京ちゃんにとって私はただの中学のクラスメート。そんなの分かってる。
小中学校でモテる男子っていうのは運動ができて、ノリがいい、そう京ちゃんみたいな人。
私みたいな地味で本ばっかり読んでてすっとろいのは、いじめの的。

だから、接点なんてないと思ってた。
なのにあの人は俯く私の前に颯爽と立った。
私に背中を見せたまま「お前らそれでかっこいいって思ってんの? 男なら女の子を助ける騎士に、女の子は誰もが羨むお姫様に、それがすげーんじゃないのか?」

はっきり言って、馬鹿みたいで夢しか見てないような言葉だった。現実的じゃない理想論で、でもだからこそキラキラしてた。

「俺はこいつをお姫様にする、今この場で決めた! ハンド部のマネやってもらって、俺が勝利を捧げて笑顔を見るんだ」

そんなあまりにも熱く、気合の入った言葉に回りは完全に気圧されていた。
私だって、頭がゆだって何も考えられない。

「俺は須賀京太郎。よろしくな、お姫様」

「み、宮永咲です……」

私達の始まりは、こんな感じだった。
もちろん後でお互いのダメなところが色々分かって幻滅したり、喧嘩にもなったんだけど。

だから――

誠「いい嫁さんだなあ」

咲「嫁さん違います。中学の時のクラスメートです」

そう、私にとっては『嫁』なんて一言じゃ表せない。もっと大事な、かけがえの人なんだから、京ちゃんは。


カン

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最終更新:2017年10月20日 01:01