岩手の山奥に姉帯豊音という非常に美しい山姫がいた。求婚者が列をなしたが、彼女の母親は娘が誰かのモノになることを拒絶しており、誰の求愛も受けつけさせない。
求婚者には三つの謎が出され、それが全て解ければ嫁にやるが、解けなければ首を切って殺すと言う。
だが、それでも求婚者は後を絶たず、無数の首が門の周りに掲げられていた。
やがて母親の悪行が独り歩きし、豊音は首狩りの山姫《トゥーランノッポ》と囁かれるようになった。
さて、国を追われた清澄の王子京太郎は、娘を垣間見て恋に落ち、彼女に求婚した。
三つの謎を見事に解いたが、母親はそれでも結婚を拒む。
京太郎は、逆に母親に謎を出した。「俺の名前を当ててください。当てられたら、俺を殺すといい。でも当てられなかったら、あなたの娘は俺の妻になるのです」
母親は京太郎の相棒であるペットの喋るカピバラのカピーを探し出し、王子の名前を言え、と拷問にかけた。カピーは京太郎の名を言わないために自ら死んだ。
「あなた様の娘は、あの方を愛するでしょう、そして氷のように冷たいあなた様は地獄の業火に身を焼かれて死ぬのです!」と予言と呪詛を言い残して。
それを聞いた母親は激怒し、予言が成就する前に京太郎を殺そうと、京太郎が滞在する宿に押し入ろうと村の衆を引き連れ向かっていたが、ちょうどその頃京太郎は護衛の目を欺き豊音と会っていた。
豊音は短い逢瀬のなかですっかり京太郎と打ち解け、愛した。
それに気付いた母親が引き反してくるのを京太郎と一緒にいた高台で見た豊音は、一旦部屋に戻り髪の毛を3本引き抜きそれぞれに言葉を吹き込んだ。
そして姉帯家に代々伝わる3つの勾玉を持ち出し、家一番の脚を持つ馬で二人して逃げていった。
母親が屋敷に戻ると、豊音の部屋をノックし、そこにいるのかと聞いた。
すると一本目の髪の毛が「いるよー」と答えたので一安心して居間に戻った。
しかし部屋が酷く荒れていたため豊音に問いただすために先程より大きめに部屋をノックした。
すると二本目の髪の毛が「探しものが見つからなかったんだー、後で片付けるよー」と答えたので訝しみながらも「しょうがないねぇ…ちゃんと片付けるんだよ」と言い、苦笑いをして眠りについた。
さて翌朝になると、馬までいない事に気づき豊音の部屋を壊れんばかりに激しくノックした。
すると三本目の髪の毛が揺れるたびに何度も何度も何度も何度も「もうすぐ起きるから待ってー」と言うのでこれは騙されたと流石に気づき国一番の脚を持つ馬を借り追いかけて行った。
その頃、逃げ切ったと油断していた二人は無残な姿になっていたカピーを荼毘に付し冥福を祈っているとカピーの霊があらわれて「娘さんの母親が追ってくる!今すぐ逃げて!追いつかれそうになったら勾玉を投げつけるんだ!」と言った。
二人はすぐ出発したがあっという間に追いつかれそうになった。
そこでカピーの助言に従い1つ目の勾玉を投げた。
すると勾玉は深い森に変わった。
しかし母親は物ともせず、すぐに追いついて来た。
二人はすかさず2つ目の勾玉を投げた。
すると今度は勾玉が地蔵に変わった。
これには母親も少々手こずり、しばらくは足止め出来たが地蔵を破壊し再び追いついて来た。
二人は最後の1つに一縷の望みを賭けて3つ目の勾玉を投げた。
すると勾玉は地獄の業火に変わり予言通り母親は身を焼かれて死んだ。
それを見届けたあと、京太郎は豊音に謎の解答を聞いた。
そして豊音は「王子様、あなたの名前は《愛》だよー」と答え抱きしめ接吻をした。
こうして娘は不名誉な、首狩りの山姫《トゥーランノッポ》と言う忌み名から解き放たれ須賀豊音として末永く幸せに暮らしました。

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最終更新:2018年04月29日 21:40