「タイムリミットは24時間」 ID:FseqzYcIO氏

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陵桜学園の文化祭は、ひとまず生徒公開は終了し、後は翌日の一般公開だけとなった。 いろいろトラブルはあったが何とかここまでやってきたと思う。 パティを皮切りに起きたチアダンスは、かがみを中心に成功と言える程までに上達し、わずか数日で生徒達に受ける程までになった。 が、ひよりははっとし、今まで頭の中で引っかかっていた事を思い出した。 「ある人を誘い忘れてたっす…!」 それは放課後での反省会の事だった。 「ほえ?」 「ひよりん、誰それ?」 つかさとこなたは首を傾げる。 「私の入ってる部活の唯一の部員でもあり、先輩でもある人っす。チアのメンバー探しの時に声を掛けようとしたんすけど、忘れちゃって…」 しかし全員、ピンと来なかった。 「できればその先輩とも一緒にやりたいな…」 「でも明日一般公開だよな…」 さすがに現時点で一人新入りを入れるのは無理な話である。ゆたかはみさおの一言で肩を落とした。 「ん~、でもさ、たまに物覚えが早い人っているよね~。できなくてもいいからさ、できる限りやってみようよ!最後の思い出に!」 こなたの発言に皆が考え込む。 「そうね…泣いても笑ってもこれで最後だもんね。あんたもいい事言うじゃない。」 「と言うわけでひよりん今からその人呼べる?」 「たぶん問題無いと思うっすけど…」 携帯を取り出し、電話をする。 理由を話し、用件を話すひより。それを見守るメンバー。 「じゃあ私の教室で…はい。はーい。…来れるみたいっすよ。」 「じゃあ計画を立てないとね。っと言っても練習の時間決めるだけだけどね…」 かがみも少ない時間でどうするか迷ってしまう。 数分後、こうが教室にやってきた。 「あーっ!」 しかし突如声を上げるこう。 「あの時はよくも捨てゲーしてくれたね…」 「へ?」 実はこうは既にこなたと面識はあった。が、当然のごとくこなたは顔も知らない。 「何のこと?」 「ゲーセンの格ゲーで何度も負けてリベンジしてたら突然いなくなって…」 「ああ~まさかあのお客さんか~。ごめんごめん。」 こなたが思い出したのはいいが、空気は次第に殺伐としていった。 「こうちゃん先輩…一応こなた先輩は3年生っすよ…?」 しかしこの一言が終止符を打つ事になる。 そして改めて自己紹介をお互いに済ませ、本題に入る。 「で、先ずは振り付けだけど…」 かがみがコツコツと教えていく。 曲を流し、一通り踊らせ、そして改善した方がいい所は皆で意見を出し直す。 時間は7時を切った。 ゆたかは体力的な問題と病弱という事もあり、途中で帰った。 全員汗だくである。 「今日はここまでね…でも、大体は出来たのはいいんだけど、まだ少し出来てない所があるのが惜しいのよね…」 「恐縮です…」 かがみとこうはため息をついた。 「でも私たちにとっては復習にはなった…かな…ね、ゆきちゃん。」 「そうですね。」 「デモどうしましょうカ…」 「…やっぱり…あれしかないか…」 「何か考えでもあるの?岩崎ちゃん。」 「朝練を…するしかないですよ…」 「そっか!朝早く来ればいいのか!いい考えだな!」 「そうね…そうするか。じゃあ7時に体育館でいい?」 「私は構いませんよ。先輩方よろしくお願いします。」 お辞儀をするこう。 「おはようございます。先輩方。」 「おはよ~こうちゃん。」 かがみの後ろではこなたとつかさが眠そうにしている。 「後ろの二人は一体…」 「ああー…気にしないで。無理矢理起こしただけよ。こなたん家まで行くの大変だったのよ。」 「朝からその努力…すごいですね…」 「柊は実はやる気が一番あるからな~」 「う、うるさい!ニヤニヤするな!」 「とりあえず始めようよ…柊ちゃん、みさちゃん。」 「そうね…」 「先輩!残り数時間ファイトっすよ!」 文化祭の一般公開は9時からである。 準備を考えると二時間も無い。 かがみ達は練習を始めた。 とりあえず最初だけ一人で踊ることになったこう。 「じゃあ…流して下さい。」 「はい。ではいきますよ。」 みゆきが再生ボタンを押す。 ♪~ 1年生と3年生に見守られる中、快調に踊り出すこう。 ~♪ 「すごいわね~!全部踊れてるじゃない!」 「お姉ちゃん、これなら本番に間に合うね~。」 「私でもあれほど覚えられなかったのを一夜で…むぅ…このスキルはすごいな…」 「ばっちりでしたよこうさん。」 「家で自主練をしてきました。頑張った甲斐があるというか何というか…」 無事に間違えず踊れたこうに拍手が起こった。 「じゃあ最後にみんなでやろっか。」 そして最後の合わせ練習を行った。 こうも自信がついたのか、大成功と言える出来である。 だが、一列目なので緊張はしているだろう。 「何かとても嬉しいです。こういうのに誘ってもらえて、こんな感じで踊り切れて。」 「ひよりんとゆたかに感謝デスヨ!ひよりんが思い出してくれなかったり、ゆたかが言ってくれなければ、こんな事は二度とありませんデシタ。」 「いや~もう少し早めに思い出せれば…恐縮っす。」 「私もこういう風に揃ってもらえてどてもうれしいですよ!」 「私らにとってはこれが思い出になるしな~。」 「そうだね。高校最後だもんね…。」 しんみりとする一同。 「そうだ…田村さん…チアの衣装…渡さないと。」 「おっと、そうだった。これをどうぞっす!先輩!」 チアの衣装を渡すひより。 「おー…これまた見る方が喜ぶような衣装…」 「そういうと思ったっす!」 「じゃあ準備しましょう?私たち一番初めだしね。」 周りを見ると、ちらほらと準備に追われてる生徒がいた。 こう達も準備の為、女子更衣室に向かった。 「人が昨日より沢山いるっすね~」 ステージ上。既に直立で待機している状態である。 降りている幕の隙間からちらちらと人が見える。 「き…緊張してきた…頑張ろうぜ、こうちゃん。」 「は…はい。日下部先輩。」 『あ~テステス。皆様、今日は陵桜学園文化祭にお越し頂きありがとうございます。本日の司会を勤めさせていただく、白石みのるです。よろしくお願いします。』 「そろそろよ。みんな頑張りましょう。」 かがみが最後の言葉を掛ける。 『では、まず初めの発表は、一年生のパトリシアさんが、仲のいい方を集めて結成したチアリーディングの発表です。では踊ってもらいましょう。『もってけ!セーラーふく!』です!』 幕が上がりはじめ、歓声と拍手の音が広がってゆく。 (がんばれ…私…) こうは一発気合いを入れた。 タイムリミットは24時間 ~完~

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