優希「おりゃー! ロンだじぇー!」

京太郎「おいおい……まだ5巡目だぞ……」

優希「アタシにゃタコスがついてるからなっ!」

京太郎「それ作ったの俺なんだけどな」

優希「うま~♪」モグモグ

京太郎「あ~……でもやっぱ東場はお前に勝てないなぁ」

優希「ん~……でも、お前も随分上手くなったと思うぞい?」

京太郎「おお、そう思うか?」

優希「んまっ! お前がアタシに勝つなんて1万光年早いけどな!」

京太郎「………」

優希「………」

京太郎「光年は距離だぞアホ」

優希「う、うるさいじぇ! 今気づいたわ!」

京太郎「おお、自分で気づけたとは。偉いぞ優希」ナデナデ

優希「ぬが~! 腹立つじぇ~!!」


優希「イエーイ! これで3戦3勝っとぉ!」

京太郎「お前相手に持ち点20000の東風戦は卑怯だろ……。 ……今何時だ?」

優希「9時前……だじぇ。 咲ちゃん達遅いじょ~」

京太郎「お前も入ってくりゃよかったじゃねえか」

優希「お恥ずかしながら、自由行動に入ってすぐ風呂に直行しちゃって……」

京太郎「あぁ、そうだった……。 ……合宿所の風呂ってなんかワクワクするよなぁ」

優希「そうそう! なんか特別な感じしちゃうよなっ!」

京太郎「だからと言って夕飯前に風呂入るってどうなんだ」

京太郎「……3度も」

優希「へへっ。 面目ないっ」


優希「……んぁ? ココアが無い……」

優希「きょーたろー、ココア買ってきて~」

京太郎「ああ? なんで俺が」

優希「負けたんだから文句なしだじぇ! さっさと行ってこーい!」

京太郎「お前……覚えてろよ……」


京太郎「自販機……ロビーの方だっけか」

京太郎「広いんだよなここ……。 咲じゃなくても迷う自信あるわ……」

京太郎「……っと、あったあった……って」

京太郎「誰かいる……」


「んー……! んー……!!」ピョンッピョンッ


京太郎「あれは……」


「あう……届かない……」


京太郎「龍門渕の……」


「こんぽた……」


京太郎「天江さん?」


衣「んぅ?」クルッ


衣「おお、清澄の」

京太郎「どうも。 覚えててくれたんですね」

衣「四校女子合宿だというのに男子が一人混淆してるんだ。 忘れるほうが難しい」

京太郎「あー、まーそうですね」

衣「御陰で、うちのとーかが『わたくしよりも目立ってる!』って哮り立ってたぞ」

京太郎「ははは……」


京太郎「天江さんはどうしてここに?」

衣「あ、う……その……」

京太郎「?」

衣「自販機でな? ……飲み物を1つと思ってたんだけど……」

京太郎「ほう」

衣「その……」


衣「とどかなくて……」

京太郎「……あぁ……」


衣「こんぽた……」

京太郎「コンポタ? ……あぁ」

京太郎(調度良く一番上の段だな。 これじゃ届かないか)

衣「一度召してみたかったのに……」

京太郎「………」

衣「うぅ……こんぽた……」

京太郎「………」

 ヒョイ

衣「ひゃぁっ!?」


京太郎「っと。 これでどうですか?」

衣「な、お、お前、清澄っ! これは……!」

京太郎「おお。 天江さん、軽いっすね。 子供みたいだ」

衣「こ、子供じゃない! 『ころも』だ!」


衣「こんな……懐抱なんて……」

京太郎「でもほら、目の前目の前」

衣「んぅ? ……おおっ!」


衣「こんぽたぁ!」パァァ

京太郎「ねっ?」


衣「こ、こうしてはいられん!」

衣「貨幣貨幣! き、清澄の! これを貨幣入れに!」スッ

京太郎「あ、はいはい。 どうぞどうぞ」チャリンチャリン

衣「おおおっ! こんぽたが光ったぞ!」

京太郎「さぁ、天江さん。 一思いに!」

衣「う、うむ……」


衣「え……えいっ!」ピッ

 ガコンッ


衣「うわぁ……! うわぁ……!」

京太郎「良かったですねっ」

衣「うん! 良かった!」


衣「ありがとう! 清澄の!」


京太郎「ふふっ……」

ナデナデ

衣「ふぁっ」

京太郎「……あ。 すいません、つい」

衣「こ、子供扱いするなぁ!」

京太郎「ご、ごめんなさいっ」

衣「全く……全く……」プクー

京太郎「……」

京太郎(ああ……頬突きてえ……)


衣「……そういえば名前を聞いてなかったな」

京太郎「……名前は覚えてくれなかったんですね……」

衣「す、すまない……」

京太郎(……可愛いなぁ)


京太郎「……ふふっ。 なら改めて」

京太郎「清澄高校麻雀部男子部員、須賀京太郎です」

衣「むっ。 なら衣もっ」

衣「龍門渕高校麻雀部女子大将!」

衣「天江衣だ!」

衣「よろしくな! きょーたろー!」スッ

京太郎「はい。 ……これから一週間」スッ

 ギュッ


京太郎「よろしくお願いしますっ。 天江さんっ」


時は戻り――――同日 AM11:00


久『えー。 この度は合同合宿にご賛同いただき……』

久『そして、ばっちりお集まりいただきまして……』


久『まことにありがとうございます!』

衣『わーい』


久『移動の疲れもあることと思いますので、今日は自由行動ということで……』

久『……の前に。 須賀くーんっ』

京太郎『えっ。 あ、はいっ』

久『自己紹介なさい』

京太郎『は、はいっ』


ダンシー? セータカーイ アンナノイタッケ? キョウチャン...


京太郎(き、緊張する……)


京太郎『え、えー。 おれ……自分の名前は須賀京太郎』

京太郎『この清澄高校の麻雀部員の一名です』

京太郎『今回の合宿、部長の意向ということで自分も参加させていただきました』

 エー オ、オトコノヒト... オレトオナジクライカ ? ニャー?

ザワザワ

京太郎『……女子しか居ないこの合宿所に男一人というのはどうかと思われるかもしれません』

京太郎『でも、それでも自分は……ここに来たいと思いました!』

京太郎『純粋に……麻雀がうまくなりたいから!』

 シーン...

京太郎『俺は決してみなさんの邪魔はしません! 誓います!』

京太郎『むしろ俺を使ってくれてもいいです! どんな雑用だってやります!』

京太郎『だから! みなさんの腕を勉強させてください!』

京太郎『お願いします……!!』


京太郎『どうか俺を……俺を仲間に入れてください!!!』



『………』


京太郎『……』

 ......パチッ

 パチパチパチッ

京太郎『!!』

 パチパチパチパチパチ !!

京太郎『あ……ありがとうございます! ありがとうございます!!』

イイゾー! イイヒトダ... ホウ?  キョウチャン...カッコイイ...



久『……はい。 というわけで異例のメンバー追加に関しても許可を貰ったわけだしっ』

久『今から自由行動ということで!』


『『異議なーし!!』』



―――同日 PM 21:30 清澄の合宿部屋

京太郎「……ふぅ」

京太郎(緊張したなぁ……。 昼の事だってのに、まだ手が震えてる……)

京太郎「……情けねえなぁ……」

優希「んぅ……」

京太郎「あ、悪い。 起こしちまったか?」

優希「ふぁあ……。 ん……きょうたろー……」

京太郎「疲れたろ。 ゆっくり寝とけ……」ナデナデ

優希「……うん……」


京太郎「………」ナデナデ

優希「……すぅ……すぅ……」

京太郎「……寝顔は可愛いんだよな、コイツ」ボソッ

優希「、っ!」ビクッ

京太郎「ん?」

優希「ぐ、ぐぅ~……」ドキドキ


―――同日 同時刻 :通路

まこ「ええ湯じゃったのぅ」

久「ホントねぇ。 どうして宿泊先のお風呂ってこんなに気持ちよく感じるのかしら」

まこ「優希が3度も入った気持ちがわかるのぅ」

久「それはないわ」


咲「お風呂上り? 私はコーヒー牛乳かなー」

和「私もコーヒー牛乳は嫌いじゃないんですけど、やっぱ普通の牛乳ですね」

咲「あっ、コーヒー牛乳と言えば。 京ちゃんコーヒー牛乳が大好きなんだった」

和「あら。 でしたら今から買ってきますか?」

咲「んー……。 いや、湯冷めしたらなんだし止めとこうよ。 明日買えばいいって」

和「そうですか? ……それもそうですね」


和(須賀くんはコーヒー牛乳派……っと……)



久「そうそう、咲。 実はここの合宿所、11時の消灯以降はお風呂の使用が禁止されてるのよ」

咲「え? 知ってますけど……」

久「だから夜中はだーれも寄り付かないってことね」

咲「は、はぁ……それがどうかしたんですか?」

久「……わからない?」


久「11時以降なら須賀くんと混浴できるかも、ってことよ」

咲「 」


和「なっ!?」

まこ「ちょっ!?」


咲(京ちゃんと……混浴……? 混浴……こん……よく……)

咲「……えっ……えっ、えっ、えっ」

咲「えええええええええええええ!!!!!???」


久「女子の合宿所なんだから当然だけど、須賀くんは誰も入れなくなった消灯以降じゃないとお風呂に入れないわ」

久「でも消灯とは言え敷地内なら出歩きは許可されてるのよね~」

久「つまり……わかるでしょう?」

和「ちょ、ちょっと!! 何言ってんですか部長!?」

まこ「流石にソレはまずいじゃろ!?」

久「あら、そうかしら? 夏休みを麻雀打ってるだけで過ごすなんて勿体無いじゃない」

久「真夏の夜の青春を過ごしてみるのも一興だと思うけど?」

和「そそ、それでも混浴はちょっと……」

まこ「そ、そうじゃよなぁ……?」

久「ふむ……二人はあまりノリ気じゃないわね……」

久「咲はどう?」クルッ


咲「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」


まこ「なんかトリップしちょる!?」



咲(きょきょきょ、京ちゃんと……こここ、混浴だなんて……!)

咲(それってつまり……京ちゃんの二の腕太もも腹筋胸板うなじが見放題ってことぉっ!!?)

咲(い、いや……それだけじゃなくて……それ以上の………!!)

咲(そんな……そんな…………そんなところおおおおおお!!!)


咲「……………らめぇ…」

 バタッ...


和「咲さぁああああん!!?」

久「あら、倒れちゃった。 ……湯あたりしちゃったのかしら」

まこ「……十中八九アンタの所為じゃろ」

和「咲さん!? 大丈夫ですかっ!!? 目が虚ろです!!!」ユサユサ

咲「えへ……えへへへ……」


久「……どうでもいいけど、ご近所さんに迷惑だからあまりうるさくしないでね?」

まこ「アンタ鬼じゃな……」


―――PM 11:00 脱衣所

 ガララッ

京太郎「……おお……」

京太郎「……ここが女子達がブラだのパンティーだの脱いだり履いたりしてる所か……」

京太郎「………よしっ」


京太郎「スゥ~~~~~~~~~~~~~~~ッ 」


京太郎「…………」

京太郎「……残り香が全くない……。 ……あっ」

京太郎「そりゃ脱衣所だもん、換気扇ぐらいあるか! ハハハッ!」

京太郎「はー……」

京太郎「……」

京太郎「入ろ……」

 ヌギヌギ

 ガラッ


―――浴場

カポーンッ...

京太郎「おぉぉ……意外と広い……」

京太郎「ここでたくさんの女の子が洗ったり洗われたりされてるのか……」

京太郎「あるいはすったもんだされたり」

京太郎「…………」

京太郎「……何言ってんだ俺」

チャポンッ

京太郎「ふぅ~……」

京太郎「……はぁ~……」

京太郎「…………」

カポーンッ...

京太郎「…………」


京太郎「大浴場貸切って寂しいだけだわ」


―――PM11:30 清澄の合宿部屋

京太郎「ただいま帰りましたぁ……」

まこ「おーう、おかえりんさい」グビッ

久「んっ……ぷふぅ……。 おかえり、須賀くん」ゴクッ

京太郎「……先輩方何飲んでんスか」

久「ああ、これ? 心配しなくてもノンアルコールよ?」

京太郎「いや、そこじゃなくて……それもだけど……」

まこ「なんなら京太郎も飲むかぁ? ホレ」スッ

京太郎「いえ、遠慮します。 断固として」


久「それにしても、随分と早かったわねぇ。 カラスの行水?」

京太郎「いやぁ……一人の大浴場って寂しいだけなんで……」

まこ「意外じゃのぅ。 お前のことだからイカガワシイことで時間を使うと思ったんじゃが

京太郎「…………」

京太郎「いや、してませんよそんなこと」


京太郎「咲達は……寝てるか」

久「あら……和もいつの間にか眠っちゃってたのね」

京太郎「優希……腹出しっぱで寝るなよな……」スッ

京太郎「咲は足出しっぱ……半分俺の布団にきてるし……」ススッ

まこ「……まるでオカンじゃな」

京太郎「こいつらがガキ過ぎるだけですよ……」

まこ「ハハッ。 言うわい言うわい」


京太郎「ふわぁ…。 ……そろそろ俺も寝ますね」

まこ「おう。 しっかり休みぃや」

久「本番は明日からよ。 頑張ってね」

京太郎「はい……それじゃあ……」


京太郎「先輩方……おやすみなさい……」

まこ「おう、おやすみ。 京太郎」

久「おやすみなさい。 須賀くん」


――― 12:00

まこ「……」チラッ


京太郎「……zzz」


まこ「……なぁ部長。 なんで京太郎も連れてきたん?」

久「ん~? 来る途中も言ってなかったっけ?」

久「……ひとりぼっちは可哀想だって思っただけよ」

まこ「……あ、そう……」

久「……何よ」

まこ「いーや、なんでも。 わしももう寝るわ」

久「はいはい。 ……私はもうちょっとだけ起きてよっかな」

まこ「それじゃ、缶の片付けよろしく~っ」

久「……あっ。 やられたっ」

まこ「へへっ。 おやすみ、部長」バッ

久「……ったくもう……」


久「んっ……」ゴクッ

久「……ふぅ」

久「…………」チラッ


京太郎「………zzz」


久「…………」


『あなたの待ち、当ててみてますよ』

『1pと7pのバッタ待ちでしょう?』

『俺もそうですから』


トクンッ


久「………」

久「…………ふふっ」


―――翌日 AM10:00 広間

咲「京ちゃん! 早く早く!」

京太郎「わかったから急ぐなって。 また迷うぞ」

咲「さ、流石に合宿所じゃ迷わないよっ! ほら! ここっ!」


ガチャッ

「おっとそれロンですッ!」 「ツモッ! 裏入れて4000,2000です!」

「うっしゃー! リーチだしっ!」 「あ、ロン」 「ニャー!!?」

ガヤガヤ


京太郎「おーやってるやってる」

咲「うわぁ……! うわわぁ……! 早く打ちたいなぁ……!」

京太郎「……楽しそうだな、お前」

咲「えへへっ。 今日は夢見が良かったからねっ!」

京太郎「ふーん……?」


咲(京ちゃんと混浴なんて最高の夢……!)


咲「ツモッ! 嶺上開花タンヤオ三色同順……満貫です!」

モブ子「うええぇ……そんな手ありー……?」

咲「さぁ! 次行きますよぉお……!」


優希「咲ちゃん、調子良さそうだじぇ」

京太郎「ああ。 なんでも、夢見が良かったんだとかなんとか」

優希「ほーう? それならアタシも負けてられんじぇ!」

京太郎「というと? お前の夢は?」

優希「聞いて驚け……! タコスに食われる夢だ!!」

京太郎「……。 食うんじゃなくて?」

優希「食われた!! こりゃいいこと有ること間違いなし!」

京太郎「……お前がいいならそれでいいんだろうよ……」

優希「んじゃ、行ってくるじぇー!」タタタッ


京太郎「俺はどうすっかなぁ……っと」


「あっ……! きょーたろー!」


衣「きょーたろー! 久しいな!」トテテ

京太郎「天江さん。 そうですね、昨日ぶりですね」

京太郎「憧れのコンポタの味はどうでしたか?」

衣「ああ、とても甘露で美味であった!! つぶつぶが最後まで食べれなかったが……」

京太郎「そういうときはクルクル回しながら飲むといいらしいですよ」

衣「? そんなことしたら目が回らないか?」

京太郎「ん?」

衣「?」

京太郎「??」

衣「??」


「『缶を』でしょ。 そこは言わなきゃ」


京太郎「あっ」

衣「ハジメー!」


一「おはよう、衣。 京太郎くん」


京太郎「お、おはようございます!」

一「ハハッ。 よしてよ敬語なんて。 同年代なんだからさっ」

京太郎「……そうだな。 おはよう」

一「おはよう。 ボクのことは『はじめ』でいいよ」

京太郎「了解。 よろしく、一」スッ

一「うんっ。 よろしくっ」ギュッ


衣「なーハジメー。 トーカはどうしたんだー?」

一「透華はお休み中。 昨日はしゃぎ過ぎちゃったからね」

京太郎「……昨日なにかやったのか?」

一「枕投げ」

京太郎「………」

京太郎(子供か……っ!)

衣「アレはとても愉快だったな!」

一「またやろうねー」

京太郎(……子供だった……)


一「さて。 僕らもそろそろ打ちに行こうか、衣」

衣「うんっ!」

京太郎「ああ。 あっちで咲が打ってますよ」

一「ありがとっ。 んじゃ、そっち行こうか衣」

 ギュッ

衣「……」

京太郎「……? な、なんスか?」

一「……衣?」

衣「……衣は……」


衣「きょーたろーと打つ!!」


京太郎「えっ」

一「おおっ?」


京太郎「ちょ、何いってんですか!」

衣「何だ? きょーたろーが打つのが法度なわけでもあるまい?」

京太郎「いやでもほら! 最初に言ったじゃないですか! 『皆さんの邪魔はしない』って」

衣「京太郎自らが乱入するならまだし、衣から誘ってるんだ。 邪魔な訳がない」

京太郎「そりゃ……そうかもしれないけど……」

一「別にいいんじゃないかな?」

京太郎「は、一まで……」

一「いいじゃないかっ。 衣と打てる機械なんて滅多にないもんだよ?」

衣「うんうんっ!」

京太郎「う、うーん……」


衣「……きょーたろーは……」

衣「衣と……打ちたくないか……?」ウルウル


京太郎「うっ……」

京太郎「……そりゃ殺し文句だ……」


―――というわけで

咲「よろしくお願いしまーすっ」

優希「よろしゅうっ!」

京太郎「よろしく」

京太郎「……って、なんでお前らが……」

優希「ふふーんっ。 犬にはリードを持つのはアタシだからなっ!」

京太郎「いみわからん」


咲「もう……衣ちゃんったら水くさいんだから……」

衣「ん?」

咲「私と打ちたいなら打ちたいって言ってくれればいつでも行ったのに」

衣「なにが?」

咲「ふふっ。 京ちゃんと打つ建前で私と打ちたかったんでしょ? 解ってるって~」

咲(衣ちゃんは子供っぽいからねっ)



衣「そんなこと毛頭無かったけど……」


咲「えっ」

衣「衣は純粋にきょーたろーと手合わせしたかっただけだ」

衣「ひょっこり二人が参画してくれたのはありがたいが……それだけだぞ?」

咲「………」


咲(どどどどどどどどういうこと!? 京ちゃんと衣ちゃんって面識あったっけ!?)


京太郎「お手柔らかにおねがいしますよ?」

衣「ふふーん。 それは高望みが過ぎるんじゃないか?」

京太郎「うへぇ……」

衣「えへへっ」

咲(す、すっごく仲良さそう……!)


優希「こ、こらそこぉ! イチャイチャするのもいい加減にするじぇ!!」

咲「……!」ウンウン

京太郎「あ、ああ、悪い。 準備はいいぜ」

衣「ふふっ……では始めようっ!!」


優希「ロンッ! 開始早々親ッパネだじぇ!」

京太郎「やっちまった……。 昨日アレだけ打ったのに……」

優希「お前程度に見破られるほどヤワな麻雀打ってないじぇ~」

京太郎「こんにゃろ……タコス作るの止めんぞ……」

優希「ギャー! それは止めてくれー!!」


衣「……むっ」チクリ


咲「優希ちゃんばっかにいい顔させないよっ。 その9pカンッ!」

京太郎「げっ!」

咲「ツモッ! 6400の一本場で6700! 責任払いだよ、京ちゃんっ」

京太郎「残り持ち点300点……殺生な……」

咲「えへへっ。 油断大敵、だよっ!」

京太郎「いつもよりやる気だなぁ……」


衣「……むむむっ……!」チクチク


衣(なんだ……この気持……)

衣(きょーたろーと周りの者が触れ合う度……)

衣(胸が揺らぐ……苛立つ……)







衣 「 不愉快だ 」


ゴッ !


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


咲「ヒッ!?」ビクッ

優希「な、なんだじぇこの雰囲気!!」

京太郎「……あ、天江さん?」

衣「不愉快なんだ…………とても……」

咲「えっ?」

衣「そこはかとなく……胸が騒ぐ……」

優希「ふ……雰囲気が……」


衣「……まずはお前から……」

衣「行くぞ小娘」


衣「 御戸開きだ 」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


優希「うげぇ……」

優希(東2局だってのに……配牌が悪い……!)

京太郎(いや……配牌どころかツモも悪い……)

京太郎(全くシャンテン数が進まない……!)

咲(これは……衣ちゃんが本気の時の……)


優希「うぐ……! 次でラスヅモなのにぃ……!」

衣「……どうした小娘。 それで最後のツモだぞ……?」

優希「う、うっさいじぇ! 来いっ!」

優希「……ぐぬぅ……! テンパイ出来ず……かっ!」

 タンッ

「ロン」

優希「うぇっ!?」


衣「……河底撈魚だ」パタッ




優希「あああっ! アタシの必要牌が全部……!」

衣「子の倍満で16000。疾く寄越せ。 次は衣が親だ」

優希「うぎぎ……」

京太郎(す、すげぇ! ホウテイ無しじゃ和了れない手なのに……)


衣「フハハ! ロン! 河底撈魚!」

優希「うきゃぁっ!」

衣「どうした小娘! 速攻が得意なのだろう!?」

優希「うぅ……うううぅ……」

衣「これで2本場……」


衣「さぁ……」ゴッ!

優希「ひぃっ!」


衣「足掻けよ小童!!」


優希「…………」タンッ

衣「……はぁ……」

衣「ロン……河底撈魚」

優希「うあ……あああぁ……」


京太郎(さ、さっきから優希ばかり……!)

咲(鳴いてズラしても修正される……必ず優希が振り込む形に……!)


衣「鯔背な小娘よ。 煢然たる活きの良さは何処へ行った?」

優希「うあ……ああ……」

衣「これで貴様の持ち点は100。 十八番のリーチも出来ん」

優希「ああああ………ああああああ」


衣「今、どんな心地だ?」

優希「 」









京太郎「…………」









一「ま、マズイッ」

一(これじゃぁこの子も……壊れてしまう……!)

一「ころ……」



ガシャンッ!



衣「!」

咲「!」

優希「!」

一「!」



京太郎「いい加減にしてくださいよ。 天江さん」



衣「きょ……京太郎?」


京太郎「さっきから見てれば優希ばかりを狙った打ち方……」

京太郎「一見すりゃ立派な戦法なのかもしれないけど……」

京太郎「もう我慢ならねぇ……」

咲「きょ、京ちゃん……?」



京太郎「天江衣ォ!」

衣「、っ!」




京太郎「お前は……俺だけを狙え……」ゴッ!


京太郎「俺も……お前だけを狙う……!」ゴッ!


衣「なっ!?」


衣(京太郎から……これまでにない闘志を感じる……)


衣(今は東3局5本場。 京太郎と衣の点差は7万以上……)


衣(この試合は半荘戦の取り決めだが……この点差は容易には覆らない!)


衣(衣だけを狙い続けるだと……? 烏滸言を!!)


衣(できるものなら……!)


衣「やってみせよ! 須賀京太郎!!」

ダンッ!











                 「ロンッ」














衣「は?」


京太郎「……聞こえなかったか……?」

京太郎「なら、もう一度言おう」


京太郎「ロン、だ」

 パタ.....


衣「!?」



咲「れ、人和!!?」

一「そ、そんな馬鹿な!」

優希「きょ、京太郎……」


京太郎「……32000だよ。 天江衣」

衣「ば……馬鹿な! 人和だと!?」

衣(可能性が0.038%の紙一枚にも見たぬ薄い役満……! それをコイツ…!)


京太郎「天江衣……そういえばお前の得意技は海底摸月だったな」

衣「……?」

京太郎「即ち、最後の一牌で和了ることが得意……」

衣「……! ま、まさか……!」


京太郎「学ばせてもらったよ」

京太郎「そうだよ。 ツモが悪いならツモらなきゃ良い」



京太郎「最初の一牌で和了りゃいいんだ」


衣「な、なんだと…………」


京太郎「さぁ、親だ」

京太郎「……これで持ち点は五分五分」

衣「……!」

衣(次もしもまた人和を和了られたら……衣はトバされる……)

衣(だが、衣の前には13+1牌! この中から自由に選べるんだ……!)

衣(振り込むわけがない……!)


京太郎「……」タンッ

優希「え、えと……これっ」タンッ

咲「……」タンッ


衣「ば、馬鹿な……!」


衣(河の牌と手牌……。どれも被りがない……!)


衣(安牌が……無い……)




衣(……どれを……切れば…)

京太郎「早くしろよ」

衣「ぐっ……! 急かすな!」

京太郎「……急かすさ」


京太郎「お前が優希にやったことなんだから」

衣「っ、!」


衣(どれだ……! どれが安牌……!)

衣(さっきは字牌であたった……だが、次は安全という確証もない!)

衣(どれが……どれが……)


咲「まだ? 衣ちゃん」

衣「!!」

咲「……京ちゃんが待ってるよ」


衣「くっ……クソぉ!!」 ダンッ



――――同日 PM5:00 清澄の合宿部屋

京太郎「……んっ……」

京太郎「……部屋? なんでここに……」

京太郎「まさか……夢ぇ?」


「夢じゃないじぇ」


京太郎「あ…………」

京太郎「優希」


優希「へへっ。 随分とグッスリ寝てたなっ」


京太郎「まじかよ……麻雀打って倒れるなんて初めてだ……」

優希「こっちもビックリしたじぇ。 衣ちゃんが打ったと同時に卓に突っ伏すんだもん」

京太郎「あー……悪い」

優希「卓にちょっと唾ついてたじぇ」

京太郎「……ホント悪い……」


優希「しっかし恐ろしいことしたなぁお前は……」

京太郎「……ああ……俺も驚いてる」


優希「バラバラの手牌で和了る気満々に振舞ってたから」

京太郎「……えっ?」


優希「『えっ』て……気付いてなかったのか? 役どころかメンツ1つもできてなかったじぇ?」

京太郎「ま、マジ?」

優希「いやー皆騙されてたじぇ。 どんな手牌だったのか気になって開いてみたらさぁ大変」

優希「京太郎はホラ吹きの達人だじぇ!」

京太郎「………」


京太郎「……結局最初のあの人和は偶然だった……てことか」

優希「当たり前だじょっ。 そうポンポン和了られちゃ商売上がったりだじぇ」

京太郎「……そりゃそうか……」

優希「……ま、まあ。 アタシとしちゃ、借りを返してくれた京太郎に感謝してなくもないけどなっ!」

京太郎「………」

優希「……な、なんか言えよぉ!」

京太郎「そんな顔真っ赤で言われても……」



京太郎「……そういえば……天江さんはどうなったんだ?」

優希「衣ちゃん? 衣ちゃんなら……」


優希「お前の隣にいるじぇ」

京太郎「えっ」


衣「すぅ……すぅ……」

京太郎「な、なんで!?」


優希「お前が起きるまで看病するって聞かなかったんだじぇ」

優希「アタシは和ちゃんや咲ちゃんと交代交代で一緒に看病してた」

優希「衣ちゃんだけは、ずっとお前の側にいたじぇ」

京太郎「そんな……どうして……」

優希「……さぁね~?」


優希「そいじゃ、そろそろ時間だからアタシは行くじぇ」

京太郎「ああ。 ありがとう」

優希「……むふふっ」

京太郎「?」

優希「ごゆっくり~♪」

京太郎「……」

京太郎「何言ってんだアイツ……」


京太郎「…………」

衣「すぅ……すぅ……」

京太郎「……天江さん……」

ナデナデ

衣「んぅ……。 きょーたろー……?」

衣「……きょうたろー!?」

京太郎「はい」

衣「ぐ、具合はもう良いのかっ? 吐き気はあるか? 痛い所とか無いかっ!?」

京太郎「だ、大丈夫ですよ。 おかげ様で元気です」

衣「よ……良かったぁ……」


京太郎「どうして看病を?」

衣「うっ……それはその……」


衣「つ、罪滅ぼしとして……」


京太郎「罪滅ぼし?」

衣「……衣は……お前の大切な友人を……幾度と無く攻撃してしまった……」

衣「アイツは私を許してくれたが……お前があの時衣に見せた敵意に満ちた目……」

衣「あれが……ずっと胸の中で衣を責め立てるんだ……」

京太郎「………」

衣「……すまなかった……きょーたろー……」

京太郎「……気にしないでくださいよ。 喧嘩なんてよくあることでしょう?」


京太郎「友達なんだから」

衣「えっ……」


衣「とも……だち……?」

京太郎「あれ……もしかして、俺の勘違いでしたか?」

衣「い、いや! そんなことない!」

衣「……とも……だち……!」

衣「きょーたろーと……ともだち……!」


京太郎「……そんなわけで、俺はもう気にしてませんよ」

京太郎「そもそも俺が大口張ったのも悪かったし……」

京太郎「おあいこ、ってことで」

衣「………」

京太郎「……天江さん?」

衣「『ころも』」

京太郎「えっ?」

衣「『ころも』だ。 と、友達なのに苗字呼びは違和感があるっ」

京太郎「あ、ああ。 そうですね」

衣「敬語も要らない! 『さん』もつけるな!」

京太郎「そ、それは……」


衣「……ともだち、だろぅ?」ウルウル


京太郎「うっ………」


―――同日 同刻 通路

咲「京ちゃんが目を覚ましたのに迷うなんて私の馬鹿馬鹿!」タッタッ

咲「今度こそ迷わない! こっちで合ってる!」タッタッ

咲「……見えた! 『清澄』の文字! 間違いない!」タッタッ

ガチャッ

咲「京ちゃん!!!」



京太郎「こ、衣! 口移しは友達の間ですることじゃない!!」

衣「? しかし、鶴賀の大将は後輩に口移しを迫られてたぞ?」

京太郎「それはもう友達を超えた『何か』なんだよ! だからそのコーヒー牛乳を置いて……」

衣「ならば単純だ! 衣達もその『何か』になればいいんだ!」

京太郎「そんなわけないだろ!? ちょ、どこにこんな力が……」




咲「…………」


咲「…………ああ」


咲(そうだ、これは夢なんだ。私は夢を見ているんだ)

咲(目が覚めた時私はまだ高校1年生)

咲(起きたら京ちゃんの家に行って枕元で京ちゃんにこっそり『好き』って言って)

咲(ドキドキしながら京ちゃんの香りを堪能した後京ちゃんを起こして)

咲(京ちゃん一緒に手を繋ぎながら登校して)

咲(それを偶然クラスメイトに見られてしまって)

咲(教室に入った途端京ちゃんと私の相合い傘の書かれた黒板を見て)

咲(京ちゃんと一緒に赤面しながらも笑いあうんだ……)


咲「は、ははは……はははははは…………」


咲「………あふぅ……」


 バタンッ


この後、2日連続で気絶した咲は、
ここ数日間他校の生徒に病弱キャラとして見られる日が続いたんだとか。



京太郎「咲? 咲~?」

咲「アハハハ……京ちゃん…駄目だよそんなことぉ……」

京太郎「………咲……」


まこ「こりゃぁ……重症や……」

和「ま、前より酷い………」

久「叩けば直るんじゃない?」

優希「よっしゃ! 任せるじぇ!」


京太郎「止めて!」




――――――続く。