柊かがみ法律事務所──参議院選挙候補擁立経過記録

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某スポーツ新聞記事より ○○党、次期参議院議員選挙候補に柊かがみ弁護士を擁立か?  ○○党が、次期参議院議員選挙の候補に、柊かがみ弁護士を擁立しようとしている模様だ。  柊弁護士は、秋葉原に事務所を構え、著作権と表現の自由に関わる事件を多数受け持ち、その分野では名の知られている弁護士である。また、いわゆる二次創作を擁護する立場をとっているため、オタクたちの支持もあつい。  ○○党としては、柊弁護士を擁立することで、幅広いオタク層からの票を集めたいとの思惑があるようだ。 某スポーツ新聞記事より 柊かがみ弁護士、参議院議員選挙立候補を断固拒否  ○○党○○支部代表の××××氏は、柊かがみ弁護士を参議院議員選挙候補として擁立しようとしていることを正式に認めた。  しかし、柊弁護士は、数回にわたる説得にも全く応じず、立候補を断固拒否する姿勢を貫いているとのこと。  この件について、多数のマスコミが柊弁護士に取材を申し込んだが、すべて拒否されたようだ。  柊弁護士のマスコミ嫌いは有名な話で、普段は事務所と自分の撮影も一切認めていない。  いわゆるカメコ(*主に通行人の女性に声をかけて写真を撮るオタクのこと)も、これには粛々と従っているくらいで、柊弁護士の秋葉原のオタクたちに対する影響力のほどがうかがえる。 某日刊新聞記事より 秋葉原の柊かがみ法律事務所前で小競り合い、警察が出動  ○月○日○時○分ごろ、参議院議員選挙への立候補が噂されている柊かがみ弁護士の秋葉原の事務所前で、マスコミ関係者といわゆるオタクたちとの間で小競り合いがあり、警察が出動する騒ぎになった。  オタクたちが「かがみん先生の聖地を勝手に撮るな」などと叫びながらカメラマンに迫り、小競り合いが発生。通行人からの通報を受けた警察が出動した。  この騒ぎで、五人が報道機関の取材業務を妨害したとして威力業務妨害の容疑で現行犯逮捕された。  柊弁護士は、すぐに逮捕された五人と接見し、弁護活動に入った。  逮捕された五人は、即日で送検されたが、翌日には検察当局によって起訴猶予処分となり、釈放されている。  釈放されたうちの一人は、取材に対して、「かがみん先生から『マスコミにも取材の自由があるのよ。あなたがたの気持ちは嬉しいけど暴力はよくないわ』といわれた。反省している。でも、あそこはアキバのために仕事をしてくれるかがみん先生の仕事場だ。見世物みたいに扱われるのはやっぱり許せない」と語った。  なお、弁護士の接見費用については、「かがみん先生は『今回はいらないわよ』っていってくれたけど、みんなで金を出し合って払った」とのことだ。 某スポーツ新聞記事より 柊かがみ弁護士、○○党○○支部を威力業務妨害で告訴か?  柊かがみ弁護士が、○○党○○支部を威力業務妨害で告訴した模様だ。  ○○党○○支部は、柊弁護士を次期参議院議員選挙候補に擁立しようと電話で度重なる説得を行っているが、これによって法律事務所の業務に著しい支障をきたしているというのが、告訴の理由のようである。  ○○支部代表の××××氏は、この件について「何もお答えできない」とコメント。  しかし、○○支部の事務職員に匿名を条件に取材したところ、「警察から任意の事情聴取を受けたのは事実。だが、業務妨害といえるほどではないので立件は見送るといわれた」との回答が得られた。  柊弁護士の立候補断固拒否の姿勢は強硬で、今回の告訴のほかにも考えられうるあらゆる法的手段をもって対抗すると見られており、○○支部は戸惑いを隠せないようだ。  なお、柊弁護士は、マスコミ取材拒否の姿勢も貫いており、この件についても何もコメントは得られなかった。 某日刊新聞記事より 秋葉原で柊かがみ弁護士擁立反対デモ  ○月○日○時○分ごろ、秋葉原でデモ行進が行われた。  デモに参加したのは、主にオタクといわれる人々で、「かがみん先生を汚い政治の世界に引きずりこむな」などとシュプレヒコールを挙げながら、秋葉原のメインストリートを行進した。  柊かがみ弁護士に対しては○○党○○支部が次期参議院議員選挙候補に擁立しようと再三にわたって説得しているが、本人は拒否の姿勢を崩していない。  ○○党は、当初は幅広いオタク層の支持を集めるもくろみで柊弁護士の擁立を図ったところだが、かえってオタク層から反発を受ける結果となっており、近日中にも擁立断念の結論を出さざるをえないものと見られている。 某日刊新聞記事より ○○党、柊かがみ弁護士擁立断念  ○○党は、○月○日、柊かがみ弁護士の次期参議院議員選挙候補擁立を断念したと発表した。理由については触れられていない。  柊弁護士は、秋葉原に法律事務所を構え……(以下略)  秋葉原に居を構える柊かがみ法律事務所。  かがみは、夜遅くまで残って仕事をしていた。今回の騒ぎのせいで、仕事が滞っており、それを挽回するために自ら残業せねばならなかった。  かがみ自身が個人事業主であるため、当然残業代はもらえない。○○党に請求してやりたい気分だった。  電話が鳴り響く。 「はい。柊かがみ法律事務所です」 「夜分遅くにすみません。○○です。そちらの様子はどうですか?」  電話の相手は、所轄の警察署の知り合いの警察官だった。  今回の騒ぎではかなり世話になっている。  告訴にすみやかに応じて○○党○○支部に任意捜査に入ってくれたのは彼だったし、逮捕されたオタク五人の早期釈放のために手を回してくれたのも彼だった。 「ようやく静かになりました。今回の件では、いろいろとお世話になりまして、感謝しております」 「いやいや、柊先生には借りが多くありますからね。これぐらいはお安い御用ですよ」 「でも、大丈夫なんですか? 任意とはいえ政党支部を捜査なんかしたら上からもにらまれるでしょう?」 「そんなのは気にもしてませんよ。はなから出世は諦めてますからね」 「はぁ、そうですか……」 「今後も何かあったら、遠慮なくお申しつけください。可能な範囲内でご協力いたしますので」 「ありがとうございます」  電話を切り、かがみは再び仕事に取りかかった。 終わり

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