ID:A8DqO960氏:少年Aの同窓会

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<p><font size="1"> 俺の名は、少年A。<br />  えっ、誰かって?<br />  そういう君は、原作6巻86ページを参照してくれ。<br />  まともに名乗れる名前も与えてくれないとは、この世界は男の扱いぞんざいだよな、ホント……。<br /><br />  まあそんなメタな話はともかくとして、俺ももう「少年」という歳じゃないけどな。<br />  社会人ン年目。まあ、一応、一流企業の社員ってことになってる。<br />  このご時勢だから、一流企業でも油断はできない。いざというときに振り落とされないように、毎日が必死さ。<br />  そんな毎日にちょっと疲れ気味だったときに、それは届いた。<br />  高校の同窓会の案内状だった。<br />  全クラス合同の同窓会。<br />  こういう場合、幹事長は元生徒会長というのが相場で、今回もそうだった。そして、幹事に名を連ねているのは、元クラス委員長。<br />  その中に、ある名前を見つけて、俺の胸は高鳴った。<br /><br />  高良みゆき。<br /><br />  忘れもしない。俺のクラスの委員長だった女性。<br />  俺も副委員長だったから、委員会の仕事を一緒にやることも多かった。<br />  ただそれだけだったけど……。まあ、誰にでもありがちな青春の思い出ってやつだな。<br />  彼女に会えるのなら、考えるまでもない。<br />  俺は、返信用ハガキの「出席」の文字に電光石火で丸印をつけ、社宅を飛び出して近くのポストまで走り投函した。<br /><br />  そして、翌日会社に出勤すると、さっそく有給休暇をとる手続をした。<br />  同窓会当日と前後2日を休暇にした。前後の1日は移動日。そのさらに前後の1日には特に意味はない。<br />  休暇明けに仕事が溜まってて酷いことになりそうだが、かまいやしないさ。<br /><br /><br /><br />  同窓会当日。<br />  場所は、東京の某ホテルの宴会場。 </font></p> <p><font size="1"> 陵桜の卒業生は全国に散らばってるから、集まるなら埼玉よりは東京の方が何かと都合がいい。幹事会はそう判断したんだろう。<br /><br />  (やや老けたが)相変わらずの黒井先生の音頭で乾杯し、同窓会が始まった。<br />  俺の席は、なんと高良さんの隣だった。<br />  俺は、緊張しちまって、口にした会席料理の味も分からないぐらいだった。<br />  横目でちらちらと高良さんを見る。<br />  あのころも美人でナイスバディなお方だったが、それにさらに磨きがかかっていた。言葉では表せられない美しさだ。<br />  その高良さんは、友人たちと楽しそうに談笑している。<br />  ええと、あいつが泉こなた、あっちが柊かがみと柊つかさ、あとは峰岸あやのと日下部みさおだったな。<br />  柊つかさと峰岸あやのは結婚して苗字が変わっていた。峰岸は日下部の兄と結婚して日下部あやのに、柊つかさは白石と結婚して白石つかさに。<br />  白石のやつ、ちゃっかりいい嫁さんもらってるじゃねぇか。羨ましいぞ。<br />  その白石は、さっそく男どもに囲まれて冷やかしの集中砲火をあびている。<br />  高良さんと友人たちの談笑は続いていた。<br /><br /> 「つかささんのお子さんは双子の女の子なんですか?」<br /> 「うん。お姉ちゃんと私にそっくりなんだよ」<br /> 「ホント、私とつかさにそっくりで、初めて見たときは笑っちゃったわよ」<br /> 「そうなんですか。それは楽しそうですね。あやのさんのところも女の子でしたよね?」<br /> 「うん。みさちゃんに似てるみたいで、ちょっと心配……」<br /> 「あやの~。その言い方ひどくね?」<br /> 「あっ、ごめんごめん、そういう意味じゃなくてね」<br /> 「どういう意味だよぉ?」<br /> 「まあまあ、みさきち。あやのさんが教育すれば、その辺は心配ないって」<br /> 「ちびっ子もひでぇな、おい」<br /> 「で、あやのさん。次のお子さんのご予定などはないのかね?」<br /> 「言い方がいやらしいぞ、おまえ」<br /> 「かがみん。そんなこと言って、実は羨ましいんでしょ? この前、彼氏と別れたばっかだもんね」<br /> 「大衆の面前で、大声でいうな!」<br /> 「おお、こわっ」<br /> 「少なくても、ゲームでしか恋愛経験のないあんたに言われる筋合いはないわよ」</font></p> <p><font size="1">  </font></p> <p><font size="1">「恋愛経験といえば、みさきちはその辺はどうなのかね?」<br /> 「みさちゃんは、もう婚約者いるんだよ」<br /> 「うぉー、意外だ!」<br /> 「会社の陸上部の後輩なんだぜ。なんか気が合ってな」<br /> 「みさきちがショタ趣味だったとは知らなかった」<br /> 「なんでもそっちに結びつけるな。二、三歳年下な程度でしょ」<br /> 「ショタってなんだ?」<br /> 「ショタというのはだね……」<br /> 「あんたには一生縁のない世界よ」<br /> 「かがみん。せっかく説明しようとしてるのに」<br /> 「黙れ。そういえば、みゆきはその辺はどうなのよ?」<br /><br />  柊かがみが高良さんに話をふったとき、俺は耳が当社比100倍になったような錯覚に陥った。<br /><br /> 「私はないですね、お恥ずかしながら」<br />  俺はなぜかほっと胸をなでおろした。<br /> 「告白されたこともないの?」<br /> 「ありませんね」<br /> 「意外ねぇ。みゆきなら、わんさか男が寄ってきそうだけど」<br /> 「みゆきさんは、なんていうのかなぁ。高嶺の花すぎて、告白する前に諦めちゃうって感じなんじゃないかな?」<br />  泉の言葉は、俺には妙なまでに納得のいくものだった。<br />  かつての俺がそうだったから……。<br /> 「いえいえ、そんな。私は至らない点も多いですし、まだまだ精進しなければならないかと」<br /> 「みゆきさんがそれ以上精進しちゃったら、もう聖人君子を通り越して、女神様じゃん」<br /><br />  うんうん、その通りだ。<br />  思わずうなずいたとき、泉と目が合った。<br /><br /> 「おや、君。さっきから、みゆきさんを見てるみたいだけど、何か用かな?」<br />  泉が立ち上がって、俺に近づいてくる。  </font></p> <p><font size="1">「いや、その……たまたまそちらの方を向いていただけで……」<br /> 「ほう。そのわりには、随分と熱心に見てたようだけどねぇ?」<br />  泉がからかうような声で、言い寄ってきた。<br />  そして、<br /> 「ところで、君、誰だっけ?」<br />  ズコッ。<br />  俺は、危うく会席料理に頭を突っ込むところだった。<br /> 「副委員長さんでしたよね。委員会のお仕事でよくご一緒させていただきました」<br />  おお、高良さん! 俺を覚えていてくださったとは。<br /> 「ふふん、なるほど。だいたい読めてきた。委員会で一緒に仕事をするうちに、少年の心にはみゆきさんへの……」<br /> 「ちょっと待ったぁ!」<br />  俺は、慌てて泉の口をふさいだ。<br /> 「こなた。そういうのは、本人の口から言わせないと駄目よ。みゆき、元副委員長さんが二人きりで話したいことがあるみたいだから、ここから出てどこか人のいないところで聞いてあげて」<br /> 「えっ、私にですか?」<br />  高良さんは、全く状況を理解できてない様子で首をかしげた。<br />  そして、俺は、思わぬ提案にしどろもどろになる。<br /> 「あっ、いや、その……」<br /> 「ほら、あんたも男なら、ビシッと決めてきなさい!」<br />  柊かがみに背中を思いっきり叩かれた。<br />  痛い……。<br /><br /><br /><br />  ホテルの宴会場フロアの端っこ。<br />  周囲には人はいない。二人きり。<br />  もうそれだけで俺はガチガチに緊張していた。<br /> 「お話というのは、何でしょうか?」<br /> 「ええと……そのう……」<br /><br />  ええい、何をためらう!?</font></p> <p><font size="1"> もうこんな機会は二度とないだろう。<br />  ならば、言うしかないんだ。<br /><br /> 「好きです! 付き合ってください!」<br />  言った!、言ったぞぉ!<br /><br />  しかし、それからしばらくの間、沈黙がその場を支配した。<br /><br />  俺は、その静寂に耐え切れなくなり、<br /> 「あのう……高良さん?」<br /> 「あっ、いえ、すみません。このようなことは初めてなものですから、どのようにお答えしたらよいかと……」<br /> 「嫌いなら、はっきりそういっていただいて結構ですよ」<br />  もう言っちゃったのだ。あとは、フラれようとなんだろうと結果を受け入れるしかない。<br />  俺はもうすっかり開き直っていた。<br /> 「いえ、嫌いというわけではないのですが、ご交際の可否についてはその判断材料を持ち合わせていないので……」<br />  なんというか、高良さんらしい答えだなとは思った。<br />  高良さんは、何事も充分に考慮してから決める人だ。俺なんかのために高良さんの思慮深い頭脳を使わせるのは、なんだか申し訳ない。<br /> 「では、お答えは保留ということですか?」<br /> 「ええっと、とりあえずはお友達ということでいかがでしょうか。ご交際の可否については、時間をおいてから判断するということで」<br /> 「ありがとうございます」<br />  なんか生殺しだけど、高良さんがそうおっしゃるのなら、仕方ない。<br />  これから男を磨いて、高良さんに気に入られるような男になればいいさ。<br /><br />  俺の一大告白劇は、こうして終わりを告げた。<br /><br />  このあと、俺は、高良さんとその友人たち、さらに白石や黒井先生も加えて、一緒に二次会に繰り出した。<br />  高良さんとのお友達付き合いの第一歩というわけだ。<br />  隠れたライバルは腐るほどいるかもしれないが、俺がこうして一歩先んじたのは事実だしな。<br />  あとは進むしかない。<br /></font></p> <p> </p> <p> </p> <p><font size="1"> そうそう。あとで、柊かがみには礼を言っておいた。<br /> 「お礼にうちの会社の社員を紹介してやってもいいぜ」<br />  って言ったら、<br /> 「他人の世話にはなんないわよ」<br />  って返された。<br />  なんつうか、意地張ってるようにしか見えなかったけどな。<br /><br />  まあとりあえず、この話はこんなところで終わりということで。<br /></font></p>

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