ID:HJFMC2az0氏:乗り過ごし(ページ2)

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気付くと駅の改札口の前に立っていた。病院から道一本だから私でも辿り着ける。吸い寄せられるように切符を買って駅の中に入った。帰ろう、もう峰さんの事は考えたくない。 駅のホームでベンチに座って電車を待った。だけど時間になっても電車は来なかった。 『お客様に申し上げます、只今、信号トラブルにて全線で運転を見合わせていただきます、重ねて申し上げます……』 昨日に引き続き電車は来ない。流石に今度ばかりは歩いて帰れる距離ではない。信号が直るまで待とう。 アナウンスが終わると列に並んで電車を待っている客の中から一人、また一人と駅の改札に向かう。きっとバスやタクシーに乗り換えるのかもしれない。 列から少し外れて話し合う人、携帯電話をかける人、私と同じようにベンチに座る人、新聞や本を読み始める人……同じ出来事なのに反応は皆違う、私はそんな光景を ぼんやりと眺めていた。 「ちょっと、どうなっているのよ、昨日といい、今日といい、いい加減にしてよね!!!」 女性の甲高い声が響いた。峰さん……私は声のする方を向いた。そこにはOL風の女性が駅員さんに食って掛かっていた。 女性「いつになったら動くのよ、はっきりして」 駅員「い、今の所、調査中でして、復旧の見込みは当分さきだと……」 凄い権幕だ。峰さんと勝るとも劣らない迫力、駅員さんは必死に対応していた。その様子を遠目で客が見ている人だかりが出来ていた。 そうか、そうなのか。私はその時気が付いた。駅員さんは峰さんの怒鳴り声が聞こえていなかった。姿も見えていなかった。だから無視しているように私には見えていた。 お客さんも気付く訳はない。私の会っていた峰さんは幽霊みたいなものだったのかもしれない。 犬に吠えられたのも私に吠えたのではなく、私の陰に隠れていた峰さんを吠えていた。私の飲みかけのジュースを断ったのはジュースを持つ身体が無かったから受け取れないから。 私は幽霊さんと会っていた。全然恐くない幽霊さん。霊感も超能力も無い私がなぜ見えたのかな。もうそんなのも興味が無くなった。 私がコスモスを摘もうとしていたのを止めたのもきっと、正体を隠すために適当に言ったに違いない。徹夜までして作った造花……もう峰さんの事は考えないって決めたのに、 まだ私は考えている。もう忘れよう。たった数時間の夢だった。そうだよ、夢。これは夢なんだ。 かがみ「やっと見つけた、いきなり飛び出してビックリしたわよ」 見上げるとお姉ちゃんが立っていた。お姉ちゃんは携帯電話を取り出してかけた。 かがみ「……もしもし、日下部か、見つけたわよ」 …… かがみ「うん、もういいわ、病院に戻ってもいいわよ、ありがとう、峰岸にもそう伝えておいて」 …… かがみ「……私はつかさと一緒に帰るわ……うん、うんん、いいの、私が居たって………」 …… 携帯電話から日下部さんの声がまだ出ているのにお姉ちゃんは電話を切った。溜め息を一回ついた。そして私の直ぐ隣に座った。 かがみ「別に隠すつもりはなかった」 つかさ「いいの、帰っちゃって、峰さんの所に戻らなくて」 かがみ「……電話の話ね、良いのよ……」 それからお姉ちゃんは黙ってしまった。私も何も話すつもりはなかった。お姉ちゃんと二人でこんなに静かなのは初めてかもしれない。 かがみ「峰さおり、私が一年の時にクラスが一緒でね……」 お姉ちゃんは私を見ずに話し出した。私も駅の乗客を見ながら聞いた。 かがみ「性格は、つかさの言うように私に似ているわね、学級委員になった私の意見をいつも反対して口論ばかり、それでも何故かが気は合ってね、お昼休みや     放課後なんかはお話をしたりして楽しんだわ、日下部と峰岸も自然に会話に入るようになった」 つかさ「でも、私は本当の峰さんを知らない……」 そんなに仲が良かったら私に紹介して欲しかった。ちょっと皮肉を込めて言った。 かがみ「……私は幽霊とか幽体離脱なんかは信じない、昨日つかさが会った人が誰かなんて興味はない、でもね、つかさの話を聞いていたらさおりを思い出してね、     まさかとは思ったけど、名前を聞いて愕然としたわ……」 つかさ「私が会ったのは峰さんの幽霊だよ……」 かがみ「幽霊か……」 お姉ちゃんはまた黙ってしまった。 『お客様に申し上げます、信号のトラブルは依然復旧の見通しが立ちません、お急ぎの方は……』 またアナウンスが響いた。今まで並んでいた客も一斉に改札口の方に向かって行った。電車は当分来そうにない。 かがみ「つかさ、さおりはどうだった、変わりはなかった?」 今度は私の顔を見て話をしだした。 つかさ「お姉ちゃんは幽霊を信じていないよね、どうしてそんなの聞くの、それに変わっていたって聞かれても答えられない、変わる前を知らないから」 かがみ「そうよね、そうだった……さおりは一年の後半で病に倒れてね、二年になってからは殆ど登校していない、三年A組とはなっているけど形だけ……私は暫く彼女の     声を聞いていない、二年は入退院の繰り返し、お見舞いに行ってもどんどん病状は酷くなるばかり、三年になってからは殆ど病院よ……つかさ達にも紹介したかった、     もっと話がしたかった……つかさが羨ましい、留年していた話も、好きな花がコスモスって話も私は知らなかった、つかさより時間はたっぷりあったのに……」 何だろう、お姉ちゃんがこんなに感情を込めて話しているなんて。怒っている時以外はいつも冷静なのに。 つかさ「そんなに大切な人なら、病院に戻った方がいいよ」 私もお姉ちゃんの方を向いて話した。お姉ちゃんは俯いてしまった。そして肩が震え始めた。 かがみ「今夜、さおりの家族の立会いの下で維持装置の電源を切るそうよ」 つかさ「電源を切るって、顔色も良かったし……どうして……」 かがみ「もう充分だからって、ご家族の判断よ、電源を止めて自力で呼吸をしなければ……もう終わり、終わりなのよ、そんなの私……見ていられないよ……うう、     つかさ、私、どうすれば良い、病院に戻っても、このまま帰っても、彼女を救うことなんか出来ない、どうすることも出来ない……」 俯いたお姉ちゃんの顔からぽたぽたと涙が零れるのが分かった。膝の上に置いた手の甲に何滴も涙が落ちた。 峰さんの言ったお別れってこの事だった。峰さんは私ではなく、お姉ちゃんにお別れを言いたかった。そんな気がした。お姉ちゃんに会いたかったけど幽霊を信じない お姉ちゃんじゃ峰さんは見えない。だから私に会って、私を通してお姉ちゃんにお別れを言いたかった。 それならお姉ちゃんはこんな所に居ちゃいけない、もちろん私も。お別れはお婆さんになってからだよ。 峰さん、これからお姉ちゃんを連れて行くよ、お別れじゃなく、お見舞いでね。私は幽霊じゃない峰さんに会いたいから。 つかさ「お姉ちゃん、病院に戻ろう、私も行かないといけないし」 お姉ちゃんは俯いたまま肩を震わせてまだ泣いていた。 かがみ「こ、この期に及んで、何をするの……」 つかさ「お姉ちゃん、泣くのは峰さんが亡くなってから、峰さんはまだ生きているよ、だから行って元気付けないと」 お姉ちゃんは顔を上げて私を見た。目が真っ赤で鼻も出ている。 かがみ「つかさ、見たでしょ、あの状況で何を元気付けるのよ」 つかさ「大丈夫だよ、きっと元気になるって言えば良い、あとは笑顔でいれば病気なんかどっか行っちゃうよ」 私はにっこり微笑んだ。 かがみ「大丈夫……もしかして言霊の事を言っているのか」 つかさ「そうだよ」 かがみ「ふざけるな、そんなの私は信じない……」 つかさ「信じる、信じないじゃないよ、家は神社でしょ、お仕事だから、お姉ちゃんだってお守り誰かに売ったでしょ、それと同じだと思って」 お姉ちゃんは私をじっと見ている。 つかさ「峰さんの病気は治る……はい、言って」 かがみ「さ、さおりの病気は治る」 棒読みで全然感情が籠もっていない。 つかさ「そんなんじゃダメだよ、そうだね……一年の時、峰さんと一緒で楽しかった時の事を思い出して、もう一度」 かがみ「さおりの病気は治る、そして病院を退院する。また一緒に語り合う……」 今度は違う。今度は祈るように一言、一言、に心が籠もっている。 つかさ「どう、病院に行きたくなったでしょ?」 かがみ「そうね……確かにさおりはまだ生きている」 お姉ちゃんは立ち上がった。 つかさ「あっ、その前にお手洗いに行かないと、お姉ちゃんのその顔……凄いよ」 かがみ「わ、分かってるわよ……」 私達は駅を降りて病院に向かった。 病室の前に私達は着いた。でもお姉ちゃんはドアを開けようとはしなかった。 かがみ「……出来ない、笑顔で入るなんて、やっぱり出来ない」 折角顔を洗ったのに目が潤み始めた。 つかさ「無理はしなくていいよ、峰さんの回復だけを祈ってて、それだけでもいいよ、私は峰さんに渡すものがあるから」 私はドアをノックして病室に入った。 日下部さんと峰岸さんが私たちを見て驚いた。 みさお「柊の妹、柊も、帰ったんじゃなかったのか?」 つかさ「そう思ったけど、私は峰さんに用事があるから」 日下部さんと峰岸さんは首を傾げた。 あやの「用事って、妹ちゃん、峰さんといつ知り合ったの?」 みさお「そうそう、どう考えたっておかしいぞ、会う機会なんてあるはずない」 つかさ「昨日会ったばかりだけどね」 みさお・あやの「えぇ??」 二人は顔を見合わせて驚いていた。二人には後でゆっくり話そう。私は峰さんの寝ているベッドへと近づいた。 つかさ「こんにちは、昨日ぶりだね、逃げちゃってごめんね、だってこんなになっているなんて思わなかったから、驚いちゃったよ、ちゃんと言ってくれれば良かったのに」 鞄の中から造花を取り出した。 つかさ「生花じゃ嫌がると思って、作った造花、峰さんの好きなコスモスだよ」 造花を峰さんの目元まで持って行った。目を閉じているから見えないのは分かっていた。だけど見て欲しかったから。 つかさ「それじゃ、病室の窓際に飾っておくから」 造花を窓際に持って行こうとした時だった。私の腕を掴んで止めた。その手は峰さんだった。峰さんを見ると目を開いて私を見ている。掴んでるけど力は弱弱しい。 口にチューブを付けているから喋られない。だけど何を言いたいのか分かった。私を掴んでいる手に造花を手渡してあげた。 造花でも重そうに手を震わせながらゆっくりと胸元まで持ってきてまた目を閉じた。お姉ちゃんが飛び込むように近づいてきた。 かがみ「さ、さおり、分かる、私が分かる、ねぇ」 峰さんは目を閉じながらゆっくりと頷いた。 かがみ・みさお「さおり……」 あやの「峰さん……」 三人はベッドを囲うようにして何度も名前を呼んでいた。三人とも目には涙がいっぱいに溜まっていた。私も貰い泣きしそうになってしまった。 同じ泣でも嬉し泣きは良いよね。今はお姉ちゃん達の再会を優先しよう。私はゆっくりベッドから離れて病室を出た。 すると数人の人が私と入れ替わるように病室に入って行った。きっと峰さんの家族に違いない。暫くすると歓喜の声がドアの隙間から聞こえた。 そのまま待合室でお姉ちゃん達を待った。 その夜、私達は最終電車で家に帰った。 かがみ「おーい、こなた帰るわよ」 放課後、お姉ちゃんが私の教室に入ってきた。 こなた「ちょっと待って、今重要なところだから」 お姉ちゃんは周りを見回した。 かがみ「何が重要な所なのよ、全く分からん」 こなた「それで、この場面ではどうするの?」 さおり「この選択肢では『大好き』を選んだらダメだから、バットエンドになるわよ」 こなちゃんは必死にメモを取っていた。 かがみ「何を話してるの?」 質問に答えない。話に夢中になっている。私が代わりに答えるかな。 つかさ「なんでもクリアできないゲームがあって、それについて教えてもらってるみたい」 かがみ「う~ん、まさかこなたとそこまで息が合うとは思わなかった」 するとゆきちゃんが、スーっとお姉ちゃんの間に割り込むように入ってきた。 みゆき「すみません、ここの公式のYの意味が分からないのですが……」 さおり「あ、ここね、ここはね……」 峰さんはゆきちゃんになにやら呪文のような話をしだした。ゆきちゃんは頷きながらメモを取っていた。後から聞いた話だけど大学の予習をしていて分からない所があったって。 ゆきちゃんでも分からない所があるのだと驚いたけど、峰さんがその内容を知っていて更に驚いた。病院では何もする事がないので、ゲームや読書を沢山したからって 峰さんは言っていた。だからゲームも勉強も凄く詳しくなってしまったらしい。 あの時、意識が戻ってから見る見る病気は良くなった。止まっていた治療も再開して、峰さんは一ヶ月前に退院した。病気は治った。体力はまだ回復していないので よく保健室のお世話になっていた。退院してすぐにこなちゃんとゆきちゃんを紹介した。すぐに意気投合、仲良くなった。 完全に蚊帳の外に追いやられたお姉ちゃん。私もこなちゃんちゃゆきちゃんの話に付いていけない。 かがみ「ふぅ、私の質問なんか眼中にないのか、これならさおりを紹介するんじゃなかった」 私の座っている席の隣に座って呟いた。 つかさ「そうかな、賑やかになって楽しいよ」 私は楽しそうに話している峰さん達を見ながら答えた。 かがみ「まだつかさに聞いてなかったわね、何故、さおりの意識が戻って直ぐに病室をでたの?」 つかさ「お姉ちゃん達が嬉しそうだったから……」 かがみ「それだけで」 つかさ「うん」 お姉ちゃんは溜め息をついた。 かがみ「ばかね、ああゆう時は独占しちゃっていいのよ、もうそろそろ欲を出してもいい頃だと思う、いつまでも爪を隠してばかりで使わないと取れるわよ」 つかさ「爪?取れる……何の事?」 かがみ「能ある鷹は爪隠す、知らない?」 つかさ「知っているけど、それがどうかしたの?」 お姉ちゃんはまた溜め息をついた。 かがみ「つかさ、あんたは何をしたのか分かってるの、奇跡とまでは言わない、でも、誰もできなかった事をした、そう思わない、さおりの命を救った、言霊を心理的に     利用してね、無意識にしたとしても正解だったわよ」 つかさ「私は何もしていない、出来たのはお姉ちゃんを病院に戻しただけだよ、峰さんの命を救ったのはコスモスの花だよ」 かがみ「コスモス、つかの作った造花ね」 つかさ「うんん、道路脇に咲いていた、私が摘もうとして峰さんが止めて助けたコスモスの花」 お姉ちゃんは微笑んだ。 かがみ「つかさらしいわね……でも、それも在りかな、私達人間に人の生死は制御できない」 お姉ちゃんの言っている意味が難しくて分からなかった。 気付くと、いつの間にか日下部さんと峰岸さんが峰さん達の会話に加わっていた。 こなた「おまたせ、かがみ帰ろうか」 今度はこなちゃんが話題に付いていけなくなったみたい。 かがみ「今更遅いわ、つかさと色々話していたら、もう少し居たくなった」 こなた「えー、つかさはかがみと同居でしるから何時でも話せるでしょ」 かがみ「ここに、こうして居る時間は今しか無いわよ、今は話をしていたいのよ」 こなた「えー、約束の買い物は~」 こなちゃんは口を尖らせて怒った。 かがみ「買い物こそ、何時でもできるじゃない」 こなた「限定品があるんだよ、そこには今しか買えない物もあるんだよ」 かがみ「買い物ってそっちかよ、付き合いきれんわ、どうせ私のポイントが狙いなんで……ん?」 クスクスと笑い声が聞こえた。皆はお姉ちゃんとこなちゃんを見ていた。 みさお「さおり、あれが名物の柊とちびっ子の喧嘩だ」 さおり「ふふ、聞いているのと見るのとでは違うわね……」 二人の言い合いが止まった。二人の顔が真っ赤になった。 さおり「あら、いいのよ、気にしないで続けて」 ふざけ半分でからかう峰さん。 かがみ「う、うるさい、見世物じゃない!!」 お姉ちゃんの怒号が飛び交って暫く沈黙が続いた。そして一斉に皆で爆笑をした。 かがみ「まったく、何が名物よ、日下部、部活はどうしたんだ」 まだちょっと怒り気味のお姉ちゃん。 みさお「もう部活はない、明日から自由登校だろ」 あやの「そうね、もう私達、卒業だから……」 皆の顔が急に沈んでしまった。 さおり「なに皆沈んでいるのよ、私の身にもなってよ……私はね、私はもう一度……」 え、まさか、また病院に戻るの、そんなの嫌だ。せっかく助かった命なのに…… さおり「私はもう一度、三年生をやり直すのよ、昨日先生に言われたわ、流石に日数半分以上欠席じゃしょうがない」 つかさ「よかった!!」 かがみ「バカ、何が良かったのよ、失礼よ」 お姉ちゃんが慌てるように私を叱った。私は峰さんの留年を喜んだわけじゃないのに…… さおり「ふふ、そう言わないで、そうね、そうよ、私は二年も留年するの、でもそれで良かった、だから皆とこうして出会えたのだから……そうでしょ、つかさ」 笑顔で返す峰さんだった。 つかさ「それじゃ、明日、また登校できる?」 さおり「するけど、いろいろ手続きもあるし……なんで?」 つかさ「今度二年生になる、ゆたかちゃん達を紹介しようと思って」 みゆき「そうですね、少しでもお友達は多いほうが良いです、私も明日登校しましょう、私もその中に紹介したい人がいるのです」 さおり「その人達ってどんな人?」 つかさ「みんな良い人だよ」 さおり「そう言うと思った……」 笑いながら峰さんは窓の外を見た。 こなた「さて、これから皆で買い物行こうよ~」 かがみ「だから今日はもう行かないって言ってるだろ、行きたいなら一人でいけ」 みさお「また始まった」 …… ……  私達は話し続けた。卒業まで残り少ない日々を惜しむかのように。そこには新しい友達が一人座っている。彼女はもう2年間も病気で留年してしまった。その病気の中で私と 出会った、不思議な出来事。 居眠りで二駅乗り過ごしたのが始まりだった。峰さんの乗り過ごしは二年間。私より失った時間は大きい。でももっと大事な物を手に入れたと私は信じたい。 これからもっと大事な物をこれから手にはいるかもしれない。それは私達次第かな。私達を乗せた列車は発車したばかり、その電車の終着駅はまだ決まってない。でも走り続ける。 生きている限り。これから大きな事故や故障がありませんように……  就業時間を知らせるチャイムが鳴っても私達は帰ろうとはしなかった。窓からに真っ赤な夕日が射して教室が真っ赤に染まる。誰も居ない校舎に私達の笑い声だけが 木霊のように響いていた。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - 凄く良かった、つかさが出来る子だと &br()実はかがみ以上にシッカリしてる、あ &br()る意味聖母ですね!感動しました。 -- チャムチロ (2014-03-17 23:42:49)
気付くと駅の改札口の前に立っていた。病院から道一本だから私でも辿り着ける。吸い寄せられるように切符を買って駅の中に入った。帰ろう、もう峰さんの事は考えたくない。 駅のホームでベンチに座って電車を待った。だけど時間になっても電車は来なかった。 『お客様に申し上げます、只今、信号トラブルにて全線で運転を見合わせていただきます、重ねて申し上げます……』 昨日に引き続き電車は来ない。流石に今度ばかりは歩いて帰れる距離ではない。信号が直るまで待とう。 アナウンスが終わると列に並んで電車を待っている客の中から一人、また一人と駅の改札に向かう。きっとバスやタクシーに乗り換えるのかもしれない。 列から少し外れて話し合う人、携帯電話をかける人、私と同じようにベンチに座る人、新聞や本を読み始める人……同じ出来事なのに反応は皆違う、私はそんな光景を ぼんやりと眺めていた。 「ちょっと、どうなっているのよ、昨日といい、今日といい、いい加減にしてよね!!!」 女性の甲高い声が響いた。峰さん……私は声のする方を向いた。そこにはOL風の女性が駅員さんに食って掛かっていた。 女性「いつになったら動くのよ、はっきりして」 駅員「い、今の所、調査中でして、復旧の見込みは当分さきだと……」 凄い権幕だ。峰さんと勝るとも劣らない迫力、駅員さんは必死に対応していた。その様子を遠目で客が見ている人だかりが出来ていた。 そうか、そうなのか。私はその時気が付いた。駅員さんは峰さんの怒鳴り声が聞こえていなかった。姿も見えていなかった。だから無視しているように私には見えていた。 お客さんも気付く訳はない。私の会っていた峰さんは幽霊みたいなものだったのかもしれない。 犬に吠えられたのも私に吠えたのではなく、私の陰に隠れていた峰さんを吠えていた。私の飲みかけのジュースを断ったのはジュースを持つ身体が無かったから受け取れないから。 私は幽霊さんと会っていた。全然恐くない幽霊さん。霊感も超能力も無い私がなぜ見えたのかな。もうそんなのも興味が無くなった。 私がコスモスを摘もうとしていたのを止めたのもきっと、正体を隠すために適当に言ったに違いない。徹夜までして作った造花……もう峰さんの事は考えないって決めたのに、 まだ私は考えている。もう忘れよう。たった数時間の夢だった。そうだよ、夢。これは夢なんだ。 かがみ「やっと見つけた、いきなり飛び出してビックリしたわよ」 見上げるとお姉ちゃんが立っていた。お姉ちゃんは携帯電話を取り出してかけた。 かがみ「……もしもし、日下部か、見つけたわよ」 …… かがみ「うん、もういいわ、病院に戻ってもいいわよ、ありがとう、峰岸にもそう伝えておいて」 …… かがみ「……私はつかさと一緒に帰るわ……うん、うんん、いいの、私が居たって………」 …… 携帯電話から日下部さんの声がまだ出ているのにお姉ちゃんは電話を切った。溜め息を一回ついた。そして私の直ぐ隣に座った。 かがみ「別に隠すつもりはなかった」 つかさ「いいの、帰っちゃって、峰さんの所に戻らなくて」 かがみ「……電話の話ね、良いのよ……」 それからお姉ちゃんは黙ってしまった。私も何も話すつもりはなかった。お姉ちゃんと二人でこんなに静かなのは初めてかもしれない。 かがみ「峰さおり、私が一年の時にクラスが一緒でね……」 お姉ちゃんは私を見ずに話し出した。私も駅の乗客を見ながら聞いた。 かがみ「性格は、つかさの言うように私に似ているわね、学級委員になった私の意見をいつも反対して口論ばかり、それでも何故かが気は合ってね、お昼休みや     放課後なんかはお話をしたりして楽しんだわ、日下部と峰岸も自然に会話に入るようになった」 つかさ「でも、私は本当の峰さんを知らない……」 そんなに仲が良かったら私に紹介して欲しかった。ちょっと皮肉を込めて言った。 かがみ「……私は幽霊とか幽体離脱なんかは信じない、昨日つかさが会った人が誰かなんて興味はない、でもね、つかさの話を聞いていたらさおりを思い出してね、     まさかとは思ったけど、名前を聞いて愕然としたわ……」 つかさ「私が会ったのは峰さんの幽霊だよ……」 かがみ「幽霊か……」 お姉ちゃんはまた黙ってしまった。 『お客様に申し上げます、信号のトラブルは依然復旧の見通しが立ちません、お急ぎの方は……』 またアナウンスが響いた。今まで並んでいた客も一斉に改札口の方に向かって行った。電車は当分来そうにない。 かがみ「つかさ、さおりはどうだった、変わりはなかった?」 今度は私の顔を見て話をしだした。 つかさ「お姉ちゃんは幽霊を信じていないよね、どうしてそんなの聞くの、それに変わっていたって聞かれても答えられない、変わる前を知らないから」 かがみ「そうよね、そうだった……さおりは一年の後半で病に倒れてね、二年になってからは殆ど登校していない、三年A組とはなっているけど形だけ……私は暫く彼女の     声を聞いていない、二年は入退院の繰り返し、お見舞いに行ってもどんどん病状は酷くなるばかり、三年になってからは殆ど病院よ……つかさ達にも紹介したかった、     もっと話がしたかった……つかさが羨ましい、留年していた話も、好きな花がコスモスって話も私は知らなかった、つかさより時間はたっぷりあったのに……」 何だろう、お姉ちゃんがこんなに感情を込めて話しているなんて。怒っている時以外はいつも冷静なのに。 つかさ「そんなに大切な人なら、病院に戻った方がいいよ」 私もお姉ちゃんの方を向いて話した。お姉ちゃんは俯いてしまった。そして肩が震え始めた。 かがみ「今夜、さおりの家族の立会いの下で維持装置の電源を切るそうよ」 つかさ「電源を切るって、顔色も良かったし……どうして……」 かがみ「もう充分だからって、ご家族の判断よ、電源を止めて自力で呼吸をしなければ……もう終わり、終わりなのよ、そんなの私……見ていられないよ……うう、     つかさ、私、どうすれば良い、病院に戻っても、このまま帰っても、彼女を救うことなんか出来ない、どうすることも出来ない……」 俯いたお姉ちゃんの顔からぽたぽたと涙が零れるのが分かった。膝の上に置いた手の甲に何滴も涙が落ちた。 峰さんの言ったお別れってこの事だった。峰さんは私ではなく、お姉ちゃんにお別れを言いたかった。そんな気がした。お姉ちゃんに会いたかったけど幽霊を信じない お姉ちゃんじゃ峰さんは見えない。だから私に会って、私を通してお姉ちゃんにお別れを言いたかった。 それならお姉ちゃんはこんな所に居ちゃいけない、もちろん私も。お別れはお婆さんになってからだよ。 峰さん、これからお姉ちゃんを連れて行くよ、お別れじゃなく、お見舞いでね。私は幽霊じゃない峰さんに会いたいから。 つかさ「お姉ちゃん、病院に戻ろう、私も行かないといけないし」 お姉ちゃんは俯いたまま肩を震わせてまだ泣いていた。 かがみ「こ、この期に及んで、何をするの……」 つかさ「お姉ちゃん、泣くのは峰さんが亡くなってから、峰さんはまだ生きているよ、だから行って元気付けないと」 お姉ちゃんは顔を上げて私を見た。目が真っ赤で鼻も出ている。 かがみ「つかさ、見たでしょ、あの状況で何を元気付けるのよ」 つかさ「大丈夫だよ、きっと元気になるって言えば良い、あとは笑顔でいれば病気なんかどっか行っちゃうよ」 私はにっこり微笑んだ。 かがみ「大丈夫……もしかして言霊の事を言っているのか」 つかさ「そうだよ」 かがみ「ふざけるな、そんなの私は信じない……」 つかさ「信じる、信じないじゃないよ、家は神社でしょ、お仕事だから、お姉ちゃんだってお守り誰かに売ったでしょ、それと同じだと思って」 お姉ちゃんは私をじっと見ている。 つかさ「峰さんの病気は治る……はい、言って」 かがみ「さ、さおりの病気は治る」 棒読みで全然感情が籠もっていない。 つかさ「そんなんじゃダメだよ、そうだね……一年の時、峰さんと一緒で楽しかった時の事を思い出して、もう一度」 かがみ「さおりの病気は治る、そして病院を退院する。また一緒に語り合う……」 今度は違う。今度は祈るように一言、一言、に心が籠もっている。 つかさ「どう、病院に行きたくなったでしょ?」 かがみ「そうね……確かにさおりはまだ生きている」 お姉ちゃんは立ち上がった。 つかさ「あっ、その前にお手洗いに行かないと、お姉ちゃんのその顔……凄いよ」 かがみ「わ、分かってるわよ……」 私達は駅を降りて病院に向かった。 病室の前に私達は着いた。でもお姉ちゃんはドアを開けようとはしなかった。 かがみ「……出来ない、笑顔で入るなんて、やっぱり出来ない」 折角顔を洗ったのに目が潤み始めた。 つかさ「無理はしなくていいよ、峰さんの回復だけを祈ってて、それだけでもいいよ、私は峰さんに渡すものがあるから」 私はドアをノックして病室に入った。 日下部さんと峰岸さんが私たちを見て驚いた。 みさお「柊の妹、柊も、帰ったんじゃなかったのか?」 つかさ「そう思ったけど、私は峰さんに用事があるから」 日下部さんと峰岸さんは首を傾げた。 あやの「用事って、妹ちゃん、峰さんといつ知り合ったの?」 みさお「そうそう、どう考えたっておかしいぞ、会う機会なんてあるはずない」 つかさ「昨日会ったばかりだけどね」 みさお・あやの「えぇ??」 二人は顔を見合わせて驚いていた。二人には後でゆっくり話そう。私は峰さんの寝ているベッドへと近づいた。 つかさ「こんにちは、昨日ぶりだね、逃げちゃってごめんね、だってこんなになっているなんて思わなかったから、驚いちゃったよ、ちゃんと言ってくれれば良かったのに」 鞄の中から造花を取り出した。 つかさ「生花じゃ嫌がると思って、作った造花、峰さんの好きなコスモスだよ」 造花を峰さんの目元まで持って行った。目を閉じているから見えないのは分かっていた。だけど見て欲しかったから。 つかさ「それじゃ、病室の窓際に飾っておくから」 造花を窓際に持って行こうとした時だった。私の腕を掴んで止めた。その手は峰さんだった。峰さんを見ると目を開いて私を見ている。掴んでるけど力は弱弱しい。 口にチューブを付けているから喋られない。だけど何を言いたいのか分かった。私を掴んでいる手に造花を手渡してあげた。 造花でも重そうに手を震わせながらゆっくりと胸元まで持ってきてまた目を閉じた。お姉ちゃんが飛び込むように近づいてきた。 かがみ「さ、さおり、分かる、私が分かる、ねぇ」 峰さんは目を閉じながらゆっくりと頷いた。 かがみ・みさお「さおり……」 あやの「峰さん……」 三人はベッドを囲うようにして何度も名前を呼んでいた。三人とも目には涙がいっぱいに溜まっていた。私も貰い泣きしそうになってしまった。 同じ泣でも嬉し泣きは良いよね。今はお姉ちゃん達の再会を優先しよう。私はゆっくりベッドから離れて病室を出た。 すると数人の人が私と入れ替わるように病室に入って行った。きっと峰さんの家族に違いない。暫くすると歓喜の声がドアの隙間から聞こえた。 そのまま待合室でお姉ちゃん達を待った。 その夜、私達は最終電車で家に帰った。 かがみ「おーい、こなた帰るわよ」 放課後、お姉ちゃんが私の教室に入ってきた。 こなた「ちょっと待って、今重要なところだから」 お姉ちゃんは周りを見回した。 かがみ「何が重要な所なのよ、全く分からん」 こなた「それで、この場面ではどうするの?」 さおり「この選択肢では『大好き』を選んだらダメだから、バットエンドになるわよ」 こなちゃんは必死にメモを取っていた。 かがみ「何を話してるの?」 質問に答えない。話に夢中になっている。私が代わりに答えるかな。 つかさ「なんでもクリアできないゲームがあって、それについて教えてもらってるみたい」 かがみ「う~ん、まさかこなたとそこまで息が合うとは思わなかった」 するとゆきちゃんが、スーっとお姉ちゃんの間に割り込むように入ってきた。 みゆき「すみません、ここの公式のYの意味が分からないのですが……」 さおり「あ、ここね、ここはね……」 峰さんはゆきちゃんになにやら呪文のような話をしだした。ゆきちゃんは頷きながらメモを取っていた。後から聞いた話だけど大学の予習をしていて分からない所があったって。 ゆきちゃんでも分からない所があるのだと驚いたけど、峰さんがその内容を知っていて更に驚いた。病院では何もする事がないので、ゲームや読書を沢山したからって 峰さんは言っていた。だからゲームも勉強も凄く詳しくなってしまったらしい。 あの時、意識が戻ってから見る見る病気は良くなった。止まっていた治療も再開して、峰さんは一ヶ月前に退院した。病気は治った。体力はまだ回復していないので よく保健室のお世話になっていた。退院してすぐにこなちゃんとゆきちゃんを紹介した。すぐに意気投合、仲良くなった。 完全に蚊帳の外に追いやられたお姉ちゃん。私もこなちゃんちゃゆきちゃんの話に付いていけない。 かがみ「ふぅ、私の質問なんか眼中にないのか、これならさおりを紹介するんじゃなかった」 私の座っている席の隣に座って呟いた。 つかさ「そうかな、賑やかになって楽しいよ」 私は楽しそうに話している峰さん達を見ながら答えた。 かがみ「まだつかさに聞いてなかったわね、何故、さおりの意識が戻って直ぐに病室をでたの?」 つかさ「お姉ちゃん達が嬉しそうだったから……」 かがみ「それだけで」 つかさ「うん」 お姉ちゃんは溜め息をついた。 かがみ「ばかね、ああゆう時は独占しちゃっていいのよ、もうそろそろ欲を出してもいい頃だと思う、いつまでも爪を隠してばかりで使わないと取れるわよ」 つかさ「爪?取れる……何の事?」 かがみ「能ある鷹は爪隠す、知らない?」 つかさ「知っているけど、それがどうかしたの?」 お姉ちゃんはまた溜め息をついた。 かがみ「つかさ、あんたは何をしたのか分かってるの、奇跡とまでは言わない、でも、誰もできなかった事をした、そう思わない、さおりの命を救った、言霊を心理的に     利用してね、無意識にしたとしても正解だったわよ」 つかさ「私は何もしていない、出来たのはお姉ちゃんを病院に戻しただけだよ、峰さんの命を救ったのはコスモスの花だよ」 かがみ「コスモス、つかの作った造花ね」 つかさ「うんん、道路脇に咲いていた、私が摘もうとして峰さんが止めて助けたコスモスの花」 お姉ちゃんは微笑んだ。 かがみ「つかさらしいわね……でも、それも在りかな、私達人間に人の生死は制御できない」 お姉ちゃんの言っている意味が難しくて分からなかった。 気付くと、いつの間にか日下部さんと峰岸さんが峰さん達の会話に加わっていた。 こなた「おまたせ、かがみ帰ろうか」 今度はこなちゃんが話題に付いていけなくなったみたい。 かがみ「今更遅いわ、つかさと色々話していたら、もう少し居たくなった」 こなた「えー、つかさはかがみと同居でしるから何時でも話せるでしょ」 かがみ「ここに、こうして居る時間は今しか無いわよ、今は話をしていたいのよ」 こなた「えー、約束の買い物は~」 こなちゃんは口を尖らせて怒った。 かがみ「買い物こそ、何時でもできるじゃない」 こなた「限定品があるんだよ、そこには今しか買えない物もあるんだよ」 かがみ「買い物ってそっちかよ、付き合いきれんわ、どうせ私のポイントが狙いなんで……ん?」 クスクスと笑い声が聞こえた。皆はお姉ちゃんとこなちゃんを見ていた。 みさお「さおり、あれが名物の柊とちびっ子の喧嘩だ」 さおり「ふふ、聞いているのと見るのとでは違うわね……」 二人の言い合いが止まった。二人の顔が真っ赤になった。 さおり「あら、いいのよ、気にしないで続けて」 ふざけ半分でからかう峰さん。 かがみ「う、うるさい、見世物じゃない!!」 お姉ちゃんの怒号が飛び交って暫く沈黙が続いた。そして一斉に皆で爆笑をした。 かがみ「まったく、何が名物よ、日下部、部活はどうしたんだ」 まだちょっと怒り気味のお姉ちゃん。 みさお「もう部活はない、明日から自由登校だろ」 あやの「そうね、もう私達、卒業だから……」 皆の顔が急に沈んでしまった。 さおり「なに皆沈んでいるのよ、私の身にもなってよ……私はね、私はもう一度……」 え、まさか、また病院に戻るの、そんなの嫌だ。せっかく助かった命なのに…… さおり「私はもう一度、三年生をやり直すのよ、昨日先生に言われたわ、流石に日数半分以上欠席じゃしょうがない」 つかさ「よかった!!」 かがみ「バカ、何が良かったのよ、失礼よ」 お姉ちゃんが慌てるように私を叱った。私は峰さんの留年を喜んだわけじゃないのに…… さおり「ふふ、そう言わないで、そうね、そうよ、私は二年も留年するの、でもそれで良かった、だから皆とこうして出会えたのだから……そうでしょ、つかさ」 笑顔で返す峰さんだった。 つかさ「それじゃ、明日、また登校できる?」 さおり「するけど、いろいろ手続きもあるし……なんで?」 つかさ「今度二年生になる、ゆたかちゃん達を紹介しようと思って」 みゆき「そうですね、少しでもお友達は多いほうが良いです、私も明日登校しましょう、私もその中に紹介したい人がいるのです」 さおり「その人達ってどんな人?」 つかさ「みんな良い人だよ」 さおり「そう言うと思った……」 笑いながら峰さんは窓の外を見た。 こなた「さて、これから皆で買い物行こうよ~」 かがみ「だから今日はもう行かないって言ってるだろ、行きたいなら一人でいけ」 みさお「また始まった」 …… ……  私達は話し続けた。卒業まで残り少ない日々を惜しむかのように。そこには新しい友達が一人座っている。彼女はもう2年間も病気で留年してしまった。その病気の中で私と 出会った、不思議な出来事。 居眠りで二駅乗り過ごしたのが始まりだった。峰さんの乗り過ごしは二年間。私より失った時間は大きい。でももっと大事な物を手に入れたと私は信じたい。 これからもっと大事な物をこれから手にはいるかもしれない。それは私達次第かな。私達を乗せた列車は発車したばかり、その電車の終着駅はまだ決まってない。でも走り続ける。 生きている限り。これから大きな事故や故障がありませんように……  就業時間を知らせるチャイムが鳴っても私達は帰ろうとはしなかった。窓からに真っ赤な夕日が射して教室が真っ赤に染まる。誰も居ない校舎に私達の笑い声だけが 木霊のように響いていた。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - いい話だった! -- 名無しさん (2017-05-21 17:20:05) - 凄く良かった、つかさが出来る子だと &br()実はかがみ以上にシッカリしてる、あ &br()る意味聖母ですね!感動しました。 -- チャムチロ (2014-03-17 23:42:49)

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