「ID:IeMhu5oo氏:コナタンより愛をこめて」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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桜藤祭。「時をかける男女」シナリオ、そうじろうのプロポーズ失敗の場面。
コナタンがそうじろうではなくかなたのほうへ声をかけに言ったら、というIFネタです
外の空気を深呼吸。落胆の胸のうちをごまかすように。涙が出そうな気持ちをごまかすように。
けっきょく、彼は私にプロポーズの言葉を言い出せなかった。
そう君のことはわかってる。こんなことを言い出せない彼の性格を誰よりも知っている。
だから、言い出せずじまいに終わる結末だって想像の範囲内のはずで。この結末を予想できないはずがなくて。
「だから、落ち込むことなんてないのにね……」
どうしようかな。いますぐ結婚しなくたって、このままいっしょに居続けることにはかわりはない。もうすこしだけ、待っていたっていい。
どうしようかな。いっそ、私のほうからプロポーズの声をかけようか。だとしたら、どんな言葉がいいのだろう。
思考をめぐらせているうちに、自然と私の姿勢はうつむいてゆく。
そんなふうにとぼとぼと路を歩いていると。
「奥さま。お困りのようですね」
そんな茶化すような声が、私の背に投げかけられた。
振り返ったそこには制服姿の女の子。
どこかで出会ったことがあるような、だけれど、以前に出会った心当たりもぜったいにないとも言い切れる、ふしぎな感覚。
戸惑いながら、視線をその子に合わせる。
正面から見つめ合う。そのままのかっこうで、お互い目をそらさない。
にらみ合うわけでもなく、きまずくて動けないわけでもなく、私はただ、微笑む女の子をみつめる。
だれかに似ている。見覚えがある。でも、初対面。
目もと、口もと、鼻のカタチ。たしかに私は、彼女と何度も会っているはずなのに。
どうしても思い出せずに困っていると、彼女は口を開いた。
「プロポーズのじゃまをしたの、私たちです。ごめんなさい」
さっきそう君がプロポーズを口にしかけたそのとき、物音に水を差されたことに思い当たる。あれがなければ、そう君はその言葉を口にしてくれていただろうか。
「じゃまって……、さっきの物音?」
首をかしげる。と、いうことは。
「覗いてました」
女の子は苦笑い。
「……だめよ。他所様の家に勝手に入っちゃ」
私も苦笑いを返す。どうしてか、彼女を怒る気にならなかった。どうしてか、そんな言葉しか思い浮かばなかった。
「そのお詫びとして、奥さまへひとつ助言をと思いまして」
彼女のほうも、強く咎めようとしない私をすんなりと受け入れる。
……だから私も、彼女のことをすんなりと受け入れる。「私はまだ独身ですけれど」と前置きして。
「聞かせていただけますか? 見知らぬ御方」
おとうさ――じゃなくって、旦那さ――でもないのか。最初に彼女はそう、言葉を探した。
「さっきの一件だけで、彼氏を判断するのは早計だと思います」
「ええ、それはそうでしょうけれど……?」
「たしかにあの人はヘタレで変態で、ちょっとヤバイですが」
「……ええ、それもまあ、否定はできませんが」
彼を悪く言う女の子。でもその声に、悪意のいろは混ざっていない。むしろ逆に、彼を良く理解している、親しみの情がそこにはあった。
「そんなオジサンのことを、あなたはどうして好きになったのか、それを忘れないように、いてくれませんか」
女の子は、微笑んでわたしを見る。
「世界中で、いちばん、かなたのことをあいしてる。あのオジサンの一番自信を持ってるトコロ、あなたはそれを理解しているはずです」
だから、落ち込まないでくださいと彼女は続ける。
「おとうさんはまた、すぐにプロポーズを再挑戦するはずですから。その点は安心して、もうちょっと待ってあげてくれませんか」
私は目をつむって胸の内をたしかめる。
そう君と居ると、安心する。そう君のそばが、私の居場所。それを私が疑わないのは―――
「……はい、仰るとおりだと思います。なにも不安になることは、ないんですね」
知らず、私の頬には笑みが浮かんでいた。
「自信を持って、帰ってみることにします」
「よろしくお願いします。ホントに」
そう言って彼女はぺこりと頭を下げた。その動作はおどけているようで、でもずいぶんと切実な気持ちが込められているようでもあって。
別れ際、私は彼女に問いかけた。お名前を伺ってもよろしいでしょうか。
彼女はいいづらそうに、間を置いて。
「私の名前はコナタン。人類補完委員会直属、マルドゥック機関に所属している者です」
そう、言った。そんなことしか、言ってくれなかった。だけれど、それ以上問い詰めようとも思わなかった。
「最後にもう一つ、忠告です。子供が生まれたら好きなおもちゃを惜しみなく与えるよーに」
最後に、そんないたずらっぽい微笑を残して。彼女は去ってゆく。
そうして、部屋の玄関をくぐる。そう君の表情には決意のいろ。
女の子の言うとおりの再挑戦。私が思うとおりの彼の愛情。
うれしくて、笑顔になる。うれしくて、涙があふれる。
どこかで彼女が、私たちをみつめて微笑んでいるような気がする。
彼女を思い返したところで、気づいた。そう君の瞳に映る、泣き顔の私を見て、気づいた。―――ああ、そうか。
さっき、そう君のことをおとうさんと呼んだ女の子。将来、きっとそう君のことをおとうさんと呼ぶ女の子。
彼女は、私にそっくりだったんだ。毎日鏡の前で出会う私の顔に、似ていたんだ―――
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桜藤祭。「時をかける男女」シナリオ、そうじろうのプロポーズ失敗の場面。
コナタンがそうじろうではなくかなたのほうへ声をかけに言ったら、というIFネタです
外の空気を深呼吸。落胆の胸のうちをごまかすように。涙が出そうな気持ちをごまかすように。
けっきょく、彼は私にプロポーズの言葉を言い出せなかった。
そう君のことはわかってる。こんなことを言い出せない彼の性格を誰よりも知っている。
だから、言い出せずじまいに終わる結末だって想像の範囲内のはずで。この結末を予想できないはずがなくて。
「だから、落ち込むことなんてないのにね……」
どうしようかな。いますぐ結婚しなくたって、このままいっしょに居続けることにはかわりはない。もうすこしだけ、待っていたっていい。
どうしようかな。いっそ、私のほうからプロポーズの声をかけようか。だとしたら、どんな言葉がいいのだろう。
思考をめぐらせているうちに、自然と私の姿勢はうつむいてゆく。
そんなふうにとぼとぼと路を歩いていると。
「奥さま。お困りのようですね」
そんな茶化すような声が、私の背に投げかけられた。
振り返ったそこには制服姿の女の子。
どこかで出会ったことがあるような、だけれど、以前に出会った心当たりもぜったいにないとも言い切れる、ふしぎな感覚。
戸惑いながら、視線をその子に合わせる。
正面から見つめ合う。そのままのかっこうで、お互い目をそらさない。
にらみ合うわけでもなく、きまずくて動けないわけでもなく、私はただ、微笑む女の子をみつめる。
だれかに似ている。見覚えがある。でも、初対面。
目もと、口もと、鼻のカタチ。たしかに私は、彼女と何度も会っているはずなのに。
どうしても思い出せずに困っていると、彼女は口を開いた。
「プロポーズのじゃまをしたの、私たちです。ごめんなさい」
さっきそう君がプロポーズを口にしかけたそのとき、物音に水を差されたことに思い当たる。あれがなければ、そう君はその言葉を口にしてくれていただろうか。
「じゃまって……、さっきの物音?」
首をかしげる。と、いうことは。
「覗いてました」
女の子は苦笑い。
「……だめよ。他所様の家に勝手に入っちゃ」
私も苦笑いを返す。どうしてか、彼女を怒る気にならなかった。どうしてか、そんな言葉しか思い浮かばなかった。
「そのお詫びとして、奥さまへひとつ助言をと思いまして」
彼女のほうも、強く咎めようとしない私をすんなりと受け入れる。
……だから私も、彼女のことをすんなりと受け入れる。「私はまだ独身ですけれど」と前置きして。
「聞かせていただけますか? 見知らぬ御方」
おとうさ――じゃなくって、旦那さ――でもないのか。最初に彼女はそう、言葉を探した。
「さっきの一件だけで、彼氏を判断するのは早計だと思います」
「ええ、それはそうでしょうけれど……?」
「たしかにあの人はヘタレで変態で、ちょっとヤバイですが」
「……ええ、それもまあ、否定はできませんが」
彼を悪く言う女の子。でもその声に、悪意のいろは混ざっていない。むしろ逆に、彼を良く理解している、親しみの情がそこにはあった。
「そんなオジサンのことを、あなたはどうして好きになったのか、それを忘れないように、いてくれませんか」
女の子は、微笑んでわたしを見る。
「世界中で、いちばん、かなたのことをあいしてる。あのオジサンの一番自信を持ってるトコロ、あなたはそれを理解しているはずです」
だから、落ち込まないでくださいと彼女は続ける。
「おとうさんはまた、すぐにプロポーズを再挑戦するはずですから。その点は安心して、もうちょっと待ってあげてくれませんか」
私は目をつむって胸の内をたしかめる。
そう君と居ると、安心する。そう君のそばが、私の居場所。それを私が疑わないのは―――
「……はい、仰るとおりだと思います。なにも不安になることは、ないんですね」
知らず、私の頬には笑みが浮かんでいた。
「自信を持って、帰ってみることにします」
「よろしくお願いします。ホントに」
そう言って彼女はぺこりと頭を下げた。その動作はおどけているようで、でもずいぶんと切実な気持ちが込められているようでもあって。
別れ際、私は彼女に問いかけた。お名前を伺ってもよろしいでしょうか。
彼女はいいづらそうに、間を置いて。
「私の名前はコナタン。人類補完委員会直属、マルドゥック機関に所属している者です」
そう、言った。そんなことしか、言ってくれなかった。だけれど、それ以上問い詰めようとも思わなかった。
「最後にもう一つ、忠告です。子供が生まれたら好きなおもちゃを惜しみなく与えるよーに」
最後に、そんないたずらっぽい微笑を残して。彼女は去ってゆく。
そうして、部屋の玄関をくぐる。そう君の表情には決意のいろ。
女の子の言うとおりの再挑戦。私が思うとおりの彼の愛情。
うれしくて、笑顔になる。うれしくて、涙があふれる。
どこかで彼女が、私たちをみつめて微笑んでいるような気がする。
彼女を思い返したところで、気づいた。そう君の瞳に映る、泣き顔の私を見て、気づいた。―――ああ、そうか。
さっき、そう君のことをおとうさんと呼んだ女の子。将来、きっとそう君のことをおとうさんと呼ぶ女の子。
彼女は、私にそっくりだったんだ。毎日鏡の前で出会う私の顔に、似ていたんだ―――
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- 辻褄が合いますねwwww &br()しかし、対応違い過ぎワロタwwww -- 名無しさん (2010-07-15 21:54:53)