昔から、誰かになにかを祝ってもらう、なんてことはとても少ない。

ステルス……と私は呼んでいるけれど、人様から知覚してもらえないと言う意味のわからない体質のせいで、友人もあまりできなかった。
両親は祝ってくれこそしたが、ステルスは実の肉親の目すら欺いてしまっていて、目の前にいるのにわからない実の娘を祝うと言う、ひどく歪なイベントと成り果てていたのだ。

そしてそんな時は決まって両親が辛さを圧し殺したような笑みで祝うので、見ているこちらが、祝われているこちらこそが申し訳なくなった記憶は一度二度のものではない。
……その度に、どうして自分はこんな体質なのか、いっそ生まれてこなければよかったのではないかと悩み苦しんだ経験も、同時に記憶に色濃く刻まれている。

それでも、高校に入り、自分を必要としてくれる先輩に出会えた。
麻雀部に入り、初めて体質をよい方向に活かせ、素晴らしい仲間たちと切磋琢磨できている。
私は今、かつてなく幸せだと断言できる……いや、できていた。

けれど、今。
目の前にいる少年によって、幸せの最高記録が更新されようとしているのだから、本当に、人生とはわからないものだ。

「東横さん。お誕生日おめでとう。えと、一応これ、プレゼント」

頬を少し赤らめて、嬉しそうにニコリ、と笑ってラッピングされた箱を差し出す少年。
最近知り合った彼は、私の長年の体質などあっけらかんと無視し、私を見つけ、私と話し、私に触れ、私と共にいてくれる、これまでにない男の人だ。

別段特別なところのない、ごく普通の少年は……けれど私にとっては先輩にも勝るとも劣らない、唯一無二の素晴らしい特別な存在となるにはさほど時間がかからなかった。
そんな彼からのプレゼント、しかも誕生日の。

是非もなく嬉しさが込み上げる。
胸が高鳴る。
顔が熱くなる。
何度も何度も思った『生まれなければよかった』が、新しい『生まれてきてよかった』に染め上げられていく。
きっとこれからは、こんな記憶が増えていくのだ、どうかそんなこれからであってほしい。
そんな切なる願いを込めて、私は、ひたすらに感謝を込めて告げたのだった。

「ありがとうっす……ありがとうっす、京さん! 大好きっすよ! だーい好きっすよー!」

カン

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最終更新:2018年04月28日 23:10