ID:hvDqVhiC0氏:『柊かがみのほにゃらら』

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 柊かがみは、もう泣きそうだった。  今は下校中である。かがみの前を歩くこなたとつかさが、こそこそと話をしている。そして、時折後ろをにやにやした顔で振り返ったか と思うと、爆笑するのだ。  何よ、二人して。  心の中では強気なのだが、最早かがみは思いっきり涙目。まじで泣き出す五秒までだ。顔に何かついているのかと思ってごしごしと袖で 拭いてみるのだが、何かがついていたということでもなく、二人はまだわらってくる。  勇気を出して、訊いてみた。 「ね、ねえ。何がそんなにおかしいの?」  二人は揃って、きょとんとした顔で振り返った。その途端、何も答えずにまた爆笑しだした。かがみは少し泣いた。  こなたが息を切らしながら言う。 「ご、ごめんごめん。なんでもないよかがみん」  嘘だ。絶対何でもないなんてことはないはずだ。かがみは走って逃げ出したくなったが、下校中なのでそうもいかない。  それに、そんなことするとまた二人は笑ってくるだろう。そうしたらまじで泣いてしまう。  最近、こんなことが続いていた。  昨日のことである。廊下を歩いていたら、後頭部に何かがこつん、と当たった。振り返ってみると、こなたとつかさが笑いながら走り去 っていくところだった。あたったのは、消しゴムのかすだった。  その時は、もう、子どもくさいわねっ、で済んだ。  また、こんなこともあった。お昼休み、つかさ、こなた、みゆきと、一緒にお弁当を食べていた。  ふいに、こなたがにやにやしながら、訊いてきた。 「ねぇねぇかがみん。フルメタ18禁やおい本どう? 使える?」  ぶはっ、とお弁当を噴出してしまった。何故それをこなたが知っているのだろう。こっそり、誰にも見つからないように一人で買いにい ったのに。  だけど白を切る。 「なななな何言ってるのよ。そそそそんんんんなもの、持ってないわよ!」  すると、つかさが笑いを堪えながら、大げさに声を張った。 「も~お姉ちゃん嘘吐いちゃ駄目だよぉ。ベットの下に隠してあるじゃない」  つかさがばらしたのかっ! 何で見つけるのよ(泣)。  こなたがもう笑い死ぬんじゃないかってぐらい爆笑した。あろうことか、みゆきまで。 「ぶはははははっ!! かがみん、どう、どう? やっぱりエッチぃ? エッチぃでしょう? どのぐらい使った?」 「ぷ、くふふ。そ、そんなに笑っては、悪いですよぉ」 「お姉ちゃんは変態だなぁ」  三人に笑われて、何もいえなくなり、顔を伏せた。顔が燃えるんじゃないかってぐらい赤くなったのが自分でもわかった。  さらに、こんなこともあった。  ある日、何故か下校の際に、こなたと二人っきりになったのだ。  それなりに会話が弾んで、それが久しぶりのことだったから、かがみは嬉しかった。  すると突然に、こなたはかがみの手を握ってきたのだ。心臓が跳ねた。何かの冗談かと思ったのだが、こなたは無言で、指先を絡めてきた。  もう体内の内臓を全部吐き出してしまうぐらい、緊張した。顔が発火寸前まで赤くなった。  そして、ぽつりと、こなたは言った。 「ねえかがみん、キスしてあげよっか」  こなたの真面目な顔が、近くにあった。かがみは思わず、 「ほ、本当にっ!?」  と性欲を持て余した男子高校生のように、ちょっと引くぐらい、食いついてしまった。言ってから、しまったと思った。でも、正直興奮 していた。  その瞬間、こなたは盛大に噴出すと、道端に転げ回って笑い出した。え? と状況がよく飲み込めなかった。  曲がり角からみゆきとつかさが、こなたと同じように、笑いながら出てきた。あれ? いなかったのに。混乱する。 「お、お、お、お姉ちゃん、やっぱりそうだったんだぁ」  お腹を抱えながら、心底苦しそうにつかさが指差してきた。みゆきはみゆきで、上品に笑いを堪えていたけど、すんごく笑っていた。  どうやら、隠れて見ていたらしい。つまり、ドッキリだったのだ。  慌てて否定する。 「ちちちっちちっっちちちっ、違うわよっ! 別に、私はそんなつもりで言ったんじゃないのよっ!」  だけど三人は聞く耳持たず、ずっと笑っていた。顔がペンキで塗られたみたいに赤くなった。  そして、今日も、こなたとつかさはかがみのことを笑ってきた。  こなたが後ろを振りかえって、こっちを見た。 「かがみん、キスしよっか」 「まっ、まじで!?」  途端、ほらぁ(笑)と二人はけらけら笑い出す。また騙される。  鼻の奥がつん、として、胸が苦しかった。  何とか涙を堪えるのを我慢して、泣いていると思われるのが嫌だから鼻を啜るのも我慢して、そうしていたら鼻水が垂れてきて、もう嫌だって思った。  顔を伏せて、黙々と二人のこそこそ声を聞きながら歩く。また、笑い声。声を出して泣き出さないのが自分でも奇跡だと思った。  こなたと別れる道に来た。寂しいような、ほっとしたような、そんな気分になった。  じゃあね、と消え入りそうなほどか細い声で角を曲がろうとしたら、手首を掴まれた。  驚いて、見ると、こなたが真面目な顔でかがみのことを見据えていた。どきっとした。 「かがみん、今から私の家来てよ」  そう言われた。つかさを見ると、つかさも早く行こうよぉ、などといっている。事前に二人で約束していたみたいだ。  かがみまた、からかわれるのかな、と思った。だけど笑いもしないで、こなたが真剣な顔で見据えてくるのが嬉しくて、小さく頷いた。  こなたの家に向かっているとき、ずっと手首を掴まれていた。つかさもこなたも、笑っていなかった。手首から伝わるこなたの手が、優しい体温を感じさせた。  こなたの家についた。半ば強引に、家の中に連れられた。 「こなた、何があるの」 「サプライズだよっ!」  がちゃりと、こなたはかがみの手を引いたまま扉を開けた。その先には。 「かがみちゃん、おめでとう!」  ぱん、ぱん、と二回破裂したような音がなって、一瞬銃で撃たれたのかと思って、身を屈めてしまった。  どうやら銃ではないらしく、顔をあげると、みゆきと、こなたの父と、その後ろに遊園地みたいに派手な色の装飾が飾ってあった。  そこには、文字が書いてある。 『かがみんお誕生日おめでとう! ~今日まで苛めててごめんね。でもサプライズパーティってこういうものでしょう?~』  呆然としていると、かがみの手を引いていたこなたが、くるっと身を翻し、かがみに抱きついた。かがみは突然のことに、少し心臓を吐き出してしまったと思った。 「かがみん、ごめんね~」  こなたの満面の笑みが鼻先にあった。みゆきと、こなたの父が、ぱちぱちと拍手を鳴らす。 「どっ、どっ、どういうこと?」 「サプライズパーティだよぉ。ほら、よくあるじゃん? 世界○見えとかでもさ。かがみの誕生日近かったから、驚かせようと思って」 「じゃ、じゃあ、今まで私のことからかってたのは?」 「今日までの、サプライズだよ。驚いたでしょ?」  にひひ、とこなたは悪戯っぽく笑った。  かがみは、今まで我慢していた涙を堪えきれず、泣いてしまった。  良かった、私は、皆に苛められていたんじゃなかったんだ。 「でも、苛めてるときのかがみん可愛かったから、ちょっと本気のところもあったけどね~」  うっそ~ん。  こなたの父が、声を張った。 「それじゃあ、皆でケーキでも食べよう」  わぁい、と歓声が上がる。かがみも、涙を拭って、わぁいと机に着席し、皆でケーキを囲む。  隣に座ったこなたが、こっそり言ってきた。 「本当に、キスしてもいいんだよ」 「ま……まじですか!? 本当に? え、本当に? 嘘じゃない? 本当?」 「え……う、うん。まあ、一度だけなら……ええ~……何か嫌だ。――あっ」  一人だけ、机に座らない影があった。つかさだった。  こなたが親しげに声をかける。 「つかさも一緒にケーキ食べようよ。今日はかがみの誕生日なんだから」 「うん……そうだよね……あはは……うん、うん……えへへ……」
 柊かがみは、もう泣きそうだった。  今は下校中である。かがみの前を歩くこなたとつかさが、こそこそと話をしている。そして、時折後ろをにやにやした顔で振り返ったか と思うと、爆笑するのだ。  何よ、二人して。  心の中では強気なのだが、最早かがみは思いっきり涙目。まじで泣き出す五秒までだ。顔に何かついているのかと思ってごしごしと袖で 拭いてみるのだが、何かがついていたということでもなく、二人はまだわらってくる。  勇気を出して、訊いてみた。 「ね、ねえ。何がそんなにおかしいの?」  二人は揃って、きょとんとした顔で振り返った。その途端、何も答えずにまた爆笑しだした。かがみは少し泣いた。  こなたが息を切らしながら言う。 「ご、ごめんごめん。なんでもないよかがみん」  嘘だ。絶対何でもないなんてことはないはずだ。かがみは走って逃げ出したくなったが、下校中なのでそうもいかない。  それに、そんなことするとまた二人は笑ってくるだろう。そうしたらまじで泣いてしまう。  最近、こんなことが続いていた。  昨日のことである。廊下を歩いていたら、後頭部に何かがこつん、と当たった。振り返ってみると、こなたとつかさが笑いながら走り去 っていくところだった。あたったのは、消しゴムのかすだった。  その時は、もう、子どもくさいわねっ、で済んだ。  また、こんなこともあった。お昼休み、つかさ、こなた、みゆきと、一緒にお弁当を食べていた。  ふいに、こなたがにやにやしながら、訊いてきた。 「ねぇねぇかがみん。フルメタ18禁やおい本どう? 使える?」  ぶはっ、とお弁当を噴出してしまった。何故それをこなたが知っているのだろう。こっそり、誰にも見つからないように一人で買いにい ったのに。  だけど白を切る。 「なななな何言ってるのよ。そそそそんんんんなもの、持ってないわよ!」  すると、つかさが笑いを堪えながら、大げさに声を張った。 「も~お姉ちゃん嘘吐いちゃ駄目だよぉ。ベットの下に隠してあるじゃない」  つかさがばらしたのかっ! 何で見つけるのよ(泣)。  こなたがもう笑い死ぬんじゃないかってぐらい爆笑した。あろうことか、みゆきまで。 「ぶはははははっ!! かがみん、どう、どう? やっぱりエッチぃ? エッチぃでしょう? どのぐらい使った?」 「ぷ、くふふ。そ、そんなに笑っては、悪いですよぉ」 「お姉ちゃんは変態だなぁ」  三人に笑われて、何もいえなくなり、顔を伏せた。顔が燃えるんじゃないかってぐらい赤くなったのが自分でもわかった。  さらに、こんなこともあった。  ある日、何故か下校の際に、こなたと二人っきりになったのだ。  それなりに会話が弾んで、それが久しぶりのことだったから、かがみは嬉しかった。  すると突然に、こなたはかがみの手を握ってきたのだ。心臓が跳ねた。何かの冗談かと思ったのだが、こなたは無言で、指先を絡めてきた。  もう体内の内臓を全部吐き出してしまうぐらい、緊張した。顔が発火寸前まで赤くなった。  そして、ぽつりと、こなたは言った。 「ねえかがみん、キスしてあげよっか」  こなたの真面目な顔が、近くにあった。かがみは思わず、 「ほ、本当にっ!?」  と性欲を持て余した男子高校生のように、ちょっと引くぐらい、食いついてしまった。言ってから、しまったと思った。でも、正直興奮 していた。  その瞬間、こなたは盛大に噴出すと、道端に転げ回って笑い出した。え? と状況がよく飲み込めなかった。  曲がり角からみゆきとつかさが、こなたと同じように、笑いながら出てきた。あれ? いなかったのに。混乱する。 「お、お、お、お姉ちゃん、やっぱりそうだったんだぁ」  お腹を抱えながら、心底苦しそうにつかさが指差してきた。みゆきはみゆきで、上品に笑いを堪えていたけど、すんごく笑っていた。  どうやら、隠れて見ていたらしい。つまり、ドッキリだったのだ。  慌てて否定する。 「ちちちっちちっっちちちっ、違うわよっ! 別に、私はそんなつもりで言ったんじゃないのよっ!」  だけど三人は聞く耳持たず、ずっと笑っていた。顔がペンキで塗られたみたいに赤くなった。  そして、今日も、こなたとつかさはかがみのことを笑ってきた。  こなたが後ろを振りかえって、こっちを見た。 「かがみん、キスしよっか」 「まっ、まじで!?」  途端、ほらぁ(笑)と二人はけらけら笑い出す。また騙される。  鼻の奥がつん、として、胸が苦しかった。  何とか涙を堪えるのを我慢して、泣いていると思われるのが嫌だから鼻を啜るのも我慢して、そうしていたら鼻水が垂れてきて、もう嫌だって思った。  顔を伏せて、黙々と二人のこそこそ声を聞きながら歩く。また、笑い声。声を出して泣き出さないのが自分でも奇跡だと思った。  こなたと別れる道に来た。寂しいような、ほっとしたような、そんな気分になった。  じゃあね、と消え入りそうなほどか細い声で角を曲がろうとしたら、手首を掴まれた。  驚いて、見ると、こなたが真面目な顔でかがみのことを見据えていた。どきっとした。 「かがみん、今から私の家来てよ」  そう言われた。つかさを見ると、つかさも早く行こうよぉ、などといっている。事前に二人で約束していたみたいだ。  かがみまた、からかわれるのかな、と思った。だけど笑いもしないで、こなたが真剣な顔で見据えてくるのが嬉しくて、小さく頷いた。  こなたの家に向かっているとき、ずっと手首を掴まれていた。つかさもこなたも、笑っていなかった。手首から伝わるこなたの手が、優しい体温を感じさせた。  こなたの家についた。半ば強引に、家の中に連れられた。 「こなた、何があるの」 「サプライズだよっ!」  がちゃりと、こなたはかがみの手を引いたまま扉を開けた。その先には。 「かがみちゃん、おめでとう!」  ぱん、ぱん、と二回破裂したような音がなって、一瞬銃で撃たれたのかと思って、身を屈めてしまった。  どうやら銃ではないらしく、顔をあげると、みゆきと、こなたの父と、その後ろに遊園地みたいに派手な色の装飾が飾ってあった。  そこには、文字が書いてある。 『かがみんお誕生日おめでとう! ~今日まで苛めててごめんね。でもサプライズパーティってこういうものでしょう?~』  呆然としていると、かがみの手を引いていたこなたが、くるっと身を翻し、かがみに抱きついた。かがみは突然のことに、少し心臓を吐き出してしまったと思った。 「かがみん、ごめんね~」  こなたの満面の笑みが鼻先にあった。みゆきと、こなたの父が、ぱちぱちと拍手を鳴らす。 「どっ、どっ、どういうこと?」 「サプライズパーティだよぉ。ほら、よくあるじゃん? 世界○見えとかでもさ。かがみの誕生日近かったから、驚かせようと思って」 「じゃ、じゃあ、今まで私のことからかってたのは?」 「今日までの、サプライズだよ。驚いたでしょ?」  にひひ、とこなたは悪戯っぽく笑った。  かがみは、今まで我慢していた涙を堪えきれず、泣いてしまった。  良かった、私は、皆に苛められていたんじゃなかったんだ。 「でも、苛めてるときのかがみん可愛かったから、ちょっと本気のところもあったけどね~」  うっそ~ん。  こなたの父が、声を張った。 「それじゃあ、皆でケーキでも食べよう」  わぁい、と歓声が上がる。かがみも、涙を拭って、わぁいと机に着席し、皆でケーキを囲む。  隣に座ったこなたが、こっそり言ってきた。 「本当に、キスしてもいいんだよ」 「ま……まじですか!? 本当に? え、本当に? 嘘じゃない? 本当?」 「え……う、うん。まあ、一度だけなら……ええ~……何か嫌だ。――あっ」  一人だけ、机に座らない影があった。つかさだった。  こなたが親しげに声をかける。 「つかさも一緒にケーキ食べようよ。今日はかがみの誕生日なんだから」 「うん……そうだよね……あはは……うん、うん……えへへ……」

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