の中に醤油や鰹節、様々な具の、シンプルながら奥深い味が広がってくる。
「何と言うか…愛を感じるよ。かなた」
「もう」と、かなたは耳の辺りを赤く染めていた。
そんな嫁が愛しくて、もって照れさせてやろうと画策するも、上手い言葉が見付からない。
作家のくせにダメだろ、と思いつつ、そうじろうは思案する。その末、
「家族ってさ」頭をよぎった言葉。
「そばなんだよな」?顔のかなたは首を傾げる。
「美味しいつゆを吸ってさ、ぐんぐんぐんぐん成長する。
つゆはお前の料理であり、愛情だ。で、このそばは俺達自身。
そこに具…まぁ、友人とか?知り合い?そいつらにも支えられてさ、
俺達はもっと美味しくなっていくんだ」
「なにそれ~(笑)」と、かなたは笑って…あれ?
気が付いたら採点も終り、除夜の鐘が響いていた。
「はは、まぁ、今年も1年、ありがとな。かなた」
「うん。来年もよろしくね。そう君」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー年越しそば・終ーーー