「ID:eN5qnJQ0氏:怪しいバースデーメッセージ大作戦to-」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>「ただいま~、て、みんな留守か。…あん?」<br />
みさおは家の戸を開けるや、新聞受けに挟まる1枚の紙を見つけ、<br />
それを引き抜いた。『みさお様へ』と書かれ、二つ折りにされた<br />
その紙を開いて見るや、みさおは驚愕した。紙の内側にはおびただしい数の文字、<br />
新聞やチラシから切り抜かれた文字が貼られ、それはさながら、<br />
TVドラマやドキュメンタリーで見る強迫文の様であった。<br />
「何だよ…これ…」<br />
大小様々な文字のその出だしを見て、<br />
みさおはこれが自分宛ての物であると再認識した。</p>
<hr />
ー背景(笑)日下部みさお様ー
<p>みにくいアヒルの子、日下部みさお様、あんたの<br />
ささくれた翼では、自由に飛び立つことは出来ない。<br />
おまえは一生地面に這い蹲って生きるしかないのだ。<br />
さげすまされながら、無様に地め<br />
んをのたうち回る、アヒル、いや、むしろ蟲だ。<br />
おとぎ話の様な願いを叶えてくれる魔法使い、白馬の王子様なんていやしない。<br />
ただ死ぬまで背景として裏の裏で生きるのが、お前のさだめ。いつまでも、え<br />
んえんともがけ、浅ましく汚らわしいう<br />
じ虫よ、醜い醜い蠅の子よ<br />
ょっつの足でゴミの中を這いつく回れ。<br />
うめけ!叫べ!泣きわめけ!そして産まれてきた事をわ<br />
びろ。親に、辺りに、世界の全てに!<br />
お前の、お前の現実は何だ?<br />
めだまをかっ開いてよく見て見ろ<br />
でたらめな友情、うそっぴちな絆、表面だけの関係、<br />
とても見れたものじゃないだろう?そもそもおまえわ<br />
う・そ・で・す♪ここまで読んで下さって<br />
ごくろう様です。<br />
ざっと見た感じ酷いですよね、僕は止めたんですけど<br />
いっこうにXXX様、折れてくれなくて、しょうがないので後半は改変しちゃいました。<br />
まことに申し訳ない。<br />
すべてはジョークだと思って笑って流して下さい。いやほんと、申し訳ないです。</p>
<hr />
貼られた文字はこれで最後だった。<br />
最後の辺りはそう記されている通り、貼り直しの跡がまじまじと見受けられたが、<br />
気味の悪さをぬぐい去るには至らず、みさおは顔をしかめ続けていた。<br />
「…何だよ、これ、新手の嫌がらせ?ストーカーか?わけわかんねー」<br />
みさおは紙をくしゃくしゃにすると、心配そうに辺りを見回しながら、<br />
逃げる様に家の中へと入って行った。
<p> </p>
<p>みさお宅より少し離れた場所に、みさおの姿を見つめる2つの影があった。<br />
ばれないように物陰に潜み、みさおの反応を確認する、2人組。<br />
「やっぱりマズいですよ…」<br />
「ああん?私の『怪しいバースデーメッセージ大作戦』にケチつける気!?」<br />
「最悪警察呼ばれちゃいますよ?最近色々あるみたいですし…」<br />
「警察?上等じゃない!そんときゃそん時でもっと盛大に祝ってやるわよ!」<br />
「盛大にって…あれ?…窓から顔出して<br />
…やば!あきら様!俺達見られてますよ!」<br />
「嘘!?…あっ、…なんか手振ってる…右手に…何持ってるんだろ?<br />
白石、あんた双眼鏡持ってたわよね?」<br />
「…ちょっと待ってください?ええと……画用紙?じゃない、あれは、ホワイトボード?<br />
何か書いてありますね。ふむふむ?<br />
『メッセージ…さんきゃー!夕方から誕生日会やんだけど、こねーか?』<br />
…あ、メールも来てる…。僕達、誘われてるみたいですね。<br />
あきら様、どうします?やんわり断りますか?」<br />
「誕生日会…誘ってくれてるの?」<br />
「ええ」 「私と、あんたを?」<br />
「みたいですね。文面的に」 「あんた、これから仕事?」<br />
「今日はオフですよ?だからこうして一緒に」<br />
「…白石、今から買い物行こう…」<br />
「へ?ショッピングですか?あきら様人使い荒いからな~(小声)」<br />
「なわけねーだろ!誕生日プレゼントだ!誕生日プレゼント買いに行くの!<br />
誘われてるんだからプレゼントがなきゃ示しつかないでしょ!<br />
それに…一応謝らないと…。善は急げ!白石、メール返しといて!」<br />
「あ、あきら様?…」 「♪~♪」<br />
白石はメールを速打ちし、満面の笑みで先を急ぐあきらのその後を追うのだった。<br />
そんな2人を窓から微笑まし気に見送ると、みさおはカレンダーの日付を確認し<br />
そしてこれから始まるパーティーに、胸をときめかすのだった。</p>
<p>「みんな早く、来ないっかな~♪」</p>
<p> </p>
<p><br />
そしてみさおは…目を覚ました。<br />
「あれ……?……夢?」</p>
<p>7月21日、朝、今にも雨が降りそうなほどに空はどんよりと淀んでいた。<br />
でも、みさおから溜息は漏れなかった。<br />
むしろみさおの心は太陽よりも熱く、滾っていた。<br />
机に並ぶプレゼントを見てはにんまりと口歪ませ、<br />
昨日のパーティーを思い返せば、例え雨が降っても、<br />
それは雨の神様からの祝福に他ならないと、そう思えて仕方のないみさおだった。<br />
「…あいつらも…結構良いヤツらだよな」<br />
飛び入り参加者2名からのプレゼントを見て、みさおは呟く。<br />
1つは可愛らしいぬいぐるみ兼オルゴール、<br />
オルゴールの曲はみさおのお気に入りの曲だった。<br />
みさおはそれを手に取り、背中のネジを回す。<br />
するとぬいぐるみはゆっくり身体を揺らし<br />
曲を奏で始めた。動のみさおに対して静のぬいぐるみ、<br />
『私には似合わない』と思いつつも、<br />
みさおもまた自然とぬいぐるみに合わせ、身体を揺らし始めるのだった。<br />
もう1つは『あいつには似合わねーよ』と言わんばかりの大きな花束だった。<br />
「告白じゃないんだから」と周りからも突っ込まれた彼からのプレゼントは、<br />
『こりゃ、あやの向きだな』そう思いたくなるほどの艶やかさを誇り、みさおの部屋に<br />
異形の彩りを添えていた。みさおは花々の放つ芳しい香りに、違和感を覚えていた。<br />
ぬいぐるみがあって綺麗な花があって、この部屋がまるで<br />
他人の部屋の様に思えてしまう。不思議な違和感、心地の良い不可解な違和感。<br />
ベッドの上にちょこんと座り、みさおは曲が終わるまでそんな違和感の波に身を委ね、<br />
そして静かに心を潤せる。</p>
<p> </p>
<p>「…うん、良い曲だ……んぐぐぐぐー!」<br />
オルゴールの演奏が終わり、みさおは余韻に浸りながら背を伸ばす。<br />
窓の外は、相変わらずの曇天模様。<br />
「こんな日は部屋でゆっくり読書ってのも、悪くねーかもな」<br />
よっ!とベッドから跳ね起き、みさおはクローゼットの前へとやってきた。<br />
その戸を開けて、いつもは無縁の引き出しから1着のワンピースを取り出し、<br />
それを身に当て、姿見に写してみる。<br />
「こんな服なんて着てさ」<br />
誰が見ても絶対からかう、そうに思えてならない淡い水色のワンピース、<br />
親が無理矢理買ってきて、「たまには女の子らしい格好でも」と言われ、<br />
渡されつつも、試しに一度来たきりでそれきりの、不遇の代物であった。<br />
「お茶の時間には紅茶なんか飲んだりとか」<br />
鏡の中のみさおは、みさおが思っている以上に少女然としていて、<br />
本当に上品な振る舞いが出来たら、どこぞの令嬢と見間違われるのでは?<br />
等と一瞬思ったが、みさおはすぐに正気を取り戻した。それと同時に<br />
気恥ずかしさがこみ上げ、みさおの頬は急に赤味を増していく。<br />
「なはは、まあ、こいつは、ITの私、ってヤツだな。…あれ?ifだっけ?ま、いっか」<br />
ワンピースを仕舞い、シャツとハーフパンツに着替え、みさおはもう一度背伸びをする。<br />
「そもそも読書ったって、漫画しかねーじゃん」<br />
はははと笑いながらもう一度伸びをし、花の香りを嗅ぐ。<br />
「…悔しいけど…いい臭いだよな…」<br />
今度は自嘲気味に笑み、頬を平手打ち、よし!と気合いを入れ、<br />
「帰ってきたら、まとめて面倒見てやりますか!」<br />
みんなからのプレゼントを見やる。<br />
みんなの気持ちがエネルギーの奔流となって、みさおの体内を暴駆する。<br />
みさおは今や、メルトダウン寸前にまで追い込まれていた。気持ち的に。<br />
その高揚した気を放出させんと、みさおはひそり部屋を抜け、一路玄関を目指す。</p>
<p>午前5時、日下部家玄関前。<br />
涼やかな風がみさおの肢体を撫でてゆく。<br />
晴れる兆しは見れないものの、みさおの心は清々しさに満ちていた。<br />
哮るこの気持ちを解放するには、これしかない。</p>
<p>ー猪突猛進ー</p>
<p>みさおは大きく息を吸い、そして懇親の力で大地を蹴り上げた。<br />
エネルギーの爆発、もし見える人が見たら、みさおの全身から<br />
真っ赤なオーラの迸りが見えただろう。血の様な炎の様な、<br />
そしてマグマの様な、それはどんなに距離を走らせても衰える事無く、<br />
みさおの全身から噴き放たれていた筈だ。<br />
みさおは走り続ける。力の限り、滾る心のある限り!</p>
<p>そしてみさお!誕生日おめでとう!</p>
<p>~終わり~</p>
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