ID:lJO96SVxO氏:ひよりんレフトアーム

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ゆたか「おはよー!みなみちゃんにひよりちゃん!」 今日のゆたかは体調もご機嫌も大変よろしいようです。 丁寧に磨かれた校舎の窓からは穏やかな秋の日差しが差し込みます。 みなみ「おはよう」 ひより「おはよーゆたかちゃん」 朝の談笑の一時はまさに青春って感じですよね。特にこの三人は。 みなみ「今日は体……大丈夫?」 ゆたか「うん!昨日休んだから全然大丈夫だよ」 計算も損得も考えずに自然に接することができる関係こそがベストフレンド、親友ですぜ諸兄。 ひより「あ……ごめんちょっとトイレ!」 ひよりが席を立ちました。なっがい黒髪とスカートがなびきます。 いつでもトラブルってネーミングの魔物は意外な所に潜んでいますよ。 ひよりが半開きの扉に体をくぐらせた瞬間です。 二枚の引き戸の閉まっていたほうが急に開き…… ちょうど前に出していた利き手オブ左手が挟まれました。 しかも扉を開いた男子生徒、何かにあせっていたらしく勢いがありました。 教室に、廊下に、鈍い身の毛のよだつような嫌な音が響きます。結構響くんですよ。これが。 ひより「ピギャァァァァッひぎっ!!!!」 発音不可能な本能的な悲鳴が上がります。秋口で長袖を着ていたのがせめてもの救いです。 関節でない所から曲がった自分の腕をその場は見なくて済むのですから。 ゆたか「ひっ、ひよりちゃん!」 ひより「ピギャァッァッァッァァァ!ヒクッヒクッ!」 人間、マジで痛いとまともに声出ません。いや、マジで。えらくマジです。 ひより床に転がって尋常ならざる痛みに耐えもがくこと約三分、悲鳴を聞きつけた教師が駆けつけました。 時間にして三分、カップヌードルが食えるようになるだけのわずかな時間ですが、ひよりにとっては何倍も長い時間に感じられたに違いありません。 保険委員のみなみと担任の教師に支えられながら立ち上がったひよりは担任の車で病院へと運ばれます。 ひより「痛いよ……痛いよ…痛いよ……」 担任の車の微妙な振動にも痛みは広がります。顔は涙と鼻水でぐしょぐしょ。本当にヤバいんだって。 横にみなみの支えがなかったら心細さに負けてしまったでしょう。 病院に到着しました。 こ こ か ら が 本 当 の 地 獄 だ 病院ではレントゲンをとった後にまず骨を正しい位置に直します。力ずくで。 先にトイレに行くことを勧められるほどの処置です。つまり……先に行っておかないと……省略……ほどなんです。 病院の一室に急いで駆けつけたひよりパパママが通されます。みなみも許可されました。 医者さんがひよりの腕に手をかけます。 「ピギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」 パパンが、ママンがみなみが落ち着いてと声をかけます。 ひよりは口にくわえたタオルを噛み締めます。 格闘すること十分、ひよりの左手にはギブスが巻かれました。ひとまず安心です。 ひよりんはお医者さんと少し相談をして帰宅となりました。 みなみは学校に戻り、命に別状がないことを報告します。 確かに命に別状はありません。 そしてネクストモーニング、そこには腕を吊って登校するひよりんの姿が!! ゆたか「ひよりちゃんおはよう…」 ひより「……おはよう…」 ひよりヤバい。マジヤバい。体重が増えたかがみとか比にならないくらいヤバい。おまけにメガネ下がってる。 利き手が使えないことはすごく……ストレスです…… DOJINSIやファンアートがライフワークとなっている彼女にとってそれが絶たれることはたいへんにショッキングです。 妄想が溜まっても絵にできないんです。 禁断症状が起きてペンを手にとろうとしても手はギブスでカチカチです。 葛藤の一晩を経てひよりんの心は荒みきってました。 みなみ「大丈夫……?保健室……行く?」 ひより「……大丈夫…だよ」 ネガティヴな空気をなんとかしようとゆたかも頑張りますが… ゆたか「ひよりちゃんね髪ってさらさらで長くてきれいだよね!いいなー」 ひより「……正直鬱陶しいんだよね…切ろうかな…」 ネガティヴスパイラル突入中でどうしようもありません。 でもな。希望ってネーミングの天使も、思わぬところに隠れてらっしゃるんですよ。 みなみ「……もったいないと思う…それに、右手はまだ元気では……」 ひよりは自分の白い右手を見つめます。 ーー右手で出来るのか? いや、昨日試しに握ってみたが駄目だったじゃないか。 まてよ。たった一晩試しただけで諦めるのか? 私の体は一つに繋がっているじゃない。 それに、この程度であのオンリーイベントを諦めるの? あの作家やあーんな作家の集まるイベントへのサークル参加を諦めるのか!? ならない!ならないぞ乙女ひより十六歳っ! 描いてやる!右手でも妄想を垂れ流して一冊に纏めるぞ! 待っててねルル様!ーー ポジティブシンキングはインポータントです。 ひより「よし!右手だけでも頑張るぞ!」 ゆたか「ひよりちゃん……」 その眼に宿った闘志の見て二人は安心しました。 ひより「ギラギラ萌えるよ私の眼鏡っ!」 そして三カ月後。 ひより「インクの滲むような努力の果てに右手をマスターしたよ…! 左手治ったけどね」 めでたしめでたし

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