ID:V.S9VJ.0氏:サイバー☆ゆーちゃん~季節外れの雪のまき~

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<p>2012年10月、都内某所…。<br /><br /> 「…はっ…くしゅっ!」<br /> うぅ…流石に10月も下旬になると寒いなぁ…。吐く息も真っ白…。<br /> そんな帰り道、みなみちゃんが心配そうに声をかけてきました。<br /> 「…ゆたか、大丈夫?」<br /> 「う、うん…大丈夫だよ、ちょっと寒いけど…」<br /> 「…あんまり無理しないで。いくらサイボーグでも、あんまり寒いのを我慢してたら身体に悪いよ」<br /> 「…大丈夫だよ、だってみなみちゃんがくれたマフラー、とっても暖かいよ~」<br /> 「……そう、よかった」<br /> 「えへへ、ありがと……」<br /> いつものように言葉を交わす私たち。でも、この日はちょっと、どこかが変でした…。</p> <p>「…あっ」<br /> ふと、みなみちゃんが何かに気付いたようです。<br /> 「……どうしたの、みなみちゃん?」<br /> 「……雪だ…」<br /> そう、何故か雪がちらついていました。<br /> 札幌ではもう雪が降っているって言うのを聞いた事がありますけど、ここは関東地方…。<br /> 冬でもあまり雪が降るような場所じゃないハズなんです…。<br /> それにしても、さっきより一段と寒くなってるような……?<br /> そんな季節外れの雪と寒さを不審がっていた私たち。すると、他の学生達が次々と叫びだしました。<br /> 「おい!なんだありゃあ!」<br /> 「怪しいヤツがいるぞ!!」<br /> 「白衣に赤い髪の男だ!!」</p> <p>「…行ってみよう!みなみちゃん!」<br /> 「……うん!」<br /> 私たちは叫び声の聞こえる方向に向かって走り出しました。<br /> 人込みを掻き分けながら進んでいくと…そこには……。</p> <p>なにやら怪しげな機械。そしてそれを操作している怪しげな男。<br /> その人は赤い髪の毛で、白衣を着込んでいて…その背中には『実験命』と書いてありました…。</p> <p>「ん?何だい君達は」<br /> 「あの…貴方はどちらですか?」<br /> 「…そうだね…さすらいの科学男とでも名乗っておこう」<br /> はぁ…また変なのに出会ってしまいました…。<br /> パトリシアさんのお父さんも変な科学者だけど、あの人とここにいる科学男さんを戦わせたら勝負がつかないんじゃないでしょうか?<br /> そんなことよりも、あの季節外れの雪と寒さ…まさかあの装置が関係してるんじゃ…?</p> <p>「あ、あの…その装置は一体…」<br /> 「よくぞ聞いてくれたね、これこそ粉雪発生装置!『いつでもどこでも粉雪を降らせたい』という願いを叶えるという…」<br /> ――ドドドドドドドド……<br /> 科学男さんがなにやら力説していると、向こうのほうから地響きが聞こえてきて、次の瞬間…。<br /> 「スペシャルバストアターック!!」<br /> 「わぶっ!?」<br /> ……何やってるんですか、みゆきさん…。<br /> そう、やってきたのはみゆきさんでした。どうやらこの科学男さんと関わりがあるようです…。</p> <p>「み、みゆき!?」<br /> 「兄さん、今すぐこの装置を止めてください!」<br /> 「えぇ!?」<br /> 「兄さんがこの装置を使っているのを、みなさん不審に思われてるんですよ!?」<br /> …確かにこんな光景、不自然以外の何物でもないですよね。<br /> ていうか…科学男さん、みゆきさんのお兄さんだったんだ……。<br /> 「さぁ、早く装置を止めてください!」<br /> 「わかったよ、今すぐ止め…」<br /> と、みゆきさんのお兄さんが装置を止めに行ったそのときでした。<br /> 傍で窓を拭いてた掃除屋さんが水の入ったバケツを落としてしまい、装置の上に水がかかってしまったのです。<br /> 「うわぁぁぁぁっ!!」<br /> 「に、兄さん、これは!?」<br /> 「な、何が起こったんだ!?」<br /> 「よりによってこんなときに!!」<br /> ……装置は大暴走。辺り一面大吹雪になってしまいました。<br /> 「ゆ……ゆた…か……」<br /> 大変…このままじゃ、みなみちゃんもみゆきさんも、みゆきさんのお兄さんも、みんな凍えちゃう…。<br /> そうだ…こんなときこそ…私が何とかしなきゃ!</p> <p>「チェンジ!パワーハンド!!」<br /> 私は両腕を切り替えると、装置を一気に持ち上げます。<br /> パワーハンドなら、20人分の力が出せるので、重いものもラクに持ちあがるんです。<br /> 「えぇ~ぃっ!!」<br /> 私は人気のない場所を狙って、思い切り装置を投げつけました。<br /> 装置は岩肌に激しくぶつかり、大爆発。その瞬間、私の周りでは盛大な拍手が起こりました…。<br /> でも…今ので……かなりの、エネルギーを………使ッ…チゃ……タ………。</p> <p><br /> 「……あ…れ?」<br /> 「ゆたか、気がついた?」<br /> …そっか…私、全部のエネルギーを使い果たして……。<br /> 「……ここまで運んでくるの、大変だったよ…」<br /> …みなみちゃんの話によると、あのあとエネルギー切れになってしまった私は、みなみちゃんにおぶられて…そうです。今私がいるのはみなみちゃんのお家。<br /> そう…いろいろあってすっかり日も暮れちゃったので、今日はここに泊まることになったんです。<br /> 「…みなみちゃん」<br /> 「…?」<br /> 「ごめんね…。こんな身体になっても心配かけちゃって…」<br /> 「……いいの」<br /> 「え?」</p> <p>私がきょとんとしていると、みなみちゃんはちょっぴり顔を赤くして微笑んでいました。<br /> 「…私は、ゆたかの笑顔が見られればそれでいい。それに……ゆたかが私たちを助けてくれたから……」<br /> 「み、みなみちゃん……」<br /> 「ありがとう、ゆたか…」<br /> 「は、はわわわわわっ!?」<br /> 思わす、私まで顔が赤くなってきちゃいました……。なんか胸がドキドキする…。<br /> ……あれ?ドキドキ?……そうか、私にはもう心臓はないけど、『ドキドキする』って感じはちゃんとする。これも、私が生きてるって証なんだね、みなみちゃん……。</p> <p>「あっ……雪だ…」<br /> 「…季節外れ………」<br /> …何故か降ってきた季節外れの粉雪を見て笑う、みなみちゃんと私。<br /> まさか、みゆきさんのお兄さんじゃないよね、とか言いながら…。</p> <p>                        &lt;終わり&gt;</p> <p> </p>

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