ID:2LkPp8nI0氏:私とこなた(ページ2)

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みさお「そんな事があってね~」 大学、キャンパスの休憩所で先日あった出来事をちびっ子に話した。 こなた「かがみに褒められた……みさきち何か取引しなかったか?」 驚いた様子で私に話した。確かにあの時私も驚いた。私はレポートをちびっ子に渡した。 こなた「へ?」 みさお「へ……じゃない、約束通り修正はよろしくたのむぜ」 ちびっ子はレポートをペラペラと捲った。 こなた「……かがみのやつ居ないからって容赦ないな……これを修正するのか……徹夜になるかも」 みさお「なんなら図書館で一緒にやろうか?」 こなた「いいや、いいよ、約束通り修正して私から講師に提出するから……」 ちびっ子はバックの中にレポートをしまい込んだ。驚いた。もっと私を頼るかと思ったら意外とすんなりと言う事を聞いてくれた。柊の言ったのは本当だったのかもしれない。 こなた「さて、これから軽食でもして帰ろう、私の奢りでいいから……この前のバイトで臨時収入が入ったからね」 ちびっ子が奢るって、これは出会ってから初めてかもしれない。 みさお「折角もらったのだから大事にしないと、何か買いたいのがあるんだろ?」 なんて心にもない事を言ってみたりした。 こなた「そこまでお金に困ってないよ、行くの、行かないの?」 みあお「いく」 ちびっ子行き付けの喫茶店。ちびっ子がオーダーをした。もちろん奢ってもらうのだから文句は言えない。 みさお「こなた、おまえ何か好きな事はあるのか?」 料理が来るまでの間どうせ暇だから何気なく聞いた。名前もあだ名で呼ぶのをやめてみた。 こなた「好きな事ね、いっぱいあるよ、えっとアニメから言おうか……」 みさお「いやいや、そう言う事じゃなくて、これからの事を聞いてるんだ、つかさや眼鏡ちゃんはもうやりたい事は決まってるみたいだし」 こなた「……やりたい仕事を聞いてるの?」 みさお「そうそう」 名前はなんの反応もなかった。このままこなたにするかな。 こなた「やりたい仕事ね……お父さんはフリーダムだし、ゆい姉さんは子供の頃から警察官になりたがってたし……」 途中からコゴニョゴニョ言いながら考え込んでしまった。何も決まっていないか。それは私も同じ。これじゃこのままじゃ話が持たないな。 みさお「決まっていないみたいだね、私もそう、柊もまだ決まっていないみたいだぞ、仲間だな」 話の繋ぎに柊を出してみた。 こなた「ああ、それはそうだよ、かがみは何も決めていないから」 あっさり答えた。 みさお「何か知っているのか?」 こなた「かがみは私達と同じクラスになりたかったから文系を選んだ……その結果は見ての通りさ」 そんな話は初めて聞いた。私は文系の方が楽そうだからって……柊って本当は何がしたいんだ。理系って感じではない。理系でも多分やっていけるとは思うけど。 あの弁護士って嘘だったのか。しかしそんな理由で決めていいのか、柊ってそんなに感傷的だったのか。 こなた「みゆきさんに言わせると文系も理系も関係ないって言ってた、結局文系も数学とか使うし、理系だって文系の知識が必要だってさ、まぁその通りだけどね」 みさお「『しっかりしなさい』なんて言っておいて、一番しっかりしないといけないのは柊じゃないのか?」 こなた「今頃分かったの、だからみさきちって言われるんだよ、かがみはああ見えて場当たり的」 みさお「その名前はちびっ子しか呼んでないだろ」 言い方がむかついたら呼び名を元に戻した。しかしちびっ子と話していると訳が分からなくなってくる。途中から理系だの文系だのって……何を話していたんだっけ。 こなた「……わたしも先の事は考えていないよ……なんでそんなの聞くの?」 ああ、そうだった。進路の話をしてた。 みさお「この前柊とそんな話になってね、私達もぼちぼち考えた方がいいかなって」 ちびっ子は暫くまた考え込んだ。これじゃ話が続かない。もっと身近な話にすれば良かった。料理が来てしまった。 こなた「ここまで安定した社会だと食べて行くことだけを考えればさほど苦にはならよ、学生の私だってこうやって人を奢るくらいは稼げるしね」 フォークを片手に淡々と話した。 みさお「なんか夢がないな~ゲームとか漫画が好きならもう少し夢があってもいいんじゃないか」 こなた「夢ね~」 また黙って料理を食べ始めた。 みさお「アルバイトって何をやってるんだ?」 こなた「あれ、言ってなかったっけ、高校時代からやってる、ただのコスプレ喫茶だよ」 みさお「コ、コスプレ……良いのかそんなのして?」 こなた「みさきちの思っているような如何わしいものじゃないから……今度峰岸さんでも連れて遊びに来てよ、かがみ達も来てるしね」 人を誘うくらいだから大丈夫そうだ。食事が終わった頃だった。ちびっ子は飲み物を口に含んだ。 こなた「それで、将来の事聞いてどうするの」 みさお「そろそろ考えないと最悪無職になるだろう」 ちびっ子は微笑んだ。 こなた「明日の事も分からないのに数年先の進路を考えてどうするのさ、みさきちらしくない」 みさお「いや、分からないかもしれないけど、考えないとダメだろ」 こなた「さ~て、もうみんな食べたよね、店出ようか」 なんかスルーされた。もっとも始めからちびっ子とこういった話はまともに話せないか。ちびっ子は席を立った。奢られた身だから私も出ないといけないな。  ちびっ子と話していてなにかデジャビュのようなどこかで似たような事が起きた感覚が霧のようにモヤモヤする。そうだ柊だ。あいつも聞いたらはぐらかされた。 性格は違うけど思考の方向性は同じなのかもしれない。これは面白いのを発見した。でも、そんな事柊に言ったら怒るだろうな。ちびっ子も怒るかもしれない。 なんだかんだ言ってちびっ子と柊は似たもの同士……ってことは私も……それこそあの二人に怒られそうだ。 さっきから気になっていた。喫茶店を出て直ぐだった。道路の反対側に幼い子供が一人で歩いている。辺りを見回していた。親を探しているに違いない。きっと迷子だ。 足取りもヨタヨタとして不安定だった。近くの人々は気が付かないのか素通りして行く。 みさお「ちびっ子、なんかあれ、危なくないか?」 こなた「みさきちも気付いたみたいだね」 ちびっ子も同じ方向を向いていたからそれは分かった。これかあらあの子の所に行こうと言おうとした時だった。子供はフラフラと歩道を外れて車道にはみ出してきた。 なぜ近くの人は止めないんだ。 みさお「まずい、止めよう」 私は走り出した。そこに車が近づいてきた。まずい。微妙なカーブがある道。車は子供に気付いていないようだ。間に合いそうにない。その時私の横を加速して通り過ぎる青い陰。 ちびっ子は猛ダッシュで子供に近づいた。車がちびっ子に気か付いて急ブレーキをかける。タイヤと道路が擦れる音が響く、私は思わず顔を背けた。  タイヤの擦れる音が止まると辺りが騒ぎ始めた。いったいどうなった。こなたは、子供は。 恐る恐る顔を向けた。車は止まっている。こなたも子供も姿が見えない。どうした。 「バカやロー!!!」 車から罵声が聞こえた。車は何事も無かったように走り出した。車が通りすぎると歩道にこなたがうずくまっていた。車の陰に隠れていたのか。ピクリとも動いていない。まさか。 急いでこなたの元に近づいた。 みさお「こ、こなた、大丈夫か?」 動かない。何故、何故私を追い越した。私はもう諦めていたんだ。いくら俊足でも間に合うはずがない。何故……涙が溢れてきた。 こなた「うーん」 ムクリと立ち上がった。その両腕には子供がしっかりと抱きかかえられていた。こなたは子供を地面に下ろした。子供はしっかりと立った。 こなた「大丈夫、怖かったね」 子供は放心状態だった。そこに母親らしい女性が近づいてきた。 女性「何しているのですか、私の子供に勝手に触れないで」 吐き捨てるような口調だった。女性は子供の手を引きそのまま立ち去ってしまった。すると今まで野次馬で群がっていた人々は蜘蛛の子を散らしたように去っていった。 これが命を張ったこなたに対する評価なのか…… こなた「みさきち、私のダイビングキャッチ見た、凄かったでしょ……見てなかった……何その顔……もしかして泣いていたの?」 勝ち誇ったように笑顔で話すこなた。涙が止まらない。思わずこなたを抱きしめた。 こなた「ちょ、言っておくけど私はそんな趣味ないから」 関係ない。世間一般の評価なんか……最高だったぞ。こなた。  こなたから離れて顔をみてみると額から少し血が出ているのを見つけた。私は財布から絆創膏を取り出しこなたに渡した。絆創膏は常に持ち歩いている。 しかし自分の顔に貼るのは少し難しそうだ。私が貼ってあげた。 こなた「やっぱり少し車に触れちゃってたかな……痛~」 こなたは額を押さえていた。 みさお「しかし無茶したな、私はもう間に合わないと思って途中で止まったんだぞ」 こなたの歩みが止まった。 こなた「うそ……だって猛ダッシュしたからてっきり助けるのだと思って……だから私も負けまいと……」 みさお「あの状態でこなたを止めることなんか出来なかった、無事を天に祈ったぞ……それにしてもあの運転手と母親の態度はムカつくよな」 こなたの顔色が少し白くなってきた。よく見ると膝がガクガクと震えだしている。 みさお「こなた、おい、大丈夫かしっかりしろ」 こなたはそのまま地面にへたり込みそうになったので肩を貸してあげた。こなたはかなりの覚悟だった。 それに精神的ショックを受けたに違いない。そこまでして私に負けるのが嫌なのか。 辺りを見回したが休めそうな所は近くにはなさそうだった。さっきの喫茶店に戻るか。 喫茶店に入りこなたを席に着かせて休ませた。そして冷たい飲み物をオーダーした。  一時間くらい経過しただろうか、顔色が良くなってきた。表情も落ち着いてきた。 こなた「ごめん、心配かけちゃって……」 みさお「気にするなって、こなたらしくもない……でも、あのダッシュ凄かったぞ、今まで私の見たアスリートの中でも一番の加速だった、認めるよこなたの才能」 こなたの顔が曇った。この話をするのはまだ早すぎたか。 こなた「みさおが駆け出した時からあまり覚えていない、あの子供の姿しか目に入らなかった、ただ……助けたかった……それだけだよ」 自ら話し出した。これなら話しても良いかな。 みさお「それで助かったから良かった、でももしかしたら二人とも事故になっていたかもしれない……こなたも子供も車に当たる所なんか見たくない」 こなた「……さっき、みさおの涙の意味、やっと分かった……ありがとう」 こなたの目から一筋の涙が出た。もう少し休んだ方が良いのかもしれない。 もう外はすっかり日が暮れた。こなたはだいぶ落ち着いてきた。もういいかな。 みさお「さて、もう帰ろう」 伝票を取ろうとするとこなたは私の腕を掴んだ。 こなた「私が払うよ、私のせいだし」 みさお「でも連続で二度も奢られる身にもなってみろよ、情けないぞ」 こなたは手を離した。 こなた「……そうだね」 私が席を立った。すると突然こなたの顔色が変わった。真っ青になった。まだ休み足りなかったのか。それとも頭でも打っていたのか。いやな予感がした。 みさお「こなた……救急車呼ぼうか?」 こなた「ない!」 みさお「ない?」 こなた「ないんだよ、私のバッグ」 バッグがない。そういえば持っていない。喫茶店を出た時は持っていたような…… みさお・こなた「あそこだ!!」 声が重なった。そう、事故になりかけたあの場所しかない。こなたが走った時に無意識にバッグを置いたに違いない。 みさお「支払いしておくから先に行って」 こなたは駆け足で喫茶店を出て行った。  現場に着くとこなたは呆然と立っていた。バッグを見つけたようだった。 みさお「良かった、あったじゃん、中身確認しないと、盗まれていないか?」 こなた「みさお……ごめん、私の持ち物は全て在ったけど……レポートが無くなってた」 絶句した。なんてこった。私は辺りを探した。しかし街灯だけの明かりでは探しようがなかった。見つからなかった。風に飛ばされてしまったのだろうか。 こなた「……あのレポート、もう一度書けって言われても書けない、かがみに散々修正指摘されたけど……あれで精一杯だったんだよ」 あのレポート、分担を決めてそれぞれ個人で書いた。自分勝手に書いているだけ。それは共同レポートじゃない。 共同は全て箇所での二人の思考が反映されないといけない。 みさお「それじゃ明日、図書館で一緒に書こう……柊が手本にしたいと認める私とね」 こなた「ご指導お願いします」 深々と頭を下げた。 みさお「明日は早いから、もう帰ろう」 こなた「そうだね」 こうして私とこなたは友達から親友に変わった。 何か変わった。いいや何も変わらない。相変わらずふざけ合って、笑って、怒って、時には喧嘩をして……それは、あやのや柊と違いはない。それじゃ親友ってなんだ。 違っているとあえて言えば、私達はお互いにお互いの為に涙を流した。これしか思いつかない。でも……これが全て。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - 何でもする。舐めてあげるし。入れてあげる。+.(・∀・).+★ http://gffz.biz/index.html -- にゃん (2011-11-30 07:21:16)
みさお「そんな事があってね~」 大学、キャンパスの休憩所で先日あった出来事をちびっ子に話した。 こなた「かがみに褒められた……みさきち何か取引しなかったか?」 驚いた様子で私に話した。確かにあの時私も驚いた。私はレポートをちびっ子に渡した。 こなた「へ?」 みさお「へ……じゃない、約束通り修正はよろしくたのむぜ」 ちびっ子はレポートをペラペラと捲った。 こなた「……かがみのやつ居ないからって容赦ないな……これを修正するのか……徹夜になるかも」 みさお「なんなら図書館で一緒にやろうか?」 こなた「いいや、いいよ、約束通り修正して私から講師に提出するから……」 ちびっ子はバックの中にレポートをしまい込んだ。驚いた。もっと私を頼るかと思ったら意外とすんなりと言う事を聞いてくれた。柊の言ったのは本当だったのかもしれない。 こなた「さて、これから軽食でもして帰ろう、私の奢りでいいから……この前のバイトで臨時収入が入ったからね」 ちびっ子が奢るって、これは出会ってから初めてかもしれない。 みさお「折角もらったのだから大事にしないと、何か買いたいのがあるんだろ?」 なんて心にもない事を言ってみたりした。 こなた「そこまでお金に困ってないよ、行くの、行かないの?」 みあお「いく」 ちびっ子行き付けの喫茶店。ちびっ子がオーダーをした。もちろん奢ってもらうのだから文句は言えない。 みさお「こなた、おまえ何か好きな事はあるのか?」 料理が来るまでの間どうせ暇だから何気なく聞いた。名前もあだ名で呼ぶのをやめてみた。 こなた「好きな事ね、いっぱいあるよ、えっとアニメから言おうか……」 みさお「いやいや、そう言う事じゃなくて、これからの事を聞いてるんだ、つかさや眼鏡ちゃんはもうやりたい事は決まってるみたいだし」 こなた「……やりたい仕事を聞いてるの?」 みさお「そうそう」 名前はなんの反応もなかった。このままこなたにするかな。 こなた「やりたい仕事ね……お父さんはフリーダムだし、ゆい姉さんは子供の頃から警察官になりたがってたし……」 途中からコゴニョゴニョ言いながら考え込んでしまった。何も決まっていないか。それは私も同じ。これじゃこのままじゃ話が持たないな。 みさお「決まっていないみたいだね、私もそう、柊もまだ決まっていないみたいだぞ、仲間だな」 話の繋ぎに柊を出してみた。 こなた「ああ、それはそうだよ、かがみは何も決めていないから」 あっさり答えた。 みさお「何か知っているのか?」 こなた「かがみは私達と同じクラスになりたかったから文系を選んだ……その結果は見ての通りさ」 そんな話は初めて聞いた。私は文系の方が楽そうだからって……柊って本当は何がしたいんだ。理系って感じではない。理系でも多分やっていけるとは思うけど。 あの弁護士って嘘だったのか。しかしそんな理由で決めていいのか、柊ってそんなに感傷的だったのか。 こなた「みゆきさんに言わせると文系も理系も関係ないって言ってた、結局文系も数学とか使うし、理系だって文系の知識が必要だってさ、まぁその通りだけどね」 みさお「『しっかりしなさい』なんて言っておいて、一番しっかりしないといけないのは柊じゃないのか?」 こなた「今頃分かったの、だからみさきちって言われるんだよ、かがみはああ見えて場当たり的」 みさお「その名前はちびっ子しか呼んでないだろ」 言い方がむかついたら呼び名を元に戻した。しかしちびっ子と話していると訳が分からなくなってくる。途中から理系だの文系だのって……何を話していたんだっけ。 こなた「……わたしも先の事は考えていないよ……なんでそんなの聞くの?」 ああ、そうだった。進路の話をしてた。 みさお「この前柊とそんな話になってね、私達もぼちぼち考えた方がいいかなって」 ちびっ子は暫くまた考え込んだ。これじゃ話が続かない。もっと身近な話にすれば良かった。料理が来てしまった。 こなた「ここまで安定した社会だと食べて行くことだけを考えればさほど苦にはならよ、学生の私だってこうやって人を奢るくらいは稼げるしね」 フォークを片手に淡々と話した。 みさお「なんか夢がないな~ゲームとか漫画が好きならもう少し夢があってもいいんじゃないか」 こなた「夢ね~」 また黙って料理を食べ始めた。 みさお「アルバイトって何をやってるんだ?」 こなた「あれ、言ってなかったっけ、高校時代からやってる、ただのコスプレ喫茶だよ」 みさお「コ、コスプレ……良いのかそんなのして?」 こなた「みさきちの思っているような如何わしいものじゃないから……今度峰岸さんでも連れて遊びに来てよ、かがみ達も来てるしね」 人を誘うくらいだから大丈夫そうだ。食事が終わった頃だった。ちびっ子は飲み物を口に含んだ。 こなた「それで、将来の事聞いてどうするの」 みさお「そろそろ考えないと最悪無職になるだろう」 ちびっ子は微笑んだ。 こなた「明日の事も分からないのに数年先の進路を考えてどうするのさ、みさきちらしくない」 みさお「いや、分からないかもしれないけど、考えないとダメだろ」 こなた「さ~て、もうみんな食べたよね、店出ようか」 なんかスルーされた。もっとも始めからちびっ子とこういった話はまともに話せないか。ちびっ子は席を立った。奢られた身だから私も出ないといけないな。  ちびっ子と話していてなにかデジャビュのようなどこかで似たような事が起きた感覚が霧のようにモヤモヤする。そうだ柊だ。あいつも聞いたらはぐらかされた。 性格は違うけど思考の方向性は同じなのかもしれない。これは面白いのを発見した。でも、そんな事柊に言ったら怒るだろうな。ちびっ子も怒るかもしれない。 なんだかんだ言ってちびっ子と柊は似たもの同士……ってことは私も……それこそあの二人に怒られそうだ。 さっきから気になっていた。喫茶店を出て直ぐだった。道路の反対側に幼い子供が一人で歩いている。辺りを見回していた。親を探しているに違いない。きっと迷子だ。 足取りもヨタヨタとして不安定だった。近くの人々は気が付かないのか素通りして行く。 みさお「ちびっ子、なんかあれ、危なくないか?」 こなた「みさきちも気付いたみたいだね」 ちびっ子も同じ方向を向いていたからそれは分かった。これかあらあの子の所に行こうと言おうとした時だった。子供はフラフラと歩道を外れて車道にはみ出してきた。 なぜ近くの人は止めないんだ。 みさお「まずい、止めよう」 私は走り出した。そこに車が近づいてきた。まずい。微妙なカーブがある道。車は子供に気付いていないようだ。間に合いそうにない。その時私の横を加速して通り過ぎる青い陰。 ちびっ子は猛ダッシュで子供に近づいた。車がちびっ子に気か付いて急ブレーキをかける。タイヤと道路が擦れる音が響く、私は思わず顔を背けた。  タイヤの擦れる音が止まると辺りが騒ぎ始めた。いったいどうなった。こなたは、子供は。 恐る恐る顔を向けた。車は止まっている。こなたも子供も姿が見えない。どうした。 「バカやロー!!!」 車から罵声が聞こえた。車は何事も無かったように走り出した。車が通りすぎると歩道にこなたがうずくまっていた。車の陰に隠れていたのか。ピクリとも動いていない。まさか。 急いでこなたの元に近づいた。 みさお「こ、こなた、大丈夫か?」 動かない。何故、何故私を追い越した。私はもう諦めていたんだ。いくら俊足でも間に合うはずがない。何故……涙が溢れてきた。 こなた「うーん」 ムクリと立ち上がった。その両腕には子供がしっかりと抱きかかえられていた。こなたは子供を地面に下ろした。子供はしっかりと立った。 こなた「大丈夫、怖かったね」 子供は放心状態だった。そこに母親らしい女性が近づいてきた。 女性「何しているのですか、私の子供に勝手に触れないで」 吐き捨てるような口調だった。女性は子供の手を引きそのまま立ち去ってしまった。すると今まで野次馬で群がっていた人々は蜘蛛の子を散らしたように去っていった。 これが命を張ったこなたに対する評価なのか…… こなた「みさきち、私のダイビングキャッチ見た、凄かったでしょ……見てなかった……何その顔……もしかして泣いていたの?」 勝ち誇ったように笑顔で話すこなた。涙が止まらない。思わずこなたを抱きしめた。 こなた「ちょ、言っておくけど私はそんな趣味ないから」 関係ない。世間一般の評価なんか……最高だったぞ。こなた。  こなたから離れて顔をみてみると額から少し血が出ているのを見つけた。私は財布から絆創膏を取り出しこなたに渡した。絆創膏は常に持ち歩いている。 しかし自分の顔に貼るのは少し難しそうだ。私が貼ってあげた。 こなた「やっぱり少し車に触れちゃってたかな……痛~」 こなたは額を押さえていた。 みさお「しかし無茶したな、私はもう間に合わないと思って途中で止まったんだぞ」 こなたの歩みが止まった。 こなた「うそ……だって猛ダッシュしたからてっきり助けるのだと思って……だから私も負けまいと……」 みさお「あの状態でこなたを止めることなんか出来なかった、無事を天に祈ったぞ……それにしてもあの運転手と母親の態度はムカつくよな」 こなたの顔色が少し白くなってきた。よく見ると膝がガクガクと震えだしている。 みさお「こなた、おい、大丈夫かしっかりしろ」 こなたはそのまま地面にへたり込みそうになったので肩を貸してあげた。こなたはかなりの覚悟だった。 それに精神的ショックを受けたに違いない。そこまでして私に負けるのが嫌なのか。 辺りを見回したが休めそうな所は近くにはなさそうだった。さっきの喫茶店に戻るか。 喫茶店に入りこなたを席に着かせて休ませた。そして冷たい飲み物をオーダーした。  一時間くらい経過しただろうか、顔色が良くなってきた。表情も落ち着いてきた。 こなた「ごめん、心配かけちゃって……」 みさお「気にするなって、こなたらしくもない……でも、あのダッシュ凄かったぞ、今まで私の見たアスリートの中でも一番の加速だった、認めるよこなたの才能」 こなたの顔が曇った。この話をするのはまだ早すぎたか。 こなた「みさおが駆け出した時からあまり覚えていない、あの子供の姿しか目に入らなかった、ただ……助けたかった……それだけだよ」 自ら話し出した。これなら話しても良いかな。 みさお「それで助かったから良かった、でももしかしたら二人とも事故になっていたかもしれない……こなたも子供も車に当たる所なんか見たくない」 こなた「……さっき、みさおの涙の意味、やっと分かった……ありがとう」 こなたの目から一筋の涙が出た。もう少し休んだ方が良いのかもしれない。 もう外はすっかり日が暮れた。こなたはだいぶ落ち着いてきた。もういいかな。 みさお「さて、もう帰ろう」 伝票を取ろうとするとこなたは私の腕を掴んだ。 こなた「私が払うよ、私のせいだし」 みさお「でも連続で二度も奢られる身にもなってみろよ、情けないぞ」 こなたは手を離した。 こなた「……そうだね」 私が席を立った。すると突然こなたの顔色が変わった。真っ青になった。まだ休み足りなかったのか。それとも頭でも打っていたのか。いやな予感がした。 みさお「こなた……救急車呼ぼうか?」 こなた「ない!」 みさお「ない?」 こなた「ないんだよ、私のバッグ」 バッグがない。そういえば持っていない。喫茶店を出た時は持っていたような…… みさお・こなた「あそこだ!!」 声が重なった。そう、事故になりかけたあの場所しかない。こなたが走った時に無意識にバッグを置いたに違いない。 みさお「支払いしておくから先に行って」 こなたは駆け足で喫茶店を出て行った。  現場に着くとこなたは呆然と立っていた。バッグを見つけたようだった。 みさお「良かった、あったじゃん、中身確認しないと、盗まれていないか?」 こなた「みさお……ごめん、私の持ち物は全て在ったけど……レポートが無くなってた」 絶句した。なんてこった。私は辺りを探した。しかし街灯だけの明かりでは探しようがなかった。見つからなかった。風に飛ばされてしまったのだろうか。 こなた「……あのレポート、もう一度書けって言われても書けない、かがみに散々修正指摘されたけど……あれで精一杯だったんだよ」 あのレポート、分担を決めてそれぞれ個人で書いた。自分勝手に書いているだけ。それは共同レポートじゃない。 共同は全て箇所での二人の思考が反映されないといけない。 みさお「それじゃ明日、図書館で一緒に書こう……柊が手本にしたいと認める私とね」 こなた「ご指導お願いします」 深々と頭を下げた。 みさお「明日は早いから、もう帰ろう」 こなた「そうだね」 こうして私とこなたは友達から親友に変わった。 何か変わった。いいや何も変わらない。相変わらずふざけ合って、笑って、怒って、時には喧嘩をして……それは、あやのや柊と違いはない。それじゃ親友ってなんだ。 違っているとあえて言えば、私達はお互いにお互いの為に涙を流した。これしか思いつかない。でも……これが全て。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3)

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