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「第1話：ハーフドラゴンこなた」(2008/08/08 (金) 23:00:00) の最新版変更点
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<p>……それは昔々、とある国で起きた物語。<br />
その国に住む一人の冒険家が、竜の牙を手に入れるため旅立った。<br />
幾多もの困難を乗り越え…躓き、傷つき、倒れ、それでもなお諦めずまた立ち上がり。<br />
ついに彼は伝説の竜と出遭った。彼は戦った。<br />
戦って…戦って……戦い抜いて…その果てに……。<br /><br />
あろうことか、その冒険家と竜は恋に落ちてしまった。<br />
種族を超えた、禁断の恋。そして二人の間に…一つの命が生まれた……。<br /><br />
…と、こんな風に言ったらおとぎ話のように聞こえるかもしれない。<br />
「なにこのRPG？」とかツッコまれるかもしれない。でも……。<br />
これは実際に起きた出来事。そして今実際にそこにいる家族。<br />
まぁ昔って言ってもそんな遥か昔のことじゃないし、竜の牙求めて戦ったとかってわけでもなかったって言ってるみたいなんだけど…とにかく、竜と人の間に生まれた子は、今こうしてここにいる。<br />
そう……ここにいるんだ……。<br /><br />
「…んぁ」<br />
目覚ましの音で目が覚める。…もうこんな時間か……。<br />
昨日はセーブポイントが見当たんなくてつい夜更かししちゃったからなぁ。<br />
重い体を起こして私は食卓へ向かう。</p>
<dl><dt id="a582"></dt>
<dd>
<p>「ふぁ～、お父さんにお母さん、おはよう～」<br />
「お、おはようこなた～」<br />
この人は私のお父さん。もと冒険家で…今は小説家。自分の冒険談を元にした小説を書いている。<br />
売上げは……まぁそこそこってとこかな？<br />
「もぅ、夜中までゲームばかりしてるから起きれないのよ？」<br />
こっちは私のお母さん。娘の私が言うのもちょーっと変かも知れないけど、かなりの美人。<br />
私とお母さんは非常によく似てて、近所の人の話だと、一瞬双子の姉妹かと思ったって言う人もいたとか。…まぁ間違えられない方が珍しいんだけどね。<br />
「むぅ、お母さんだってよく夜更かししてるじゃん～」<br />
私はまだ寝ぼけ眼のままだが、膨れっ面をしてみせる。<br />
「あら、私はこなたやそう君とは違って夜は強いのよ？」<br />
「うっ…私だってお母さんと一緒の血が流れてる筈なのに～」<br />
「きっと父さんの悪い癖が遺伝したんだな、HAHAHA☆」<br />
「もう、そう君ったら呑気なんだから！」<br />
……悪い癖、ね。あぁ…否定は出来ない…出来ないけど……。<br />
でも私だって、お母さんの子供なのに……。<br /><br />
いつも思う。<br />
お母さんは夏でもあんなに元気なのに、私は真夏なんか暑さでだらけて動けない。<br />
夜更かしして私は起きれないのに、お母さんは私よりも早く起きてたりするし。<br />
…………同じ血が流れてる筈なのに、同じじゃない。<br />
私には、お母さんの血とお父さんの血が半分ずつ…。<br />
ひょっとして、この『半分ずつ』ってのが大きいのかな？むぅ…。</p>
<p> </p>
<p>「いってきまーす」<br />
「おう、気をつけるんだぞー」<br />
「鳥にぶつかったりしないようにねー」<br />
「お母さん……いくら私でもそうそうぶつかんないよ…」<br /><br />
お母さんが毎朝のように言うのが、『鳥にぶつかるな』という言葉だ。<br />
高校生が空を飛んでる鳥にぶつかるってのも…ねえ？<br />
まぁ私にとってみれば何の事はないけど、他の人は空飛ばないじゃん？てか、飛べないよね。うん。<br />
……何で私は空を飛べるかって？だって、私は……。<br /><br />
「おーっす、こなた」<br />
「やふー、かがみん～」<br />
「こなちゃん頭ボサボサだよ、大丈夫？」<br />
「いやぁ、ちょっと慌ててたからさぁ…」<br />
「いやいや、慌ててたとか以前に、ツノをどうにかしろ。ツノを」<br />
「え……？」<br /><br />
……私はおそるおそる自分の後頭部に手をやる。<br />
さらさらの髪の毛の感覚。その中に……明らかに異質な固い感触。<br />
まさか…これって………。<br />
「し、しまったぁぁぁぁ！！慌ててすっかり忘れてた！！」<br />
私は叫んだ。ああ、またやっちゃった………。<br /><br />
「まったく、あんたってどうしてこう毎回毎回変なのかしらねー」<br />
かがみが溜め息をついて呆れ顔でこちらをじっと見つめる。<br />
「昨日の体育なんか、こなちゃん顔がスゴかったよねー」<br />
「ホントホント。顔どころか尻尾まで生えてたじゃないの。あと、翼も」<br />
「いやぁ、気合が入りすぎるとつい変身しちゃうんだよねぇ」<br />
「…どんだけー」<br />
「まぁ、人間の生活に慣れてないのは判るけど…」</p>
</dd>
<dt id="a584"></dt>
<dd>
<p>そう……私は人間じゃない。まぁ正確に言うと、半分は人間なんだけど、ね…。<br />
「…あんたのその身体、どうにかならんのか？」<br />
「うーん…なるべく人間の姿を維持できるようには頑張ろうかなって思ってるんだけどね？」<br />
「…みんな心配してるんだから、早いとこ何とかしなさいよね」<br />
うっ…鋭いな、かがみん…！努力…するよ。うん。<br /><br />
…6限目のチャイムが鳴り、私は大きく背伸びをする。<br />
「……ふぅい～……やっと授業終わったァァァァ！」<br />
「ちょっ！こなちゃん！？」<br />
「え……？」<br />
「あちゃー…こんなんで大丈夫なのかコイツ…？」<br />
「あ、ごめん…やっちゃったZE☆」<br />
……今日もやっちゃった…。思いっきり背伸びすると、私は竜人の姿になっちゃうのだ。<br />
どうしてこうなるかな…むぅ。<br /><br />
……私の名前はこなた。泉こなた。<br />
もと冒険家で今は小説家の父親、泉そうじろうと…<br />
…かつてそんなお父さんと戦ったという伝説の竜、泉かなたとの間に生まれた…半竜人(ハーフ・ドラゴン)…。<br />
まだまだ人間としての生活は慣れちゃいないけれど……果たして私はこの先無事に高校生活を送れるんだろうか？</p>
</dd>
</dl>
<p>……それは昔々、とある国で起きた物語。<br />
その国に住む一人の冒険家が、竜の牙を手に入れるため旅立った。<br />
幾多もの困難を乗り越え…躓き、傷つき、倒れ、それでもなお諦めずまた立ち上がり。<br />
ついに彼は伝説の竜と出遭った。彼は戦った。<br />
戦って…戦って……戦い抜いて…その果てに……。<br /><br />
あろうことか、その冒険家と竜は恋に落ちてしまった。<br />
種族を超えた、禁断の恋。そして二人の間に…一つの命が生まれた……。<br /><br />
…と、こんな風に言ったらおとぎ話のように聞こえるかもしれない。<br />
「なにこのRPG？」とかツッコまれるかもしれない。でも……。<br />
これは実際に起きた出来事。そして今実際にそこにいる家族。<br />
まぁ昔って言ってもそんな遥か昔のことじゃないし、竜の牙求めて戦ったとかってわけでもなかったって言ってるみたいなんだけど…とにかく、竜と人の間に生まれた子は、今こうしてここにいる。<br />
そう……ここにいるんだ……。<br /><br />
「…んぁ」<br />
目覚ましの音で目が覚める。…もうこんな時間か……。<br />
昨日はセーブポイントが見当たんなくてつい夜更かししちゃったからなぁ。<br />
重い体を起こして私は食卓へ向かう。<br /><br />
「ふぁ～、お父さんにお母さん、おはよう～」<br />
「お、おはようこなた～」<br />
この人は私のお父さん。もと冒険家で…今は小説家。自分の冒険談を元にした小説を書いている。<br />
売上げは……まぁそこそこってとこかな？<br />
「もぅ、夜中までゲームばかりしてるから起きれないのよ？」<br />
こっちは私のお母さん。娘の私が言うのもちょーっと変かも知れないけど、かなりの美人。<br />
私とお母さんは非常によく似てて、近所の人の話だと、一瞬双子の姉妹かと思ったって言う人もいたとか。…まぁ間違えられない方が珍しいんだけどね。<br />
「むぅ、お母さんだってよく夜更かししてるじゃん～」<br />
私はまだ寝ぼけ眼のままだが、膨れっ面をしてみせる。<br />
「あら、私はこなたやそう君とは違って夜は強いのよ？」<br />
「うっ…私だってお母さんと一緒の血が流れてる筈なのに～」<br />
「きっと父さんの悪い癖が遺伝したんだな、HAHAHA☆」<br />
「もう、そう君ったら呑気なんだから！」<br />
……悪い癖、ね。あぁ…否定は出来ない…出来ないけど……。<br />
でも私だって、お母さんの子供なのに……。<br /><br />
いつも思う。<br />
お母さんは夏でもあんなに元気なのに、私は真夏なんか暑さでだらけて動けない。<br />
夜更かしして私は起きれないのに、お母さんは私よりも早く起きてたりするし。<br />
…………同じ血が流れてる筈なのに、同じじゃない。<br />
私には、お母さんの血とお父さんの血が半分ずつ…。<br />
ひょっとして、この『半分ずつ』ってのが大きいのかな？むぅ…。<br /><br />
「いってきまーす」<br />
「おう、気をつけるんだぞー」<br />
「鳥にぶつかったりしないようにねー」<br />
「お母さん……いくら私でもそうそうぶつかんないよ…」<br /><br />
お母さんが毎朝のように言うのが、『鳥にぶつかるな』という言葉だ。<br />
高校生が空を飛んでる鳥にぶつかるってのも…ねえ？<br />
まぁ私にとってみれば何の事はないけど、他の人は空飛ばないじゃん？てか、飛べないよね。うん。<br />
……何で私は空を飛べるかって？だって、私は……。<br /><br />
「おーっす、こなた」<br />
「やふー、かがみん～」<br />
「こなちゃん頭ボサボサだよ、大丈夫？」<br />
「いやぁ、ちょっと慌ててたからさぁ…」<br />
「いやいや、慌ててたとか以前に、ツノをどうにかしろ。ツノを」<br />
「え……？」<br /><br />
……私はおそるおそる自分の後頭部に手をやる。<br />
さらさらの髪の毛の感覚。その中に……明らかに異質な固い感触。<br />
まさか…これって………。<br />
「し、しまったぁぁぁぁ！！慌ててすっかり忘れてた！！」<br />
私は叫んだ。ああ、またやっちゃった………。<br /><br />
「まったく、あんたってどうしてこう毎回毎回変なのかしらねー」<br />
かがみが溜め息をついて呆れ顔でこちらをじっと見つめる。<br />
「昨日の体育なんか、こなちゃん顔がスゴかったよねー」<br />
「ホントホント。顔どころか尻尾まで生えてたじゃないの。あと、翼も」<br />
「いやぁ、気合が入りすぎるとつい変身しちゃうんだよねぇ」<br />
「…どんだけー」<br />
「まぁ、人間の生活に慣れてないのは判るけど…」<br /><br />
そう……私は人間じゃない。まぁ正確に言うと、半分は人間なんだけど、ね…。<br />
「…あんたのその身体、どうにかならんのか？」<br />
「うーん…なるべく人間の姿を維持できるようには頑張ろうかなって思ってるんだけどね？」<br />
「…みんな心配してるんだから、早いとこ何とかしなさいよね」<br />
うっ…鋭いな、かがみん…！努力…するよ。うん。<br /><br />
…6限目のチャイムが鳴り、私は大きく背伸びをする。<br />
「……ふぅい～……やっと授業終わったァァァァ！」<br />
「ちょっ！こなちゃん！？」<br />
「え……？」<br />
「あちゃー…こんなんで大丈夫なのかコイツ…？」<br />
「あ、ごめん…やっちゃったZE☆」<br />
……今日もやっちゃった…。思いっきり背伸びすると、私は竜人の姿になっちゃうのだ。<br />
どうしてこうなるかな…むぅ。<br /><br />
……私の名前はこなた。泉こなた。<br />
もと冒険家で今は小説家の父親、泉そうじろうと…<br />
…かつてそんなお父さんと戦ったという伝説の竜、泉かなたとの間に生まれた…半竜人(ハーフ・ドラゴン)…。<br />
まだまだ人間としての生活は慣れちゃいないけれど……果たして私はこの先無事に高校生活を送れるんだろうか？</p>
