「みさおの特訓」 ID: > iuYSZ > AO氏

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夏休み。私達3年生は夏期講習がある中、宿題に励む為忙しい。 しかしこの暑さの中、励む奴はいないと思う。私もその一人だ。 だがちゃんとした理由はある。だから私は柊の案内の元、泉こなたって奴の家に向かってる。 柊の話によるとそいつはオタクらしい。しかも男子が好む方のオタクというが正直ピンと来ない。あとで兄貴にでも聞こうと思う。 しかし別にオタクになるために来た訳ではない。柊は他にも特徴があると言っていた。 家事が出来る、私をからかう、明るい、小さい、髪の毛がいつもたってる… しかし次の言葉には驚いた。 『そういえばあいつ運動が出来るのよ。女子のくせに殆どのスポーツが出来るんじゃないかって思う程よ…。特にリレーがね…。』 『リレー』。私は陸上部に入ってる。実力は上の下ぐらいだけど…。だから私はそいつに興味を持った。 『柊ぃ。そいつに会わせてくれない?』 私は一端家に帰り、色々と道具をプーマのスポーツバックにいれて持ってきた。 そして今、自転車で向かっている。 そいつの家は隣町だった。 「日下部~。別にあんたが会っても面白く無いだけだぞ?オタク系の漫画とか意味分かんないもん一杯あるし。」 「ふーん。じゃあ柊は意味が分かるんだ~」 「それどういう意味よ!」 「ん?つまりは柊がオタ…」 「絶対違う!」 私がからかうと全否定した。 「確かに多少のアニメとかは知ってるけど、それはラノベとかの影響だし…」 「何だ…結局ラノベオタって奴か?」 「…何か言ったか?」 「い、いえ…何も…」 からかいすぎた…。今の柊の顔は言葉で言い表せないほど怖かった…。 「ここよ。」 現在、埼玉県幸手市。二階建ての普通の家だ。 「電話してないから入れてくれるか分かんないけど…押すね?」 そういって柊がインターフォンを鳴らす。 『ふぁ~い…』 「あ、こなた?突然ごめん!ちょっと良いかな?」 『うー、今いくー。』 聞こえてきたのは寝起きっぽい馬鹿丸だしの声。 「おい…今10時だぞ?こんな時間に寝てる奴初めてみたぜ…」 私は携帯を確認しながら言った。 「いつもこんな感じよ。まぁ、今は見慣れたって感じ。」 「ふーん。」 私の興味は薄れた。こんなぐーたらな奴が運動が得意なわけないと… 「かがみおはよ~」 「おーっす、こなた。」 家から出てきたのは小学生並の身長に青い超ロングヘア、それにアンテナみたいな髪の毛があって、緑色の瞳…。柊の言った通りだった。 「んあ?その子誰?」 「紹介するわ。私のクラスで友達の日下部みさおよ。こいつにあんたの話をしたら会いたいって言い始めてね…」 「ふ~ん。私は泉こなた。よろしくね。」 「お…おう。よろしく。…それにしても本当にちびっこいな~…」 「なっ!人が気にしてる事をあっさりと…」 正直そう思った。柊の言ったとおりって言ってやったら顔を膨らまして柊に文句言ってる。それを軽く受け流す柊。さすがだ。 「そうだ。何で私に?」 「柊からスポーツが得意って聞いてさ。どんな奴かな~って。」 「ふーん。スポーツ好きなの?」 「まぁなー。部活にも入ってるし…陸上だけど…」 「へぇ~。」 何か考えてるような泉こなた。もといちびっ子。 「まぁ、つまりは競争してみたいんだ。ちびっ子とさ。」 私が言うとすぐに顔をあげた。 「別にいいけどさー。そのあだ名は何なのさ~」 膨れっ面。まぁ予想通り。 「ちびっこいからちびっ子。何か名前で呼ぶの恥ずかしいからさ…」 すると目がにやついたような目に変わった。 「いや~みさおって可愛いとこあるね~」 「は?」 「名前で呼ぶのが恥ずかしいとは…萌え要素ですな~」 「も…萌え?」 「おい、日下部にそんな事言っても通じないぞ…」 何を言い出すかと思えばコレだ…。どこが萌えるのか自分でもさっぱり分からなかった。柊も呆れてる。 「とりあえず競争しようぜ!」 あれから話が脱線したので改めてちびっ子に言ってみた。 「おっとごめんごめん。で、ゴールはどうすんの?」 「じゃあ、あそこの電柱まで。ちなみにスタートは現在地な。」 ちびっ子はうんと頷いた。 「柊ぃ、タイムと号令お願い。」 「本当にお前は準備万端だな…」 ストップウォッチを渡した。そして柊がゴールに向かって走っていく。 「二人ともいい~?」 柊のでっかい声が聞こえる。ちなみにゴールまでは大体100mだ。私達はうなずいた。 私達はクラウチングスタートの体制を取った。 「じゃあ行くわよ!位置について!」 集中。 「よーい!」 腰を上げる。 「どん!」 すぐに走る。 横をチラ見する。ちびっ子は多少後ろにいた。寝起きだからだろうか。行ける。このままなら勝てる! そう思った矢先だった。ちびっ子が追い上げてくる。私は手加減を全くしていない。 もっと速く足を動かそうとする。だが意識をしたとたんに足の感覚が分からなくなった。 (まずい…) 私は意識するのをやめた。だがゴールの数センチくらい手前で横が同じ位置に並ぶ。 柊の前を走った。 「一位はこなたね。11秒59。日下部は12秒74。」 「負けた…」 ただ悔しかった。だが自分から挑んだ勝負だ。負けを認めざるおえない。 「いや~、みさきちやるね~。さすが陸上部。」 「ハァ…ハァ…お前もなかなかやるな…ちびっ子…」 ここでも負けていた。ちびっ子は汗こそかいているが、息が整ってる。だが私は… 「なぁ、ちびっ子…頼みがあるんだ。」 「頼み?」 「実は私…選手に選ばれたんだ…大会のさ…それで3年最後じゃん?しかも初めて出るんだ…だから思い出も残したいし、何よりも勝ちたい。だからちびっ子に特訓してもらいたいんだ。まぁ初対面のちびっ子に頼むのも場違いだけどさ…」 「ちょ…日下部!あんた、こいつに分かるわけ無いわよ!練習するなら自主練の方が…」 「いいよ。」 意外にあっさりだった。 「ちびっ子…?」 「ちょ…あんた…」 ちょっと照れくさそうにちびっ子は言った。 「確かに私の運動神経は天性のなんとかって奴だからちゃんとした走り方とか分からないけどさ…弱点くらいは分かると思うよ?それに思い出を残せない思いはしてほしく無いんだ。」 「「?」」 私達は首を傾げた。 「私、お母さんが小さい頃に死んで居ないんだ…だから楽しい思い出があってもお母さんに話せなかった。でもみさきちはお母さんいるでしょ?そういう思い出をお母さんが居るうちに話してもらいたいんだ。辛いよ?父親にしか思い出を話せない事って…」 「ちびっ子…」 何か悲しげで暗い表情だった。多分この時だと思う。こいつ可哀想だなって思ったの。 「こなた…あんた…」 「でも大変だよね?ここまで来るの。道具も色々ありそうだし家に泊まる?」 「うーん…」 しかしこいつの顔は初めて会った時の表情に戻った。私は多少気になった。 さて本題だが、実は大会は五日後だった。ちなみに陸上の合宿はすでに経験済みだ。 「ちょっと親に聞くね。」 携帯を取り出し電話をかける。 合宿みたいなものだと言ったら許可は出た。 結局泊まることが決定した。 その日は柊も居たのでとりあえず遊んだ。そして柊のみが帰り。私は挨拶を済ます。 「初めまして、日下部みさおです。数日間お世話になります。」 「気軽にしてていいよ~。」 「みさきち。お父さんには気を付けなよ~。娘である私に対して抱きついたりする程だからね~」 「マジ!?」 こんな仲のいい家族を見たのは初めてだった。叔父さんは苦笑いしている。 「初めまして、小早川ゆたかです。」 「ゆーちゃんは私の従姉妹なんだ~」 「へぇ~。かわいいなぁ。よろしくな、ゆたかちゃん。」 この後、ちびっ子の部屋に戻った瞬間に、私はちびっ子なのにゆーちゃんは名前なんだ…と言われた。嫉妬か、と聞き返したが別に~、という言葉だけで返されてしまった。 とりあえず寝る準備をする事にした。だがどちらか片方が床に寝る事になるはず、なのだが、ちびっ子はネトゲをやるから私のベットで寝てていいよ。と言われ、結局ベットで寝かせてもらった。 「!?」 次の日。目を開けたら数センチ先にちびっ子の寝顔があった。 状況は理解できる。だが慣れてないので恥ずかしかった。 「…と、とりあえずランニングするか…」 布団を掛けて、着替えてそして外に出る。しかし外は初めてみる場所ばかりだった。 「う~ん…まぁ適当に走るか…」 泉家の場所を頭で考えながら一周出来そうな裏道や曲がり角、路地を走りながら探した。 いつもは目覚ましの代わりも兼ねてのランニングなので30分程度で終わるはずなのだが、道を探しながらとなると時間が掛かる。結局道を探し、1時間も走った挙げ句に泉家に着いた。軽く走ったのに息も上がってしまっている。 時間は7時。家…もといちびっ子の家に戻るとゆたかちゃんが台所に立っている。 「お帰りなさい。日下部先輩。」 ニコッと笑って出迎えてくれた彼女の笑顔が疲れた体を癒してくれる気がした。 レズの気は更々ない…たぶん。だがこの笑顔は反則だ。 「日下部先輩は運動が好きなんですか?」 「うん。休日とかたまに幼なじみを連れて外で遊ぶからな…」 「じゃあお腹も空きますよね?」 「結構空くぜ?そのお陰で小学生の時なんか男子よりおかわりはしてたかな…?まぁ結構食ってたとは思ったよ。」 「じゃあ美味しい料理を作るので待ってて下さいね?」 どんな料理かは不明だが楽しみだ。ちょうどお腹もへっている。 しばらくするとちびっ子が降りてきた。眠そうだ。 「みさきちおはよ~。早いね…」 「スポーツは生活がきちんとしてなきゃ駄目だからな~」 そして料理も出来たようだ。 叔父さんもやってきた。ゆたかちゃんも料理を並べる。 そして 「「いただきます」」 となった訳だが一つ問題が私にはあった。 今日のメニューは、おかずがミートボールに肉団子のスープがある。それはいい。だが他にサラダと野菜炒めがあるのだ。 私はミートボールとハンバーグが大好きだ。 しかしその逆もあり、つまりは野菜が嫌いだ。 これが家のお母さんなら文句は言える。だが居候なのだ。しかも後輩であるゆたかちゃんが作った料理。 食べるしかなかった。 まるで精神力をつける為の特訓である。 私の武器は手元にある白米とスープと夏の定番の麦茶。 私は未だにミートボールとスープを中心に食べていた。 「ど…どうですか…?」 「おいしいよ!私はミートボールが大好物なんだ!」 「そうですか…良かった…喜んでもらえて…サラダと野菜炒めも食べて下さいね!」 地獄だった。あの愛らしい笑顔が…という訳ではない。しかしとにかく地獄なのだ… 居候の身、そして外見の為幼く見えるゆたかちゃんの為かがっかりさせてはいけないという気が起きる。いや、起きてしまう。 「う…うん…」 曖昧な返事をし、右手には麦茶。箸をサラダに向け、ドレッシングが一番かかってる物に手をつける。 キャベツを一枚口に入れる。ドレッシングにより味は誤魔化された。 だが噛んだ瞬間、キャベツの水分が出る。ヤバい… 麦茶で飲もうとするが、キャベツが大きすぎて無理だ。 動きが止まる。 「野菜…お嫌いでしたか…?」 申し訳なさそうな目。 その目で私を見ないで…と心で突っ込む。 私はただ作り笑いをすることしか出来なかった。 「みさきち~、ゆーちゃんが悲しむよ?スポーツの精神力をつけると思ってファイト!」 小声でちびっ子が言った一言がキツい。 精神力…精神力…と考え、それにゆたかちゃんの表情でやっと口が動き飲み込んだ。 「…お、美味しかったぜ。」 パァっとゆたかちゃんの表情が明るくなる。 そして何とか朝食を終了させた。 「ねーねーみさきち~」 「んあ?」 「はい、これ。」 部屋に戻った瞬間渡されたのはマジックテープがついてる青いおもりだった。しかも二つ。一つ2~3キロはある。 「うお…重いな…これどうしたのさ?」 「私の使ってたおもりだよ。昨日考えたんだけど、それを足首に巻いて走り込みをやったらどうかな?足早くなるんじゃない?」 「そだな~、朝飯も食ったし今からやってくるか…」 渡された重りを足首に巻き付ける。 「私も付き合おっか?」 「ちびっ子…でも宿題はいいのか?そこまでしてくれなくても…」 「宿題はかがみに見せてもらえばいいよ~。それにみさきちすぐに足が重いとかいいそうだしね。」 「ないない。だって今までもすぐに疲れたなんて思ったことねーもん。」 しかし私はその発言を撤回したいと思った。 10時だというのに外は灼熱地獄の一歩手前だった。30分は練習をしている。 「みさきち~、足がふらついてるよ~」 「う~おもり取りたい…」 もちろん最初は徐々にならす為にウォーキングからである。それを考えると走り込んで20分である。無論ちびっ子も走り込んでいる。 ちなみに午後からは部活だ。 汗が滝のように流れ出ている。 「もうすぐ家だから頑張りなよ~」 「はぁ…はぁ…」 正直重りのお陰で普段の走り方よりは足が下がってしまう。力の加え方も変わった。 泉家に着いた途端、私は水をがぶ飲みした。 現在はクーラーの効いた部屋で休んでいる。 「いや~まさかおもりを巻いただけで変わるなんて思わなかったぜ…」 「巻いたままでいつもの走り方が出来れば完璧だよ…。いや~私も小さい頃お父さんにやらされたな~。」 「ちびっ子~。部活中も借りてていいか~?」 「別に構わないよ~」 そんな感じで部活にも向かった。おもりは欠かさず巻いている。 昼は電車の中でコンビニで買ったおにぎりで腹を満たし、午後の練習メニューをこなした。 やはりいつものようにはいかず、足が上がらず、逆に息が上がりやすくなった。 練習が終わり既に夕方の3時。 電車の中で寝そうになるが、踏ん張った。自分でもかなり疲れたのが分かる。 私はちびっ子の家に帰るなり、ちびっ子兼私の部屋に飛び込んだ。 「みさきちお帰り~」 ちびっ子はPCの画面から私の方に視線を変えた。 私はベットに大の字に伸びていた。 「…疲れたー…。」 洒落にならない程疲れている。おもり取らないと起きたとき足首がヤバいよ、とちびっ子がおもりを足から取ってくれた。足が解放された気分になった。 それから気づいたのは夕飯の手前だった。 「みさきち寝顔かわいいね~」 起きて聞いた第一声はコレだ。私は恥ずかしくなって一気に目が覚めた。帰ってすぐ寝てしまったらしく制服のままだった。 「顔を赤くするみさきち萌え。」 と、ニヤニヤしながら馬鹿にするちびっ子が憎たらしかった。が、どこか許してしまう自分がいた。 とりあえずうるさい、と必死の抵抗をしながら着替え、夕飯を済ませた。 風呂も眠いためか軽く入り、寝間着に着替えだ。途中でちびっ子が胸デカいね~と言っていたが、突っ込む気も起きず就寝した。 そして次の日からはおもりとちびっ子と私とでの練習を繰り返した。 部活中もおもりをつけ、意識をすることで足も上がるようになり、息も上がらず、体力と筋力もつけられたと私は思う。 そして帰ればちびっ子のベットで寝てしまっていた。 二人でテレビを見ていた時は、肩に寄りかかってしまい、仕舞には膝の上で寝てしまったりもした。 「……き…。みさきち。」 「うおっ…悪いな…膝痛かったでしょ?」 「ん~?でも寝ぼけて甘えん坊のみさきちが見れたから嬉しいけどね~」 「は!?」 その後は就寝するまで問いただしても全然答えてくれなかった。 だが、ちびっ子の顔がニヤニヤしている様子から見て、何か言った事は確かだった。 大会前日を迎えた。 その日は体を整えるという事で、部活は無しである。 ハードな練習メニューと部活をしているせいか、今日はいつもより1時間くらい寝坊した。 相変わらず窮屈なベットからちびっ子を起こさぬよう起きて、朝のアップをする。もちろんおもりを巻いて。 随分見慣れたこの住宅地。今日は軽くジョギングする程度で終わらせた。 帰ればゆたかちゃんが迎えてくれるおきまりのパターン。 「今日は叔父さんがスタミナが出るような料理を作るって言ってました。」 「そっか~、そりゃあ楽しみだな。」 「日下部先輩。どうしたら先輩のように強い体になれるんですか?私、病気がちなんです…」 私はこの時初めて知った。ゆたかちゃんの体が弱い事を。 いつもだったら単純に答えを返すのだが、本人の目が本気の目だった。何が本気なのかよく分からないけど、ちゃんと答えてあげないといけないと思った。 私は少し悩んだ。 「そだな~、基本的に規則正しい生活をして、ご飯を食べて、運動すればいいんだけど、ゆたかちゃんみたいに体質的に弱い子は無理をせずに今言ったことをやればいいかな~?私もよく分かんないや…」 「ありがとうございます。とても勉強になりました!」 ゆたかちゃんには太陽のような笑顔がやっぱり似合うな…とふと私は思う。 この後、ちびっ子も起きて、叔父さんの特製炒飯が食卓に並べられた。 「明日はみさおちゃんが大会だという事で、ニンニクを入れてみたぞ~!」 「あ、ありがとうございます。」 「あの…でもお口が臭くなっちゃうよね…」 「ちゃんとその対策もしてきたぞゆーちゃん!」 ふと叔父さんがテーブルの上に何かを置いた。 「これは…!ブレス○ア!お父さんさすがだね…」 「ふっふっふ…そうだろ~?」 そして食事開始。私は炒飯を一口食べる。 「うおっ!意外に美味い!」 率直な感想。 「そうか~、叔父さん感激だぞ~」 その後、ちびっ子から食事当番は交代制である事を聞いた。どうりで美味いはずだ…。 そして全てたいらげた後、ブレス○アを噛み、歯磨きもした。 しばらく休憩していた時にちびっ子が言った。 「みさきち~、成果を確認する為に、この前みたいに競争しない?」 「いいぜ~。」 「私もお姉ちゃん達の競争見てみたいなぁ…」 「じゃあゆーちゃんストップウォッチをやってくれるかな?」 「いいよ!こなたお姉ちゃん!」 そして数日前と同じ位置。 「ゆたかちゃん。これ持ってもらえるかな?」 「別に構いませんよ。」 足首から外したおもりをゆたかちゃんに渡す。持ったゆたかちゃんは意外に重いですね、と言った。 足…いや、下半身が軽い。 試しにジャンプをすると前よりか高くジャンプ出来た気がした。 後は車の通りがまったく無いと言っていいほどの一直線道路を走るだけだ。 100m先にはゆたかちゃんがいる。 「お~やってるね~」 聞き覚えのある声だった。 「柊ちゃんがね、みさちゃんの様子はどうかなって言ってたから来たの。」 「ばっ…峰岸、私は暇だから来ただけだってば!」 「柊ちゃんったら隠さなくていいのに…」 「そうだぜ?柊もいいとこあんじゃん!」 「まさにツンデレだね…」 あやのとちびっ子と私で柊をいじり始めた。 「初めまして、こなたちゃん、ゆたかちゃん。峰岸あやのです。」 「よろしく~。」 「よろしくお願いします。」 あやのが二人に自己紹介をすました所で気を取り直す。 「んじゃああやの~、スターター頼むわ。」 「分かったわ。二人とも位置について…」 クラウチングスタートの体制… 「よーい…」 腰を上げる。 「どん!」 私は駆けだした。 リードはこの前と一緒で私だった。この後である。 「…!」 足の反応が良かった。だから私は全力を尽くした。 差は開いたり縮んだりだった。 そしてゴール。 「二人ともほぼ同じタイムですよ。一位は日下部先輩。11秒59。お姉ちゃんは11秒70だよ。」 「よっしゃ~!」 私は喜んだ。 「すごいわね~日下部~」 「みさちゃん早くなったわね…」 「日下部先輩!おめでとうございます!」 私はすぐに祝福を受けた。 「いや~さすがだね~。私は完敗だよ~。まさにライバルだね!」 炎天下の中。ライバルが出来て、そのライバルに誉められる。 すでに私の中では泉こなたは憧れかそれ以上だった。 「ありがとな!えっ…と…こなた!」 少しちびっ子、いやこなたはきょとんとしていた。 「私も久しぶりに熱いバトルができたよ…ありがとみさお!」 それ以来私たちは名前で呼びあうことになった。いい思い出が出来た。 そしてその日は明日の緊張をほぐす為、みんなで遊んだ。 叔父さんが嬉し泣きをしていたのは別の話。 楽しくワイワイ遊び、非常に楽しい日となった。 そしてみんなが帰る。 その夜だった。風呂上がった後のこなたの部屋で話してた時だ。 「みさおー…。」 「ん?どうした?」 「明日の大会頑張ってね。」 しおらしいな…と思ってたら、いきなり頬にキスをされた。状況が読めず、目を大きく見開いた私がいる。 「その…初対面の時覚えてる?あの時は生意気だけど面白い奴だな…て思ってた。でも今日のみさおや練習中のみさおを見てるうちにかっこいいなって思ってたんだよね…。まぁ、女が女に告白するのはアニメとかだけかと思ってたけど…こういう事だったんだね…。」 照れ隠しなのか頬を掻いて苦笑いしでいる。顔も赤かった。昼間のこなたとはかなり違う雰囲気と言葉遣いだ。 「こなたー…私が男じゃなくてごめんなー…でも安心しろ!私も…同じだからさ…」 つかの間の相手からの告白…そういっていた。 「ありがと…無理なのは私も分かってるよ…だからこの告白は大親友の証って事で…いいかな?」 「いいぜ…!」 親指を立てる。お互いが微笑む。私自身も頬が熱くなっていた。 その後こなたは空気を変えるかのようにさて、明日は早いから寝よっか、と言った。 そして就寝した。 本番当日。 その日は全国大会に向けての埼玉県代表を決めるための予選大会だ。 会場に着いた私は学校のバスで他の種目の選手と共に会場に着いていた。 ここは県内の比較的大きなアリーナだった。 まだ客が居ない6時に来たが、しだいに客が集まり今は既に満席。音は観客の声意外は聞こえず、そのプレッシャーの中で私達選手は準備体操や、アップを行う。 私が出る種目は100m走。全てはこれの為だった。 ルールは3~6人に選手をくじによって分割し、それを1レースとする。ちなみにくじ引きは既に客が来る前に完了している。 1位になれば1位同士と最後の一人が決まるまで戦うというシンプルなものだった。 開会式が始まり、気持ちを整える。 私は第3レースだった。すぐに順番が来るので、開会式が終わればすぐに入場門へ移動となった。 100mは単純な為か一番先に行われる競技だった。 歓声が入場門まで響く。 「第3レースの方はこちらへ!」 すぐに順番が回った。 自分の所は6人。つまり最大人数でレースを行う。 そして案内係に従って、外に出た。 「陵桜学園。代表。日下部みさお。」 自分の名前がアナウンスされると同時に歓声が起こった。 緊張とプレッシャーがのしかかる。 だが勝負は一瞬で決まる。だからこそ練習と周りの期待、思いを裏切らない為、自分の事に集中した。 「各選手。位置について。」 絶対勝つ… 「よーい!」 こなた… 「どん!」 走れ! 歓声とピストルの音と共に駆け出した。 始めは3位だったがすぐに一人抜き、2位になる。 1位との差は目前だった。 ゴールが近づく。 再び大きな歓声。ゴールラインを踏む。だがゴールテープは目前で落ち、触れる事は出来なかった。歓声が一瞬遮断された気がした。 だかすぐに我に返る。 自分のタイムは11秒51。一位の選手は11秒45だった。 観客の歓声の中、私の最初で最後の夏が終わった。 結局その選手が県代表となり、私の実力は県で3位だった。 学校に一端戻り、表彰式でもらった銅メダルを首にかけ、泉家に帰った。 「「おかえりーっ!」」 クラッカーの音。 昨日のメンバーである、こなた、ゆたかちゃん、柊、あやの、叔父さんが拍手をしていた。 「惜しかったけどよくやったよ!みさお!」 「久々に感動しました!日下部先輩!」 「悔しいと思うけど、頑張ったと思うわ。見直したわよ日下部。」 「みさちゃん。そのメダル似合ってるわよ。自信持って?」 「みさおちゃん。いいレースだったぞ!」 嬉しさと悔しさが涙に変わった。 私はこなたに抱きついて泣いた。 「悔しかった…とても悔しいよぅ…」 そんな私を暖かく見る皆。慰めてくれるこなた。 「みさお…今夜はみんなでお泊まり会しよ?」 「そうよ、だから泣くんじゃないわよ。」 「みさちゃんの為にお菓子作ったんだよ。」 「叔父さん。今日は私達で料理作りましょうか。」 「そうだなゆーちゃん。美味い料理を作るぞ!」 私は思う。これが青春だと。暑い夏の終わりだと。これが暖かい友情と友達だと… そしてこれが私にとってとても熱くて暖かい思い出だと… みさおの特訓 ~完~

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