京太郎「そうか?」

咲「うん……」

京太郎「何そんなしみったれた顔をしているんだよ」

ホッペギュッ

咲「あわわわ……もうやめてよ」

京太郎「そんな顔をする咲が悪いわ」

咲「もう……あのさ、京ちゃん」

京太郎「なんだ?」

咲「どっか……行ったりしないよね」

京太郎「……またつねられたいのか」

咲「もう! じゃあもういいよっ! また明日ね!」

京太郎「ああ、また明日な」

バタン!

京太郎「……さすが咲、感が良いなぁ……」


ツカツカツカ……

?「京太郎、準備は済んだか?」

京太郎「……ええ、もう、十分です」

?「うむ、ついて来い……」

京太郎「ええ、わかってますって」


………………

…………

……


  • 次の日……

咲「もう京ちゃんったら、こっちがまじめな話をしてるのに、ほっぺた引っ張ったりするんだもん」

和「それは許せませんね」

優希「犬にはしつけが必要だじぇ!」

咲「じゃあ放課後ね」

和「はい、部活で」

優希「早く昼ごはんになって欲しいじぇ!」

ガラガラ……

咲「さて、準備……あれ? 京ちゃんの机が……無い?」

咲「あ、あの、先生? 須賀君の机が無いんですが?」

先生「ああ、須賀は昨日、急な転校でな。こっちも手続きがいきなり舞い込んで……まったく……」ブツブツ……

咲「え……? て、転校……京ちゃん……が…………?」

バッ

先生「!? おい、宮永! もう少しでHRが始まるのにどこいくんだ!?」

咲(京ちゃん……!)


ポツ…ポツ……

咲(雨が降ってきちゃったよ……)ハァ…ハァ…

ザー------

咲(でももうちょっと……急がないと……)

咲「はぁ……はぁ…………京ちゃんの、家、この先だよ……ね…………」

咲「何も言わずに居なくなっちゃうなんて……いったい…………なんで…………」

咲「この、角を…………曲がって…………………………え?」


咲がかつて訪れたことのある、須賀京太郎の自宅。
決して豪邸とは言えないが、しかし確かにそこに存在していたはずの建物は、無かった。
跡形も無く、ただ、更地のみが風雨に晒されていた。


咲「うそ…………こんなの…………うそ…………だよ…………ね…………?」

咲「京……ちゃん………………」


京太郎は誰にも行く先を告げず、まるで人々の記憶から消えるように立ち去った。
ただ、咲をはじめ麻雀部の面々だけは、京太郎のことを心配し続けた。


そして、半年の月日が流れた……


バタン

久「うーさむさむ……もう冬かぁ……」

マコ「部長……また来おったんかぁ?」

久「みんなが心配なのよ。それにもうマコが部長でしょ?」

マコ「そんなこと言いおって、ただ麻雀しに来ただけじゃろ? それにワシにとっての部長はあんただけじゃけぇ、誰も間違えんじゃろう」

久「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

和「あ、元部長、受験の方は大丈夫なんですか?」

久「息抜きも必要よ。和も再来年は受験よ?」

和「私はプロに行くつもりですので」

久「……言うようになったわね」

優希「久しぶりだじぇ! 早く麻雀打とうじぇ!」

久「昨日も来たけどね。咲は?」

和「掃除をしてから来るそうです」

久「そう……。あれから咲の調子はどう?」

優希「咲ちゃん、今日も元気いっぱいだったじぇ!」


久「そう……ちょっと安心したわ」

マコ「相変わらず部長は過保護じゃのう」

和「それも仕方ありません。一時期の咲さんの落ち込みは見ていられませんでしたから……」

久「全く……須賀君ってば…………あの甲斐性なし、今はどこで何をしているのかしら?」

優希「けしからん犬だったじぇ! 私のタコスを買って来る仕事をほっぽりだして、どこをほっつき歩いてるんだじぇ!」

和「優希も、あまり落ち込まないように」

優希「何を言ってるんだじぇ! これっぽっちも犬の事なんか心配じゃないじぇ!」

和「優希……」

優希「ただ……ただ、いろいろと大変だから、早く帰ってくるといいと思っているだけだじぇ……」

久「……………………ん――、じゃあ、咲が来るまでみんなで待ってましょうか?」

マコ「そうじゃのう、では、テレビでもつけようかのう」

和「紅茶の用意をしてきますね」

優希「タコスを食べてるじょ!」

マコ「リモコンは、ここか」

ポチッ…


咲「ふぅ……掃除に結構時間かかっちゃった……」

咲「外は寒いなぁ…………早く部室に行かないと……あ…………」

咲「雪だ……………………」





『……緊張が高まる日中間ですが、胡錦濤国家主席の退任により、新たな局面を迎えようとしています』

久「うーん、政治のニュースばっかりね」

和「受験生なんですから、時事問題もある程度しっておかなければならないのではないでしょうか?」

マコ「和の言うとおりじゃのう」

久「あら、侵害ね。私だって世界情勢くらい知っているわよ。この中国は習近平って人に近々代わるのよね」

『新しい国家主席には習近平氏が決まっており……」

優希「お――――! 当たったじぇ! さっすが部長!!」

久「ふふ、私もやるでしょ」

マコ「これくらいですぐに調子に乗ってもらったら困るけぇ……」

『これより、首相と胡錦濤国家主席、習近平中央軍事委員会副主席との、公開…………』


ガチャ……

咲「すいませーん、遅れました」

久「……」

咲「そういえば外が凄く寒くてですねぇ……」

マコ「……」

『……湖…………小……………1打…………』

咲「それで、空から何か降ってきて、雨かなって思ったんですけど、なんと! 雪でした!」

和「……」

『………………削ら………………ダマ…………』

咲「初雪ですね…………あの、聞いてます」

優希「咲ちゃん…………」

咲「えっと、みんなしてテレビ見て、どうしたの?」

久「あれ……」

咲「あ、首脳たちのやってるやつですか? 中継なんて珍しいですね」

マコ「そうじゃのうて…………いや、それもあるが…………」


『日本…………出遅れ…………』

咲「? 政治に関心を持つのは良いことだと思いますけど私はあんまり」

和「咲さん、あれを見てください」

咲「あれ? あ、この人は確か中国で一番偉い人だね。一人は知らない人だけど……あ、この人は有名だよね」

咲「小泉ジュンイチロー首相!」

『…………小泉……ベタ降り…………日本の運命……この人物に…………』

久「麻雀は4人で打つものよ」

咲「あ、もう一人のいるってことですよね…………」

咲「画面がもう一人になかなか切り替わらないけど……」

『突如小泉首相が…………謎の青年………………』

咲「あ、切り替わった……………………」

咲「…………………………え?」

『ヘルカイザー氏に委ねられました!』

咲「京ちゃん!?』


マコ「ああ、マスクをしているが、これは京太郎に間違いないじゃろう……」

咲「でも、こんなことって……」

和「咲さん、須賀君の牌を見てください」

咲「牌? え……これ……」

久「首相レベルになると役満が驚くほど普通にでるけど、まさか須賀君が、ねぇ……」

優希「犬のくせになかなかやるじぇ……」

咲「点数から考えると……決まれば……」

『おおっとぉ! ここで胡錦濤氏がヘルカイザー氏に放銃! トリプル役満により奇跡の大逆転!』

和「ちょっと…………信じられませんね!」

久「うん…………夢じゃないかしら…………」

咲「京ちゃん…………麻雀…………ずっとやっていたんだね…………」

『これにより、尖閣諸島が日本の領土であることを、世界に向け大きくアピールすることになりました!!』

『ありがとう! 小泉首相! ありがとう! ヘルカイザー!!』

咲「京……ちゃん……」


ジュンイチロー「京太郎、大丈夫か」

京太郎「その名前はもう捨てたんで……、はは……さすが首脳の麻雀は凄いっすね…………生きてるのが不思議なくらいだ……」

ジュンイチロー「…………今日は助かった。また力を借りるぞ」

京太郎「はは……いいですよ…………死ぬまでお供しますよ………………次はどこですか……?」

ジュンイチロー「韓国だ……」


……

…………

………………


次の日、日本は久しぶりの明るいニュースに沸き立った。
それはもちろん、謎の青年ヘルカイザー氏の活躍によってである。
テレビ、新聞やネットは言うに及ばず、話題はまさにヘルカイザー一色。
誰もが日本の危機を救ったその青年の正体について噂立てる。
しかし、真相にたどり着く者は誰一人いなかった……。


咲「京ちゃん、どこもかしこも京ちゃんの活躍でいっぱいだよ」

咲「でもね、京ちゃん……私は知ってたよ……京ちゃんが凄いってこと……」

咲「ただ……私はね……わたしは…………すごくなんかなくていいから………………ずっと……そばに居てほしかったな……」

咲「なーんて、私のわがままでみんなのヒーローをとったらダメだよね」

?「あの、すいません……」

咲「? はい、何でしょうか?」

?「宮永咲さんでしょうか?」

咲「ええ、そうですけど……」

?「…………」



ガチャ…

久「また来たわよ。みんなは?」

マコ「和と優希は奥じゃ。咲はまだ来てないのぉ」

和「咲さんは学校に来てませんよ。病気かもしれませんので、お見舞いに行きたいのですが」

久「それなら日が暮れる前に行ってらっしゃい。それにしても咲が休みなんて珍しいわね。この前のことがショックだったのかしら?」

優希「それは無いはずだじぇ。咲ちゃん、京太郎が何やってるかわかって安心してたし」

久「……あれは不安にさせても無理ないかもしれないけど、消息不明よりは良いか」

和「咲さん、大丈夫でしょうか……」


ジュンイチロー「仁川についたが、体の具合はどうだ?」

京太郎「問題ありません。全力で戦えます」

ジュンイチロー「そうか……。今回は韓国大統領戦の最中の闘牌だ。より得点を稼いだ方が当選に有利になるものと考えられている」

京太郎「ということは、相手は共闘しないということも考えられるってことですか?」

ジュンイチロー「そういうことだ。仲たがいをさせて自滅してくれるのが一番良いだろう……が、それでも苦戦をするかもしれん……」

京太郎「まさか、中国より強いとでも?」

ジュンイチロー「ある意味ではそうかもしれん。くれぐれも油断せんことだ」

京太郎「わかりました」

キキー

ジュンイチロー「迎えが来た。いくぞ」

京太郎「はい」


タロー「再度対戦相手の説明をするぜ」

京太郎「お願いします」

タロー「一人目は文在寅(ムン・ジェイン)、左派系最大野党民主統合党から出ている」

タロー「現在の民主統合党代表代行という立場だな。政治家だが、弁護士でもある」

タロー「対日5大歴史懸案というのをあげている。読んでおけ」

京太郎「ありがとうございます…………」

(1)独島(日本名・竹島)挑発に決して妥協しない
(2)慰安婦問題について日本政府に法的責任を問う
(3)「戦犯企業入札制限指針」を強化する
(4)日本の教科書歪曲(わいきょく)を是正する
(5)日帝(朝鮮統治をした日本)が略奪していった文化財を必ず返還させる


京太郎「左派でこれですか…………もう一人は?」

タロー「朴槿惠(パク・クネ)、当選すれば韓国史上最初の女性大統領となる。保守系与党セヌリ党から出ている」

タロー「セヌリ党非常対策委員長という立場だ」

京太郎「セリヌ党というと、長期軍事政権を敷いたハンナラ党を前進とする政党ですよね?」

タロー「ああ、そして朴はそのハンナラ党を作った朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の娘でもある」

京太郎「2世ですか……。朴正煕というと、日韓基本条約を締結した人ですよね? ということは、朴槿惠候補は比較的親日ですか?」

タロー「2世って言葉には耳が痛ぇが……そうだな、他の候補と比べたら反日色はかなり薄いと言える」

タロー「経済民主化は国民の幸福の第一歩って考えで、経済優先で日本との関係も重視しているが……こと領土問題となるとそうでも無い」

京太郎「日韓FTAには色々問題もあると思いますが……李明博大統領を竹島に行かせたのは彼女ではって話しもありますね」

タロー「他には従軍慰安婦問題についても言及するようだな」

京太郎「親日と言われてても、やはりかなり日本に要求してきますね」

ジュンイチロー「李明博大統領も最初は親日だった。不思議なことではない」


タロー「韓国では親日と思われれば政治的に死を意味する。ポーズを取ると言う意味もあるかも知れねーが」

ジュンイチロー「どの道日本とはぶつかる事になるが、文在寅の方がより強行な姿勢を打ち出している」

京太郎「ということは、我々がトップを取りつつ、朴槿惠候補の点数を上まわらせるのが理想ですか」

ジュンイチロー「そういうことだ」

キキー

タロー「さて、着いたようだな……バックアップは任せておけ」

ジュンイチロー「頼んだぞ。……行くぞ、ヘルカイザー!」

京太郎「はい」



文「ようこそ韓国へ、歓迎しますよ」

朴「まずは疲れを癒してください。対局はその後にしましょう」

ジュンイチロー「出向かえ、感謝します」

京太郎「ありがとうございます」


京太郎「とりあえず表向きは歓迎されているようですね」

ジュンイチロー「……振舞われた食事には手をつけなかったようだな」

京太郎「処世術は心得ているので」

コンコン…

「準備が整いました。会場へいらして下さい」

ジュンイチロー「問題ないな、ヘルカイザー」

京太郎「ええ、要望にはこたえますよ……、必ずね……」



『さぁ……いよいよ韓日首脳麻雀対戦が始まりす』

『なお今回は韓国からは大統領候補を交えての対戦となり、その模様は韓日両国へ生放送いたします』

『一人目は民主統合党より文在寅』

文「よろしくお願いします。正々堂々戦いましょう」

『二人目はセリヌ党より朴槿惠』

朴「韓日の友好のために良い闘牌をしましょう」


『そして日本よりは首相、小泉ジュンイチロー』

ジュンイチロー「よろしく頼む」

『最後に日本から来た謎の青年、ヘルカイザー』

ヘルカイザー「……」ペコ…


『それでは東1局、スタートです』


京太郎(さて、敵は二人だが、共闘しないという情報もある……付け入る隙は十分か?)

朴「ふふふふ……青い……青すぎるわね…………考えていることが手に取るようにわかるわ」

文「大方我々が潰し合うと考えてるのだろうが、果たして君が我々を攻撃することができるのかな?」

ヘルカイザー「…………どういうことだ?」

文「なに、局を進めてみればわかる……」

ジュンイチロー「今の段階ではなんとも言えん、臆するなヘルカイザー」

京太郎「わかってますって……いくぞ! 鏡(七対子)」

『ヘルカイザーまずは七対子で先制』

文「くっくっく……」


朴「早いですね……韓日友好のため、この攻撃は受け止めましょう」

ヘルカイザー「今のはジャブだ……手をこまねいて見ていると焼けどじゃすまないぞ」

文「威勢のいい若者ですね。かまいません、存分に打ってきなさい」

ジュンイチロー「……何を考えている」

文「わざわざ日本から来ていただいているんだ。これくらいのサービスは当然だろう?」

ヘルカイザー「隙があるのなら突いていくまでだ……勾玉!!」

『ヘルカイザー、二連続和了、緑一色だ!』

朴「……やりますね……しかし、変ですね……」

文「なんで役満を上がられて、声をあげないのでしょうかね……」

京太郎「……何を言っている?」

ジュンイチロー「…………」

朴「いえいえ、なんでもありません。存分に和了ってくださいね」

京太郎「……いくら飛び無しだからって、このままでは世界に恥を晒すことになるぜ」

文「心配には及びません。劇的な逆転の方が受けが良いものでしょう?」


京太郎「何を考えているのかわからねーが、一切の手加減無しだ……」

文「……わかりますよ。何かを抜きましたね」

朴「飛び無しでなければ抵抗するところですね……」

ジュンイチロー「……待て」

京太郎「ツモ和了りの流れ弾分は覚悟してくださいよ。……それに……」

京太郎「止めても遅い! 天叢雲!」

『大四喜 字一色 四暗刻単騎待ち! なんとヘルカイザー、5倍役満を上がったァ!!』

「……」

『これにより、ヘルカイザーに24万点が加算されます!』

京太郎「……?」

文「さすがにこの点数は見逃せませんねぇ」

朴「それに、ほら、さすがに我慢できなかったのか、それにヘルカイザーも気づいたようですね……」

京太郎(今、かすかに聞き覚えのある声が……)

京太郎(忘れもしない…………この声…………)

京太郎「………………………………咲?」


文「ふふふ、今はコマーシャルだし、丁度よいでしょう」パチッ

サー

会場を囲っている、京太郎の視界からしか見られない位置の幕が開かれる。
その奥には椅子に縛り付けられた制服のままの咲がいた。

朴「この椅子には電気が流れるようになっていましてね。我々の点数に応じた電流が流れるようになっているのです」

文「声が君に聞こえるように位置を調節していたんだがね。なかなか我慢強い小娘だったな」

咲「京ちゃん……ごめんね……最後まで我慢するつもりだったのに…………」

京太郎「……っ!! 小泉さんっ! 俺の情報は全部消すって約束だったでしょう!?」

ジュンイチロー「すまない。我々の仕事が不十分だったようだ」

京太郎「だったら

ジュンイチロー「しかし、私は引くことはできない」

京太郎「そんなっ!」


文「小泉首相はやるつもりですね」

朴「京太郎君、だったかな。これから君はどうすればいいのかわかるね?」

京太郎「………………こんな小細工をしようと、結局はこれはその電光掲示板の点数が高い奴が勝ちってことでしょう?」

文「ふむ、その通りだ」

京太郎「そして飛び無しってことは、俺が差し込み続けることで、世界に日本の恥を晒そうということだな」

京太郎「確かにこれならあなた方二人が敵対していても問題ないわけだ」

朴「物分りの良い子は好きですよ」

ジュンイチロー「わかっているだろうが、私はこれから本気でやるぞ」

京太郎「わかってますよっ!」

咲「京ちゃん……ごめんね……足を引っ張っちゃって…………私の事は気にしないで…………勝って…………」

京太郎「咲…………」

朴「献身的な娘でね……ふふ……最後まであなたのことを心配していましてね……」

文「そこで相談なのだがね…………条件を飲めば、その娘を無傷で返してやらないことも無い」

京太郎「条件?」


文「簡単なことだ……君にも電極をつけてもらおう」

朴「それだけで、あの娘を返せるのです。迷う必要などないでしょう?」

京太郎「……わかった」

文(ふふ……ジュンイチローが連れていたということは、おそらくこいつが後継者)

朴(今のうちに潰しておくにこしたことはない)


黒服たちが京太郎の体に電極を取り付けておく。
むろん服の下に隠れるようにし、カメラには映らないようにする。


朴「では再開しましょう」

文「さてさて……おっと、ダブルリーチだ」

京太郎「……くっ」

文「ロン……なんだ、ヘルカイザー。急に弱くなったな」

ビリビリビリ……!

京太郎「ぐぅ……」

京太郎(役満でもないのにこの電流かよっ……! 咲の奴、こんなのにずっと耐えていたって言うのか……)

ジュンイチロー「……」


朴「さて、では次にまいりましょう。この点差、まだまだ取り返さないとなりませんからね」

ジュンイチロー「…………リーチ」

京太郎「こっちまで! クソっ!」

タン

ジュンイチロー「……ロン」

ビリビリビリ……

京太郎「くぅ……」

文「我々の戦いで仲間割れを期待していたようだが、今の気分はどうだね?」

京太郎「うるせぇよ……まだ……負けてねぇ……」

朴「聞き分けが悪い…………おっと、こちらがリーチですね」

京太郎「……っ!」

京太郎(差し込む牌が…………無いっ!)

朴「おや? ツモりましたね」

文「これは、私の点棒が引かれてしまいましたね」

京太郎「まさか…………ツモでも…………」


ビリビリビリ…

咲「…………」

咲「大丈夫だよ……電気……流れてないから…………ね…………」

京太郎「……咲…………おまえ………………」

文「さて、ヘルカイザー君、君の立場がわかったかね?」

朴「必死で私の上がり牌を探して来てくださいね」

京太郎「…………わかった」

文「おや……役満を聴牌してしまったぞ」

京太郎「……」

タン

文「ふふ……ロン!」

ビリビリビリビリビリビリビリビリビリ…………

京太郎「ぐううううぅぅぅううううぅぅぅ―――――――――!!」


「…………!! …………………………っかりしろ!!」

京太郎「はっ!?」

京太郎(ここは? 俺は……役満をくらって……)

ジュンイチロー「まだ闘牌中だ。死ぬのは終わってからにしろ」

京太郎「……すいません」

朴「まだ打てますか?」

京太郎「大丈夫、です」

文「ふふふ……図らずもヘルカイザーからどれだけ毟れるかというゲームになってしまいましたね」

朴「欲しい牌を勝手に差し込んでくれるのです。仕方がありません。ねぇ? ジュンイチロー?」

ジュンイチロー「早く胚を引け」

文「おや、部下のことは心配じゃないのですか? 冷たいですね

ジュンイチロー「その汚い口を閉じろ。この男は…………」

ジュンイチロー「試合に勝つまで、絶対に死なん!!」

文「!!!」

朴「!!!」


京太郎「……無茶を……言ってくれるっ!」

文「ふ……ふふ…………結局何も変わらないではないか。そいつは差し込むことしかできない!」

朴「そ、そうよ。例えジュンイチローが我々を上回ったとしても、そいつの一人凹みは世界に隠しようがないわっ!」

ジュンイチロー「そうだな。それもこの男を見出した私の責任だ」

京太郎「……すいません。でも、俺は、俺のやり方を貫き通させてもらいます」

ジュンイチロー「ふっ……好きにしろ」



試合は京太郎の全差し込みで進んでいった。
京太郎は流れる電流に耐えながら、打ち手の上がり牌を必死に探し当てて来た。
ジュンイチロー・文・朴はともに30万点を超えていた。
一方で、京太郎は前代未聞の失点を世界中に晒すこととなった。


そして迎える、  オーラス…………


京太郎(くそ…………手が上がらねぇ…………口を上げるのも億劫だ…………)

咲「京ちゃん…………ごめんね…………ごめん…………」

文「ここまで凹むとは全く日本という国はなんて弱いのか」

朴「ここまできたらジュンイチローを抑えたいわね」

ジュンイチロー「…………」

京太郎(本来なら、首相はもっと点を上げられたはず……)

京太郎(でもツモ上がりを何度も見逃して……流局すれば、これで日本は共に下…………)

京太郎(しかし、ここに来て聴牌とは……さすが首相……)

京太郎(この最後の……最後の上がり牌だけは……)

京太郎(俺の…………手で…………)

京太郎(……………………………………)

京太郎(…………………………………………作り出す!!!!)


ミシ…

ミシミシミシ……

『おおっとぉ? ずっと凹み続けていたヘルカイザー、右手が燃え上がった!?」

京太郎(首相の国士十三面待ち、これで…………)

ゴァッ!

京太郎「完成だっ!」

ダンッ!!!

ジュンイチロー「………………よくやった」

バンッ!!!!!

ジュンイチロー「ライジング・サン!!!!!!」

『ヘルカイザー、首相に白を差し込みっ!! 国士無双完成でトップ!! ジュンイチロー首相が1位でオーラスを終えました!!!」

文「クソッ」

朴「最後の最後で悪あがきを…………」

『朴氏が2位、文氏が3位となりました。日本、一人1位とはいえ、ヘルカイザー氏の、前代未聞のマイナスは歴史に残るレベルとなりました…………」

京太郎「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」


文「ふふふ、まぁ良い。これで日本は恥さらしとして世界中に認定されたわけだ」

朴「4位といっても前代未聞の、マイナス100万点の4位。とてもじゃないけど日本はもう先進国とは言えないわね」

咲「京ちゃん…………」

京太郎「…………」

ジュンイチロー「……………………お前たちは、何を言っている?」

文「は? 負けすぎて頭がいかれてしまったのか?」

京太郎「普通は想定しないもんな…………マイナス100万点なんて…………」

朴「それは……そんな負け方をするなんて我が韓国ではありえないことです」

ジュンイチロー「ありえないことを想定して作る。我が日本では当たり前のことだ」

文「作る? さっきから一体何を言っている?」

京太郎「俺は…………確認した…………はず…………だぜ…………」

京太郎「忘れた…………とは…………言わせねぇ…………」

京太郎「わざわざ…………世界中に………………放送してくれて………………ありがとう……よ…………」

京太郎「おかげで…………証人には………………こと…………かかねぇ…………」

『ああっっっっとぉぉぉぉぉ!!!!!!』



   『結局はこれはその電光掲示板の点数が高い奴が勝ちってことでしょう?』


   『ふむ、その通りだ』



文「なっ!!??」

朴「まっまさか!?」


『なんとぉ!!! マイナスが大きすぎて…………電光掲示板に負号が表示されていないっ!!!???』

『ヘルカイザー氏の得点は………………100万点を超えている!!!!!!!』


文「そんな馬鹿なっ!?」

朴「こんなこと、こんな馬鹿げた話! 認められるわけないニダ!!」

京太郎「ルールは…………守った…………咲を…………解放…………しろ…………」

京太郎「…………」

ジュンイチロー「……っ! おい! 京太郎!? 京太郎!!」

咲「京ちゃん!!」



京太郎「…………………………」

京太郎「……………………」

京太郎「………………」

京太郎「……ん……?」

京太郎「あれ…………ここは?」

京太郎「手が…………あ、咲?」

咲「……」スースー

ジュンイチロー「目が覚めたか」

京太郎「首相? …………ここは……病院ですか?」

ジュンイチロー「ああ、あの後、倒れたお前とその娘はタローの助けもあって助け出された」

ジュンイチロー「それから三日間ずっと目を覚まさなかったお前を、その娘が付きっ切りで看病していたよ」

京太郎「そうですか……咲が…………。日韓戦はどうなりました?」

ジュンイチロー「捻り手だったが、世界的にはわが国の勝ちという事で収まった。が、彼の国は負けを認めてはいない」

京太郎「まあ、そうなりますよね」

ジュンイチロー「で、さっそくだが、京太郎。君は今日をもってクビだ」


京太郎「…………は?」

ジュンイチロー「納得がいかないならわからせてやろう。そこに座れ」

京太郎「……麻雀、ですか」

ジュンイチロー「それで納得するだろう」

京太郎「……首相といえど手加減はしませんよ」



ジュンイチロー「ライジング・サン!!」

京太郎「ぐぅぅぅううぅぅぅ…………」

京太郎(な、なぜ……)

京太郎(なぜ役満が…………上がれない!?)

ジュンイチロー「満足か?」

京太郎「まだだ!」

京太郎(くそっ! 配牌も悪い……)

京太郎(ツモも…………またムダヅモかっ!)

ジュンイチロー「ライジング・サン!」


京太郎(また何もできなかった…………)

ジュンイチロー「もうわかったろう。お前はもう用済みだ」

京太郎「はは……なるほど…………確かにこれでは足手まといにしかなんねーわ……」

京太郎「…………今までありがとうございました」

ジュンイチロー「もう会うことも無いだろう…………」

京太郎「はい……お元気で……」

ジュンイチロー「京太郎、お前の戸籍と学籍は戻しておいた」

京太郎「え?」

ジュンイチロー「これからは一市民として、生きながらえろよ……」

バタン…

京太郎「…………」

京太郎「ふ―――――――――――――――――――」

京太郎「疲れた―――――――――――――――――――――――――――」

バタ

咲「……」スースー



こうして京太郎の半年超におよぶ首脳レベルの闘牌は幕を閉じた。
その間に培ってきた雀力はすっかりと消えうせ、今では清澄時代に演じていたレベルにまで落ちていた。
そして、再び舞台は清澄高校へ戻る。


優希「おい、犬! さっさとタコス買って来るじぇ!」

京太郎「はいはいわかったよ!」

タッタッタッタ…

優希「全く、使えない犬だじぇ」

久「また来たわよ~~~。さっき須賀君とすれ違ったけど、また買出し?」

和「優希のいつものです」

久「やりすぎて、また逃げ出してもしらないわよ~」

優希「う……しょうがないじょ……タコスを一口わけてやるじぇ……」

マコ「優希がタコスを分けるなんて太っ腹じゃのう」

久「そういえば咲は?」

和「掃除当番です。そろそろ来ると思いますよ」

久「じゃあ、来るまでこの面子で打ちましょうか!」

マコ「やれやれ……受験の方は本当に大丈夫なんじゃろうか……」


咲「ふーさむさむ……。落ち葉も少なくなってきたし、そろそろ外の掃除もおしまいかな?」

タッタッタ…

京太郎「おーい、咲――――――――!!」

咲「あ、京ちゃん。また買出し?」

京太郎「おう! 今の俺にはできることってこれしかないからな」

咲「またそんなこと言って……」

京太郎「でもすぐに追い抜いてやるから覚悟しておけよっ!」

咲「もう。でも私も負けないよ! ………………あ、」

京太郎「どうした?」

咲「ほら、見て」

京太郎「? ……………………ああ……………………雪…………か……………………」

咲「どうりで寒いはずだよ……あ、そだそだ、京ちゃん」

京太郎「どうした?」

咲「まだ言ってなかったと思って」

京太郎「ん?」


咲「助けてくれてありがとう、京ちゃん」

京太郎「あ~~~~その、なんだ…………たまたま…………だよ…………」

咲「それとね、京ちゃん」

京太郎「まだあるのか?」

咲「うん、…………京ちゃん………………」





     咲「おかえりなさい」



   京太郎「…………おう! ただいま!!」





                         カンッ!