ID:h3fqyXs0氏:月の下巡り合った意外な二人

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「お!?」 「あら」  階段を下りた先にいたのは見たことのある方でした。茶色いショートカットの彼女は確かかがみさんと同じクラスの… 「日下部さん…ですよね?」 「おお、そうだけど…堅っ苦しいからみさおでいいぜ!」  やっぱり日下部さん…いや、みさおさんでした。土埃ですっかり汚れてしまっている体操着姿。どうやら部活動の後みたいですね。 「みさおさんは部活中なのですか?」 「いや、もう終わって、これから着替えるところだ。…あ!どうせなら駅まで一緒にいかねえか?柊もあやのも帰っちまってさびしいからよぉ」  首に掛けてあったスポーツタオルで汗をぬぐいながらみさおさんはそう言いました。断る理由なんてないですし、むしろ私もこの暗い中一人で歩くのは少し心細いな、と思っていたところでした。返事はもちろん… 「ええ、お願いします。みさおさん」  私がそう言ってぺこりと頭を下げるとみさおさんはにっこり笑ってわかった、と頷いてくれました。そうして部室に向かって走ろうかという体勢になりましたが、その場でもう一度振り返りました。今度は恥ずかしそうに顔を赤く染めてしまっています。どうしたのでしょうか? 「あの、どうかしましたか?」 「い、いや…いつも柊と話してるのは知ってるんだけどな…その…名前をすっかり忘れちまっていて…」  あらあら、そういうことでしたか。と言っても私の方も下の名前まで思い出すことができなかったので、人のことを言える立場ではないのですが。とりあえず私は彼女にくすりと笑い掛けました。 「それはそれは…確かにきちんと自己紹介していませんでしたね」 「うぅ…申し訳ねぇ…」 「そんなことないですよ。では…私の名前は高良みゆきです。よろしくお願いしますね」 「おう、日下部みさおだ!よろしくな!」  私が自己紹介をすると、みさおさんは赤く染まった頬を掻きながらそう言ってくれました。  夏とはいえ、この時間にもなるともう真っ暗でした。暑さも何となく和らいでいて、夜風が気持ちよく通り抜けるので夏のムシムシとした感じもありません。黒く透き通った夜空の中心には白い月が一つ、静かに浮かんでいます。こんな中を帰るのはとても久しぶりです。 「しかし高良はどうして今日はこんなに帰りが遅いんだ?いつもはちびっことか柊とかと一緒に帰ってるんだろ?」  隣でペットボトルのスポーツドリンクを飲み干しながら、ふと思ったのかそう聞いてきました。実はそこについてはあまり触れて欲しくなかったのですが……。私は自分の顔が熱を帯びているのを感じて、思わず手で覆い隠してしまいました。 「実は今日図書室で調べ物をしていたのですが…その……つい居眠りしてしまって…」 「あっはははは!それががっつり本睡眠になっちゃったっていうわけか!」  そうなんです。完全に下校するタイミングを寝過してしまっていたのです。昼間はとっても暑いんですが、高校でも図書室だけはクーラーが完備されており、とっても涼しいんです。その心地よさについうとうとしていたら…あっという間に…。こういう経験って誰もが皆絶対しますよね? 「昨日も調べ物に没頭してまして…気付いたら12時に」 「12時って…私はいつもその時間に寝てるぞ?」  お恥ずかしい話だったのですが、みさおさんは笑って聞いてくれました。そんな他愛のない会話を続けながら私達は駅までの道のりをゆっくりと歩いて行きます。真夏の月もなんだか妙に明るくて、その下で私達は何度も何度も笑いあいました。 「いやーしかし、高良とこうやって二人で話すのは初めてかもな!いつもはあやのと話してるし」 「確かにそうですね。みさおさんもかがみさんや泉さんとお話しされてますし」 「まさか高良がこんなに天然が入ってるとは思わなかったぜ」 「よく言われます」  みさおさんとの会話はとてもユニークで、なんだかこなたさんと話している時と同じような気分でした。……そういえば今日の月、なんだかみさおさんや、泉さんのように見えます。明るいところ、みんなを元気にしてくれるところなんか…ふふ、似た者同士なのでしょうか? 「ホント、もっと早く知り合っておけばなぁー」 「え?」  その月を見上げながら、みさおさんが急につぶやきました。それがなんだか妙に耳についたので私は聞き返します。 「だって私達、すぐに卒業だろ?せっかくこうやって仲良くなったのに、一緒にいられるのは後半年なんだぜ?」  言われてみればそうです。今は7月。私達は来年には高校を卒業してしまうわけですから、半年後には卒業なんですね。文化祭があってそれが終わってしまったらおそらく学校行事も全て終わります。その後はみんな受験勉強で忙しくなり、きっと一緒に遊んだり話したりする時間なんてほとんどなくなってしまうでしょう。なんだか…寂しくなってしまいますね。 「卒業したら…みんなバラバラ…ですか」 「あ、いや、今から気にすることでもないような気がするけどな」  気を遣ってくれたのか、みさおさんはまたいつも通りの口調に戻って言いました。けれども私はどうにもそれが心残りになってしまい、返事をすることができませんでした。  私はなんとなく、夜空を見上げました。私の瞳の中心には白い満月が移ります。どうしてでしょう?さっきはあんなに元気そうに見えた月でしたが今はなんだかとても寂しそうです。周りには誰もいなくて、一人ぼっちで光り続けて。私はみんなと一緒に文系を選びましたが、行くのは理系の大学です。だとしたら私は高校を卒業したらきっと一人ぼっち。なんだかあのお月さまは… 「私みたい…」 「え?」  あ、あんまり寂しかったものだから、どうやら声に出てしまった見たいです。恥ずかしい…。自分を月みたいだなんて言ってるなんて私はなんて人なんでしょう…。 「……確かに高良はお月さんみたいだな」 「え?」  驚いてみさおさんの方を見ましたが、相変わらずの満面な笑みで自信に満ちた表情でした。月明かりに照らされたみさおさんはどういうわけかものすごくかっこよく見えてしまい、私は思わず見とれてしまいます。 「なんだかすげー肌が白くって、ほら、胸も丸っこいし」 「み、みさおさん!」 「もちろんそれだけの意味じゃないぜ?勉強もできてスポーツもできて、なんでも知ってるみたいだし、妙に頼りがいがあるし、だけど優しいし…バカな私とは大違いだぜ」 「そ、そんな…」 「憧れちゃうんだよな、高良に。多分、私だけじゃなくみんなもそう思ってる。私達から見りゃあ高良は月みたいにずーっと高いところにいるんだけど優しくて、そんでもってみんなの事を見守ってくれてる。私はそう思う」  ま、ちょっと天然なところがキズだけどな。と最後に冗談っぽくつけ足して、みさおさんはまた笑いました。ですが私はとても恥ずかしくて、顔を上げることができませんでした。私が、お月さまみたい?誰かにそんな風に言われるのは初めてでした。それをさらっと言ってくれたみさおさんにうまく顔向けをすることができず…おそらく今の私の顔は真っ赤だと思います。  でも、それなら…。私は顔をあげ、みさおさんを見つめます。彼女の瞳に白い月が浮かびました。 「で、でもそれなら、私はみさおさんの方がお月さまに見えますよ?」 「はい!?」  そう、私はみさおさんこそ、お月さまのように見えます。なぜなら… 「だってみさおさん、そうやって私を元気づけてくれて、とっても明るくて…。ですが常にみんなに気を配ってらっしゃって…。みさおさんこそ周りがどんなに暗くても優しく、明るく照らしてくれる月のようなお方だと思います」 「よ、よせやい!」  みさおさんは顔を真っ赤にしてしまいました。そうして暑いなぁーと高い声で言いながらペットボトルにほとんど残っていないスポーツドリンクを飲み干します。でも私は本当にそう思うんですよ?そしてそんなみさおさんがちょっぴり羨ましいなぁーとも…。 「あ、あんだよ!もうないのかよ!」 「うふふふ…」  そして思います。みさおさんのような明るい方がいれば、私達はきっとずっと一緒にいることができるでしょう。例えどんなに暗い道のりの中で皆がはぐれてしまっても、その月の光の明るさで照らしだしてくれるでしょう。みさおさん…そして同じような泉さんも、きっとその役割を果たしてくれる…… 「お、もう駅か。高良は登りだろ?んじゃあな!」 「あ、待って下さい!」  夢うつつのような気分だったからでしょうか、もう駅に着いていたなんて思いませんでした。ですが照れくさそうに走り出したみさおさんを見たら、私はみさおさんを呼びとめずにはいられませんでした。振り返るみさおさんに対してなんと声をかけるかも考えていなかったのに…。 「あ、あの…これからも宜しくお願いしますね?」 「お、おお!よろしくな!」  結局その一言しか言えませんでした。ですが、それが一番言いたかったことだと言った後で気づきました。みさおさんはまた満面の笑みで頷くとすぐに下りのホームに駆けて行きました。  私はもう一度、夜空を見上げました。とっても明るい月がそこにはありました。
「お!?」 「あら」  階段を下りた先にいたのは見たことのある方でした。茶色いショートカットの彼女は確かかがみさんと同じクラスの… 「日下部さん…ですよね?」 「おお、そうだけど…堅っ苦しいからみさおでいいぜ!」  やっぱり日下部さん…いや、みさおさんでした。土埃ですっかり汚れてしまっている体操着姿。どうやら部活動の後みたいですね。 「みさおさんは部活中なのですか?」 「いや、もう終わって、これから着替えるところだ。…あ!どうせなら駅まで一緒にいかねえか?柊もあやのも帰っちまってさびしいからよぉ」  首に掛けてあったスポーツタオルで汗をぬぐいながらみさおさんはそう言いました。断る理由なんてないですし、むしろ私もこの暗い中一人で歩くのは少し心細いな、と思っていたところでした。返事はもちろん… 「ええ、お願いします。みさおさん」  私がそう言ってぺこりと頭を下げるとみさおさんはにっこり笑ってわかった、と頷いてくれました。そうして部室に向かって走ろうかという体勢になりましたが、その場でもう一度振り返りました。今度は恥ずかしそうに顔を赤く染めてしまっています。どうしたのでしょうか? 「あの、どうかしましたか?」 「い、いや…いつも柊と話してるのは知ってるんだけどな…その…名前をすっかり忘れちまっていて…」  あらあら、そういうことでしたか。と言っても私の方も下の名前まで思い出すことができなかったので、人のことを言える立場ではないのですが。とりあえず私は彼女にくすりと笑い掛けました。 「それはそれは…確かにきちんと自己紹介していませんでしたね」 「うぅ…申し訳ねぇ…」 「そんなことないですよ。では…私の名前は高良みゆきです。よろしくお願いしますね」 「おう、日下部みさおだ!よろしくな!」  私が自己紹介をすると、みさおさんは赤く染まった頬を掻きながらそう言ってくれました。  夏とはいえ、この時間にもなるともう真っ暗でした。暑さも何となく和らいでいて、夜風が気持ちよく通り抜けるので夏のムシムシとした感じもありません。黒く透き通った夜空の中心には白い月が一つ、静かに浮かんでいます。こんな中を帰るのはとても久しぶりです。 「しかし高良はどうして今日はこんなに帰りが遅いんだ?いつもはちびっことか柊とかと一緒に帰ってるんだろ?」  隣でペットボトルのスポーツドリンクを飲み干しながら、ふと思ったのかそう聞いてきました。実はそこについてはあまり触れて欲しくなかったのですが……。私は自分の顔が熱を帯びているのを感じて、思わず手で覆い隠してしまいました。 「実は今日図書室で調べ物をしていたのですが…その……つい居眠りしてしまって…」 「あっはははは!それががっつり本睡眠になっちゃったっていうわけか!」  そうなんです。完全に下校するタイミングを寝過してしまっていたのです。昼間はとっても暑いんですが、高校でも図書室だけはクーラーが完備されており、とっても涼しいんです。その心地よさについうとうとしていたら…あっという間に…。こういう経験って誰もが皆絶対しますよね? 「昨日も調べ物に没頭してまして…気付いたら12時に」 「12時って…私はいつもその時間に寝てるぞ?」  お恥ずかしい話だったのですが、みさおさんは笑って聞いてくれました。そんな他愛のない会話を続けながら私達は駅までの道のりをゆっくりと歩いて行きます。真夏の月もなんだか妙に明るくて、その下で私達は何度も何度も笑いあいました。 「いやーしかし、高良とこうやって二人で話すのは初めてかもな!いつもはあやのと話してるし」 「確かにそうですね。みさおさんもかがみさんや泉さんとお話しされてますし」 「まさか高良がこんなに天然が入ってるとは思わなかったぜ」 「よく言われます」  みさおさんとの会話はとてもユニークで、なんだかこなたさんと話している時と同じような気分でした。……そういえば今日の月、なんだかみさおさんや、泉さんのように見えます。明るいところ、みんなを元気にしてくれるところなんか…ふふ、似た者同士なのでしょうか? 「ホント、もっと早く知り合っておけばなぁー」 「え?」  その月を見上げながら、みさおさんが急につぶやきました。それがなんだか妙に耳についたので私は聞き返します。 「だって私達、すぐに卒業だろ?せっかくこうやって仲良くなったのに、一緒にいられるのは後半年なんだぜ?」  言われてみればそうです。今は7月。私達は来年には高校を卒業してしまうわけですから、半年後には卒業なんですね。文化祭があってそれが終わってしまったらおそらく学校行事も全て終わります。その後はみんな受験勉強で忙しくなり、きっと一緒に遊んだり話したりする時間なんてほとんどなくなってしまうでしょう。なんだか…寂しくなってしまいますね。 「卒業したら…みんなバラバラ…ですか」 「あ、いや、今から気にすることでもないような気がするけどな」  気を遣ってくれたのか、みさおさんはまたいつも通りの口調に戻って言いました。けれども私はどうにもそれが心残りになってしまい、返事をすることができませんでした。  私はなんとなく、夜空を見上げました。私の瞳の中心には白い満月が移ります。どうしてでしょう?さっきはあんなに元気そうに見えた月でしたが今はなんだかとても寂しそうです。周りには誰もいなくて、一人ぼっちで光り続けて。私はみんなと一緒に文系を選びましたが、行くのは理系の大学です。だとしたら私は高校を卒業したらきっと一人ぼっち。なんだかあのお月さまは… 「私みたい…」 「え?」  あ、あんまり寂しかったものだから、どうやら声に出てしまった見たいです。恥ずかしい…。自分を月みたいだなんて言ってるなんて私はなんて人なんでしょう…。 「……確かに高良はお月さんみたいだな」 「え?」  驚いてみさおさんの方を見ましたが、相変わらずの満面な笑みで自信に満ちた表情でした。月明かりに照らされたみさおさんはどういうわけかものすごくかっこよく見えてしまい、私は思わず見とれてしまいます。 「なんだかすげー肌が白くって、ほら、胸も丸っこいし」 「み、みさおさん!」 「もちろんそれだけの意味じゃないぜ?勉強もできてスポーツもできて、なんでも知ってるみたいだし、妙に頼りがいがあるし、だけど優しいし…バカな私とは大違いだぜ」 「そ、そんな…」 「憧れちゃうんだよな、高良に。多分、私だけじゃなくみんなもそう思ってる。私達から見りゃあ高良は月みたいにずーっと高いところにいるんだけど優しくて、そんでもってみんなの事を見守ってくれてる。私はそう思う」  ま、ちょっと天然なところがキズだけどな。と最後に冗談っぽくつけ足して、みさおさんはまた笑いました。ですが私はとても恥ずかしくて、顔を上げることができませんでした。私が、お月さまみたい?誰かにそんな風に言われるのは初めてでした。それをさらっと言ってくれたみさおさんにうまく顔向けをすることができず…おそらく今の私の顔は真っ赤だと思います。  でも、それなら…。私は顔をあげ、みさおさんを見つめます。彼女の瞳に白い月が浮かびました。 「で、でもそれなら、私はみさおさんの方がお月さまに見えますよ?」 「はい!?」  そう、私はみさおさんこそ、お月さまのように見えます。なぜなら… 「だってみさおさん、そうやって私を元気づけてくれて、とっても明るくて…。ですが常にみんなに気を配ってらっしゃって…。みさおさんこそ周りがどんなに暗くても優しく、明るく照らしてくれる月のようなお方だと思います」 「よ、よせやい!」  みさおさんは顔を真っ赤にしてしまいました。そうして暑いなぁーと高い声で言いながらペットボトルにほとんど残っていないスポーツドリンクを飲み干します。でも私は本当にそう思うんですよ?そしてそんなみさおさんがちょっぴり羨ましいなぁーとも…。 「あ、あんだよ!もうないのかよ!」 「うふふふ…」  そして思います。みさおさんのような明るい方がいれば、私達はきっとずっと一緒にいることができるでしょう。例えどんなに暗い道のりの中で皆がはぐれてしまっても、その月の光の明るさで照らしだしてくれるでしょう。みさおさん…そして同じような泉さんも、きっとその役割を果たしてくれる…… 「お、もう駅か。高良は登りだろ?んじゃあな!」 「あ、待って下さい!」  夢うつつのような気分だったからでしょうか、もう駅に着いていたなんて思いませんでした。ですが照れくさそうに走り出したみさおさんを見たら、私はみさおさんを呼びとめずにはいられませんでした。振り返るみさおさんに対してなんと声をかけるかも考えていなかったのに…。 「あ、あの…これからも宜しくお願いしますね?」 「お、おお!よろしくな!」  結局その一言しか言えませんでした。ですが、それが一番言いたかったことだと言った後で気づきました。みさおさんはまた満面の笑みで頷くとすぐに下りのホームに駆けて行きました。  私はもう一度、夜空を見上げました。とっても明るい月がそこにはありました。 **コメント・感想フォーム #comment(below,size=50,nsize=50,vsize=3)

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