ID:NoWwNjQ0氏:まつり姉さん

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まつり「かがみ今日の巫女の手伝い代わってもらえないかな」 日曜日の早朝、まつり姉さんが突然私に頼み込んできた。今日は特に用事があるわけもない。しかし『はいそうですか』と言うほど私は素直じゃない。 かがみ「この前は私がやったわよ、なんで今日の今日でそんな事を」 まつり「大学のレポートが遅れちゃってね、頼む、この通り」 両手を合わせて拝むような姿だった。どうやら嘘を言っているようではないみたい。代わってもいいと思ってきたが顔は拒否の表情をした。 いつもの事ながら勝手すぎる。 かがみ「レポートなら手伝いが終わってからでも出来るでしょうに」 まつり「それが出来るようなら頼まない、そうだ、今度美味しいスイーツ奢ってあげる」 かがみ「……お生憎様、私は今ダイエット中、要らない」  話はどんどん喧嘩寸前までエスカレートしていった。 いのり「まつり、時間だよ、支度しなさい」 怒る声が響いた。さすがのまつり姉さんも諦めたのか自分の部屋に向かった。 つかさ「まつりお姉ちゃん、私が代わってもいいよ」 つかさが私達のやり取りを見ていたようだった。 まつり「つかさ、さすが話が分かるね、かがみと双子とは思えないよ」 かがみ「双子で悪かったわね」 まつり「それじゃつかさ頼むよ」 私の言う事を無視し、そのまま自分の部屋に行ってしまった。私はつかさを見てため息をついた。 かがみ「つかさ、なんで代わったのよ、そんな事したら今後、いいように使われるだけ」 つかさは私の忠告に笑顔で答えた。 つかさ「だって、大学のレポート大変そうだったから」 かがみ「大変ってね、普段からやってればこんな事になんかならない、そうゆうのをお人好しって言うのよ」 つかさ「そうだよね、普段からやってればそんな事にならない、分かるよ……でも……もう行かなきゃ」 何かを言いかけたが、私を振り切るようにいのり姉さんの所に行ってしまった。  まつり姉さん、つかさとも中途半端な会話になってしまった。朝からもやもやした感じだった。 そのまま私は台所に向かった。 かがみ「おはよう、お母さん」 みき「おはよう、朝食はそこにあるから……あら、つかさ、朝食食べてないわね、どうしたのかしら」 かがみ「つかさはさっきいのり姉さんと巫女の仕事に出かけたわよ」 みき「今日はまつりじゃなかったの」 かがみ「そうよ、まつり姉さんの番だった、だけど私に代わってくれって言うもんだから、ちょっと言い合ってね」 みき「それでつかさが犠牲になった」 かがみ「お母さん、人聞きの悪いことを、元はまつり姉さんが……」 みき「はいはい、また始まった、いつからまつりとかがみはそんなになったのか……」 お母さんは呆れるように会話を打ち切った。何度も同じ事をするなと言わんとばかりだ。会話が途切れたのは三回目、私ももやもやを通り越してイライラと なってきた。折角の日曜日だと言うのに。私は朝食を無言で食べた。 みき「そういえば、つかさ……今日はお友達とどこかに行く約束してたみたいね……早く起こしてって言うから起こしたのに、家の仕事して大丈夫かしら」 お母さんが思い出したように呟いた。つかさが休日なのにこんなに早く起きてきておかしいと思った。友達とどこかに行く約束だって?。今初めて知った。 誰とそんな約束をしたんだ。私の知る限りこなたとみゆきくらいしか思い浮かばない。それにその二人なら私も誘われてもいいはず。 かがみ「友達って誰だか分かる?」 みき「よく家に来る子だって言ったわね、多分こなたちゃんじゃないかしら」 間違いないこなただ。私に内緒で何をするつもりだったのか。まあ、それは詮索してもしょうがない。それよりもつかさはこなたとの約束を反故にするつもりなのか。 いくらこなたとつかさの仲でもそれは許されることじゃない。しかもまつり姉さんのどうでもいい理由の為に。それを知ったらいくらこなたでも怒るだろう。 まったく、つかさは何故言わなかったんだ。それを言っていれば私が代わりになったのに。 みき「いのり、倉庫の鍵を持って行くの忘れてるわ、これだと掃除とかできないわね」 かがみ「それじゃ私が持っていくわ」 みき「それじゃ頼むわね」  結局神社に行くことになったか。つかさが気になったから。こんなことなら最初からまつり姉さんの代わりを受けていればよかった。 後味が悪すぎる。そんな後悔をしながら私は神社に向かった。  神社の境内にある倉庫に向かった。しかし倉庫は既に鍵が開いていた。きっといのり姉さんが合鍵を持っていたのだろう。 周りをみるとゴミなどはなく綺麗になっていた。もう仕事は終わってしまったようだ。私も用無しかな。家に戻ろうとした時だった。 いのり姉さんとつかさが倉庫に向かってきた。二人は私に気付いていない。このまま帰るのも味気ないので二人を驚かすか。 私はそっと倉庫の陰に隠れた。二人は倉庫に着いた。掃除道具を片付けている。さてとそろそろいいかな。私は飛び出そうとした。 いのり「つかさ、なぜまつりの代わりなんかしたの」 私の動きが止まった。つかさの返事が聞きたかった。 つかさ「まつりお姉ちゃんとお姉ちゃんが行く行かないで言い合っていたから……」 いのり「またあの二人は……まったく何時からあんなに仲が悪くなったのか」 呆れたように言うい姿はお母さんと同じだ。 つかさ「小さい頃はみんな仲良しだったよね」 いのり「でもつかさはかがみと仲がいいいじゃない、喧嘩してるところなんか見たこと無い」 つかさ「そうだね、双子だから……かな、お姉ちゃんが他人だったら友達にもなれそうにないけどね、性格も違うし……私なんか……相手にされそうにないよ」 私とつかさが他人だったら。クラスが同じでも近所同士だったとしても会話を交わすこともないかもしれない。 いのり「それはどうかしらね、私は二人は他人でも何かしら知り合っていると思う」 つかさ「そうかな……そうならいいね」 いのり「さてと、片付いた事だし、少し休んでから帰るか、つかさとこうして話すのも久しぶりだしね……そういえばつかさは巫女の手伝いを私達姉妹の中で      一番やってるわね、もしかして巫女の仕事が好きなの?」 つかさ「別に好きとか嫌いとかじゃないよ……どんな御守りがいいかなって悩んでいる人に助言したりするのは結構面白いよ、それに……」 いのり「それに?」 つかさは顔を上げた。私といのり姉さんはつかさの目線を追った。そこには神社にお参りをしている人がいた。 つかさ「お参りをしている人を見て思うの、この人は何を祈っているのかなって、いろいろ想像していると楽しくなるんだよ」 いのり「……つかさはロマンティストだね、まつりやかがみにも少しは見習ってもらいたいものだ」 つかさ「いのりお姉ちゃん、これは小さい時、まつりお姉ちゃんから教わったんだよ」 いのり「え?、まさか、まつりがそんな事を……信じられない……」 私も驚いた。まつり姉さんがそんな事をつかさに教えたなんて。 つかさ「その時のまつりお姉ちゃん、覚えているよ、きっと一生忘れないと思う」  目を閉じて当時を思い出しているようだ。これからの生き方を変えるような事をまつり姉さんはつかさに教えた。そしてつかさが静かで大人しいのは まつり姉さんの影響なのか。私はまつり姉さんの全てを知っているわけじゃなかったのか。そしてつかさの事も……。それで私はつかさに何をした?。 私はつかさの生き方を左右するような事を教えたか。いや、何も教えていない。私はつかさを一番理解していると思っていた……そう、思っていただけなのか。 双子と言う特別な境遇にただ乗っていただけだったのかもしれない。いのり姉さんとつかさは時間を忘れて話しに夢中になっていた。 私の入る余地はなさそうだ。今、私が出て行ったら折角の二人の会話が壊れてしまう。私は倉庫の陰からそのまま家に帰った。 みき「かがみ、遅かったわね、いのり達と会えなかった?」 かがみ「そんな所……」 鍵をお母さんに返すとそのまま自分の部屋に入った。  暫くするといのり姉さん達も帰ってきた。お昼少し前か。そういえばつかさに聞きたい事があったんだった。もう遅いかもしれないけど 話くらいは聞いておかないと、今後のつかさとこなたの仲にも関係するかもしれない。私はつかさの部屋に向かい扉をノックした。 かがみ「入るわよ」 つかさの部屋に入った。そういえば私がつかさの部屋に入るのはあまりなかった。いつもつかさの方から私の部屋に来るからかもしれない。 つかさ「お姉ちゃん、どうしたの?」 遠まわしに言ってもしょうがないか。はっきりした答えを聞きたいからストレートに聞くか。 かがみ「つかさ、朝、こなたと会う約束をしてなかったのか」 つかさ「えっ、どうして……約束はしてないよ、何でそんな事を聞くの?」 つかさの顔が曇った。約束はしてない。それなら他に何かあるのか。 かがみ「お母さんから聞いたわよ、朝起こして欲しいって言ってたじゃない、こなたに会いに行くんじゃなかったの」 つかさ「……うん……そのつもりだった」 煮え切らない返事。つもりってどうゆうことだ。他人行儀だな。つかさとこなたはそんな仲じゃないだろうに。 かがみ「何よ、こなたと何かあったの、話なさいよ」 つかさは口をつぐんだ。そして目が潤んできた。これは普通じゃない。 かがみ「どうしたの、黙ってちゃ分らないわよ、まさか喧嘩でもしたんじゃないでしょうね」 つかさはとうとう大粒の涙を流しだした。当てずっぽうに言った事が図星になってしまったようだ。つかさとこなたが喧嘩だって。想像もつかない。 あの二人が喧嘩なんて。 かがみ「泣いてもしょうがないでしょう、してしまった事はどうにもならないわよ」 覚悟を決めたのか、諦めたのかやっと話し始めた。 つかさ「この前、こなちゃんの家に遊びにいったよね」 かがみ「先週の日曜日ね、私も行ったわね」 つかさ「その時……こなちゃんの大事にしていた人形の首を折っちゃった」 かがみ「人形ってフィギアの事ね、折ったって、つかさあの時そんなの言ってなかったじゃない、まさか黙っていたんじゃないでしょうね」 つかさは頷いた。 かがみ「それでバレたって?」 つかさは頷いた。 つかさ「こなちゃん、怒ってた……何度も謝ってけど許してくれなかった……それでね、私が『人が通る所に置くからだよ』って言ったら      余計怒っちゃって、それから口をきいてくれなくなっちゃった」    最悪のパターンだ。 かがみ「それはつかさが悪い、折ってしまったその時に謝ればそれで終わったわよ、黙ってしまったら……」 これ以上言ってもしょうがない。それにつかさの涙はそれを充分に後悔している。問題はその気持ちをどうやってこなたに伝えるか。 つかさ「昨日、ゆきちゃんと壊した人形を探しに秋葉原に……それで見つけたんだ、同じ人形」 つかさの机の上に箱詰めされたフィギアが置いてあった。みゆきがそんな事をしてくれたのか。同じクラスだからつかさとこなたの様子がおかしいのはすぐ分かる。 かがみ「それを私にこなたの家に行くつもりだったのか」 つかさは頷いた。 かがみ「フィギアとかは趣味の世界、同じ物を弁償してもそれで解決しないわよ」 つかさ「それは……ゆきちゃんも同じこと言ってた」 かがみ「まだお昼、つかさ、今すぐこなたの家に行って来なさい、それで謝ればいい、後のことはこなたが決める」 つかさ「でも、話を聞いてくれなかったら……」 かがみ「その時は私が殴ってでも連れてきてつかさの前に立たすから」 つかさ「お姉ちゃん、私、初めてこなちゃんと喧嘩した……もうダメかも」 つかさは動こうとしなかった。 かがみ「たった一回の喧嘩で友達が終わったら私なんてもう何回もこなたと絶交してるわよ」 つかさ「お姉ちゃんは喧嘩したことあるの?」 かがみ「何度もあるわよ」 つかさ「……どうやって仲直りしたの」 そう聞かれて直ぐに答えられなかった。何か特別なことをしたわけじゃない。しばらく考えた。 かがみ「何でかな、気が付くと普段どおりに戻ってる」 つかさ「……すごいね」 かがみ「喧嘩したことを忘れるからかもね……忘れちゃいなさい、それで楽しかった事だけを思い出せばいいのよ、それでもダメならどうしようもないわね、      そこまで縁だったことよ」 つかさは黙っていた。 つかさ「……私、こなちゃんの所に行ってくる、お姉ちゃん、ありがとう」 かがみ「お礼は仲直りしてからよ」 つかさは机のフィギアをバックの中にいれて、飛び出すように家を出て行った。  つかさの部屋を出た私はそのまま台所に向かった。あとはもう祈るしかない。 みき「さっきつかさが出て行ったけど、もうすぐお昼なのに」 かがみ「つかさはこなたの所に行ったわ、お昼は家では食べないって」 みき「そう、また急に……」 お母さんはそのまま食事の支度をした。 まつり「あー、お仲空いた、お昼はまだ?」 まつり姉さんが台所に来た、私と目が合った。私も今朝のもやもやを消さなければならない。 かがみ「まつり姉さん、今朝は私も頑固になりすぎた、ごめん……」 まつり「ん……何の話、何が頑固なの?」 かがみ「……今朝、喧嘩したじゃない、巫女の手伝いの話よ」 まつり「あ、ああ、何だそんな事もう忘れたよ、もう終わったこと、気にしなくていいよ」 笑顔で私に話しかけた。私も笑顔で返す。私とまつり姉さんの喧嘩は終わってしまった。その時気が付いた。私もまつり姉さんから教えてもらっていた事を。 みき「お昼にしましょう」 皆が席に着いた。食事の前に私はつかさの為に祈ってあげた。 まつり「食事の前に祈りなんかしちゃって、普段しないくせに」 かがみ「いいじゃない、たまにはそんな気分になる時だってあるわよ」 まつり「……何を祈ってたの、当ててあげようか、『私にも彼氏ができますように』 でしょ?」 かがみ「そんなんじゃないわよ」 いのり「つかさがこなたちゃんと仲直りができるように、でしょ?」 かがみ「なんで、知ってたの?」 いのり「神社の倉庫の前で話してくれた、こなたちゃんの事ならかがみに聞きなさいって振っちゃったけどね」 まつり「それで正解、いのり姉さんが出ると余計ややこしくなるんだから」 いのり「何、その言い方、引っかかるな」 みき「いいから早くお昼を食べなさい」  なんの変わりない普段の光景。しかし今ほどまつり姉さんを『姉』として見たことはない。私達双子はこの姉にいつのまにか影響され、 教えられてきた。雑談をしたり。遊んだり。時には喧嘩もしたりした。たった数年先に生まれてきただけなのに……。 きっとこれからも私達は教えられるだろう。良いことも、悪いことも。  夕方、笑顔で帰ってきたつかさの姿があった。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - アニメ本編においてもまつり姉さんはいい加減なようで実はいいお姉さんというキャラクターが描かれていますが &br()この作者さんはそれを全面に引き出していい感じですねwww &br()「喧嘩する程仲が良い」という言葉はよく耳にしますがこれほど身にしみた瞬間はありません &br()最後にちゃんとこなと仲直り出来てよかったねつかさwww -- 名無しさん (2010-08-01 16:19:33)
まつり「かがみ今日の巫女の手伝い代わってもらえないかな」 日曜日の早朝、まつり姉さんが突然私に頼み込んできた。今日は特に用事があるわけもない。しかし『はいそうですか』と言うほど私は素直じゃない。 かがみ「この前は私がやったわよ、なんで今日の今日でそんな事を」 まつり「大学のレポートが遅れちゃってね、頼む、この通り」 両手を合わせて拝むような姿だった。どうやら嘘を言っているようではないみたい。代わってもいいと思ってきたが顔は拒否の表情をした。 いつもの事ながら勝手すぎる。 かがみ「レポートなら手伝いが終わってからでも出来るでしょうに」 まつり「それが出来るようなら頼まない、そうだ、今度美味しいスイーツ奢ってあげる」 かがみ「……お生憎様、私は今ダイエット中、要らない」  話はどんどん喧嘩寸前までエスカレートしていった。 いのり「まつり、時間だよ、支度しなさい」 怒る声が響いた。さすがのまつり姉さんも諦めたのか自分の部屋に向かった。 つかさ「まつりお姉ちゃん、私が代わってもいいよ」 つかさが私達のやり取りを見ていたようだった。 まつり「つかさ、さすが話が分かるね、かがみと双子とは思えないよ」 かがみ「双子で悪かったわね」 まつり「それじゃつかさ頼むよ」 私の言う事を無視し、そのまま自分の部屋に行ってしまった。私はつかさを見てため息をついた。 かがみ「つかさ、なんで代わったのよ、そんな事したら今後、いいように使われるだけ」 つかさは私の忠告に笑顔で答えた。 つかさ「だって、大学のレポート大変そうだったから」 かがみ「大変ってね、普段からやってればこんな事になんかならない、そうゆうのをお人好しって言うのよ」 つかさ「そうだよね、普段からやってればそんな事にならない、分かるよ……でも……もう行かなきゃ」 何かを言いかけたが、私を振り切るようにいのり姉さんの所に行ってしまった。  まつり姉さん、つかさとも中途半端な会話になってしまった。朝からもやもやした感じだった。 そのまま私は台所に向かった。 かがみ「おはよう、お母さん」 みき「おはよう、朝食はそこにあるから……あら、つかさ、朝食食べてないわね、どうしたのかしら」 かがみ「つかさはさっきいのり姉さんと巫女の仕事に出かけたわよ」 みき「今日はまつりじゃなかったの」 かがみ「そうよ、まつり姉さんの番だった、だけど私に代わってくれって言うもんだから、ちょっと言い合ってね」 みき「それでつかさが犠牲になった」 かがみ「お母さん、人聞きの悪いことを、元はまつり姉さんが……」 みき「はいはい、また始まった、いつからまつりとかがみはそんなになったのか……」 お母さんは呆れるように会話を打ち切った。何度も同じ事をするなと言わんとばかりだ。会話が途切れたのは三回目、私ももやもやを通り越してイライラと なってきた。折角の日曜日だと言うのに。私は朝食を無言で食べた。 みき「そういえば、つかさ……今日はお友達とどこかに行く約束してたみたいね……早く起こしてって言うから起こしたのに、家の仕事して大丈夫かしら」 お母さんが思い出したように呟いた。つかさが休日なのにこんなに早く起きてきておかしいと思った。友達とどこかに行く約束だって?。今初めて知った。 誰とそんな約束をしたんだ。私の知る限りこなたとみゆきくらいしか思い浮かばない。それにその二人なら私も誘われてもいいはず。 かがみ「友達って誰だか分かる?」 みき「よく家に来る子だって言ったわね、多分こなたちゃんじゃないかしら」 間違いないこなただ。私に内緒で何をするつもりだったのか。まあ、それは詮索してもしょうがない。それよりもつかさはこなたとの約束を反故にするつもりなのか。 いくらこなたとつかさの仲でもそれは許されることじゃない。しかもまつり姉さんのどうでもいい理由の為に。それを知ったらいくらこなたでも怒るだろう。 まったく、つかさは何故言わなかったんだ。それを言っていれば私が代わりになったのに。 みき「いのり、倉庫の鍵を持って行くの忘れてるわ、これだと掃除とかできないわね」 かがみ「それじゃ私が持っていくわ」 みき「それじゃ頼むわね」  結局神社に行くことになったか。つかさが気になったから。こんなことなら最初からまつり姉さんの代わりを受けていればよかった。 後味が悪すぎる。そんな後悔をしながら私は神社に向かった。  神社の境内にある倉庫に向かった。しかし倉庫は既に鍵が開いていた。きっといのり姉さんが合鍵を持っていたのだろう。 周りをみるとゴミなどはなく綺麗になっていた。もう仕事は終わってしまったようだ。私も用無しかな。家に戻ろうとした時だった。 いのり姉さんとつかさが倉庫に向かってきた。二人は私に気付いていない。このまま帰るのも味気ないので二人を驚かすか。 私はそっと倉庫の陰に隠れた。二人は倉庫に着いた。掃除道具を片付けている。さてとそろそろいいかな。私は飛び出そうとした。 いのり「つかさ、なぜまつりの代わりなんかしたの」 私の動きが止まった。つかさの返事が聞きたかった。 つかさ「まつりお姉ちゃんとお姉ちゃんが行く行かないで言い合っていたから……」 いのり「またあの二人は……まったく何時からあんなに仲が悪くなったのか」 呆れたように言うい姿はお母さんと同じだ。 つかさ「小さい頃はみんな仲良しだったよね」 いのり「でもつかさはかがみと仲がいいいじゃない、喧嘩してるところなんか見たこと無い」 つかさ「そうだね、双子だから……かな、お姉ちゃんが他人だったら友達にもなれそうにないけどね、性格も違うし……私なんか……相手にされそうにないよ」 私とつかさが他人だったら。クラスが同じでも近所同士だったとしても会話を交わすこともないかもしれない。 いのり「それはどうかしらね、私は二人は他人でも何かしら知り合っていると思う」 つかさ「そうかな……そうならいいね」 いのり「さてと、片付いた事だし、少し休んでから帰るか、つかさとこうして話すのも久しぶりだしね……そういえばつかさは巫女の手伝いを私達姉妹の中で      一番やってるわね、もしかして巫女の仕事が好きなの?」 つかさ「別に好きとか嫌いとかじゃないよ……どんな御守りがいいかなって悩んでいる人に助言したりするのは結構面白いよ、それに……」 いのり「それに?」 つかさは顔を上げた。私といのり姉さんはつかさの目線を追った。そこには神社にお参りをしている人がいた。 つかさ「お参りをしている人を見て思うの、この人は何を祈っているのかなって、いろいろ想像していると楽しくなるんだよ」 いのり「……つかさはロマンティストだね、まつりやかがみにも少しは見習ってもらいたいものだ」 つかさ「いのりお姉ちゃん、これは小さい時、まつりお姉ちゃんから教わったんだよ」 いのり「え?、まさか、まつりがそんな事を……信じられない……」 私も驚いた。まつり姉さんがそんな事をつかさに教えたなんて。 つかさ「その時のまつりお姉ちゃん、覚えているよ、きっと一生忘れないと思う」  目を閉じて当時を思い出しているようだ。これからの生き方を変えるような事をまつり姉さんはつかさに教えた。そしてつかさが静かで大人しいのは まつり姉さんの影響なのか。私はまつり姉さんの全てを知っているわけじゃなかったのか。そしてつかさの事も……。それで私はつかさに何をした?。 私はつかさの生き方を左右するような事を教えたか。いや、何も教えていない。私はつかさを一番理解していると思っていた……そう、思っていただけなのか。 双子と言う特別な境遇にただ乗っていただけだったのかもしれない。いのり姉さんとつかさは時間を忘れて話しに夢中になっていた。 私の入る余地はなさそうだ。今、私が出て行ったら折角の二人の会話が壊れてしまう。私は倉庫の陰からそのまま家に帰った。 みき「かがみ、遅かったわね、いのり達と会えなかった?」 かがみ「そんな所……」 鍵をお母さんに返すとそのまま自分の部屋に入った。  暫くするといのり姉さん達も帰ってきた。お昼少し前か。そういえばつかさに聞きたい事があったんだった。もう遅いかもしれないけど 話くらいは聞いておかないと、今後のつかさとこなたの仲にも関係するかもしれない。私はつかさの部屋に向かい扉をノックした。 かがみ「入るわよ」 つかさの部屋に入った。そういえば私がつかさの部屋に入るのはあまりなかった。いつもつかさの方から私の部屋に来るからかもしれない。 つかさ「お姉ちゃん、どうしたの?」 遠まわしに言ってもしょうがないか。はっきりした答えを聞きたいからストレートに聞くか。 かがみ「つかさ、朝、こなたと会う約束をしてなかったのか」 つかさ「えっ、どうして……約束はしてないよ、何でそんな事を聞くの?」 つかさの顔が曇った。約束はしてない。それなら他に何かあるのか。 かがみ「お母さんから聞いたわよ、朝起こして欲しいって言ってたじゃない、こなたに会いに行くんじゃなかったの」 つかさ「……うん……そのつもりだった」 煮え切らない返事。つもりってどうゆうことだ。他人行儀だな。つかさとこなたはそんな仲じゃないだろうに。 かがみ「何よ、こなたと何かあったの、話なさいよ」 つかさは口をつぐんだ。そして目が潤んできた。これは普通じゃない。 かがみ「どうしたの、黙ってちゃ分らないわよ、まさか喧嘩でもしたんじゃないでしょうね」 つかさはとうとう大粒の涙を流しだした。当てずっぽうに言った事が図星になってしまったようだ。つかさとこなたが喧嘩だって。想像もつかない。 あの二人が喧嘩なんて。 かがみ「泣いてもしょうがないでしょう、してしまった事はどうにもならないわよ」 覚悟を決めたのか、諦めたのかやっと話し始めた。 つかさ「この前、こなちゃんの家に遊びにいったよね」 かがみ「先週の日曜日ね、私も行ったわね」 つかさ「その時……こなちゃんの大事にしていた人形の首を折っちゃった」 かがみ「人形ってフィギアの事ね、折ったって、つかさあの時そんなの言ってなかったじゃない、まさか黙っていたんじゃないでしょうね」 つかさは頷いた。 かがみ「それでバレたって?」 つかさは頷いた。 つかさ「こなちゃん、怒ってた……何度も謝ってけど許してくれなかった……それでね、私が『人が通る所に置くからだよ』って言ったら      余計怒っちゃって、それから口をきいてくれなくなっちゃった」    最悪のパターンだ。 かがみ「それはつかさが悪い、折ってしまったその時に謝ればそれで終わったわよ、黙ってしまったら……」 これ以上言ってもしょうがない。それにつかさの涙はそれを充分に後悔している。問題はその気持ちをどうやってこなたに伝えるか。 つかさ「昨日、ゆきちゃんと壊した人形を探しに秋葉原に……それで見つけたんだ、同じ人形」 つかさの机の上に箱詰めされたフィギアが置いてあった。みゆきがそんな事をしてくれたのか。同じクラスだからつかさとこなたの様子がおかしいのはすぐ分かる。 かがみ「それを私にこなたの家に行くつもりだったのか」 つかさは頷いた。 かがみ「フィギアとかは趣味の世界、同じ物を弁償してもそれで解決しないわよ」 つかさ「それは……ゆきちゃんも同じこと言ってた」 かがみ「まだお昼、つかさ、今すぐこなたの家に行って来なさい、それで謝ればいい、後のことはこなたが決める」 つかさ「でも、話を聞いてくれなかったら……」 かがみ「その時は私が殴ってでも連れてきてつかさの前に立たすから」 つかさ「お姉ちゃん、私、初めてこなちゃんと喧嘩した……もうダメかも」 つかさは動こうとしなかった。 かがみ「たった一回の喧嘩で友達が終わったら私なんてもう何回もこなたと絶交してるわよ」 つかさ「お姉ちゃんは喧嘩したことあるの?」 かがみ「何度もあるわよ」 つかさ「……どうやって仲直りしたの」 そう聞かれて直ぐに答えられなかった。何か特別なことをしたわけじゃない。しばらく考えた。 かがみ「何でかな、気が付くと普段どおりに戻ってる」 つかさ「……すごいね」 かがみ「喧嘩したことを忘れるからかもね……忘れちゃいなさい、それで楽しかった事だけを思い出せばいいのよ、それでもダメならどうしようもないわね、      そこまで縁だったことよ」 つかさは黙っていた。 つかさ「……私、こなちゃんの所に行ってくる、お姉ちゃん、ありがとう」 かがみ「お礼は仲直りしてからよ」 つかさは机のフィギアをバックの中にいれて、飛び出すように家を出て行った。  つかさの部屋を出た私はそのまま台所に向かった。あとはもう祈るしかない。 みき「さっきつかさが出て行ったけど、もうすぐお昼なのに」 かがみ「つかさはこなたの所に行ったわ、お昼は家では食べないって」 みき「そう、また急に……」 お母さんはそのまま食事の支度をした。 まつり「あー、お仲空いた、お昼はまだ?」 まつり姉さんが台所に来た、私と目が合った。私も今朝のもやもやを消さなければならない。 かがみ「まつり姉さん、今朝は私も頑固になりすぎた、ごめん……」 まつり「ん……何の話、何が頑固なの?」 かがみ「……今朝、喧嘩したじゃない、巫女の手伝いの話よ」 まつり「あ、ああ、何だそんな事もう忘れたよ、もう終わったこと、気にしなくていいよ」 笑顔で私に話しかけた。私も笑顔で返す。私とまつり姉さんの喧嘩は終わってしまった。その時気が付いた。私もまつり姉さんから教えてもらっていた事を。 みき「お昼にしましょう」 皆が席に着いた。食事の前に私はつかさの為に祈ってあげた。 まつり「食事の前に祈りなんかしちゃって、普段しないくせに」 かがみ「いいじゃない、たまにはそんな気分になる時だってあるわよ」 まつり「……何を祈ってたの、当ててあげようか、『私にも彼氏ができますように』 でしょ?」 かがみ「そんなんじゃないわよ」 いのり「つかさがこなたちゃんと仲直りができるように、でしょ?」 かがみ「なんで、知ってたの?」 いのり「神社の倉庫の前で話してくれた、こなたちゃんの事ならかがみに聞きなさいって振っちゃったけどね」 まつり「それで正解、いのり姉さんが出ると余計ややこしくなるんだから」 いのり「何、その言い方、引っかかるな」 みき「いいから早くお昼を食べなさい」  なんの変わりない普段の光景。しかし今ほどまつり姉さんを『姉』として見たことはない。私達双子はこの姉にいつのまにか影響され、 教えられてきた。雑談をしたり。遊んだり。時には喧嘩もしたりした。たった数年先に生まれてきただけなのに……。 きっとこれからも私達は教えられるだろう。良いことも、悪いことも。  夕方、笑顔で帰ってきたつかさの姿があった。 終 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3) - サブキャラ好きとしてはいい内容でした -- じお (2010-08-07 23:35:49) - アニメ本編においてもまつり姉さんはいい加減なようで実はいいお姉さんというキャラクターが描かれていますが &br()この作者さんはそれを全面に引き出していい感じですねwww &br()「喧嘩する程仲が良い」という言葉はよく耳にしますがこれほど身にしみた瞬間はありません &br()最後にちゃんとこなと仲直り出来てよかったねつかさwww -- 名無しさん (2010-08-01 16:19:33)

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