ID:SrsP4POd0氏:途中下車

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 今日もいつもと同じように授業が終わり、いつものようにこなた達と雑談をしてからの下校。普段と何も変わらない。いつもの日常。みゆきは駅のホームで別れた。 いつものように途中の駅でこなたは降りていく。そしてつかさと私が残った。 つかさがこそこそと鞄を持ち上げた。 かがみ「つかさ、降りるのは次の駅じゃない、準備は速過ぎるわよ」 つかさ「私、次の駅で降りるから、お姉ちゃんは先に帰ってていいよ」 次の駅、私の知る限りつかさが次の駅で降りた事はない。何か特別な施設があるわけでもない。知り合いでもいるのか。つかさの交友関係を全て把握している訳ではないが、 少なくともその駅には知り合いは居ないはず。 かがみ「急に降りるって、何か用事でもあるの?」 つかさ「ちょっとね~」 つかさは私から目を外して電車の窓の外を見た。目的を私に知られたくないのか。いつもならどうでもいい事まで私に話してくるのに。いったいどんな用事なのだろう。 『間もなく〇〇駅に到着します、お出口は右側です』 つかさはドアの前に移動した。気なる。なぜ降りるのか興味が湧いてきた。電車が止まりつかさは降りた。そして発車のベルが鳴った。 どうするかがみ、降りるか、このまま帰るか、妹を尾行するなんて趣味が悪いぞ。でも気になるじゃない。もう時間がない。 えーい、ままよ。 ドアが閉まると同時に飛び降りた。 『途中下車』 私は降りる選択をした。つかさの後姿が見える。もう十メートル以上は離れている。私の乗っていた電車は発車した。 もう今更後には引けない。つかさは後ろを振り向いていない。私はあの電車で帰ったと思っている。私は気を落ち着かせてつかさの後を追った。 この駅を降りるのは初めてかもしれない。正直いって利用しない。いつも通り過ぎていた駅。それはつかさだっておなじはず。ますますつかさの目的が分からない。 つかさは迷う様子もなく駅を出ても歩き続けている。前にも降りた事があるのだろうか。付かず離れず見つからないように後を付けた。 『しまった!!』 心の中で叫んだ。 信号に捕まって待った。思いのほか車の通りは激しい。信号無視はできそうにない。つかさの姿がどんどん小さくなっていく。 青になった頃にはつかさの姿は見えなくなっていた。私は走ってつかさの通った道を辿った。  私は歩みを止めた。道は三方向に分かれていた。つかさはどの道を通ったのか。もうつかさの姿は見えない。 一つ目は緩やかな坂道で高台の公園に続く、二つ目は住宅街に続いているようだ。三つ目は商店街に向かっている。友達を訪ねるなら住宅街の道だろう。 しかし住宅街に入ったらつかさを見つけるのは困難だ。つかさの事だから買い物かもしれない。それなら商店街だろう。見つけるのもそんなに苦にはならない。 公園の道は……公園に行く理由が見つからない。公園なら家の近くにもある。私の第六感に懸ける。商店街に向かって歩き出した。  商店街には結構人が歩いている。このような時は注意が必要。ばったり鉢合わせがあるからだ。細心の注意をしつつ、つかさの行きそうなお店を廻った。 洋服店、装飾店、お菓子屋さん……etc、つかさの姿は見えない。私の感が外れたか。何度か廻ってみたがつかさは居ない。分かれ道に戻った。 後は公園と住宅街か。どちらに行ったか。腕を組んで考えた。 私、何をしているのかな。残りの二つの道を見ながら自分の行動に疑問を感じた。そこまでしてつかさを探して私は何を知りたい。 買い物、友達に会いに行く。それを見て私は何を感じると言うのか。後ろめたさだけが残るだけじゃない。つかさは私と同じ高校生、私が知らない 行動をしたとしても何も不思議じゃない。いや、もう自分の行動に責任を持てる。つかさはもう私の姉としての立場なんてもう要らない。 もしかしたらつかさを見失って正解だったのかもしれない。もうつかさを追うのは止めよう。  さて、もうここには用はない。それこそここでつかさに見つかったら言い訳がつかない。駅に向かおうとした時だった。公園の方から誰かがこっちに向かって来た。 つかさか。思わず私は商店街に向かう道に隠れた。つかさじゃなかった。良く見ると男性だった。なんだ、私は男女の区別も付かなかったのか。ほっと溜め息をついた。 男性は分かれ道を超え、駅の方に向かって……あの男性は私のクラスメイトじゃない。学生服を着ている、彼も帰宅途中だったに違いない。なぜ公園の方から歩いてきた。 まさか、つかさは公園に向かっていたのか。彼と待ち合わせをして…… 帰ろうとした気持ちが何処かに消えた。彼が見えなくなるのを確認すると公園に向かった。 隣のクラスなら彼とつかさが会って、話をしたりする機会はいくらでもある。待ち合わせでもしていたのか。いや、それなら何故彼は一人だけで駅に向かう。 もしかしたらつかさとは無関係でたまたま通っただけなのかもしれない。いや、もしかしたら……私の好奇心は勝手に想像を膨らませていく。 坂を上り切ると、視界が開いて広場に出た。芝生が一面に敷き詰められている。高台で街が一望出来る。降りた駅も見えた。周りにブランコやシーソー、砂場はない。 そのせいか子供達が遊んでいる姿はなかった。広場の中央に大きな木があった。その根元に誰か立っている。遠いけど分かる、つかさだ。 周りに身を隠す物はない。これ以上近づくことは出来ない。つかさは町を眺めている。良く見ると駅の方を見ているようだ。まさか、彼を見送っているのか。 なぜ見送る必要がある。一緒に行けば良いじゃない。じれったい、直接つかさに近づいて真相を聞きたい。でも、そんな事をしたら私は軽蔑されるかもしれない。  10分くらい経っただろうか、つかさは木から離れて歩き出した。しかし私の居る方ではない。駅の方向に向かって歩き出した。そしてつかさは止まった。 つかさは駅を見ている。私でも分かる。何故そこまでして駅を見るのか。その答えは今までの状況から察しはつく。 私は異変に気が付いた。つかさが立っている足元は切り立った崖になっている。柵はあるが腰の高さくらいしかない。つかさは身を乗り出している。 まさか。嫌な予感が過ぎった。その瞬間だった。つかさは柵を跨ごうとした。 かがみ「バカー!!!」 走った。全速力で、ばか、何があったか知らないけど自ら死を選ぶなんて許さない。つかさの首根っこ掴んで柵の中に引き戻した。つかさはキョトンとした顔で私を見た。 私はつかさを睨み返した。 かがみ「何やってるのよ、死んだらダメだ!!!」 つかさ「あ、あう、あう」 つかさは目が潤み始めて、何か言おうとしているのだろうか、言葉になっていなかった。首元を掴んでいた手を離し、今度は腕を掴んで中央の木まで引っ張り座らせた。 かがみ「少しここで頭を冷やしなさい、私も居てあげるから」 つかさは暫く動かなかった。  つかさの目が元に戻ってきた。何時また崖から飛び降りるとも限らない、一時もつかさから目を放さなかった。でも、だいぶ落ち着いたと判断した。 かがみ「何故私に相談しなかったの、そんなになるまで思い詰めて」 つかさ「……思い詰めるって、何?」 白を切るつもりか、この期に及んで……私は溜め息を付いた。 かがみ「あんた、さっきその崖から飛び降りようとしたわよね、この目でしっかり見たわよ」 つかさ「……ち、ちがう、よ」 俯き首を振って否定した。 かがみ「柵を跨いでその後どうするつもりだったの?」 つかさ「り、リボンが落ちちゃったから……拾おうと……したの」 かがみ「リボン?」 つかさの頭を見ると確かにリボンが付いていない。 つかさ「リボンを付け直そうとしたら風が吹いて飛ばされちゃって……柵の柱に引っかかったから……跨いで取ろうと……」 つかさは飛び降りようとはしていなかったのか。そんなはずはない。 かがみ「だったら、なんで私を見て目が潤んだのよ」 つかさ「だ、だって、お姉ちゃん……顔が、恐かったから……」 かがみ「ば、ばか、妹が飛び降りようとしているのに普通で居られるか!」 またつかさの目が潤みそうになった。どうやら本当みたいだ。急に力が抜けた。私もその場に座り込んだ。 かがみ「よかった……」 私とつかさは町並みを座りながら眺めていた。つかさは飛び降りようとはしていなかった。だけどまだ疑問が解消したわけではない。 かがみ「こんな公園にいったい何をしに来たのよ」 つかさは木にもたれた。 つかさ「も、もしかして見ていたの?」 見ていた。見ていたってどうゆう事だ。私が来た時はただ景色を眺めていただけだった。それは私が此処に来る前の出来事を言っているのか。 かがみ「つかさはただ景色を見ていただけだった、それとは違うわよね」 つかさは口を閉じた。顔を少し赤らめて。つかさはやっぱり嘘は付けない。話したくなさそうに私から目を背けた。 かがみ「私がこの公園に向かうとき、私のクラスメイトとすれ違った」 つかさの瞬きが早くなった。やっぱり。もう答えは確定した。 かがみ「もう隠す必要はない、ここで彼から告白されたんでしょ……」 つかさの呼吸が早くなっていくのが分かる。でも否定も肯定もしない。 かがみ「……凄いじゃない、陰ながら応援するわよ……ははん、こなたにバレるのが嫌なのか、私からは話さないわよ、付き合っていれば何れは分かるけどな」 つかさは大きく深呼吸してゆっくり立ち上がった。 つかさ「私……告白されてない……告白したの」 耳を疑った。いつも受身のつかさが自ら行動したと言うのか。思わず下からつかさを見上げた。  つかさはゆっくりと歩き出した。さっきの崖の所まで行くと柵の内側から手を伸ばしてリボンを取り付け始めた。私も立ち上がりつかさの居る所に歩いた。 つかさと並び崖の上に立つ。 つかさ「いい眺めでしょ、あの駅からこの公園が見える、入学式の時、電車の窓で見つけたんだよ、今までに二、三度来た」 それで方向音痴のつかさが一度も迷わず目指すことが出来たのか。公園へ続く道はこの公園をぐるりと一周するので知らないと少し迷うかもしれない。 つかさは振り返り中央の木を見た。 つかさ「この木、何となく気に入ったの、ここで座ってると心が落ち着みたいで……だから重要な出来事があったらここで決めようと思った」 重要な出来事……好きな人ができて、それを相手に伝える。簡単で難しい…… かがみ「それで、彼をここに呼んだのね、それで、彼は何て言ったのよ……」 その質問は野暮だった。つかさの悲しげな表情を見れば直ぐに分かったはずだった。それでもあえて聞いた。つかさもそれを感じたのか何も言わず木の天辺を見ていた。 かがみ「一言、相談してくれれば良かったのに……」 つかさ「……そうだよね、相談したらよかったかな……でも、恥かしいから、やっぱり言えなかった」 その問いも何も意味が無い、私自身異性に好きだなんて言った事はないし、言えない。助言すらできなかっただろう。 こんな時はどうすればいい……なんてつかさに言ってあげればいい。 かがみ「凄い、凄いわよ、つかさを見直した、想いを伝えるって時には心を傷つける場合だってある、自分も、相手もね、それでも決めた事を実行できるなんて、     結果なんか関係ない、賞賛に値するわよ」 つかさ「そ、そうかな……」 少し嬉しそうに微笑んだ。 かがみ「そうそう、別に落ち込むことなんかないわよ」 もうこの話をするのは止した方がいいかもしれない。 かがみ「さてと、気晴らしに商店街に行ってみる、結構いろいろあったわよ」 つかさ「そうだね、新しいリボンも欲しいし……そうそう、あの商店街にね、とっても美味しいお菓子屋さんがあるよ」 かがみ「わーい、行ってみよう」 つかさに満面の笑みが戻った。こうでないとつかさじゃない。 つかさ「ところで……今更だけど、なんでお姉ちゃんがここに居るの?」 う、確かに今更だ。しかし私はその答えを準備していなかった。 かがみ「え、え~つかさが心配だったから……べ、別に告白を覗こうって思った訳じゃないから……実際、見ていないし……」 つかさ「もういいよ、私を柵から引っ張り上げた時、ちょっと恐かったけど……今、思うとやっぱり危なかったね、ありがとう」 こんな時は言い訳をするべきではない。知ってはいたがやってしまった。私はつかさの性格に救われたようだ。 私達は公園を後にした。商店街で買い物とお菓子屋さんで軽食を食べてから帰った。 何時になくつかさの笑顔が綺麗に見えた。 これはつかさのようにありたい、そう願う自分自身への憧れなのだろうか。もうつかさはただ見守っているだけの妹ではなくなったのかもしれない。 『間もなく〇宮、〇宮駅です……』 すっかり遅くなってしまった。もう日は沈み、真っ暗になっていた。メールでお母さんに連絡はしておいたが、怒られるのは間違いなさそうだ。 かがみ「ちょっと、買い物とお喋りに夢中になりすぎたみたい、怒られるのは覚悟しておきなさい」 気付くと隣につかさが居ない。後ろを振り向くと四、五メートル後にポツンと立ち止まっていた。 かがみ「どうしたのよ、大丈夫、メールで遅くなるって伝えてあるし、そんなには怒られないわよ、行こう」 しかしつかさは歩き出そうとはしなかった。乗客は全て改札口を出ている。私達だけが残ってしまった。 つかさ「さっきまであんなに楽しかったのに、断られても断然平気だったのに、どうしてかな、今頃になって……」 私は戻ってつかさに近づいた。電灯と電灯の間で少し暗くて分からなかった。つかさの目には涙が溜まっていた。 これが……失恋ってものなのか。その時初めてその重大さに気が付いた。 つかさ「これじゃ、家に帰れないよね……どうしよう、止まらないよ……」 そんな悲しい目で訴えかけられても私に何ができる。つかさの目からどんどん涙が溢れてきた。このまま立っていてもしょうがない。つかさを駅のベンチに座らせ 暫く放っておくしかなかった。これほど自分が無力だったのかと思わされた。そして自分にもこんな日がくるのであろうかと……ただ泣きじゃくるつかさを見ていた。 かがみ「もう……帰ろう」 つかさはただ首を横に振るばかりだった。もう一時間も経つがつかさの涙が止まる気配はなかった。何本もの電車が通り過ぎた 確かにこんな姿を家族が見たら、人生の先輩である二人の姉、お父さん、お母さんに、つかさに何があったか分かってしまうだろう。 誰にも見せたくないはず、本当は私にだって見せたくなかった。……だから一人であの公園に行った。遅かった。今頃分かっても。遅すぎた。 つかさはこうなるのをある程度分かっていたのかもしれない。ならなぜ……分からない。そんな質問をするだけの勇気もなかった。 かがみ「私が玄関の扉を開けたら、すぐに自分の部屋に入りなさい、後は私が対応するから、そこでなら幾らでも泣いていられるわよ」 つかさはやっと頷いた。でも立とうとしない。いや、立てないのか。私が肩を貸してあげてやっと立ち上がった。足元に力が入らないのかふらついてしまう。  普段の二倍の時間をかけて家にたどり着いた。 かがみ「開けるわよ、つかさ、準備はいい?」 私は玄関の扉を開けた。 かがみ「ただいま~」 つかさはゆっくりと、しかも音を立てずに自分の部屋に向かった。暫くすると。 みき「何やっていたの、何度も電話したのに出ないで……」 かがみ「ごめんなさい……」 お母さんがキョロキョロと辺りを見回した。 みき「つかさは、どうしたの?」 かがみ「気分が悪いから……部屋に……」 任せろとは言ったが、実際にやってみると誤魔化すのは難しい。お母さんはつかさの部屋に向かおうとしていた。 かがみ「待って、お母さん、今は、今はそっとしておいてあげて、お願い」 神にでも祈るように頼んだ。お母さんは私の顔を見た。そして、暫くつかさの部屋の方を見ると。 みき「そう、たまにはこんな事もあるでしょう」 そのまま居間の方に戻っていった。ほっと胸を撫で下ろした。しかしこの後、お父さんのお説教が待っていた。つかさの分まで叱られてしまった。 その後、つかさが部屋から出てくることは無かった……日が明けるまで。 翌朝、目覚めて顔を洗いに洗面所に向かった。するとつかさが歯を磨いていた。私より先に起きるなんて、珍しいこともあるものだ。 かがみ「おはよう、つかさ」 つかさ「も、もはもー」 歯ブラシを咥えたままの挨拶だ。鏡から見えるつかさの顔は笑顔だった。 かがみ「ばかね、歯を磨きながら話すやつがあるか」 昨日の今日、無理に作った笑顔にも見える。 かがみ「こんな日は休んでもいいのよ、無理をしない方がいい」 つかさはうがいをして口をタオルで拭いた。 つかさ「うんん、もう大丈夫だよ、お姉ちゃんがずっと泣かせてくれたから、もう涙は出なくなったよ、それに、三年連続皆勤賞がかかってるしね」 かがみ「そ、そうなの……それじゃ休めないわね」 つかさ「昨日はありがとう」 私に譲るように洗面所を出て行った。なんだ。何か違う。今までのつかさとは何かが違っていた。そういえば頭に付けていたリボンの色が少し明るい色になっていたか。  朝食を済ませ、私達は学校へと向かった。いつもの駅でこなたと待ち合わせ。待っているとこなたとみゆきが改札口から出てきた。二人が同時くるのは初めてだ。 つかさ「こなちゃん、ゆきちゃん、おはよー」 私が言うより先に挨拶をした。 みゆき「おはようございます」 こなた「おはよー」 かがみ「おっす……こなたとみゆきが一緒とは驚いたわね」 こなた「たまたま偶然の一致だよ」 かがみ「それじゃ、バス停に行こうか」 バス停に向かった。 みゆき「つかささん、リボンを変えたのですね」 みゆきがいち早くつかさのリボンに気付いた。 つかさ「うん、昨日買ったの、どうかな」 みゆき「とってもお似合いですよ」 つかさ「ありがとう、あとね、何本か買ったのだけど、こんど見て欲しいんだ」 …… つかさとみゆきの会話、みゆきが妙に気遣っているのが分かった。もしかしたらみゆきもつかさと同じ経験をしたのかもしれない。同じ経験をした者同士にしか分からないのか。 私の背中をツンツンと突く。こなただ。 かがみ「なによ、言いたいならそんな事なんかしないで直接言いなさいよ」 こなたは私に近づき耳打ちした。 こなた「なんかさ、つかさ変わったと思わない……何だろう、何て言って良いのか表現できないけど、かがみはなんとも思わないの?」 こなたも私も分かるはずもない。 かがみ「そうね、私達がこれから十年くらいの間には分かるかもしれない」 こなた「えー私達ってお子ちゃまなの?」 子供か、その通りかもしれない。  バスに乗るとちょうど彼もバスに乗ってきた。私は内心ハラハラした。またつかさが泣き出すかと思ったからだ。しかしつかさは何事もなかったようにみゆきと話していた。 そう、もうつかさは昨夜の涙で全てを洗い流した。もう昨日までのつかさとは違う。つかさがとっても大きい存在に感じた。 今まではつかさが私を追いかけた。今日からは私がつかさを追いかける。 終 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 今日もいつもと同じように授業が終わり、いつものようにこなた達と雑談をしてからの下校。普段と何も変わらない。いつもの日常。みゆきは駅のホームで別れた。 いつものように途中の駅でこなたは降りていく。そしてつかさと私が残った。 つかさがこそこそと鞄を持ち上げた。 かがみ「つかさ、降りるのは次の駅じゃない、準備は速過ぎるわよ」 つかさ「私、次の駅で降りるから、お姉ちゃんは先に帰ってていいよ」 次の駅、私の知る限りつかさが次の駅で降りた事はない。何か特別な施設があるわけでもない。知り合いでもいるのか。つかさの交友関係を全て把握している訳ではないが、 少なくともその駅には知り合いは居ないはず。 かがみ「急に降りるって、何か用事でもあるの?」 つかさ「ちょっとね~」 つかさは私から目を外して電車の窓の外を見た。目的を私に知られたくないのか。いつもならどうでもいい事まで私に話してくるのに。いったいどんな用事なのだろう。 『間もなく〇〇駅に到着します、お出口は右側です』 つかさはドアの前に移動した。気なる。なぜ降りるのか興味が湧いてきた。電車が止まりつかさは降りた。そして発車のベルが鳴った。 どうするかがみ、降りるか、このまま帰るか、妹を尾行するなんて趣味が悪いぞ。でも気になるじゃない。もう時間がない。 えーい、ままよ。 ドアが閉まると同時に飛び降りた。 『途中下車』 私は降りる選択をした。つかさの後姿が見える。もう十メートル以上は離れている。私の乗っていた電車は発車した。 もう今更後には引けない。つかさは後ろを振り向いていない。私はあの電車で帰ったと思っている。私は気を落ち着かせてつかさの後を追った。 この駅を降りるのは初めてかもしれない。正直いって利用しない。いつも通り過ぎていた駅。それはつかさだっておなじはず。ますますつかさの目的が分からない。 つかさは迷う様子もなく駅を出ても歩き続けている。前にも降りた事があるのだろうか。付かず離れず見つからないように後を付けた。 『しまった!!』 心の中で叫んだ。 信号に捕まって待った。思いのほか車の通りは激しい。信号無視はできそうにない。つかさの姿がどんどん小さくなっていく。 青になった頃にはつかさの姿は見えなくなっていた。私は走ってつかさの通った道を辿った。  私は歩みを止めた。道は三方向に分かれていた。つかさはどの道を通ったのか。もうつかさの姿は見えない。 一つ目は緩やかな坂道で高台の公園に続く、二つ目は住宅街に続いているようだ。三つ目は商店街に向かっている。友達を訪ねるなら住宅街の道だろう。 しかし住宅街に入ったらつかさを見つけるのは困難だ。つかさの事だから買い物かもしれない。それなら商店街だろう。見つけるのもそんなに苦にはならない。 公園の道は……公園に行く理由が見つからない。公園なら家の近くにもある。私の第六感に懸ける。商店街に向かって歩き出した。  商店街には結構人が歩いている。このような時は注意が必要。ばったり鉢合わせがあるからだ。細心の注意をしつつ、つかさの行きそうなお店を廻った。 洋服店、装飾店、お菓子屋さん……etc、つかさの姿は見えない。私の感が外れたか。何度か廻ってみたがつかさは居ない。分かれ道に戻った。 後は公園と住宅街か。どちらに行ったか。腕を組んで考えた。 私、何をしているのかな。残りの二つの道を見ながら自分の行動に疑問を感じた。そこまでしてつかさを探して私は何を知りたい。 買い物、友達に会いに行く。それを見て私は何を感じると言うのか。後ろめたさだけが残るだけじゃない。つかさは私と同じ高校生、私が知らない 行動をしたとしても何も不思議じゃない。いや、もう自分の行動に責任を持てる。つかさはもう私の姉としての立場なんてもう要らない。 もしかしたらつかさを見失って正解だったのかもしれない。もうつかさを追うのは止めよう。  さて、もうここには用はない。それこそここでつかさに見つかったら言い訳がつかない。駅に向かおうとした時だった。公園の方から誰かがこっちに向かって来た。 つかさか。思わず私は商店街に向かう道に隠れた。つかさじゃなかった。良く見ると男性だった。なんだ、私は男女の区別も付かなかったのか。ほっと溜め息をついた。 男性は分かれ道を超え、駅の方に向かって……あの男性は私のクラスメイトじゃない。学生服を着ている、彼も帰宅途中だったに違いない。なぜ公園の方から歩いてきた。 まさか、つかさは公園に向かっていたのか。彼と待ち合わせをして…… 帰ろうとした気持ちが何処かに消えた。彼が見えなくなるのを確認すると公園に向かった。 隣のクラスなら彼とつかさが会って、話をしたりする機会はいくらでもある。待ち合わせでもしていたのか。いや、それなら何故彼は一人だけで駅に向かう。 もしかしたらつかさとは無関係でたまたま通っただけなのかもしれない。いや、もしかしたら……私の好奇心は勝手に想像を膨らませていく。 坂を上り切ると、視界が開いて広場に出た。芝生が一面に敷き詰められている。高台で街が一望出来る。降りた駅も見えた。周りにブランコやシーソー、砂場はない。 そのせいか子供達が遊んでいる姿はなかった。広場の中央に大きな木があった。その根元に誰か立っている。遠いけど分かる、つかさだ。 周りに身を隠す物はない。これ以上近づくことは出来ない。つかさは町を眺めている。良く見ると駅の方を見ているようだ。まさか、彼を見送っているのか。 なぜ見送る必要がある。一緒に行けば良いじゃない。じれったい、直接つかさに近づいて真相を聞きたい。でも、そんな事をしたら私は軽蔑されるかもしれない。  10分くらい経っただろうか、つかさは木から離れて歩き出した。しかし私の居る方ではない。駅の方向に向かって歩き出した。そしてつかさは止まった。 つかさは駅を見ている。私でも分かる。何故そこまでして駅を見るのか。その答えは今までの状況から察しはつく。 私は異変に気が付いた。つかさが立っている足元は切り立った崖になっている。柵はあるが腰の高さくらいしかない。つかさは身を乗り出している。 まさか。嫌な予感が過ぎった。その瞬間だった。つかさは柵を跨ごうとした。 かがみ「バカー!!!」 走った。全速力で、ばか、何があったか知らないけど自ら死を選ぶなんて許さない。つかさの首根っこ掴んで柵の中に引き戻した。つかさはキョトンとした顔で私を見た。 私はつかさを睨み返した。 かがみ「何やってるのよ、死んだらダメだ!!!」 つかさ「あ、あう、あう」 つかさは目が潤み始めて、何か言おうとしているのだろうか、言葉になっていなかった。首元を掴んでいた手を離し、今度は腕を掴んで中央の木まで引っ張り座らせた。 かがみ「少しここで頭を冷やしなさい、私も居てあげるから」 つかさは暫く動かなかった。  つかさの目が元に戻ってきた。何時また崖から飛び降りるとも限らない、一時もつかさから目を放さなかった。でも、だいぶ落ち着いたと判断した。 かがみ「何故私に相談しなかったの、そんなになるまで思い詰めて」 つかさ「……思い詰めるって、何?」 白を切るつもりか、この期に及んで……私は溜め息を付いた。 かがみ「あんた、さっきその崖から飛び降りようとしたわよね、この目でしっかり見たわよ」 つかさ「……ち、ちがう、よ」 俯き首を振って否定した。 かがみ「柵を跨いでその後どうするつもりだったの?」 つかさ「り、リボンが落ちちゃったから……拾おうと……したの」 かがみ「リボン?」 つかさの頭を見ると確かにリボンが付いていない。 つかさ「リボンを付け直そうとしたら風が吹いて飛ばされちゃって……柵の柱に引っかかったから……跨いで取ろうと……」 つかさは飛び降りようとはしていなかったのか。そんなはずはない。 かがみ「だったら、なんで私を見て目が潤んだのよ」 つかさ「だ、だって、お姉ちゃん……顔が、恐かったから……」 かがみ「ば、ばか、妹が飛び降りようとしているのに普通で居られるか!」 またつかさの目が潤みそうになった。どうやら本当みたいだ。急に力が抜けた。私もその場に座り込んだ。 かがみ「よかった……」 私とつかさは町並みを座りながら眺めていた。つかさは飛び降りようとはしていなかった。だけどまだ疑問が解消したわけではない。 かがみ「こんな公園にいったい何をしに来たのよ」 つかさは木にもたれた。 つかさ「も、もしかして見ていたの?」 見ていた。見ていたってどうゆう事だ。私が来た時はただ景色を眺めていただけだった。それは私が此処に来る前の出来事を言っているのか。 かがみ「つかさはただ景色を見ていただけだった、それとは違うわよね」 つかさは口を閉じた。顔を少し赤らめて。つかさはやっぱり嘘は付けない。話したくなさそうに私から目を背けた。 かがみ「私がこの公園に向かうとき、私のクラスメイトとすれ違った」 つかさの瞬きが早くなった。やっぱり。もう答えは確定した。 かがみ「もう隠す必要はない、ここで彼から告白されたんでしょ……」 つかさの呼吸が早くなっていくのが分かる。でも否定も肯定もしない。 かがみ「……凄いじゃない、陰ながら応援するわよ……ははん、こなたにバレるのが嫌なのか、私からは話さないわよ、付き合っていれば何れは分かるけどな」 つかさは大きく深呼吸してゆっくり立ち上がった。 つかさ「私……告白されてない……告白したの」 耳を疑った。いつも受身のつかさが自ら行動したと言うのか。思わず下からつかさを見上げた。  つかさはゆっくりと歩き出した。さっきの崖の所まで行くと柵の内側から手を伸ばしてリボンを取り付け始めた。私も立ち上がりつかさの居る所に歩いた。 つかさと並び崖の上に立つ。 つかさ「いい眺めでしょ、あの駅からこの公園が見える、入学式の時、電車の窓で見つけたんだよ、今までに二、三度来た」 それで方向音痴のつかさが一度も迷わず目指すことが出来たのか。公園へ続く道はこの公園をぐるりと一周するので知らないと少し迷うかもしれない。 つかさは振り返り中央の木を見た。 つかさ「この木、何となく気に入ったの、ここで座ってると心が落ち着みたいで……だから重要な出来事があったらここで決めようと思った」 重要な出来事……好きな人ができて、それを相手に伝える。簡単で難しい…… かがみ「それで、彼をここに呼んだのね、それで、彼は何て言ったのよ……」 その質問は野暮だった。つかさの悲しげな表情を見れば直ぐに分かったはずだった。それでもあえて聞いた。つかさもそれを感じたのか何も言わず木の天辺を見ていた。 かがみ「一言、相談してくれれば良かったのに……」 つかさ「……そうだよね、相談したらよかったかな……でも、恥かしいから、やっぱり言えなかった」 その問いも何も意味が無い、私自身異性に好きだなんて言った事はないし、言えない。助言すらできなかっただろう。 こんな時はどうすればいい……なんてつかさに言ってあげればいい。 かがみ「凄い、凄いわよ、つかさを見直した、想いを伝えるって時には心を傷つける場合だってある、自分も、相手もね、それでも決めた事を実行できるなんて、     結果なんか関係ない、賞賛に値するわよ」 つかさ「そ、そうかな……」 少し嬉しそうに微笑んだ。 かがみ「そうそう、別に落ち込むことなんかないわよ」 もうこの話をするのは止した方がいいかもしれない。 かがみ「さてと、気晴らしに商店街に行ってみる、結構いろいろあったわよ」 つかさ「そうだね、新しいリボンも欲しいし……そうそう、あの商店街にね、とっても美味しいお菓子屋さんがあるよ」 かがみ「わーい、行ってみよう」 つかさに満面の笑みが戻った。こうでないとつかさじゃない。 つかさ「ところで……今更だけど、なんでお姉ちゃんがここに居るの?」 う、確かに今更だ。しかし私はその答えを準備していなかった。 かがみ「え、え~つかさが心配だったから……べ、別に告白を覗こうって思った訳じゃないから……実際、見ていないし……」 つかさ「もういいよ、私を柵から引っ張り上げた時、ちょっと恐かったけど……今、思うとやっぱり危なかったね、ありがとう」 こんな時は言い訳をするべきではない。知ってはいたがやってしまった。私はつかさの性格に救われたようだ。 私達は公園を後にした。商店街で買い物とお菓子屋さんで軽食を食べてから帰った。 何時になくつかさの笑顔が綺麗に見えた。 これはつかさのようにありたい、そう願う自分自身への憧れなのだろうか。もうつかさはただ見守っているだけの妹ではなくなったのかもしれない。 『間もなく〇宮、〇宮駅です……』 すっかり遅くなってしまった。もう日は沈み、真っ暗になっていた。メールでお母さんに連絡はしておいたが、怒られるのは間違いなさそうだ。 かがみ「ちょっと、買い物とお喋りに夢中になりすぎたみたい、怒られるのは覚悟しておきなさい」 気付くと隣につかさが居ない。後ろを振り向くと四、五メートル後にポツンと立ち止まっていた。 かがみ「どうしたのよ、大丈夫、メールで遅くなるって伝えてあるし、そんなには怒られないわよ、行こう」 しかしつかさは歩き出そうとはしなかった。乗客は全て改札口を出ている。私達だけが残ってしまった。 つかさ「さっきまであんなに楽しかったのに、断られても断然平気だったのに、どうしてかな、今頃になって……」 私は戻ってつかさに近づいた。電灯と電灯の間で少し暗くて分からなかった。つかさの目には涙が溜まっていた。 これが……失恋ってものなのか。その時初めてその重大さに気が付いた。 つかさ「これじゃ、家に帰れないよね……どうしよう、止まらないよ……」 そんな悲しい目で訴えかけられても私に何ができる。つかさの目からどんどん涙が溢れてきた。このまま立っていてもしょうがない。つかさを駅のベンチに座らせ 暫く放っておくしかなかった。これほど自分が無力だったのかと思わされた。そして自分にもこんな日がくるのであろうかと……ただ泣きじゃくるつかさを見ていた。 かがみ「もう……帰ろう」 つかさはただ首を横に振るばかりだった。もう一時間も経つがつかさの涙が止まる気配はなかった。何本もの電車が通り過ぎた 確かにこんな姿を家族が見たら、人生の先輩である二人の姉、お父さん、お母さんに、つかさに何があったか分かってしまうだろう。 誰にも見せたくないはず、本当は私にだって見せたくなかった。……だから一人であの公園に行った。遅かった。今頃分かっても。遅すぎた。 つかさはこうなるのをある程度分かっていたのかもしれない。ならなぜ……分からない。そんな質問をするだけの勇気もなかった。 かがみ「私が玄関の扉を開けたら、すぐに自分の部屋に入りなさい、後は私が対応するから、そこでなら幾らでも泣いていられるわよ」 つかさはやっと頷いた。でも立とうとしない。いや、立てないのか。私が肩を貸してあげてやっと立ち上がった。足元に力が入らないのかふらついてしまう。  普段の二倍の時間をかけて家にたどり着いた。 かがみ「開けるわよ、つかさ、準備はいい?」 私は玄関の扉を開けた。 かがみ「ただいま~」 つかさはゆっくりと、しかも音を立てずに自分の部屋に向かった。暫くすると。 みき「何やっていたの、何度も電話したのに出ないで……」 かがみ「ごめんなさい……」 お母さんがキョロキョロと辺りを見回した。 みき「つかさは、どうしたの?」 かがみ「気分が悪いから……部屋に……」 任せろとは言ったが、実際にやってみると誤魔化すのは難しい。お母さんはつかさの部屋に向かおうとしていた。 かがみ「待って、お母さん、今は、今はそっとしておいてあげて、お願い」 神にでも祈るように頼んだ。お母さんは私の顔を見た。そして、暫くつかさの部屋の方を見ると。 みき「そう、たまにはこんな事もあるでしょう」 そのまま居間の方に戻っていった。ほっと胸を撫で下ろした。しかしこの後、お父さんのお説教が待っていた。つかさの分まで叱られてしまった。 その後、つかさが部屋から出てくることは無かった……日が明けるまで。 翌朝、目覚めて顔を洗いに洗面所に向かった。するとつかさが歯を磨いていた。私より先に起きるなんて、珍しいこともあるものだ。 かがみ「おはよう、つかさ」 つかさ「も、もはもー」 歯ブラシを咥えたままの挨拶だ。鏡から見えるつかさの顔は笑顔だった。 かがみ「ばかね、歯を磨きながら話すやつがあるか」 昨日の今日、無理に作った笑顔にも見える。 かがみ「こんな日は休んでもいいのよ、無理をしない方がいい」 つかさはうがいをして口をタオルで拭いた。 つかさ「うんん、もう大丈夫だよ、お姉ちゃんがずっと泣かせてくれたから、もう涙は出なくなったよ、それに、三年連続皆勤賞がかかってるしね」 かがみ「そ、そうなの……それじゃ休めないわね」 つかさ「昨日はありがとう」 私に譲るように洗面所を出て行った。なんだ。何か違う。今までのつかさとは何かが違っていた。そういえば頭に付けていたリボンの色が少し明るい色になっていたか。  朝食を済ませ、私達は学校へと向かった。いつもの駅でこなたと待ち合わせ。待っているとこなたとみゆきが改札口から出てきた。二人が同時くるのは初めてだ。 つかさ「こなちゃん、ゆきちゃん、おはよー」 私が言うより先に挨拶をした。 みゆき「おはようございます」 こなた「おはよー」 かがみ「おっす……こなたとみゆきが一緒とは驚いたわね」 こなた「たまたま偶然の一致だよ」 かがみ「それじゃ、バス停に行こうか」 バス停に向かった。 みゆき「つかささん、リボンを変えたのですね」 みゆきがいち早くつかさのリボンに気付いた。 つかさ「うん、昨日買ったの、どうかな」 みゆき「とってもお似合いですよ」 つかさ「ありがとう、あとね、何本か買ったのだけど、こんど見て欲しいんだ」 …… つかさとみゆきの会話、みゆきが妙に気遣っているのが分かった。もしかしたらみゆきもつかさと同じ経験をしたのかもしれない。同じ経験をした者同士にしか分からないのか。 私の背中をツンツンと突く。こなただ。 かがみ「なによ、言いたいならそんな事なんかしないで直接言いなさいよ」 こなたは私に近づき耳打ちした。 こなた「なんかさ、つかさ変わったと思わない……何だろう、何て言って良いのか表現できないけど、かがみはなんとも思わないの?」 こなたも私も分かるはずもない。 かがみ「そうね、私達がこれから十年くらいの間には分かるかもしれない」 こなた「えー私達ってお子ちゃまなの?」 子供か、その通りかもしれない。  バスに乗るとちょうど彼もバスに乗ってきた。私は内心ハラハラした。またつかさが泣き出すかと思ったからだ。しかしつかさは何事もなかったようにみゆきと話していた。 そう、もうつかさは昨夜の涙で全てを洗い流した。もう昨日までのつかさとは違う。つかさがとっても大きい存在に感じた。 今まではつかさが私を追いかけた。今日からは私がつかさを追いかける。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - 切ないけど、いい話だったGJ -- 名無しさん (2017-05-28 21:15:06)

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