――自分には、何が足りないのだろう。
マホ「先輩、今日もお疲れ様でーす!」
京太郎「おう、お疲れさん」
――今日も憧れのあの人は、もう一人の憧れの人と一緒に帰る。
和「ふふっ。遅いですよ、京太郎くん」
京太郎「ああ、悪い悪い。忘れ物しててな」
――どうして自分は自分なのだろう。
マホ「おはようございまーす!」
京太郎「おはようマホちゃん。今日も元気いっぱいだな」
――どうして自分はあの人ではないのだろう。
和「京太郎くん。最近ネット麻雀の方ではどうですか?」
京太郎「和に教えてもらったおかげで、だいぶ成績が上がったよ。ありがとな」
――どうして、どうして。
マホ「――先輩、複製システム25って映画、知ってます?」
京太郎「なんだ、突然。この前テレビでやってたから一応見たぞ」
マホ「あの主人公……悲しいですよね。最後は、『本物』の自分に倒されちゃうなんて」
京太郎「そうかな。俺はむしろスッキリしたぞ、あのラスト」
マホ「そう……ですか?」
京太郎「うん。なんというか……やっぱり、あるべき形っていうのがあるよな。
あの主人公だって、結局自分が『偽物』だって事実に耐え切れなかっただろうし」
マホ「偽物は、本物にはなれない……ってことですか」
京太郎「うん、そうそう。俺はそういうメッセージだと解釈した……っていうか、
そうじゃなきゃちょっと救われなさすぎだと思うんだ」
マホ「――そう、ですね」
――現実には、そんな救われないストーリーがいくつもある。
京太郎「っと、もうそろそろ時間だな……和のやつ、遅れるとすげー不機嫌になっちまうからな」
マホ「ええ……そうでしょうね。早く行ってあげてください」
――きっと、彼女は寂しがっているから。
カン
最終更新:2017年10月20日 00:50