京太郎異類婚姻譚 竜門女房

今は昔、飼っていたカピバラを亡くし失意の底にいた若者がおったそうな。いっそ湖にでも身投げをし、カピバラの後でも追おうかと思ったがその湖に言い伝えられる伝承を思い出した。

馬鹿馬鹿しいと思いながらもその伝承の通りにし、カピバラの亡骸の一部を切り取り湖のほとりに浮かべ、湖の底にいると言う竜王に
「どうか私の祈りを聞き入れ、この者を永遠に貴方の側に置いてください。」と三日三晩祈り通した。

流石に疲れ果て帰ろうとすると誰かが呼び止める。湖に大きな魚が現れて、若者を呼び止める。

「ご主人様のお陰で私は竜王様に御使えする臣下に生まれ変わる事ができました。竜王様が一度ご主人様とお話がしたいと申しております。一緒に来て下さい。」

「どうやったら湖の底の竜宮に俺が行けるんだ?」

「私につかまって、付いてくれば大丈夫です。」

若者は大きな魚に掴まって竜宮に向かった。途中で魚が言った。
「竜王様は、ご主人様に何か欲しいものは無いかと聞くでしょう。そうしたら、《竜王様の娘こそ欲しいものです》と言いなさい。」

それから竜宮に着いた。立派な門には七人の番人がおり、白い魚は白い鳥に、赤い魚は赤い鳥になって舞い飛んでいた。若者は三日間歓待され、楽しい時を過ごした。

三日目に、若者が「皆が待っているので帰ります」と言うと、竜王が「では、一番欲しいものを土産にあげよう」と言った。
若者は魚に言われたことを思いだし、「竜王様の娘こそ欲しいものです」と言った。「娘は私の一番の宝だが、では、あなたに嫁にさしあげよう」

若者は竜王の娘を嫁にもらって地上に帰った。ところが、地上では三年が経っていて、両親は息子にまで先立たれたショックで正気を失い、泣き晴らし眼が視えなくなっていた。

若者が嘆いていると、嫁は竜宮から持ってきた《執事》に命令し、両親に生命の水をそうそうとかけさせ、その両手でそっと撫でた。
すると、両親はふーと息をついた。ふた撫ですると生気が増し、三撫でですっかり元の両親に戻った。親と子は手を取り合って喜んだ。

嫁は光り輝くような美女だったが、それが土地の権力者の耳に入った。権力者は嫁を自分のものにしたいと思って、ある日若者を豪邸に呼び出した。

「美しい女は富と力あるものにこそふさわしい。明日、わしの抱える百二十八人の戦士と戦ってもらう。いいか、もしお前がただの一度でも負けたなら、お前の妻はわしのものになるのだからな」

若者はふらふらしながら帰って、不安のあまり、嫁が「どんな御用でしたの?」と訊いても返事もできない。

「男がそんなことでどうしますの!」

嫁に怒られて、若者は権力者に言われたことを話した。

「あら、そんなことなら造作もありませんわ」と、嫁は言い《執事》を呼び出し稽古をつけさせた。
一晩も経たぬ内に若者は幾万の勇者とぶっ通しで闘っても苦にならない程の力を得てそして権力者お抱えの戦士を軽くねじ伏せた。

しばらくすると、また権力者から呼び出しがかかった。「今度はこのビリビリに破れたぬいぐるみを1時間以内で新品同様にせよ。出来ねばお前の妻は私の物だぞ。」

今度は家に帰り妻に相談する猶予もないと頭を抱えたが、無理難題を見越していた妻が《執事》を若者の側に付けておいたので無事これをこなす事ができた。

権力者はいよいよ頭に来てこう宣言した「ならばお前の両親を正気に戻し健康な者が飲めば不老長寿の効果があるという生命の水を持って来い!もし持ってきたならば二度とお前の妻を求めぬ!」

無論、権力者は生命の水を使い果たしたというウラを取っていた。コレにはいよいよ参った若者は、妻に己の不甲斐なさを詫た。
しかし妻はなんら困った様子も見せず瓢箪を渡し、「この中に生命の水があると権力者に伝えて下さいまし、そして渡した後にすぐさまその部屋から離れて下さいな。」と言った。

若者は妻に言われたように瓢箪を渡し、開けるよう促し部屋を離れた。すると妙なる音が部屋から響きその部屋にあった物全てが瓢箪に吸い込まれていった。

その後、夫婦はその権力者の地盤を奪い取りいつまでも幸せに暮らしたと言う



花の大学生という言葉がある通り、大学生というのは一部を除けば割と自由だ
そして親元を離れ男女が近づくハードルがぐっと下がる時期でもある

穏乃「ねえねえ、今日遊ぼうよ」
淡「ずっこい! 私も遊びたい!」
京太郎「いや、俺今日バイトだから……」
怜「って言っても深夜は空いとるやろ? 久々に後輩んちで宅飲みといこか」

その他「「さんせーい!」」
京太郎「……この人ら俺の話聞かねえ」

無論、大学から近い物件で割と広い部屋を借りた人間の家はたまり場になるのもよくあることである


京太郎「……てなことがあってだな、憂鬱だ」
憧「女所帯に押しかけられて迷惑がるのもぜいたくな話ね」

バイト先で近場の他校の生徒と知り合うことも、まあなくはない。それが自分の同期と知り合いというのは少ないだろうが

憧「まあ、シズの面倒見つつ適当に遠ざけるぐらいはしてもいいけど」
京太郎「お願いします、憧大明神様」

当初は避けられているかのような態度であったバイトの同僚と仕事を通じてなぜか打ち解けることもあったりする

憧「一番手っ取り早いのは彼女作ることだと思うけどね。さすがに遠慮するだろうし」
京太郎「そんな相手いねえよ。こういう時、咲がいればフリの頼みはしやすいんだが」
憧「プロのスキャンダルになるわよね今だと。あと本当の彼女ができなくなる」
京太郎「だよなあ」

絹恵「須賀、新子、くっちゃべってないで仕事しーや?」
京太郎「うす、すみません」
憧「ごめんなさい、今やりまーす」

なぜか知り合いが麻雀関係者ばかりというのは、非常に珍しいだろうが


穏乃「なんで憧までいんの?」
憧「ヘルプ兼監視役よ。酒飲ませて意識失わせたあと服剥いで何かあったように工作する人間が出ないとも限らないし」
淡「ギクッ」
京太郎「淡、今背中に隠した瓶を見せろ……スピリタスじゃねーか! 飲めるかこんなの!」

怜「まあまあ、これやるから許してあげーな」
京太郎「むう……」
憧「京太郎、それウォッカよ」
京太郎「先輩!?」
怜「ちょっとしたお茶目なボケや。大阪人としてやらずにおれんかった」

わいわいがやがやと、彼の周囲の人間は面子を変えつつ色々と狙っていた。
そして渦中の争いの種が全く気付かず『彼女欲しいなー』などとのんきなことも、青春のうちではある。


『須賀京太郎の大学生活』、続かない

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最終更新:2018年04月28日 23:05