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今日はこなたの退院祝いと言う事で、泉家でちょっとしたパーティーを開くことになった。
参加者は俺とこなた、そうじろう養父さんにゆい姉さん、ゆーちゃんとその友人のみなみちゃん、あとはかがみさん、つかささん、みゆきさんのいつもの三人。
二十歳過ぎた大人ばかりなので、当然お酒も出るのだが、授乳に影響が出るかもしれないこなた、終わった後にみんなを車で送らないといけない俺と養父さんとゆい姉さんは、飲まないことになっていた。
なっていたんだが。
「ほら~こなたも飲も~よ~」
「いや、わたし飲んじゃだめなんだって…ってかねーさんだって飲んじゃ駄目だったでしょー」
ゆい姉さんは速攻で出来上がっていた。
絡まれているこなたが助けを求めるようにこっちを見たが、俺は気付かないふりをした。
- 命の輪の宴 -
「やほー…飲んでるー?」
俺の方にはかがみさんが絡んできた。俺の首に腕を廻して、目の前で缶ビールをぷらぷらさせてきた。
「いや、俺は車運転しなきゃいけないから、飲まないよ…」
無理に振りほどくのもアレなので、とりあえずされるがままにしておいた。息がかなり酒くさいので、顔はかがみさんの方から背けてはいるが。
「しってるっわよー♪いったっだけー♪」
歌うように、上機嫌にそう言うかがみさん。出来上がりの早さはゆい姉さんに匹敵するかもしれない。
「ねーそっぽ向いてないでこっち向いてよー」
今度は甘えるような声でそう言ってくる。俺は仕方なしに、かがみさんの方を向いた。すると、もの凄い至近距離に、目を瞑って唇を突き出してるかがみさんの顔があった。
「うおわっ!?」
俺は驚いて、かがみさんの身体を振り払って後ろに下がった。
「な、ななななな、なにしてるの!?」
「なにってキスしようとしてたのよー」
「いやいやいやいや。それは駄目だろ」
「なんでよーこなたとは毎日してるんでしょーに」
こなたと毎日してるからこそ、駄目なんじゃないだろうか。
「もー堅いこと言わないでよーこのわたしが折角キスしてあげようとしてるんだからー」
微妙に上から目線で迫ってくるかがみさん。いやもう、どうしようかコレ。
「かーがーみー…何してんのー」
かがみさんの後ろから敵意のこもった声。額に青筋立てたこなたがそこに立っていた。
「いたのか、こなた…ゆい姉さんは?」
「お父さんに押し付けてきた」
養父さんも災難な。
「なによーこなたー邪魔しないでよー」
「するよ!ってか離れてよ!」
こなたが、俺からかがみさんを引き剥がす。助かりはしたが、妻に助けられる夫というのはなんとも情けない。
「もーケチねー」
そう言う問題だろうか。
「わかったわよーじゃーこなたとキスするー」
何をどう理解したらそうなるのか。
「か、かがみ…?えっえっちょっ離して…」
「お持ち帰りよー」
「うええぇっ!?ま、まってー!たーすーけーてー!」
かがみさんに担ぎ上げられ、拉致られるこなた。俺はそれを生暖かい目で見送った。
あの真面目なかがみさんがここまで乱れるとは、酒の魔力恐るべしといったところか。
こうなると、他の人たちの乱れっぷりが少し気になる。
一番気になるのは…やはりみゆきさんか。身体が熱いとか言って、少し脱いでくれたりとかしないだろうか。俺は部屋を見渡して、みゆきさんの姿を探した。
「…くー」
部屋の隅で寝てた。潰れるの早すぎ。
「…泉さーん…そこ、違いますよー…」
こなた、なんか間違ってるらしいぞ。
酒の席というモノは、飲んでないとまったくやることないなと思いつつ、つまみのピーナツを齧っていると、バンッと何かを叩く大きな音が聞こえた。
ソッチの方を見てみると、ゆーちゃんがみなみちゃんとテーブルに座っていた。
「だーかーらーそんなんじゃダメなんだってみなみちゃん!」
ゆーちゃんがそう言った後に、もう一度バンッと言う音。
………え?ゆーちゃん?
「…ご、ごめんなさい…」
ゆーちゃんの向かいに座っているみなみちゃんは、すっかり怯えているようだ。
「そんなすぐにあやまらないの!」
バンバンッと今度は二回。
ゆーちゃん、迫力あるなー。ってかマジで怖い。ちょっとアレは近寄りたくない。
「………」
なんだか涙目のみなみちゃんがこっちを見ている。
その目が「タスケテ」と言っているが…ごめん、俺には無理。
俺は出来るだけその二人から離れることにした。
すっかりぬるくなったウーロン茶を啜っていると、今度は後ろから誰かに多い被さられた。
「あー…らくちんー…」
この声は、つかささんか。
「つ、つかささん、何か?」
「何か?…何か…ぷ…くく…あはははははっ!」
今のどこに大爆笑の要素が!?
「何かって…あはははははっ!面白ーい!」
「いやいやいや…」
「いやいやいや?…ぷあははははははっ!お腹いたーい!」
何を言っても背中から大爆笑が返ってくる。正直、怖い。
ふと、背中が軽くなった。飽きたのだろうかと思って振り向くと、つかささんは部屋の隅の方から何かを引き摺ってきた。
………って、アレ寝てるみゆきさんじゃね?
「ゆきちゃん、どーんっ!」
つかささんは寝てるみゆきさんを、俺の方に突き飛ばしてきた。
「って、うおわぁっ!?」
俺はみゆきさんに押し倒される格好で、床に転がった。
その様子を見て、つかささんがやはり大爆笑していた。
「…ふぇ…」
みゆきさんが目を覚ました。
「…よろしく、おねがいしまふ…」
そのまま、俺に抱きついてくる。何をお願いするのか分からないけど、みゆきさんのふくよかな部分が押し付けられてかなりうれし…もとい、やばい。
期待は出来ないが、なんとかして貰えないだろうかとつかささんの方を見ると、笑いすぎたのか、お腹を抱えてヒクヒクと痙攣していた。
仕方なく俺は、みゆきさんが再び寝入るまでそのままにしておくことにした。
部屋の中に、つかささんとみゆきさん、それとゆーちゃんの三人の寝息が聞こえる。
俺は寝ているつかささんとみゆきさんの二人に、毛布をかけた。
ゆーちゃんには、みなみちゃんが毛布をかけてあげている。
「みなみちゃんは、あまり飲まなかったのかい?」
俺がそう言うと、みなみちゃんは首を横に振った。
「多分、ゆたかよりは飲んだかと…」
そう言えば、みゆきさんに押し倒されてる間に『みなみちゃん!わたしの酒が飲めないって言うの!?』とか聞こえていたような。
それでもみなみちゃんは頬が少し赤く染まっている程度で、他はいたって普通だ。どうやら彼女は酒には強いらしい。
「…そういえば、お子さんはどうなされて…」
みなみちゃんがそう聞いて来た。俺やこなたも酒宴に参加してるから、赤ん坊のことが気になったのだろう。
「多分、部屋で寝てるよ」
「…え?…大丈夫なのですか?」
「…信じられないかもしれないけど、大丈夫なんだよ」
誰に似たのか、あの赤ん坊にあるまじき肝の据わり方は、正直俺も驚いた。
「えーっと、どうしようかな…」
俺は時計を見た。終電はとっくに出ている時間だ。
「君だけでも送ろうか?」
俺がそう言うと、みなみちゃんは少し考え込むような仕草をした。
「みんなこんなだしさ、みなみちゃんも泊まっていきなよ」
後ろから誰かがそう言った。振り向いてみると、こなたが居間に入ってきたところだった。
「かがみさんは?」
俺がそう聞くと、こなたは大きくため息を吐いた。
「わたしの部屋で寝てるよー」
そのまま俺の隣に座って、飲みかけだった俺のウーロン茶を、一気に飲み干した。
よく見てみると、顔のあちこちにあるのは、キスマークなんじゃないだろうか…。
「なあ、こなた…」
「出来れば聞かないで…」
何を聞こうとしているかを察したのか、俺が言い切る前にこなたに止められた。
「…貞操は守ったよ」
そして、それだけポツリと呟いた。
「それにしても、みんなよく飲んだねー」
俺とこなた、そしてみなみちゃんの三人で、居間に散らばってる空き缶やらゴミやらを片付けていると、こなたが呆れたようにそう言った。
「こんなにみんながブッ潰れるまで飲んだのって初めてじゃないかなー」
こなたのその言葉に、みなみちゃんが頷いていた。
「…ゆたかが、ここまで飲むとは思いませんでしたね…」
そして、何かを思い出したのか、みなみちゃんがブルッと身体を震わせた。
「…酔いたい気分だったんだろうな」
俺がそう言うと、こなたは良く分からないといった風に、首を傾げた。
「それだけ、お前が無事だったのが嬉しいかったんだよ」
そう言いながら俺は、こなたの頭をポンポンと軽く叩いた。
「んー…ダーリンはどうなの?」
こなたがそう聞いて来た。
「そうだな…俺もそうだよ」
「じゃ、今から飲もうか。送る必要も無くなったし。みんな起こすと悪いから、別の部屋でさ」
「いいけど…お前は飲めないだろ?」
「うん。まあ、お酌係だよ…みなみちゃんはどうする?」
こなたがみなみちゃんにそう聞くと、みなみちゃんはゆーちゃんの方をチラッと見た。
「…わたしは、ここに居ときます…さすがに少し眠ふわぅ…す、すみません…」
語尾に欠伸が混じって、あわてて顔を赤らめながら謝るみなみちゃん。
「オーケー。じゃ、ダーリンいこっか」
「ああ」
俺とこなたは、頷きあって居間を出た。
- おしまい -