第9夜

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第9夜 「お止めなさい。そこの少女よ」 「かがみっ!?」 我に返り振り向くこなた!そして彼女の視界に入ったのは自分の身の丈はあろうかという巨大な氷の刃を手にした・・・柊・・・かがみ。 雪女と同じ青白い着物を風になびかせ、ふわりと浮いていた。 「泉さん!」 「こなたおねーちゃん!」 巨大な氷の刃は水平に持ち上げられ、その切っ先は小早川ゆたかに向けられ静止している。 かがみの表情に感情は無い。目はうつろでどこを見ているかも分からない。雪女と同じ青白い着物が風になびいてる。 「や、やめて!かがみっ!」 こなたは力なく地上に着地し、涙を流す。 「いやだよ!そんなのいやだよ!そんなのいやだよぉっ!お願いだから!お願いだから元に戻ってよーーーーっ!!!」 天に向かって絶叫するこなた。少女の叫びがあたりをこだまする。 「私には何もわからない。まだ、名前も無い。かがみ。それが私の名か?」 表情も無く首をかしげるかがみ。しばらく考えていたように見えたが、次の瞬間、それを止めた。 「めんどくさいな。何もかも。私の中に在るのは”憎悪””嫉妬””絶望”。他には何も無い。だからこいつもわからない。めんどくさい」 氷の剣を握る左手を弓のようにしならせ高く持ち上げる!かがみは限界まで力を溜め、それを一気に開放する! 振り下ろされる凶刃!今から繰り広げられるであろう惨劇に目を覆うこなた! ザシュッ! 映画のワンシーンであったとしても目を背けたくなる信じがたい光景。 「・・・・・・・しないよ・・・・」 「え?」 呆然とするこなた。その横をただおが駆け抜ける。 無表情のまま、眉一つ動かさず空に浮かぶかがみ。 「・・・させ・・・ない・・よ」 「そ、そんなことが・・・うっ!」 真横で身体を拘束されていたみゆきは思わず嘔吐する。 「お、おねーちゃんは・・・」 微かに聞こえる、消え入りそうな声。 「お、お姉ちゃんは、そんなこと・・・しないよ?私の、大・・・好きなお姉ちゃん、人殺しなんか、させないよ・・・」 「つ、つかさぁーーーーーーーーー!!!!」 三度、絶叫するこなた。次々に襲い来る衝撃の事実をうまく整理できない。なんで?なんで、そこにつかさがいるの? ゆたかをかばい、背中に氷の凶刃を受ける紫色の巫女。着物は切り裂かれ、柔らかな肌は露出し、白かったであろう背中は血に染まった。 命を救われたゆたかはつかさに抱かれ、呪縛から放たれた。だが、悲劇に身を震わせ目の前で起きた事実を飲み込めない。 「つか、さ、せん、ぱ、い・・・?」 よく分からない。理解できない。ただ、涙だけが止め処なく溢れてくる。全身の水分が一気に押し寄せるかのように涙だけが。 ―――おねえちゃん 1年3組柊つかさ わたしには3人のおねえちゃんがいます。 いのりおねえちゃんはいっつもやさしくしてくれます。 まつりおねえちゃんはいっつもおもしろいことをおしえてくれます。 かがみおねえちゃんはいっつもわたしをおこります。 でも、わたしはかがみおねえちゃんがいちばん好きです。 わたしがしっぱいすると、お母さんにおこられないようにまもってくれます。 分からないことがあるとすぐにおしえてくれます。 まいごになったときも、ないちゃうぐらいおこってたけど、手をつないでおうちまでいっしょに帰ってくれました。 たのしいときもかなしいときも、いつもそばにいてくれます。 だから、わたしはかがみおねえちゃんが大好きです! おねえちゃんごめんね。わたしおねえちゃんをこまらせないように、がんばるよ。 おおきくなったらけっこんしようね、おねえちゃん! ――― 「そだ・・・この作文書いた時も・・・怒られたんだっけ・・・」 「つかさぁ!」 涙混じりに叫び、必死で娘の手当てをする。背中についた傷は大きく、血が止まらない。 腰が抜けてしまい、その場に座り込んでいたゆたかは必死につかさの手を握る。悔しかった、何も出来ない自分が。 「女同士は・・・結婚できないよって・・・でも、一緒にいてくれるって・・・言ってくれた・・・」 「意識が・・・。つかささん!?しっかりしてください!」 「大好きだよ・・・おねえ・・・ちゃん・・・」 つかさの動きが止まる。それを見たこなたの中にふつふつと湧き上がる黒い感情。 「死んだ?か。そいつの顔を見ると無性に頭が痛くなる。ちょうどいい」 こなたの中で何かがきれた! 「うおぉー!許さない!いくらかがみでも絶対に許せないーーーーっ!!!!」 全身を紅蓮の炎に包み、飛び掛った! 振り返るかがみは氷の刃をこなたに向かい突きつける。 「お前も死にたいのか?」 かがみじゃない!かがみはこんなこと言うはず無い!こなたの中で憎しみが爆発し、18年間の人生で感じたことの無いどす黒い感情が生まれた。 「つかさを!かがみを、返せーっ!」 無数の拳撃を放つ。かがみはそれを剣で巧みにさばき、こなたをあしらう。 「こなたおねーちゃん!」 つかさの手を握り締めたまま憎悪の塊となった従姉妹に声をかけるゆたか。だが、その声はこなたには届かない。 必死で止血を続けるただお。動かなくなった娘の背中の血を涙が洗い流す。 神が、神が本当にいるのなら、なぜ、この者たちに救いの手を差し伸べないのか!? 気味の悪い満月はその表情を変えず、沈黙をまもる。 「えぇいっ!小娘!うっとおしいぞぉっ!」 なぎ払った氷の刃から無数の氷塊が飛び出す!氷塊は雪狼に姿を変えこなたを襲う! 神速、と呼ぶべきだろうか?少しだけ、距離をとると、目で追うことも出来ぬほどのスピードで振るわれる両手が次々に雪狼をなぎ倒していく。 隙を見計らいつつ優に2メートルはある大きなつららを生み出すと、かがみはそれをこなたへと向ける。 眼前に迫るつららを手刀で払う。が、大きすぎたつららを凌ぎきる事が出来ない!つららの後ろ側が勢いをとめることなく少女の身体を突き飛ばす。 こなたは後方へ吹き飛ばされるが、身体を翻すとさらに飛んだ!鬼神のごとく突き進む! 「かがみを殺して、私も死ぬ!」 その目に宿るのは殺気。そして、全てを失ったかのような絶望すら抱えていた・・・。

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