<京太郎⇔和 時空@原村和1>

私、原村和は高校に入って新しいことを始めようと思っていました。
というのも、中学の時はハンドボール部のマネージャーをやっていたのですが、彼らは県大会で惜しくも敗退、全国に行くことは叶いませんでした。
しかし、彼らが全国に向ける思いは見ていた側の私にとっては熱いもので、同時に打ち込めることに羨ましさを感じていたんです。

見ているだけじゃなく私もプレイヤーの一員として頑張りたい、そんな気持ちが私の中では育っていました。
とはいえ、運動はちょっと……その、胸が邪魔で。ですから、文化部で大会に出られるような、そんな部活を探すことにしたんです。
ちなみに運動をあきらめた理由を中学からの親友に述べたら「そうだよね、和ちゃんは大きいもんね。なんで私は……」などと一悶着ありましたが。

学校はあまりにも親友の咲さんが迷子にならないか心配だったので、合わせて清澄に。
その高校で、私は文化部の入部先を求めていくつかの部活を訪ねていきました。
候補は、初心者相手でもしっかり育ててくれそうなところ、そしてみんなで大会にという気持ちがありそうなところ。

そんなある日、いつものように訪ねた一つの見学先で、私は少し魅入ってしまいました。
3人の女性と1人の男性が同じ場について、真剣な表情で勝利を目指す競技。
一人の小さな女の子が一喜一憂し、一人の年上と思える女性が飄々と佇み、一人の眼鏡の女性がなぜか眼鏡をはずして盤上を眺め、一人の金髪の男性が真剣な表情で指先に四角いものを挟んで打つ。
麻雀、という物らしいです。大会があり、団体戦があり、人によってはそのままプロにもなる。

興味をもって初心者でもいいかと聞けば、何でも団体戦には人数が足りず大歓迎と。
擬音語ばかりで全く分からないことを言う少女を除けば、とても丁寧に教えてくれました。
いえ、彼女も悪い子ではないんです。ただその、感覚的過ぎて分からないだけで。でも、仲良くはなれました。

ちょっと悪戯っ気のある部長、面倒見のいい染谷先輩、元気で感情表現の大きい片岡さん。
そして、唯一の男の人で色々と世話を焼いてくれる須賀京太郎くん。……胸をたまに見てくるのは減点です。ドキドキしますから

実はその、彼のことが気になっていないといえば嘘になります。
何でも中学では全国でトップをとったらしく、クラスでも知ってる人がいるぐらい人気だそうで。
普段の人当たりの良さと、麻雀をしているときの真剣な顔のギャップは、別人かと思うぐらいです。

ただ、団体戦に出るにはあと女性が一人必要だと聞きました。揃わないと出場できないそうです。
その話を聞いたとき私が思い浮かべたのは、やっぱり中学の付き合いの咲さんです。
彼女なら、お願いしたら大丈夫じゃないかと、そうたいした根拠もなく考えたんです。

まさか、咲さんと須賀くんの間であんなことが起こるなんて、この時の私にはわかるわけもありませんでした。


『原村和、麻雀への第一歩』 カン

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最終更新:2018年01月27日 20:55