その四人は

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陵桜学園、アニメーション研究部部室――― その部室内には、真っ青な表情で呻き声をあげるひよりが居た。 「うーん、ネタが思いつかないぃい・・・」 「ひよりん。また締め切りキツいの?」 そう声をかけたのは、こうだった。 こうは額に手を当てて「呆れた」という格好をしながら言った。 「ひよりーん・・・忙しいのは分かるんだけど、毎回の事なんだからいい加減スケジュールとか考えなー?」 こうの厳しい言葉に、ひよりは力無く返答する。 「うう・・・やっぱ勉強も両立させないと・・・元々この高校に居るのは親が漫画とか許してくれないわけでして・・・」 実はと言うと、ひよりの親はなかなか厳しいらしく陵桜学園のような、 偏差値の高い高校に居ないと漫画や同人活動は言語道断、ということらしい。 「はぁ・・・あんたもウチみたいに気楽な感じが良かったのにな・・・」 溜息をつきながら、こうは席に着いて電卓と帳簿を取り出した。 生徒会での会計の仕事を始めたのだ。 こうに放置されたひよりは、必死にネタを探していた。 どうしよう。そう考えている今も、刻一刻と時間は流れている。 「・・・・そうだ」 思いついた・・・ひよりは確信した。 ひよりはまるで覚醒したかのように目を輝かせて、急いで画材道具を鞄に放り込むと、 「こうちゃん先輩っ!お先ですっ!」 「え!?ちょ、ひよりーん!!!」 静止をかけようとするこうの言葉を無視して、ひよりは走り出した。 そうだ・・・あの先輩なら私を助けてくれるっ! そんな思いつきが、ひよりの脳裏に過ぎっていた。 ひよりが向かったのは三年教室、3-Bである。 既に終業の鐘が鳴っていた為、目的の先輩が居るかどうかかなり微妙だった。 ひよりは、「頼む先輩よ居てくれ」と何度も呟きながら3-Bの扉を勢いをつけて開けた。 「先輩いますかっ!?」 「ふおっ!?」 教室から返って来た驚いた声に、ひよりは安堵の溜息をついた。 居てくれたのだ。最後の希望、泉こなたが。 こなたは丁度鞄に荷物を詰め終えたところらしい。 「ど・・どしたのひよりん?」 こなたは何だこいつ、という表情でひよりを眺めていたが状況を飲み込めたらしく、 「・・・もしかしてネタに詰まってるとか?」 ひよりはその質問に対して即座に、 「そうなんスよ、だから泉先輩に協力して頂きたくここまで来たんです!」 と返答した。こなたはどーしたものかと考えて頭を掻いた。 「協力って言ってもねぇ・・・私は見る側だからどうすればいいのか分からないよ?」 「そこは先輩の幅広い知識で何とか!」 「うーん・・・」 こなたとしてはさっさと帰ってアニメが観たいなぁ、と思っていたが 後輩が困っているのを見棄てる程薄情ではなかった。 「うん分かった。私に着いて来てひよりん!」 「えっ?あ、はいっ!」 教室を出たこなたは思いついた所に適当にひよりを捨てて行こう、と考えていた。 そうとも知らないひよりは「これで漫画も間に合った!」等と浮かれているのだった。 電車に揺られて30分程で目的地に着いた。 その目的地とはひよりには見覚えのない、ごく普通の家だった。 「あの~・・・泉先輩、ここはどこッスか?」 こなたはニヤニヤ笑いながら答えた。 「インターホン押したら分かるよ?じゃ、私はこの辺で」 「えっ?泉先ぱ・・・」 ひよりが声をかけようとした時にはこなたの姿は無く、既に遠くまで離れていた。 「はっ、速っ!奥歯に加速装置でも付いてるの!?」 どんな時でも一般人に分かり辛いネタを放出するのがひよりである。 それはさておき、ひよりは連れて来られた場所をまだ知らない。 「・・・・どうしようかな・・・」 ひよりはインターホンの前でうろうろして暫く悩んだ後、 「もういいやっ、押しちゃえーーー!」 思いっきりインターホンを押したのだった。 「ピンポーン」という馴染みの音が家の中に響き渡った。 それから暫く間が空いて、 「はい?」 と返答が返って来た。 ひよりは聞き覚えのある声だな・・・と思い返答する。 「あ、どうも。田村ひよりですけど」 「え?ひよりちゃん?待っててね、今出るから」 と言われて切られた。 誰だっけなぁ・・この声・・・・ それからまた暫く経って、ガチャリと玄関の扉が開かれた。 出てきたのは、 「ひよりちゃん、どうしたのー?」 こなたの同級生、柊つかさだった。 「お邪魔します」 つかさに招かれてひよりは家の中へと入れてもらった。 ひよりの脳内は既に、「そうか・・・泉先輩、柊先輩をネタにしろと!?」と妙な理論で埋め尽くされている。 捨てられただけだと言う事にまだ気が付かないのだった。 「で・・・ひよりちゃんはどうしてウチへ来たのー?」 つかさは首を傾げながら聞いた。 そんな疑問が飛んでくるのは無論、無理も無い。 ひよりは咄嗟に思いついた言い訳を言った。 「じ、実はウチのクラブで先輩を取材しようって事になりまして・・・それで柊先輩の所に来たッス」 「どんなに適当な言い訳であろうと単純な柊先輩なら騙せる」というのがひよりの魂胆であり、案の定、 「へぇ~そうだったんだ~」 とつかさは簡単に騙された。 若干良心が痛むのを何とか無視したひよりは本題へと移るべくつかさに、 「早速ですが・・・お姉さんを呼んで頂けないですか?」 と頼んだ。 「うん、分かった~」 つかさはのんびりと立つと、姉を呼びに二階へ向かって行った。 それからまた少ーしだけ間が空いた。 その間にひよりはここまで上手くネタが入ったのが余程嬉しいのか、 もうちょっとで出そうな不敵な笑みを堪えるのに必死だった。 たまに通りかかる柊父、ただおに不審な目で見られたりしていた。 そして――― 「おお・・・」 思わずひよりの口から漏れた言葉。 ひよりの目の前に居るのは、四人の美人な少女だった。 つかさを除いた三人は「何なの?」とか「勉強してたのにー」と口々に文句を言っていた。 そんな中でも、つかさは笑いながら言った。 「紹介するね、ひよりちゃん。ひよりちゃんから見て右端から、 いのりお姉ちゃん、まつりお姉ちゃん、かがみお姉ちゃん、そして私だよ」 ひよりはつかさは知っていたが、四人姉妹だとは初耳だった。 しかも、揃いも揃って綺麗な人とも思った。 「で・・何でも聞いてよ。どうせ取材なんて質問とかそんなものでしょう?」 若干胡散臭そうな顔をしていたかがみだが、そんな嘘をついてどうするのかと聞かれると、 ちっとも思いつかないので疑問を口に出すのはやめていた。 ひよりも「不審に思われてるなぁ・・・」とは思ったが、そんな顔をして居るのはかがみ位なので、 早速質問(無論ネタの為の)を始める事にした。 「それでは早速・・・」 質問・・・と言ってもあんまりマニアックな質問をすると感づかれるしなぁ・・・ そう思ったひよりは無難で、かつネタになりそうな質問をする事にした。 「巫女さんやってて困った事とかありますか?」 バレない事を祈りながら質問したひよりは、さりげなくメモ帳を用意した。 「困った事?そうねぇ・・・」 「一回さ、つかさが変な男に連れ去られそうになってなかった?」 まつりが平然としてとんでもない事を言い出した。 「ええ!?そんな事あったんですか!?」 ひよりが驚いた表情をするといのりが、 「そうねえ、確か3ヶ月くらい前の事だったわね・・・」 いのりは三ヶ月前の事を話し出した。 「つかさー、向こうの方掃除してきてよー」 「うん、分かった~」 かがみに言われてつかさは神社の鳥居の方へと向かった。 その日は両親の言いつけで神社の掃除をする事となっていた。 四人は散り散りになって結構広い神社を掃除していた。 いのりとまつりは裏手、かがみは表側。 そしてつかさは入り口、即ち鳥居の側の方だった。 掃除を始めて、それなりに時間が経った。 かがみが落ち葉の山を3つ程作った時だった。 「ひあっ!?あ、あなた誰ですか、キャアアア!?」 「つかさ!?」 つかさが何者かに連れ去られそうになっているのだ。 かがみは咄嗟に手に持っている箒を構えて、 「私の妹に何してるのよっ!うりゃあああああああ!」 思いっ切りぶん投げた。男らしく。 箒は本当に女が投げたのかと問いたくなる速さで男に向かって行った。 が、案の定、男に弾かれて、空しく地面へと落ちた。 「おっ、お姉ちゃーーーん!」 つかさは泣きじゃくりながら必死にもがいているが男の力に勝てるはずも無かった。 男はそのまま鳥居の前の長い石段を下って行こうとした。 その時だった。 「つかさを放しなさーいっ!」 何事かと裏手から戻ってきたまつりはかがみがしたように箒を投げた。 姉妹揃って速い箒は男の背後にクリーンヒットした。 箒が直撃した男は呻きながら倒れた。 「これを使って!」 まつりの後に続いて戻ってきたいのりは注連縄(しめなわ)を持っていた いのりはその注連縄をかがみに投げ渡した。 「このッ・・・よくもつかさに手を出してくれたわね!」 かがみはいのりから受け取った注連縄で男を縛り上げた。 そのまま男は気絶、数分後にやってきた警察に捕らえられた。 「―――っていう事があってねー」 ひよりは正直言って、どうリアクションを取れば良いのか分からなかった。 まつりが自慢げに、 「私、槍投げの才能があるんじゃないかって思ったのよ」 と言っているのを見て、 ひよりがパッと思い付いた「この姉妹に手出しすると危ない」という項目がメモに書き込まれたのだった。 それから数日。ひよりの漫画は、 何とか締め切りに間に合ったようで題名は 『闘う乙女達 ~巫女編~』 というものだった。 ひよりは恋愛物が書きたかったのだが、バトル漫画を考えることとなったのだった。 あの姉妹をネタにしたのでは恋愛物を描く事など不可能と思ったからだ。 隣で一緒に売り子をしていたパティに、 「アレ?コレシリーズ物デスカ?巫女編って書いてマスケド」 と聞かれ、返答を曖昧にしつつひよりは、 「次辺り、絶対泉先輩をネタにしてやる・・・」 と新たな計画を企てていたのだった。 END 「その四人はバトル系」
陵桜学園、アニメーション研究部部室――― その部室内には、真っ青な表情で呻き声をあげるひよりが居た。 「うーん、ネタが思いつかないぃい・・・」 「ひよりん。また締め切りキツいの?」 そう声をかけたのは、こうだった。 こうは額に手を当てて「呆れた」という格好をしながら言った。 「ひよりーん・・・忙しいのは分かるんだけど、毎回の事なんだからいい加減スケジュールとか考えなー?」 こうの厳しい言葉に、ひよりは力無く返答する。 「うう・・・やっぱ勉強も両立させないと・・・元々この高校に居るのは親が漫画とか許してくれないわけでして・・・」 実はと言うと、ひよりの親はなかなか厳しいらしく陵桜学園のような、 偏差値の高い高校に居ないと漫画や同人活動は言語道断、ということらしい。 「はぁ・・・あんたもウチみたいに気楽な感じが良かったのにな・・・」 溜息をつきながら、こうは席に着いて電卓と帳簿を取り出した。 生徒会での会計の仕事を始めたのだ。 こうに放置されたひよりは、必死にネタを探していた。 どうしよう。そう考えている今も、刻一刻と時間は流れている。 「・・・・そうだ」 思いついた・・・ひよりは確信した。 ひよりはまるで覚醒したかのように目を輝かせて、急いで画材道具を鞄に放り込むと、 「こうちゃん先輩っ!お先ですっ!」 「え!?ちょ、ひよりーん!!!」 静止をかけようとするこうの言葉を無視して、ひよりは走り出した。 そうだ・・・あの先輩なら私を助けてくれるっ! そんな思いつきが、ひよりの脳裏に過ぎっていた。 ひよりが向かったのは三年教室、3-Bである。 既に終業の鐘が鳴っていた為、目的の先輩が居るかどうかかなり微妙だった。 ひよりは、「頼む先輩よ居てくれ」と何度も呟きながら3-Bの扉を勢いをつけて開けた。 「先輩いますかっ!?」 「ふおっ!?」 教室から返って来た驚いた声に、ひよりは安堵の溜息をついた。 居てくれたのだ。最後の希望、泉こなたが。 こなたは丁度鞄に荷物を詰め終えたところらしい。 「ど・・どしたのひよりん?」 こなたは何だこいつ、という表情でひよりを眺めていたが状況を飲み込めたらしく、 「・・・もしかしてネタに詰まってるとか?」 ひよりはその質問に対して即座に、 「そうなんスよ、だから泉先輩に協力して頂きたくここまで来たんです!」 と返答した。こなたはどーしたものかと考えて頭を掻いた。 「協力って言ってもねぇ・・・私は見る側だからどうすればいいのか分からないよ?」 「そこは先輩の幅広い知識で何とか!」 「うーん・・・」 こなたとしてはさっさと帰ってアニメが観たいなぁ、と思っていたが 後輩が困っているのを見棄てる程薄情ではなかった。 「うん分かった。私に着いて来てひよりん!」 「えっ?あ、はいっ!」 教室を出たこなたは思いついた所に適当にひよりを捨てて行こう、と考えていた。 そうとも知らないひよりは「これで漫画も間に合った!」等と浮かれているのだった。 電車に揺られて30分程で目的地に着いた。 その目的地とはひよりには見覚えのない、ごく普通の家だった。 「あの~・・・泉先輩、ここはどこッスか?」 こなたはニヤニヤ笑いながら答えた。 「インターホン押したら分かるよ?じゃ、私はこの辺で」 「えっ?泉先ぱ・・・」 ひよりが声をかけようとした時にはこなたの姿は無く、既に遠くまで離れていた。 「はっ、速っ!奥歯に加速装置でも付いてるの!?」 どんな時でも一般人に分かり辛いネタを放出するのがひよりである。 それはさておき、ひよりは連れて来られた場所をまだ知らない。 「・・・・どうしようかな・・・」 ひよりはインターホンの前でうろうろして暫く悩んだ後、 「もういいやっ、押しちゃえーーー!」 思いっきりインターホンを押したのだった。 「ピンポーン」という馴染みの音が家の中に響き渡った。 それから暫く間が空いて、 「はい?」 と返答が返って来た。 ひよりは聞き覚えのある声だな・・・と思い返答する。 「あ、どうも。田村ひよりですけど」 「え?ひよりちゃん?待っててね、今出るから」 と言われて切られた。 誰だっけなぁ・・この声・・・・ それからまた暫く経って、ガチャリと玄関の扉が開かれた。 出てきたのは、 「ひよりちゃん、どうしたのー?」 こなたの同級生、柊つかさだった。 「お邪魔します」 つかさに招かれてひよりは家の中へと入れてもらった。 ひよりの脳内は既に、「そうか・・・泉先輩、柊先輩をネタにしろと!?」と妙な理論で埋め尽くされている。 捨てられただけだと言う事にまだ気が付かないのだった。 「で・・・ひよりちゃんはどうしてウチへ来たのー?」 つかさは首を傾げながら聞いた。 そんな疑問が飛んでくるのは無論、無理も無い。 ひよりは咄嗟に思いついた言い訳を言った。 「じ、実はウチのクラブで先輩を取材しようって事になりまして・・・それで柊先輩の所に来たッス」 「どんなに適当な言い訳であろうと単純な柊先輩なら騙せる」というのがひよりの魂胆であり、案の定、 「へぇ~そうだったんだ~」 とつかさは簡単に騙された。 若干良心が痛むのを何とか無視したひよりは本題へと移るべくつかさに、 「早速ですが・・・お姉さんを呼んで頂けないですか?」 と頼んだ。 「うん、分かった~」 つかさはのんびりと立つと、姉を呼びに二階へ向かって行った。 それからまた少ーしだけ間が空いた。 その間にひよりはここまで上手くネタが入ったのが余程嬉しいのか、 もうちょっとで出そうな不敵な笑みを堪えるのに必死だった。 たまに通りかかる柊父、ただおに不審な目で見られたりしていた。 そして――― 「おお・・・」 思わずひよりの口から漏れた言葉。 ひよりの目の前に居るのは、四人の美人な少女だった。 つかさを除いた三人は「何なの?」とか「勉強してたのにー」と口々に文句を言っていた。 そんな中でも、つかさは笑いながら言った。 「紹介するね、ひよりちゃん。ひよりちゃんから見て右端から、 いのりお姉ちゃん、まつりお姉ちゃん、かがみお姉ちゃん、そして私だよ」 ひよりはつかさは知っていたが、四人姉妹だとは初耳だった。 しかも、揃いも揃って綺麗な人とも思った。 「で・・何でも聞いてよ。どうせ取材なんて質問とかそんなものでしょう?」 若干胡散臭そうな顔をしていたかがみだが、そんな嘘をついてどうするのかと聞かれると、 ちっとも思いつかないので疑問を口に出すのはやめていた。 ひよりも「不審に思われてるなぁ・・・」とは思ったが、そんな顔をして居るのはかがみ位なので、 早速質問(無論ネタの為の)を始める事にした。 「それでは早速・・・」 質問・・・と言ってもあんまりマニアックな質問をすると感づかれるしなぁ・・・ そう思ったひよりは無難で、かつネタになりそうな質問をする事にした。 「巫女さんやってて困った事とかありますか?」 バレない事を祈りながら質問したひよりは、さりげなくメモ帳を用意した。 「困った事?そうねぇ・・・」 「一回さ、つかさが変な男に連れ去られそうになってなかった?」 まつりが平然としてとんでもない事を言い出した。 「ええ!?そんな事あったんですか!?」 ひよりが驚いた表情をするといのりが、 「そうねえ、確か3ヶ月くらい前の事だったわね・・・」 いのりは三ヶ月前の事を話し出した。 「つかさー、向こうの方掃除してきてよー」 「うん、分かった~」 かがみに言われてつかさは神社の鳥居の方へと向かった。 その日は両親の言いつけで神社の掃除をする事となっていた。 四人は散り散りになって結構広い神社を掃除していた。 いのりとまつりは裏手、かがみは表側。 そしてつかさは入り口、即ち鳥居の側の方だった。 掃除を始めて、それなりに時間が経った。 かがみが落ち葉の山を3つ程作った時だった。 「ひあっ!?あ、あなた誰ですか、キャアアア!?」 「つかさ!?」 つかさが何者かに連れ去られそうになっているのだ。 かがみは咄嗟に手に持っている箒を構えて、 「私の妹に何してるのよっ!うりゃあああああああ!」 思いっ切りぶん投げた。男らしく。 箒は本当に女が投げたのかと問いたくなる速さで男に向かって行った。 が、案の定、男に弾かれて、空しく地面へと落ちた。 「おっ、お姉ちゃーーーん!」 つかさは泣きじゃくりながら必死にもがいているが男の力に勝てるはずも無かった。 男はそのまま鳥居の前の長い石段を下って行こうとした。 その時だった。 「つかさを放しなさーいっ!」 何事かと裏手から戻ってきたまつりはかがみがしたように箒を投げた。 姉妹揃って速い箒は男の背後にクリーンヒットした。 箒が直撃した男は呻きながら倒れた。 「これを使って!」 まつりの後に続いて戻ってきたいのりは注連縄(しめなわ)を持っていた。 いのりはその注連縄をかがみに投げ渡した。 「このッ・・・よくもつかさに手を出してくれたわね!」 かがみはいのりから受け取った注連縄で男を縛り上げた。 そのまま男は気絶、数分後にやってきた警察に捕らえられた。 「―――っていう事があってねー」 ひよりは正直言って、どうリアクションを取れば良いのか分からなかった。 まつりが自慢げに、 「私、槍投げの才能があるんじゃないかって思ったのよ」 と言っているのを見て、 ひよりがパッと思い付いた「この姉妹に手出しすると危ない」という項目がメモに書き込まれたのだった。 それから数日。ひよりの漫画は、 何とか締め切りに間に合ったようで題名は 『闘う乙女達 ~巫女編~』 というものだった。 ひよりは恋愛物が書きたかったのだが、バトル漫画を考えることとなったのだった。 あの姉妹をネタにしたのでは恋愛物を描く事など不可能と思ったからだ。 隣で一緒に売り子をしていたパティに、 「アレ?コレシリーズ物デスカ?巫女編って書いてマスケド」 と聞かれ、返答を曖昧にしつつひよりは、 「次辺り、絶対泉先輩をネタにしてやる・・・」 と新たな計画を企てていたのだった。 END 「その四人はバトル系」

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