ID:ei3nyXY0氏:柊かがみ法律事務所──遺贈

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<p>柊かがみ法律事務所──遺贈</p> <p> 彼が死んだ。死因は心臓発作。<br />  現代において、60代での死亡は早いといえる。<br />  かがみは、その報を聞いたとき、特に何かを感じたわけではなかった。というより、何かを思うことさえ拒否していたのかもしれない。<br />  葬式があれば当然行っただろうが、遺言により葬式はしないこととされていた。彼らしいといえば彼らしいといえる。<br />  彼が死のうと死ぬまいと、日常の日々は過ぎ去っていく。<br />  平日は仕事で忙しい。さすがに60代にもなると体力的にきつくなっていたが、それでも彼女はばりばり仕事をこなしていた。<br />  問題は週末だった。彼とのデートがなくなって、かがみはぼうっとしながら過ごすことが多くなっていた。</p> <p><br />  彼の死亡から数ヶ月がたったころのそんな土曜日。<br />  かがみのもとに来客があった。<br />  彼の遺言により遺言執行者に指定されている弁護士だった。<br /> 「手っ取り早く申し上げますと、遺言により柊かがみさんへの遺贈が指示されてます」<br />  弁護士がかがみに書類を提示した。<br />  それは公正証書遺言だった。内容を確認すると、確かにかがみに全財産を遺贈すると書かれてある。<br /> 「あと、これを渡すように指示されてます」<br />  一通の封書だった。開封すると、便箋が収まっていた。<br />  折りたたまれている便箋を開き、読み進める。</p> <p> </p> <p>親愛なる柊かがみ様へ</p> <p> 君がこれを読んでいるときには、僕は死んでいる。どんな死に方をするやら分からないが、どうせろくなもんではあるまい。<br />  君は寂しがり屋さんだから、僕がいなくなったあとが心配だ。なんてことをいうと、君は怒るのだろうね。怒る顔が目に浮かぶようだ。<br />  それはともかく、僕には親類と呼べるものがいない。少なくても法定相続人になりうる範囲内にはね。<br />  このままだと、僕が稼いだ財産は、相続人なしということで国に全部持っていかれることになる。<br />  それは癪だから、君に遺贈することにした。迷惑でしかないだろうけど、許してもらいたい。<br />  釈迦に説法だろうが、もちろん、君はこの遺贈を放棄することもできる。好きにしてくれて構わない。結局のところ、これは僕の自己満足でしかないのだから。</p> <p> </p> <p><br /> 「本当に法定相続人はいないのですか?」<br /> 「調べた限りではいませんね。最終的には家裁で公告を出すことになりますが、たぶん出てこないでしょう。多くの女性と浮世を流した人ですから、隠し子の一人や二人は出てくるかと思ってたんですが、その辺はきちんとしていたようです」<br />  避妊には完璧を期す男であったことは、かがみも自身の経験上よく知っていた。<br />  それにしても、この弁護士は彼のことをよく知っているようだ。その辺を聞きただしてみると、<br /> 「私が弁護士に成り立てのころに、お世話になりましてね。弁護士として稼ぐ方法を叩き込まれましたよ。悪くいう人が多いですが、その点に関しては私は感謝してます」<br />  その後、彼の財産の金額を確認して、かがみは驚いた。<br />  彼の財産は、億の単位に達していた。彼が負っていた債務を差し引いたあとの金額でこれなのだ。<br />  どれだけあこぎなことをしていたのか。<br /> 「これだけは私も理解しがたかったですけどね。金なんて使ってなんぼのもんでしょうに」<br />  それは、かがみも同感だった。<br />  ただ金をためこむばかりだった彼の心情は、もはや誰にも分からない。</p> <p> </p> <p> 結局、かがみは、遺贈を受けることにした。<br />  でも、自分で使うつもりも抱え込んでおくつもりもない。<br />  遺贈にも降りかかってくる相続税を払い終わったあと、かがみはありとあらゆる慈善事業に寄付しまくった。1円も残さずに。</p> <p> 彼への未練は、彼の財産とともに綺麗に消えていった。</p> <p> </p> <p>民法<br /> (子及びその代襲者等の相続権)<br /> 第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。<br /> 2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。<br /> 3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。</p> <p>(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)<br /> 第八百八十九条  次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。<br /> 一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。<br /> 二  被相続人の兄弟姉妹<br /> 2  第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。</p> <p>780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/04/08(水) 06:38:41.99 ID:ei3nyXY0<br /> (配偶者の相続権)<br /> 第八百九十条  被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。</p> <p>(相続債権者及び受遺者に対する弁済)<br /> 第九百五十七条  第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。<br /> 2  第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。</p> <p>(相続人の捜索の公告)<br /> 第九百五十八条  前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。</p> <p>(権利を主張する者がない場合)<br /> 第九百五十八条の二  前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。</p> <p>(特別縁故者に対する相続財産の分与)<br /> 第九百五十八条の三  前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。<br /> 2  前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。</p> <p>(残余財産の国庫への帰属)<br /> 第九百五十九条  前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。</p> <p>(公正証書遺言)<br /> 第九百六十九条  公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。<br /> 一  証人二人以上の立会いがあること。<br /> 二  遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。<br /> 三  公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。<br /> 四  遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。<br /> 五  公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。</p> <p>(遺贈の放棄)<br /> 第九百八十六条  受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。<br /> 2  遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。</p> <p>(遺言執行者の指定)<br /> 第千六条  遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。<br /> 2  遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。<br /> 3  遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。</p> <p><br /> 相続税法<br /> (相続税の納税義務者)<br /> 第一条の三  次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。<br /> 一  相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの</p> <p> </p>

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