はらむらけ!(某京咲スレとは何の関係もありません)

「…京太郎くん、これは何ですか?」

「何ですかって…女物のパンツ?和のか?いきなりどうしたんだそんなものを」

「いいえ。これは母さんのものです─あなたのズボンのポケットから出てきた」

─須賀和のその一言で、原村家のリビングは凍り付いた。

大人4人が押し黙り、3人の赤ん坊がふにゃふにゃと喚く声だけが響く。

「待て。ちょっと何があったか思い出すから…」

「待ちません。あなたは一体、50もとうに過ぎた初老の女の下着を何故持っていたのですか…?」

「自分の母親に酷い物言いだな!?と言うかあの若さで五十路なのか義母さんは…?!」

「そんなことはどうでもいいんでしょう!早く答えて下さいっ!」

須賀京太郎は戸惑いながら必死に記憶を探るが、愛しい妻は待ってくれない。

「…まあまあ和。京ちゃんは、私のパンツを拾って弄ぶような男じゃないわよ」

「きょ、京太郎君…?!君は、一体私の妻に何を─!?」

「お父さんは黙ってなさい」

「はい」

原村嘉帆はいち早く気を取り直すと、夫を横目で制しつつ、怒りと屈辱に震える娘を宥める。

しかし、和はギロリと母親を睨み付けると、絞り出すような声でこう言った。

「…お母さんの産んだ子たちは、よもや京太郎くんの種ではありませんよね…?」

「はいぃ?!」

「…!?」

頓狂な声を上げる嘉帆と、唖然とする京太郎の横で、原村家の父親が音を立てて倒れた。

和は勢いのまま、50を過ぎてもなお、半分の歳に満たない自分と姉妹扱いされる魔性の母親に詰め寄る。

「おかしいですよね…?わ、私が子どもを産んだのとほぼ同時に妊娠して双子を産んで…」

「待って待ってそれはないから!確かに私、京ちゃんのことからかいはするけど、そう言う関係は一切無いから!!」

初産の娘とほぼ同時期に高齢出産を遂げた嘉帆は、娘夫婦の熱に触発されて夫を干からびるまで搾ったのであるが。

「思い出した!あのパンツ、庭に落ちてたのを拾ってポケットに入れたままだったんだ!!」

「京ちゃんもうそれはいいからね?!」

混乱の余り空気が読めなくなった京太郎を叱咤し、嘉帆は珍しく慌て気味に続ける。

「ほ、ほら!あたしの産んだ双子は銀髪と桃髪!あんたの子どもは金髪!これが揺るがぬ証拠でしょ!」

「お母さんが京太郎君と寝た後にアリバイ作りで父さんと寝て、片方は京太郎君の…」

「あんた自分の弟と妹になんてこと言うの!!」

「いい加減にしろ和!義母さんも落ち着いて下さい!」

嘉帆も冷静さを失い、売り言葉に買い言葉の様相を呈したのに待ったを掛けたのは、義理の息子であった。

「和。お前が暴れたり苦しんだりしたら、お腹の子に障る」

「だ、誰のせいだと思って…!付き合ってからも母さんに鼻の下を伸ばしてたくせに!」

「ああ、昔はな。でも今は違うよ。俺には和しか見えないし、和以外の女は愛せない」

激昂する余り噎び泣く和を、京太郎は優しく抱き締めた。

─うーん…昔から思いこんだり思い詰める子だったけど、妊娠中はホントに酷いわね。

すぐに冷静さを取り戻した嘉帆は、愛娘の情緒不安定ぶりに嘆息した。

なお、その源流と思しき神経質の父親は、あまりの展開に床に突っ伏したまま動かない。

「まあ何と言うかその…私が悪かったわ。京ちゃんからかうと面白いからつい…」

「いえ…俺も昔は義母さんの胸とかチラ見してましたから、あんまり偉そうなことは…」

その辺りのじゃれ合いを、和が真に受けたままなあなあで来てしまったのが今回の元凶だろう。

「ま、誤解も解けたところで、夕飯にしましょうか」

「…は?何を言っているんですかお母さん。これから私たち全員のDNA検査をするんですよ」

ぽかんと口を開ける嘉帆と京太郎に、涙を拭った和は淡々と冷静に述べていく。

「潔白を証明するいい機会でしょう。探りを入れたら、私だけじゃ無くてお父さんも不安みたいですし」

「ちょ…!あんたまで何疑ってんのよ!?」

嘉帆は倒れた夫を締め上げ、京太郎は遂に耐えきれず膝を付く。男共の格好は台無しだ。今更ではあるが。

和はつんとそっぽを向くと、泣き声の三重唱を上げる我が子と弟妹たちに、たっぷり母乳を飲ませた。

原村家のめんどくさい日常は、こうして続いていくのであった。

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最終更新:2018年04月29日 23:13