女の子であれば、誰もが夢見たであろう王子様

私の手を取って、憧れの世界へと誘ってくれる

そんな存在


「まぁ心配しなさんな」

「私は小3の頃からマメすら出来ない」

「ニワカは相手にならんよ」


毎日毎日牌を触って、打って。

いくら麻雀が国民的とはいえ、他の同年代の女の子はもうちょっと

華のある日々を送っているんじゃあないだろうか

県内でも一番強い晩成に入って麻雀をするために勉強も必死にやった。

入ってからはレギュラー争いだ

脇目も振らず走り抜いて来た。

遮二無二に打ち続け、打ち続け…

手を見れば

マメなんかとうに通り過ぎてゴツゴツとした指

こんな指じゃあ、きっと王子様だって手を取りたくないんじゃないか…

なんて

少し悲しくなる

あぁ

昔の私はなんて明るい夢を見ていたんだろうか

最後の大会が近づいている

私の麻雀一筋の高校生活、その最後の大会だ

後悔はしたくない

いっそのこと

幻想への憧れなど、消えてしまえばいいのに

なんて思っていたけれど


「やえさんじゃないですか!」

そう簡単には消えそうにないみたいだ

「やぁ、京太郎。」

「部活帰りですか?大会も近いですけど、あまり無理をしないようにしてくださいよ?」

「ふふふ…」

「?何か嬉しいことでもあったんですか?楽しそうですね。」

「んー?どうだろうねぇ…君には分からない…というより」

「まだ分からせたく無い、かな?」

「何言ってるかよく分かんないですけど…」

「気にするな。」

京太郎、君は覚えてないかもしれないけれど

『やえさんの手、好きですよ』

『頑張り者の手です。』

『いつも俺の手を引いてくれたやえさんの素敵な宝物です。』

そう言ってくれたのが嬉しかった。

「阿知賀も今年は麻雀部があるんだろう?調子はどうだい?」

「そうですねぇ…中々良い感じですよ!最も、俺は団体戦出れませんけどね…」

「男子は京太郎だけなのか?でも個人戦があるだろう?」

「個人戦には出ますよ!まぁ、一回戦抜けられるかどうかすら怪しいですけど。」

「そうか…でも、ベストは尽くせよ?いい機会だ。」

「はい!頑張ります!」

「ふふ…」



この調子じゃまだまだ王子様には遠いけれど

いつかきっと逞しく、強くなるだろう

あの頃私が手を引いていた男の子は

私では引っ張れないくらいに

あの頃私の後ろに隠れてばかりだった男の子は

私をすっぽり隠してしまうほどに

そうしたら、その時は絶対




私の手を引いて