京太郎「…」ポツーン


「あ…ほらあの子よ」ヒソヒソ

「ああ…確か父親のDVで母親が出ていったとか」ヒソヒソ

「その父親も酒に溺れてよ、子どもにも暴力振るうようになって、しまいには車にひかれて死んじまったんだってな」ヒソヒソ

「じゃあその出ていった母親はあの子を引き取らなかったの?」ヒソヒソ

「それが既に新しい家庭があったらしくてな…再婚相手が前の夫との子どもの面倒を見るのを嫌がったんだと」ヒソヒソ

「まあよくある話とはいえかわいそうだよねぇ」ヒソヒソ

「そもそもがさ、その母親の浮気疑惑が事の発端らしいぜ」ヒソヒソ

「噂は聞いたことあるけど…じゃああの金髪って、やっぱ地毛?」ヒソヒソ

「まあ今となってはどっちでも関係ないことだけどな。今は、施設の預かりらしいぜ」ヒソヒソ

「え?親戚筋は?」

「母方はいわゆる天涯孤独。父方は『ホントに血が繋がった孫かも分からないのに引き取りたくない』って」

「整っててカワイイ顔立ちしてるのにねぇ…あの子は別に悪くないけど…」ヒソヒソ

「あんまり、関わり合いになりたくないな。子どもたちにも近づかないように…」ヒソヒソ


ヒソヒソ…ヒソヒソ 


京太郎「……ッ!」バッ  ダダダダダダ…

― 近所の家 ―

 『おかあさんただいまー!』 

 『あらおかえりなさい。遅かったわね。今日はお父さん早いみたいだから、どこか食べにいきましょうか』

 『ホント!?やったぜ!俺ハンバーグがいいな!』

 『アンタこの前もハンバーグだったでしょ?』フフフ

 『好きだからいいの!!』



京太郎「…」

ポロリ

京太郎「…あれ?おれなんで…」

ポロポロ

京太郎「なんで…ないてるんだろ…」

ポロポロポロ

京太郎「からだはどこもいたくない…いたくないのに…」

?「おい」ヒソヒソ



京太郎「?」

?「お前だ。そこの金髪のお前」ヒソヒソ

京太郎「おれ?…おねえちゃんだぁれ?」

?「ん?お前…泣いてるのか?」

京太郎「えっ?な、ないてないし!」

?「シッ…静かに。自己紹介は後だ。それよりここら辺でどこか隠れられる場所を知らないか?」ヒソヒソ

京太郎「かくれるとこ?…おねえちゃん、かくれんぼしてるの?」

?「…まあそんなとこだ」


『そっちは居たか!?』 

『いやこっちには来てないみてぇだ!!』 

『あのガキ!手こずらせやがって!』

『見つけたらただじゃおかねぇ!おい、殺るまえにイッパツくらいヤってもいいよな!?』

『おいおいwww相手は小学生のガキだぜ?悪趣味だな』 


?「チッ…アイツらもう追って来たか。おいお前、悪いが早くしてくれると助かる」

京太郎「なんでそんなにえらそうなの…こっちきて」

?「ああ」

京太郎「ここだよ」

?「ここって…空地の土管か?」

京太郎「うん」

?「…はぁ」

京太郎「なに?」

?「いや…子どもに頼んだ私が浅はかだった」

京太郎「(よくわかんないけどばかにされたみたい)ここならぜったい見つからないよ!」

?「静かにしろって言っただろ」ヒソヒソ

京太郎「あっ…」

?「まあしばらく動くのは危険だし、こういう場所は逆に盲点かもな」

京太郎「ここね、おれがいつもかくれてるとこなんだ」

?「いつも?」

京太郎「…なんでもない。それよりもうきいていい?おねえちゃんなまえは?」

?「ああ。まだ名乗ってなかったな。」

智葉「私は辻垣内。辻垣内智葉」



京太郎「つ…つじが…」

智葉「…智葉でいい。で、お前は?」ハァ

京太郎「?」

智葉「お前の名前は?」

京太郎「…きょうたろう」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

京太郎「ふ~ん、おねえちゃんはしょうがくせいなんだ」

智葉「ああ。おまえはいくつだ?」

京太郎「5さい」

智葉「3つ年下か。…というか私が言うのもなんだが、こんな時間まで外にいて大丈夫なのか?もう暗くなるぞ?」

京太郎「…いいの」

智葉「ご両親…親が心配するんじゃないのか?」

京太郎「おかあさんは…おとこのひととどっかにいっちゃたんだって。おとうさんはじこで…」

智葉「!?そ、そうなのか。すまなかったな」

京太郎「?なんでおねえちゃんがあやまるの?」

智葉「いや…寂しくないか?」

京太郎「さびしいっていうか…おれ、おとうさんもおかあさんも、かおおぼえてないし」

智葉「…」

京太郎「ね、おねえちゃんのおとうさんとおかあさんはどんなひと?」

智葉「私の?」

京太郎「教えてよ!」キラキラ

智葉「親父殿は…ともかくバカだな。親バカならぬバカ親だ。私が言うのもおかしいが、娘に甘すぎる。過保護だな」

京太郎「かほご?」

智葉「あー…まあ優しすぎるってことだ」

京太郎「?やさしいならいいんじゃないの?おれのえんのせんせいとか、いっしょにすんでるみんなもやさしかったらいいのに…」

智葉「優しくないのか?」

京太郎「いろいろうまくできなかったり、かえるのがおそかったら、いつもたたかれたりけられたりするし、よくごはんなしにされちゃうんだ。…おれダメなこだから」

智葉「そんな…今日はもう相当遅いだろ?大丈夫なのか?」

京太郎「うーん…まえにこれくらいのじかんにかえったときは…なかにいれてもらえなかったかなぁ」

智葉(…こいつよく見ると身長の割りに痩せてるし、服に隠れて見えにくいがいたるところに青痣が…)

京太郎「あのときはゆきがふっててねー。さむかったなー」

智葉「…よし京太郎、お前今日はうちに来い」

京太郎「え?でもかえらないとおこられちゃうし…」

智葉「帰っても怒られるんだろ?付き合わせた私の責任もある。『義理は欠かすな。情けに見返りは求めず、借りはしっかり返せ』が母さんの教えだ」

京太郎「おかあさんはどんなひと?」

智葉「うちで一番厳しいが、一番優しいひとだ。親父殿も若頭たちも頭が上がらない」

京太郎「ふーん…(わかがしら?)。おりょうりとかは?」

智葉「上手だぞ。母さんの煮付けは格別だな。同じように教わってやっても仕上がりが全然違う」

京太郎「いいなー。」

智葉「母さんに頼んで食べさせてやるさ。無事に帰れたら…だがな」

京太郎「…こっち、ついてきて」

智葉「お、おい」

京太郎「ここだよ」

智葉「ここは…池?」

京太郎「ちょーせいいけ?っていうんだって。はいコレ」

智葉「懐中電灯?」

京太郎「なかくらいから…よいしょっ!と」

ガタン

智葉「!?水路の鉄板が外れた…」

京太郎「もっかいよいしょっ!よかった。さいきんあめがふってないから、やっぱりみずがないや」

智葉「私たちなら十分通れる高さと幅だな」

京太郎「えんでいっしょにすんでるみんなに、いじめられたりおいかけられたときにつかうんだ。おれのひみつのみちだよ」フンス

智葉「なるほど…しかし一体どこに出るんだ?」

京太郎「●●にいちばんちかいでぐちは…たしか××神社あたりのいたがいちまいはずれるはずだよ」

智葉「××神社か…家からは少し遠いが、ここからなら家を挟んで反対だから、上手くいけば裏をかけるな」

京太郎「これならおにからにげられる?」

智葉「ああ。助かるよ」

京太郎「よかった。じゃあいって。これ、まがりかどとかのちずだから」

智葉「お前は一緒に行かないのか?」

京太郎「したからだと、おもくていたがはずせないんだ…だからおれ、さきにいってまってるから」

智葉「すまない…いや、ありがとう京太郎」

京太郎「あ、らんどせるはおれがもってるよ。とちゅう、けっこうせまくなってとこがあるから」

智葉「そうか。すまないな」

ドゴッ!

京太郎「アグッ!!」

チンピラA「さぁ坊や…もっかい聞くぜ?あのガキはどこだ?」

京太郎「…しらない」

チンピラA「…ほぅ」イラッ

バキィッ!

京太郎「グゥッ!!」

チンピラB「この神社には幸い人気がねぇ…このまま坊やを殺しても下手すりゃ誰も気づかないままよ。そいつはヤダろ?」

チンピラA「誰にも知られないまま死んでよぉ…誰からも忘れられていくなんてなぁ寂しいぞぉ?コンクリート詰めで水底に沈んでく野郎を坊やは見たことあるかい?」

チンピラB「あるわけあるかい!」

ゲラゲラゲラゲラ…

京太郎(おれの…おれのことおぼえてるひと…)ハァハァ

京太郎(おねえちゃん…おうちにかえれたかな?)ハァハァ

京太郎(ごめんねおねえちゃん。おれ…おににつかまっちゃた…いっしょにごはんたべるやくそく…まもれないみたい)

京太郎(おねえちゃんも…おれのこと…わすれちゃう…のかな?)

京太郎「いや…だな…」ゲホッ

チンピラA「さぁ答えな。あのメスガキはどこだ?」

京太郎「…い」

チンピラA「あ?」

京太郎「し…ら…な…い」

チンピラA「…上等だよ」ブンッ!

京太郎「グ…ァ…」ドサッ

チンピラA「お前を始末して…その後でガキとの追いかけっこ再開だ!」

智葉「ほう…では今度はこっちが“鬼”だな」

チンピラA「!?なんだこの黒服の連中は!?」

チンピラB「いつの間に!?」

智葉「ただし…覚悟した方がいいな。そっちとは…」

智葉「“鬼”の質も、量も、違う。だから…」

ニゲラレルト オモウナ ゲスドモ

『なあ』
『なに?』
『どうしてあんな無茶をしたんだ?』
『?なんのこと?』
『どうしてあそこまで執拗にかばった?今日出会ったばかりの私を』
『…って…から』
『ん?』
『おとうさんとかおかあさんがまってるって、おねえちゃんいってた…から』
『…』
『おれ…どこにもかえれないし…だれもまっててくれない…から』
『おねえちゃんは…まってるひとがいるんなら…かえらなくちゃ…だめだよ』

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

智葉「ほら。どうした?」

京太郎「おれ…ほんとにきょうからここに?」

智葉「そうだ」

京太郎「で…でも…」

智葉「お前はもう私の弟も同然だ。もっと堂々としろ」

京太郎「でもおねえちゃん…」

智葉「そう。おねえちゃんだ」

京太郎「おねえちゃん…!おねえちゃん!!」ギュウウウウ

智葉「ほらほら抱き着くな。今日はずいぶん甘えん坊だな。さあ、家に入るぞ」

ガラララ…

京太郎「うん。お、おじゃまし」

智葉「違うだろ?」

京太郎「え?」

智葉「“家”に帰ってきたら…」

    『ただいま』だろ?

ガラガラガラ

京太郎「ただいま帰りまし…」

智葉(全裸)「おかえり京太郎」ドンッ!!

京太郎「玄関開けたら3秒で全裸!?!?!?!?!?!?!?」

智葉(全裸)「嫁が仕事帰りの夫を癒すべく、玄関で帰りを待っていて何が悪い」ドンッ!!

京太郎「悪いのは待ってることではなくマッパなことですよ!!てか嫁!?」

智葉「お疲れ様。私にする?私にする?それとわ・た・し?☆」

京太郎「やっぱり選択の余地がない!」

智葉「今日の勝負も危なげなく勝ったそうだな。妻として胸を張れるよ」ドンッ!!

京太郎「妻!?いやいや全裸でカッコ付けられても形のいい素晴らしいオッパイ!!」

智葉(全裸)「常識人でいようとしても心とココは素直だな」スリスリ

京太郎「どこ触ってるんですか!!どうせ直前になったら一線は越えられないくせに経験豊富な年上ぶるのはやめてください!!」

智葉「だれが処女だ」ボコッ

京太郎「言ってません!!処女じゃないんですか!?」

智葉「…処女だぞ」

京太郎「…まってください!何ですか今の間は!」

智葉「京太郎が寝てる間に既成事実を作ろうとしたとかそういうわけではないぞ」

京太郎「隠す努力ゥ!どうりで朝起きたとき布団の中にお嬢がいない珍しい日に限ってムスコがすっきりしてると思ったら!まさか挿れたんですか!?」

智葉「いや…初めては京太郎の意思で奪ってほしいからな。所謂ス〇タだ」

京太郎「俺も最初は二人で結ばれたいですけど!なんでそんな変なところで拘りがあるんですか!」

智葉「流石は朝の一番搾りだな。毎度全身が精〇まみれになってしまう」

京太郎「嫌な言い方しないでくださいよ!」

智葉「そのまま自室で3回は“致して”しまうほどに濃い臭いでな」

京太郎「いないのはシャワー浴びてるせいじゃなかった!?っていうか人をオ〇ニーのネタにしないでくださいよ!」

智葉「この際ハッキリ言っておくが、私は京太郎かその下着か精〇以外で〇自慰をしたことはないぞ」

京太郎「マジかよどうりで時々洗濯物が減ると思った!」

智葉「私の使用済み下着も時々なくなるんだがな」

京太郎「そんなわけないでしょう!!俺は使ったらちゃんと洗濯機の中に返して…ハッ!?」

智葉「…フッ」ニヤニヤ

京太郎「あああああああああああああああ!もおおおおおおおおおおおおおお!」

智葉「ほしいなら一枚やろうか?何なら脱ぎたてだぞ」ピラピラ

京太郎「クッソォ…!!お嬢を責められない自分が憎いいいいいい!!!」


組員ズ(屋敷の離れ(という名の実質愛の巣)から今日も痴話喧嘩が聞こえる…)

カン!

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最終更新:2018年05月02日 20:51