ID:GmH+L4t5O氏:タイトル不明

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つかさ「うぁぁぁ~ん。」 かがみ「まただ!そうやってつかさはすぐ泣くんだ!」 ただお(父)「ん?どうしたんだ?」 みき(母)「あれあれどうしたの? あぁまたかがみはつかさを泣かしたのね。」 かがみ「違うもん。つかさが勝手に泣いたんだもん…」 つかさ「うぁぁぁーん!」 柊みき「はぁ…、かがみはお姉ちゃんなんだからつかさの面倒みてあげなきゃならないのよ。」 かがみ「何で?!双子なのにさ、かがみもつかさもおんなじ五才なのにさ…。いっつもいっつもかがみばっかり怒られてさ、つかさばっか、つかさばっか…」 柊みき「まったく…、あのね、かが…」 かがみ「お母さんもつかさもみんな大っ嫌い!!!こんな家出てってやる~!!!」 柊みき「あっ!!かがみ…ちょっと」 ただお「…少しそっとしておきなさい。」 みき「でも…。」 ただお「まぁ、俺もあのくらいの頃はな、家出をしたもんだ。だけど結局、お腹が空いて、行くとこもなくて家にもどって来てしまう。」 みき「はぁ…。」 ただお「そんときに何事もなかったかの様に家族が迎えてくれる…。そうやって子供って家の大切さを学ぶんだよ。あんまり遅くまで帰って来ない様なら迎えに行ってやればいい。」 みき「そうですか………。」 かがみ「ふん!あんな家二度と戻るもんか!!!どこか遠くに行ってもっと優しい家族見つけるんだもん!!」 それからどれ位かがみは歩いた事でしょう。 見慣れた景色は見慣れぬ景色とすり変わり、最初はそれにちょっとした冒険心を踊らせてたかがみも、一歩歩くにつれ、少しづつ寂しさと孤独、不安を五才の胸いっぱいに詰め込んでいくのでした。 かがみ「ここ何処だろう…?」 歩き疲れたかがみは何処かも分からぬ公園のブランコに揺られていました。 かがみ「どうなっちゃうのかな、私…。」 ふと始まりかけた夕焼け空を見上げたかがみの目に映ったのは小さな、でも五才の子供にとっては恐竜みたいに大きなジャングルジムとその上に載って黙って一人で空を見上げる少女でした。 かがみは、しばらくその様子を見ていましたが、その子の、空を見上げたまま微動だにしない様子を不思議に思い、近付いてみました。 かがみ「……(どうしたんだろ?…ちょっと寂しそう…。もしかして、私みたいに家出してきた子かもしれない!)」 かがみは勇気を出して話しかけてみました、ジャングルジムの下からちょっと緊張した声で。 かがみ「ね、ねぇ!」 空を見る子「えっ、ん?あぁ、何?何かよう?」 かがみ「いや、えっと…な、何してるのかなぁ~って思って…」 空を見る子「空見てる。」 「そんなのは見てりゃわかるわよ!」と心の中で思ったかがみは続けて訊きました。 かがみ「ねぇ、君はここら辺に住んでるの?」 空を見る子「何で?」 かがみ「え…っ、なんとなく訊いただけだよ…。」 空を見る子「そうだよ。ここは私の家の近くだよ。」 かがみは空を見る子が家出仲間ではなかった事に少しの失意を覚えながらも話し相手が出来た事を嬉しく思いました。 かがみ「私もそこに行ってもいい?」 空を見る子「何で?」 かがみ「えっ…なんでって……、なんと…なくかな?」 空を見てる子「それは私が決める事じゃないじゃん。勝手にすれば。」 かがみ「…………。じゃ、登るね。」 かがみは少女の隣りに腰をおろして、少女の視線の先に目をやりました。 さっきより夜に近付いた真っ赤な夕焼けが目を貫いて、思わず「うわぁ!」と歓声をあげたかがみ。 かがみ「綺麗だね。」 空を見る子「…………。」 かがみ「…………。」 空を見る子「…………綺麗だよ、いつも。」 かがみ「へ、へぇ、そうなんだ!」 間のおいた後のいきなりの返答にかがみは驚きました。 空を見る子「あなたはここら辺の子じゃないね?何でここにいるの?」 かがみ「………家出してきたの。」 空を見る子「何で?」 かがみ「………なんか、お姉ちゃんもつかさもお父さんもお母さんも嫌になっちゃったの…。」 空を見る子「何で?」 かがみ「だってみんな私の事嫌いみたいなんだもん…。」 空を見る子「何で?」 かがみ「えっ………。う~んと、いつも私ばかり怒るんだもん。」 空を見る子「ふ~ん。…………。」 かがみ「…………。」 空を見る子「…………。」 2人は黙ってままで、辺りは暮れ泥み、夕冷えにかがみは少し肌寒くなってきました。 空を見る子「寒いの?」 かがみ「………平気だよ。」 空を見る子「ふ~ん」 かがみ「………。」 空を見る子「………。」 長い影もやがて深い藍色に溶けかけ、街灯と2人だけがいる公園。 少女は視線を下におろし、不意に呟いた。 空を見る子「………お母さん。」 かがみ「えっ!!何?」 空を見てた子「あそこにお母さん。」 かがみ「??」 空を見てた子「そしてここにお父さんとお父さんに抱っこされた私。」 かがみ「………。」 空を見てた子「お母さんとね、お父さんとね、私で3人でよく遊びに来てたんだって。」 かがみ「…この公園?」 空を見てた子「うん。でもそれは覚えてないの。でねお母さんが死んでね、ちょっとしてからね、お父さんと2人で来たの。」 かがみ「………。」 空を見上げた子「でね、私を抱っこしてこのジャングルジムに登って言ったの 『お母さんは、お前が落ちないように下にいて見ててくれたけど、今はねお前がどんな時も上を向いてられるように空からお前をみてるんだよ』 だって。」 かがみ「………。」 かがみは綺麗な三日月を見上げました。 最初は一つも星は見えなかったけど、一つ見つけました。一つ見つけたらもう一つ見つけました。次々と見つけました。 空を見る子「……君はお母さん嫌い?」 かがみ「……………嫌い。」 空を見る子「全部嫌い?」 かがみ「……………ちょっと嫌い。」 少女は微笑んだ。 空を見てた子「ホントに?」 かがみ「………わかんない。」 空を見てた子「そっか。」 少女はその時初めてかがみの目をみた。 かがみは初めてその少女の顔を正面から見た。 少女の右目の下に泣きぼくろがあった……もしかしたら左目だったかもしれないが今となっては確かめようもないがなんとなく憎たらしい様な、憎めない様な顔をしていたとかがみは言う。 少女の父「お~い。何時までそこにいるんだぁ。もうそろそろ帰って…おっと、その子は?」 かがみ「あ、えっと、私は…。」 少女「迷子だって。」 そうして、少女の父により近くの交番に連れて行かれかがみは保護された。 警官「お家に電話したら、すぐに迎えに来るって。良かったね。」 かがみ「…………はい。」 少女の父「では、私等はこれで…。なんせ家の鍵をかけこなかったので不安なもんで…。」 去り際、少女は笑顔で手を振り、父親に手を引かれ帰っていった。 数十分後、あー言っておきながら居ても立ってもいられずにががみを捜しにでた父ただおが疲れと安堵の顔を見せて現れたのであった。 その公園は今はもうない。 高校生のかがみにとって、もうそれは薄れた記憶でしかない。少女の顔も、公園の雰囲気も、もう思い出せないそうだ。 多分、あの少女もかがみを覚えていないのではないか? なんとなくそう思う。 でもかがみはその少女といつか再会したいと心から思っているらしい。 人生とは不思議なものだ。 ―終―

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