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「お疲れ様でーす。」 いつも通りに番組の収録を終え静まり返ろうとしていたスタジオ。後の祭りと言った 所だろうか、あの賑わいが嘘の様だ。だがそのスタジオにポツンと佇む1人の少女を アシスタントをしている白石みのるが発見した。 「あれ?あきら様、帰ってなかったんですか?」 いつもの調子にほえほえと話し掛けた白石だがあきらが軽くあしらう。 「別に・・・・。」 多少驚くも白石は取り合えずそれに言葉を返す。 「えぇ・・・そうです・・か。」 区切るのには曖昧な返事をした白石、2人共スタジオを出て帰り道を歩いていても あきらの謎の無口現象は変わらなかった。変に二重人格スイッチを押してはいけない と思い自分も無口に徹する事にした白石。最近は仕事で人と一日中話していただけに この静けさは色々と物思いに更けさせ、頭脳は記憶の海へ漕ぎ出す。 あれは初めて白石があきらと初めて会った時に遡る。
「お疲れ様でーす。」 いつも通りに番組の収録を終え静まり返ろうとしていたスタジオ。後の祭りと言った 所だろうか、あの賑わいが嘘の様だ。だがそのスタジオにポツンと佇む1人の少女を アシスタントをしている白石みのるが発見した。 「あれ?あきら様、帰ってなかったんですか?」 いつもの調子にほえほえと話し掛けた白石だがあきらが軽くあしらう。 「別に・・・・。」 多少驚くも白石は取り合えずそれに言葉を返す。 「えぇ・・・そうです・・か。」 区切るのには曖昧な返事をした白石、2人共スタジオを出て帰り道を歩いていても あきらの謎の無口現象は変わらなかった。変に二重人格スイッチを押してはいけない と思い自分も無口に徹する事にした白石。最近は仕事で人と一日中話していただけに この静けさは色々と物思いに更けさせ、頭脳は記憶の海へ漕ぎ出す。 あれは初めて白石があきらと初めて会った時に遡る。 「白石、あきらちゃんのアシスタントやってくれないか?」 白石が見た感じのあきらは活発の要素がある表情も漫然とした態度があり、やはりと 言うべきか生き残りが激しい芸能界でこういう性格になってしまうのも仕方が無いと 思っていた。 「もしかして私がレギュラーになるんですか?」 あきらの一言、この一言が周りの空気を一気に冷たくした。さも悪気も無く当たり前 かのように言うあきらと態度に噛み付いたのは同業者の同じアイドルだった。 「何生意気言ってんのよ!あんたみたいな新米何かに―」 「まぁまぁ落ち着いて・・・。」 騒然とする状況の中あきらは眉をぴくりとも動かさず漫然としている、白石があきら の様子を傍観しているとマネージャーらしき男が口を挟む。 「こんな女の子何だけどよろしく頼むね、白石君。」 「確かにそんな事もあったわね・・・・。」 もう1年も前になる、その間あきらのアシスタントを務めた白石は色々な事を学んだ。 お世辞にもよかったとは言えない、時には芸能界の厳しさとも捉えられるあきらの性格にも 付き合ったものだ。 「いや~参りましたよね、あの時は・・・。」 「本当よ、ああゆう奴好きじゃないのよね。」 「じゃああの発言は・・・本気だったんですか?」 「本気じゃなかったら言わないもん。」 「そう・・・ですか・・・。」 外は薄暗くなり、時間は午後7時、スタジオに行ったともなると数々の道路、横断歩道 も多すぎると思った位にあった、身震いするほどでも無い優しい温度の風が2人の体を 包み込む、走り舞う車の光と鈍い音が感覚を支配する。 「こんな他愛も無い会話して何が楽しいの?」 「え?」 振り向いたあきらの表情に目を丸くした白石、二重人格の事は充分過ぎる程わかっていたが こんな大人びた表情はアシスタントの白石でさえ見た事が無い。 「いきなり何言うんですか?そんな僕が気に触る事でも・・・―」 「そうじゃないわよ。」 「・・・・・・・。」 返す言葉な無く押し黙る白石、あきらは言葉を続ける。 「私達はテレビでキャラ造っててさ、でもそれを他の所にでも続けるのって結構 キツイもんだよ。」 「でもそれは今までやってきたじゃないですか!今更何で弱音を吐くんです!これ からも頑張っていけば―」 「それが嫌なの。」 あきらは口調を変えず淡々と返す。 「一生懸命って恥ずかしもんじゃない、あんたはただ忘れ物ってずっと言ってれば いいじゃない。でも私は違うのよ、私とあんたじゃ住む世界が違うんじゃない。」 白石は少しの沈黙を置き、 「・・・そうですか、そんなに悩んでいたのに気が付かないとは・・・僕もアシスタント失格 ですね。」 白石は悪ぶれてなかった、あきらがどういう気持ちになっているか直感的に理解した。 簡単な事だった、いつも通りの事だった。

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