ネリー「まったく、日本はどうなってるのさ！」
智葉「どうしたんだ？」
ネリー「ネリーはね、怒ってるんだよ！」
京太郎「見ればわかるよ。んで、サカルトヴェロよりお越しのヴィルサラーゼさん、一体何にお怒りなんですか？」
ネリー「パンだよパン！ 日本のパンに不満があるんだ」
京太郎「パン？ 口に合わないとか？」
智葉「いや、けっこう食べてるだろネリーは。このあいだも食べてたじゃないか」
ネリー「べつに美味しくないとかじゃないんだけど。むしろ味はいいよ。でも……」
京太郎「でも？」
ネリー「なんで……」
ネリー「なんでどれもこれも柔らかいの！？ 意味わかんない！」
京太郎「え、ああ、言われてみればそうかも。柔らかいかも」
智葉「パンって、そういうものじゃないのか？」
ネリー「そういうのもあるけど、ネリーの国には固いのもあるし」
京太郎「ふむ。たしかに日本のパンって、ふんわりしてるイメージだな」
ネリー「いわゆるハード系がないよね」
ダヴァン「そうでスカ？ バリカタとかハリガネなんてのもありますケド」
京太郎「そりゃラーメンの話です」
ハオ「中国には饅頭（マントウ）がありますよ」
智葉「あれも柔らかいな。蒸して作るから」
京太郎「いわゆる中華まんのこと？」
ハオ「いえ、中に具が入ってないのが饅頭。具が入ってるものは包子（パオズ）と呼びます」
京太郎「なるほど。アレもパンの一種か」
ネリー「固いのちょうだぁい……ネリー固いの欲しいよぉ……」ﾊｧﾊｧ
京太郎「ヤバイ。なんかネリーがヤバイ。色々と」
智葉「固いのとなると、フランスパンくらいしか思いつかないぞ」
京太郎「ですね。フランスパン、外はバリっと中はモチっと」
智葉「トーストしても美味しいしな、フランスパン」
京太郎「スープに入れてもいいですよね、フランスパン」
智葉「ほう、そんな食べ方もあるのか、フランスパン」
京太郎「中身をくり抜いてシチューを入れたりもいいですよ、フランスパン」
ｻﾞﾜｯ
「フランスパン……？」
京太郎「ん？」
「フランスパン……フランスパンフランスパンフランスパンフランスパンフランスパン……っ」
智葉「な、なんだ？」
明華「フランスには……フランスパンなんて、ありませぇーん！！」ｺﾞｯ
京太郎「うわぁっ！？」
智葉「ミョ、明華！？」
明華「どうして日本人はパリジャンもバゲットもバタールも一纏めにしちゃうんですか！」
京太郎「え？ え？」
明華「長さが違うでしょう！ クープの数が違うでしょう！」
智葉「ちょ」
明華「フランスのパンだからフランスパン？ Non！ じゃあどうしてクロワッサンはクロワッサンって言ってフランスパンとは言わないんですかー？ クロワッサンフランスのパン、でもクロワッサンのことフランスパンって言ってるの聞いたことないですぅー」
京太郎「ひ、ひぃぃぃっ」
明華「なんですか？ 固ければいいんですか？ ベーグルも固いですけど、それもフランスパンって言っちゃうんですかぁ？」
智葉「お、落ち着け明華……」
明華「あげくにソフトフランス？ え？ 漢字で書くと柔仏？ 柔仏ってジョホールの事じゃないですかフランスなのにマレーシアじゃないですか国が違ってるじゃないですかやだこれもー！」
ハオ「明華、諦めたほうが賢明です。日本人とはそういうものなのです」
明華「うぅ……これが国境……」
ハオ「アレンジするだけに飽き足らず架空の海外料理を創作するなんて、この国では日常茶飯事なのですから」
ダヴァン「ちなみにベーグルはアメリカ生まれデス」
ネリー「さすがはヴァントゥール。まるで暴風だね」
智葉「食に対するこだわりが強いのは万国共通、というわけか」
京太郎「みたいですね……」
明華「ふう、取り乱しました……では、行きましょうか」
京太郎「ど、どこへ？」
明華「私行きつけのパン屋さんに決まってます。本場のパン・トラディショネルの味と種類とその違いを、今から教えてさしあげます」
智葉「お、おう」
明華「もちろん皮の固さも本場並み。日本のものとは比べ物になりませんから、期待しててくださいね」ﾆｺｯ
京太郎「マジすか」
ネリー「しょうがない。ネリーもご相伴にあずからせてあげよう。もちろんオゴリね」
京太郎「いやそれはおかしい」
ダヴァン「フム、たまにはパンもいいでスネ」
ハオ「というか、いつもラーメンでは身体に悪いですよ、メガン」
明華「ふふっ、ちゃんと覚えてくださいね、私の国のパンの味」
このあと滅茶苦茶パン食った
京太郎「あ、あごがダルい……」ｶﾞｸｶﾞｸ
カン
最終更新：2018年01月27日 21:01
