須賀京太郎、本人も自覚していないがその性質は願望器であった。
身近な人間の願いを受け、それがなぜか形になる。そこに須賀京太郎本人の願いは介在しない

竹井久の願いをかなえ、女子部員を5人揃えた。
宮永咲の願いをかなえ、姉との仲直りの道へ導いた。
原村和の願いをかなえ、彼女の母は転校を差し止めた。
片岡優希の願いをかなえ、タコスに囲まれる毎日が実現した。
染谷まこの願いをかなえ、彼女の実家は次第に繁盛していく。

彼女らの願いを同時に叶えるために最適な道が、清澄高校がインターハイで優勝するというものだっただけ。
だから、その未来は叶う。何の自覚もなく、誰に気付かれることもなく、運命のように勝手に決まっていく。
それは実力で成し遂げたものと周囲は誤認し、予定調和であったことなど誰にも悟られることはない。

彼女らの願いは叶った。故に満足し、また新たな願いを胸のうちに抱き始める。
麻雀一色であった中に余裕が生まれ、日常へ、普通の女の子らしい願いへと変化していく。

そして、その願いも当然のことのように叶え――結果、それがどれだけ歪であろうと世界は受容する。

宮永咲の、片岡優希の、原村和の、竹井久の、染谷まこの新しい願い『学生のうちに恋人が欲しい』なんてものも
そして彼の権能は常に最短で複数を同時に叶える解へとたどりつく。ゆえに

京太郎「……なんで、こんなことになってるんだ?」

咲「はい京ちゃん、あーん」

和「須賀くん、お弁当ついてますよ、ふふ」

優希「タコス一緒に食べるといつもよりうまいじぇ」

久「今度の休日デートしましょ」

まこ「明日のシフト、夜まで一緒に入ってくれんか?」

同時に身近な女性5人と付き合うという、異常事態すら世界はそれを当然のように受け止める。
一番接点が多かった男子という、ただそれだけの理由で。誰も不思議に思わず、勝手に。

ただ一人、願望器が叶えない須賀京太郎の願いを除いて。だから彼だけは違和感を感じる。

京太郎「おかしくない? ねえ、どうなってんのこれ? 新たないじめ?」

誰にも気づかれないが故の無敵のオカルト『デウス・エクス・マキナ』は今日も猛威を振るう。台風の目の困惑を置き去りにして


カン

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最終更新:2018年04月26日 22:25