それは私が部室の前を通りがかった時のことでした。中から和ちゃんと京ちゃんのくもぐった声が聞こえてきたのです。
和『思ったより、大きいんですね。それに可愛いというより立派って印象です』
京太郎『触ってみたらわかると思うけど、結構堅めなんだよな。やってるみるか?』
和『では、失礼して……わっ、ビクッと動きました』
京太郎『平気平気。慣れてないだけだからさ。ほら、手つきはこうやって』
もう私はこれ以上聞いてられるわけなんてなく、その場に踏み込んで怒鳴り声をあげました。
咲「京ちゃん、和ちゃん! 学校で何して…………カピちゃん?」
京太郎「おう。和に話してみたら見てみたいっていうから連れてきたんだけど、やっぱまずかったか?」
私の想像していたような破廉恥な光景はなく、そこにはほんわかとした空気で、逆に私がいたたまれない。
和「最大のげっ歯類ということ絵最初は怖かったですが、間近で見ると愛嬌がありますね。飼い主に似るんでしょうか?」
京太郎「そうだ咲、お前にカピー懐いてたろ? 代わりに餌のやり方教えてくれないか、俺ちょっと配布整理が」
なんだろう、私すごく心の汚れた女の子になっちゃった気分だよ。
和「ふふ、安心してください咲さん、私は須賀くんに手を出したりなんかしませんよ。今は」
今、何か変のことが聞こえたような。
咲「あの、和ちゃん、何のこと言ってるのかな? あと『今は』ってどういう」
和「秘密です。でもあんまりまごまごしてると、状況が変わるかもしれませんね。須賀くんはとてもいい人ですから」
不穏な一言を残して、和ちゃんはカピちゃんを撫でる手の動きを再開した。
え、これ、バレてるの? 私の隠してた気持ち。あ、あわわ、どうしよう。お姉ちゃんがいない今、相談相手なんていないよ!
こうしてその日から私の部活生活にはハラハラ要素が混じることになったのでした。
カン
最終更新:2018年04月30日 20:51