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 季節は夏。そして本日は七夕ということもあり、生徒会による七夕イベントが決行されていた。 イベントといっても、そんなに大それた事ではなく、玄関先に用意した青々と笹の葉茂った竹に、願いを書いた短冊を吊すというシンプルなものだ。 しかし、そのシンプルさ故に、既に笹には数多くの短冊が吊されていた。 当然、願いが叶うなんて非現実的な事はないのだが、こういうのは楽しんだもの勝ちである。 単純に、書いて吊して楽しむも良し。他人が書いた願いを読んで楽しむも良しと、まぁ楽しみ方は人それぞれだ。 「まだ誰も来てないよね?」  そうこうしているうちに、また一人、短冊に願いを書きに来たと思われる女子生徒が竹に近づいて来た。黄色いリボンがトレードマークの ショートカットな髪型の女の子は、キョロキョロと周りを確認しながら、落ち着かない様子で短冊を手に取った。 「誰も居ないうちに……」  どうやらこの女子生徒は、書いているところを見られたくない様である。頬を紅潮させている辺り、恋文染みたものだろうか。 短冊に自分の名前さえ書かなければ、後で誰かに確認されようが分からない。だから誰も居ない時を狙ったのだろう。 ロマンチックな乙女だ。 「これでよしっと」  自分で書いた願いを確認して、再び頬を紅潮させ、それを笹に吊した。どんな願いか分からないが、書かれた相手は幸せ者だな。 「あれ? つかさ早いわね。もう書いたの? 見せて見せて」  つかさと言うのは、黄色いリボンの女の子の事だ。そしてつかさの背後に突然現れたツインテールな髪型の女の子は、つかさの後方にある今吊したばかりの短冊を見てしまう。 「わわわわ、お姉ちゃん!」  つかさは必死に両手を上下にバタバタとするも時既に遅し。というか姉だったのか。 「……わぁ」  つかさの姉は、その短冊に書かれていた内容を確認し、気恥ずかしくなりつつも、その短冊をまじまじと見つめていた。 「はぅぅ……」  つかさはすっかり顔がトマトになり、恥ずかしい様で下を向いていた。一体、どんな内容なのだろうか。 「何々? 『お姉ちゃんとずっと仲良くいられますように』? しかもハートのイラスト付きだとぅ!?」 「わぁぁ! 口に出さないでぇぇ!」 「うぉっ!? こなたいつの間に!? あ、みゆきも」  突然現れるのが流行っているのかというくらい、タイミングの良い登場の仕方だ。こなたと言う小柄な女子生徒のお陰で、短冊に書かれた内容が判明された。 これは書いた本人も書かれた相手もかなり恥ずかしいだろう。それも身内ときたもんだ。 「だから誰も居ない内に書いたのにぃ……」 「いや、その……ごめん。でも」 「でも?」と、つかさ。 「嬉しいわよ。そういうこと書いてくれてさ」 「……えへへ」  この瞬間、姉妹という二人の間に、強烈な姉妹愛が生まれた。これを破壊することは何人たりとも出来ないのである。 「ぐぬぬ、やるなつかさ……くそーぅ! 負けてられるかぁー!」  こなたはそう叫びながら短冊を手に取り、物凄い勢いでペンを走らせていた。何が負けてられないのだろうか。 「良し、これで勝つる!」  書いた短冊を直ぐに吊しに行くこなた。しかし、ガシッと肩を掴まれてしまう。 「何すんのさかがみ!」 「ちょっとな、それ見せてみろ」 「もう、せっかちさんだなぁかがみは~。」  そう言って短冊をつかさの姉、かがみに手渡した。その内容とは、  かがみとチュッチュッしたいな(はぁと)                     こなた  かがみは固まった。名前を書いてる辺り、つかさよりも大胆である。 「うおりゃー!」 「あぁ! 何すんのさ! 破くなんて酷いよー!」 「こんな恥ずかしい物、吊しといてたまるかっ!!」  こなたの願いは糸も簡単に粉砕された。ひらひらと舞い散る短冊は風に飛ばされ、余計に虚しさを増した。 「良いもん良いもーん! 私はみゆきさんとチュッチュッするもーん! ねぇ~みゆきさ~ん?」 「えーと……」  こうして、つかさの作戦は失敗に終わった。しかし、失敗して得たものも、そうそう悪いもんじゃないな、と、つかさは思うのであった。 「みゆきさんアイラブユー!」 「えーと……」  時間変わって、放課後。喧騒ざわめくここ、玄関先も、すっかり生徒達が居なくなり寂れていた頃、一人の教師と思われる女性が、短冊で埋め尽くされている竹に歩み寄って来た。 「ふふふ、あいつに見つからない内に……」  どうやらこの女性も、書いてる所を誰にも見られたくない様である。 女性はササッと短冊に願いを書き終わると、直ぐに笹に吊した。 しかし、二度あることは三度ある。そう、またしてもこのタイミングで背後から誰かが来たのである。やはりこの登場の仕方は流行っているのか。 「あら、桜庭先生、短冊書いてるんですか? えーと……」 「ばっ、見てはダメだ!」  ふゆきと 結 婚 !  これまた、大胆な願いだ。 「さぁ、結婚しよう」  そして本人は開き直っている。 「……桜庭先生、こういう形に残るものでこういう事書くのはダメですよ?」 「何? なら形に残らなければ良いんだな?」 「そうじゃありません。……そもそも学校で、」 「ほぅ、学校じゃなければ良いのか」 「もう、何でそうなるんですか」  しかし、意外に満更でもない様子。新たなカップルの誕生である。 「誕生しません。もう、何ですかこの終わり方は? 綺麗じゃありませんね」 「ふゆきは綺麗だ」 「……ひかるさんったら」          おわり

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