※雑なネタものにつき注意

  • とある日 霧島神境の某所にて


俺は須賀京太郎。
子供の頃に起きた事故で両親を失い、自分自身も生死の境をさ迷ったらしいが、奇跡的に一命を取り留めたのだそうだ。


霞「京太郎君、居るかしら?」

京太郎「あ、はいお嬢様。 何でございましょうか?」

そして、身寄りを亡くした俺を引き取ってくれたのが、遠縁があったというこの霧島神境の地。
今はそこで姫と呼ばれ崇められるお方、神代小蒔お嬢様と、それに付き従う六女仙の方々にお仕えする事で、本来男子禁制とされるこの地に置かせてもらえている。

そして同時に、彼女達の属する永水女子高校麻雀部の雑務手伝いも担っている。

霞「今日は他校との練習試合の予定があるの。 先に部室へ行って用意を済ませて貰えるかしら?」

京太郎「承知しました、お嬢様。」

霞「あぁ、それとね……」

京太郎「はい?」

霞「恐縮なのだけれど、そろそろ呼び方を変えてもらえないかしら? どうにも恥ずかしくて……霞さん、とでも呼べば、どこででも角は立たないと思うわ。」

霞さんは勿論、六女仙の方々は皆慎み深い。
何の役にも立たないような俺に対してなら、もっと高圧的に接してもいい筈なのに、ああいう風に頼み込む様にものを言うのだ。

京太郎「分かりました、霞さん。」

それなら、言われた通りにするのが当然だ。
呼び方を変え、まずは霞さんの言いつけ通り、練習試合の準備に取り掛かろう。


――――


  • 永水女子高校 麻雀部部室

京太郎「これで用意は完了だ……」

永水女子の部室は、数年前までさほど広いという程では無かったものの、霧島の姫様がお使いになられるという事もあり増改築が行われ、他校との練習試合をするとしても不自由しない程度にはなっている。
当然その分、牌の用意や自動卓の点検整備というのも楽では無いのだが、やりがいはあって楽しいものだ。

たまに人から

「いつも誰かや部活の手伝いばかりしてるけど、学校には行っているの?」

と聞かれる事がある。

学校には行ってないし、永水女子に出入りはしているが授業は受けていない。 女子高なので当然だけど。

霞さんにも

霞『今は私達や、小蒔ちゃんの側で動く事を優先してくれないかしら? 恐縮だけれども、お願いね?』

と言われている。

只でさえ決まりを曲げて置いてもらっている身なのだ。 そう言われて、嫌だなどと言う訳がない。

今日もまた1日、霞さんや姫様の為に、誠心誠意尽くす日常が

久「見つけたわ……!」

咲「京ちゃん!」

京太郎「……はい?」

……急に声をかけられた。
見慣れない制服。 この辺りでは見たことが無いデザインだ。
同じ制服を着た女子が二人、更に続いて三人が入ってくる。
今日練習試合をするという学校の生徒だろうか?

京太郎「えっと、今日の練習試合をする学校の生徒さんでしょうか……? 生憎、姫様達はまだ授業中でして……もう少しお待ちいただければ……」

和「須賀君、一体どうしたんですか!」

優希「お前に執事の真似事とか似合わないじぇ! 早く帰って私のタコスを作るんだな!」

京太郎「はい? 帰るって……ちょっと、一体何の話を……」

まこ「説明して納得させたい所じゃが、そうも言ってられんのじゃ。 取り敢えず着いてきんしゃい、人が来んうちに……」

そう言って、5人の女子に引っ張られる様にして部室から出される。

随分と困った事になった。
振り解けない事もないけれど、怪我させて問題になったら皆に迷惑がかかる……

霞「あらあら……今日来る学校が清澄だとは、聞いていないのだけれど……」

初美「これは不法侵入ですよー」

京太郎「霞さん、初美お嬢様も!」

廊下を少し歩いたところで、聞きなれた声のした方に振り向く。
永水の制服姿をした霞さんと、彼女の同級生であり同じく六女仙の一人、薄墨初美お嬢様の姿もあった。

久「……見つかった!」

初美「京太郎、恐縮なのですが、その娘達を振りほどいてこっちに来るのですよー」

京太郎「了解しました!」

六女仙の許しが出たなら、何も躊躇う必要は無い。
即座に他校の女子らを振り解き、初美お嬢様と霞さんの方へ駆け寄る。

咲「きゃっ……!」

京太郎「……っと、悪いな咲!」

霞「えっ……」

咲「京ちゃん……?」

勢い良く突き飛ばす様な形になった女子に謝り、お二人の傍に駆け寄るも、お嬢様達は何故だか複雑な表情を浮かべている。

京太郎「あの、何か……」

久「須賀君! 今なんて言ったかよく考えて!」

今……? 確か、突き飛ばした女子に「悪いな咲」と
……あれ? あの子の名前なんてどこで……そもそも、彼女らはどうして俺の名前を……

初美「京太郎!」

京太郎「は、はいっ!」

霞「今日はもう帰って、姫様がお帰りになった時の用意をしておいてちょうだい。 恐縮なのだけれど、急ぎでお願いするわ。」

京太郎「了解しました! すぐに帰ります!」

姫様がお帰りになった時の準備をするのも立派な仕事。
霞さんの言いつけに従い、俺はその場を後にしたのであった。

――――

  • 霧島神境某所 離れの寝所にて


京太郎「はぁ……日中は散々だったなぁ。」

離れに用意された小さな寝所。ここだけが、霧島の地で唯一自由に過ごす事を許された場所だ。

結局、練習試合の件は例の清澄高校の人達が、永水女子を訪ねる為の方便だった様だ。
お陰で今日は麻雀部の活動は休止。 姫様達のお帰りが早まった事もあって用意が色々遅れてしまった。

京太郎「結局、巴お嬢様や春お嬢様の手を煩わせてしまったし……霞さんからお説教だな……」

そして、それとは別の気がかりもある。
清澄高校から来ていた人達は、何故だか俺の事を知っている様だった。
そして、咄嗟に名前を読んでしまった咲という女子……

コンコンッ

京太郎「あ、はい! 今開けます!」

考えに耽っていると、寝所の扉をノックする音が聞こえてくる。

京太郎「あっ、霞さん。 どうしたんですか? 何か御用が?」

戸を開けた先にいたのは、日中に分かれて以来になる霞さんだった。

霞「用という程ではないのだけれど、少し気になる事があるの……」

京太郎「はい、何でしょうか……?」

霞「昼間、学校で会った清澄高校の子達……京太郎君は、何かあの子達の事を知っているの?」

京太郎「い、いえ何も……調べましたけど、清澄高校って長野県ですし……咲とも別に……」

そう、彼女らは住んでいる所から違う。 知り合う機会も無い。
あるとすれば事故の前……その前に何か……

霞「……そう、やっぱりまだ……」

京太郎「霞さん?」

霞「京太郎君、あまり今日の事は気にしなくていいわ、突発的なトラブルだったのだし……恐縮だけど、清澄高校の事も考えず、忘れてしまっていいわ。」

京太郎「はい、わかりました。」
深く考えても仕方がない。思い出せない事を考える暇があるなら、少しでもお嬢様達のお役に立つ事を考えるべきなのだ。

霞「明日は清めの時間も設けましょうね。 少し気分を楽にするといいわ。」

京太郎「すみません、何から何まで……」

ここに来て、時折受けさせて貰える清めの儀……心を空にして落ち着けるあの時間は、不思議と心地良いものがある。

用を済ませて去っていく霞さんを見送り、身支度をして眠りにつく。

心身を整え、明日もまたお嬢様達に支えさせていただける様に……

―――――――――



霞「ふぅ……」

巴「どうでしたか、彼……」

霞「やっぱり大きく揺らいでしまったわ……清澄の子達、特に宮永咲ちゃんとの接触はあらゆる形で阻まないと……」

初美「調節はどうするのですかー?」

霞「明日の朝にでもするわ……念の為、小蒔ちゃんも呼んでおきましょう」

春「……京太郎……」

霞「春ちゃん、分かってると思うけど……」

春「……大丈夫……全て、姫様の為……」

霞「祝言の儀が終わる、その時までは何としても、ね……」


カンッ

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最終更新:2018年04月29日 23:16